陰の実力者を育てたくて   作:繋ガレシ世界ノ月神

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本格的な活動

『シャドウガーデン』設立から5年ぐらい経った。アルファは10歳になった。

 そして最近、銀髪エルフのベータがようやく二人目の『シャドウガーデン』メンバーになった。

 

 本当にこの5年間は大変だった。メンバーがアルファ一人しかいないお陰(せい)で問題がが幾つもあった。

 まずアルファの魔力制御。アルファ自身の手でしか鍛えることができなかった。これはベータの〈悪魔憑き〉を治す過程で一ヶ月くらいかけてどうにかなった。

 そして剣の練習もなかなか進まなかった。僕が物理的に剣を持てない以上、できるのが素振りと実戦の後の振り返りだ。運のいい事に、アルファの育ったエルフの里の剣は盗賊達が使うナントカ流よりもある程度洗練されていた。これからは同郷らしいベータと一緒に練習できるからこの問題も解決するだろう。

それから、良いことも一つだけあった。僕はアルファの許可があればアルファの身体に意図的に乗り移る──憑依でいっか──事ができるようになっていた。

 

 メンバーがいないから強くなりにくい。強くなれないからメンバーが増やせない。その悪循環もこれで終わりだ。

 

 あ、そうそう。驚いたことにディアボロス教団は実在した。

 エルフの里でアルファが学んでいた古代文字を魔力操作以外にやることがなかった僕も覚えていたから古文書に書いている内容を読んだときは少しだけ驚いた。

 どうでもいい。

 

 なぜなら陰の実力者は誰にも負けないからだ。

 むしろこれはチャンスと考えるべきだ。

 主人公を見つけ、ディアボロス教団と戦うように仕向けてそれに介入し『暴走が始まる。月が紅い、もう時間が無い。残された時間は僅かだ』みたいな意味深なことを呟く。これでディアボロス教団が壊滅したら僕は名実共に『陰の実力者』になることができるのだ。

 

 * * *

 

 さらに3年が経った。いや〜数の力って凄いね。ベータがメンバーになるまで5年もかかったのにそれからは3年でメンバーが8人になった。

 それにディアボロス教団やディアボロスの呪いの情報もなんだかんだで集まってくる。

 

 例えば、〈ディアボロスの呪い〉だと、魔人ディアボロスと戦った英雄は全員女だからディアボロスの呪いも女にのみ発現する。

 とか、〈ディアボロスの呪い〉が発現する割合は種族ごとの寿命と関係していて、エルフが最も多くて、次に獣人、最後に人間。だったり。

 ディアボロス教団に関してだと、教団は世界規模の超巨大組織で〈ディアボロスの呪い〉が発現した人を適応者と呼んで、早期捕獲と処分を徹底している。っていうのがあった。

 

 これらが全部事実って言うのも素晴らしい。魔力があって陰の実力者が活躍できる舞台が用意されている。これはもう世界が僕に『陰の実力者』になれと言っているに違いない。

 

 ……あとは僕自身の身体があれば完璧だったんだけど、いつか必ず手に入れてみせる。『陰の実力者』に妥協は許されないのだ。

 

 とりあえず、教団に対抗する為に『シャドウガーデン』も世界に散るってパターンだと思うからそんな感じでやっていこう。

 

 * * *

 

 シャドウガーデンが世界中に散ってから数ヶ月が経った。

 

 ここ最近、僕はある問題に直面していた。

 主人公の存在だ。〈ディアボロス教団〉っていう主人公が倒すべき敵の名前が出てきたのに未だに主人公は出てきてくれないのだ。

 これはまずい。

 僕が憧れた『陰の実力者』には実力を魅せつける主人公(オーディエンス)が必要なのだ。

 

 そんなわけで、僕は人間に目星をつけて主人公を探させる事にした。

 獣人は脳筋が多いし、エルフは滅多に里の外に出ないからね。どっちも主人公には不向きなタイプだ。

 アルファによると人間の重要人物は、英雄フレイヤの血を継ぐ2人の王女でそのうち1人は今年ミドガル魔剣士学園を卒業するらしい。

 

『あれ?そういえばアルファ、確かシータって今年15歳だったよね』

「そうね。分かったわ。シータをミドガル魔剣士学園に入学させましょう。彼女の腕なら1年もあれば騎士団に潜入できるでしょう。そうすればミドガル王国の、特に〈ディアボロス教団〉に関係している人間の情報が得やすくなるわ。流石ねシャドウ」

 

 あー……うん、そこまでは考えて無いんだけどね。

 

 * * *

 

「……というわけでシータ、貴女にはミドガル魔剣士学園に行ってもらうわ」

 

 アルファは次の任務をシータに伝えた。

 

「潜入任務ってわけね」

「……ああそれと、貴女が入学した2年後にはアレクシア王女が学園に通うことになるから」

 

 アルファがそこまで口にした瞬間、シータは「分かったわ」と、嬉しそうに部屋を飛び出していった。

 アルファは数秒の思考停止の後、ある結論に至った。

 

「……そういえば、彼女の弟はアレクシア王女と同い年だったわね。あの頭の回転の早さを他でも発揮してくれればいいのに」

 

 アルファはこれじゃデルタと変わらないわね。とため息をついて頭を押さえた。

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