陰の実力者を育てたくて   作:繋ガレシ世界ノ月神

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原作を、買いなさい。


肉体が無い陰の実力者……笑える

(きっかけがなんだったのか)

(いつからだったのか)

((覚えていない))

 

((ただ気づいた時には))

(『陰の実力者』に憧れていた)

(彼がそこにいた)

 

(アニメなのか、特撮なのか)

(生まれた時か、悪魔憑きになった時か)

((いえ、いつでもいいのよ(いや、なんでもいいのだ)))

 

(主人公でもなく、ラスボスでもなく、物語に陰ながら介入し実力を見せつけて征く存在)

(正義でもなく、悪でもなく、ただ己の道を真っ直ぐに見つめて進み続ける存在)

 

(僕はそんな陰の実力者に憧れ、そうなりたいと思った)

(私はそんな彼に救われて、いつまでも共に在りたいと思った)

 

 

 * * *

 

 

(僕は肉体を失った。そして魔力を見つけた)

(私は過去を捨てた。そして存在意義を得た)

(意識が覚醒したら周囲は魔力で満ちていたのだ。肉体が無くなっていたけど、まぁどうにかできる問題だ)

(気がついたら私の身体を腐らせていた呪いは解けていた)

 

 

 * * *

 

 

 意識が覚醒した当時、僕は生まれたばかりの金髪エルフの少女にくっ憑いてる幽霊だった。

 

 始めはそれなりに苦労した。なにしろ誰も僕を認識しないし言葉も分からない、おまけにエルフの里が自然に囲まれすぎてるせいで文明のレベルも把握できなかった。

 これではせっかくの魔力が無駄になってしまう!

 

 そんな僕の悩みは時間と偶然がアッサリと解決してくれた。

 

 少女が〈悪魔憑き〉と呼ばれる病気?呪い?とにかくそんな感じのやつになったことで、彼女と彼女から離れられない僕はエルフの里から追放されたのだ。

 文明レベルは中世ヨーロッパとかそんな感じだった。

 

 これだけで偶然は終わらない。なんと彼女の肉体に乗り移ることができたのだ。

 よっしゃ肉体ゲット!金髪エルフはどちらかと言えばヒロインだけどこの際身体があれば何でもいいや。

 そしてそこで僕は気づいた。あれ〈悪魔憑き〉って元を辿れば魔力暴走じゃないか?

 

 幽霊の僕は身体があった頃の修行で精霊を知覚するためにお花畑で走り回った時の感覚そのものだった。

 だから、時間だけが大量にあった僕は魔力を手足のように操ることができる。

 

 僕はすぐに〈悪魔憑き〉を治し、檻を破壊して脱走した。ついでに他の檻も幾つか破壊して混乱させたから絶対に誰も追ってこれないはずだ。

 

 それからこの身体でどうやって陰の実力者を目指すのか考えた。んだけど。

 

『うーん、急に身体に弾かれた。彼女に意識があると乗り移れないのか?』

 

「あな、たは……」

 

 あれ?もしかして僕が見えてる?

 

 

 * * *

 

 

 金髪エルフの少女シルヴィアが目を覚まして最初に目にしたのは、身体が半透明で地に足が着いていない黒髪黒眼の少年だった。

 

『──彼女が寝ている間なら身体を使えるのかな?……一見どこにでも居る金髪の美少女ロリエルフ、しかし……いや、金髪の美少女ロリエルフはどこにでもいないな──』

「あな、たは……」

 

 シルヴィアがそう口にした途端、少年は目を見開いた。

 

『──butubutubutubutubutubutu』

『……目覚めたか、英雄の血を継ぐ者よ』

「英雄、の血?」

 

 そこから少年は原作通り真実を騙り始めた。

 魔人ディアボロス、〈ディアボロスの呪い〉、英雄の子孫、そして〈悪魔憑き〉の真実。

 少年にとっては即興ででっちあげたそれっぽいだけの話、しかしそれは世界に隠された真実の扉を解き放ってしまう。

 内容は原作とほとんど変わらないので割愛する。気になるなら原作の第一巻を買いなさい。

 

 少年が騙り終わった時、シルヴィアの表情は覚悟と決意に満ちていた。

 

『僕は影noンンッ、……我が名はシャドウそして、君は今日からアルファを名乗れ』

「わかったわ」

 

『我らは「シャドウガーデン」陰に潜み陰を狩るもの』

「『シャドウガーデン』。いい名前ね」

 

 この日、原作よりも5年程度早く『シャドウガーデン』が誕生した。




少年は騙る。
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