—— アーニャside ——
「うわぁあぁぁ!」
(……)
「あに~! おきてよ~!」
(……)
おそらのうえであにのつのをぬいたら、あにがきぜつしました!
あにはあたまからどうろにおちているけれど、なぜかりょうてでつかんでいるアーニャのあしだけはつかんだままはなしません。
このままじゃ、アーニャのあたまからじめんにぶつかるます!
きのうあにのぷりんたべちゃったの、まだおこってるの!?
「あにぃぃぃ!」
(……)
おおきなこえでよびかけても、あにはおきてくれない。
かおをたたいても、かみをひっぱっても。あにはおきてくれない。
「うえぇぇぇん!」
(……)
こわくてアーニャはないてしまいます。それもあにはおきてくれません。
あになら、こんなときはどうするのでしょうか。
ちょうのうりょくをつかってパッとかいけつしてしまうのでしょうか。
でも、アーニャにはテレパシーしかありません。
アーニャにできるのは、たにんのこころのこえをきくことだけです。
(だれか、あにをおこすほうほうをおしえて!)
『……』
(……)
たくさんのこえがいっしょにきこえてきて、なにをいっているのかわからない。というか、アーニャのこころのこえは、あにしかきこえないんだった。
もう、あーにゃとあにはたすからないのかな……。
——そうおもったときでした。
『……ツノを元に戻してごらん?』
「……ふぇ?」
たくさんのこころのこえのなかに、ひとつだけちゃんときこえるこえをみつけました。
(……ツノ?)
『……そう。楠雄のツノを元の場所に挿してごらん』
あにのツノをもとのばしょにもどす。
こころのこえはそういってきました。
……でも、あれ? どうしておはなしできているの?
そんなことあにとしかできないはずなのに。
『そんなこと考えるより、早く挿しちゃいな? 二人とも死んじゃうよ?』
(!)
したをみると、どうろがさっきよりちかくなっています。
アーニャはいそいでツノをあにのあたまにさしました。
——スチャっ!
(……はっ!?)
「! あに!」
ツノをもどすと、あにはすぐにめをさましました。
けれど、なにがおきたのかわかっていなさそうです。
(なんだ、なにがおきた?)
「あにのツノぬいたら、あにきぜつした!」
(!? 制御装置を抜いたのか!?)
「うい! はやくどこかにテレポートして!」
(は?)
「そらからおちてるから!」
「え? ……わっ!?」
あにはねおきであたまがまわっていなかったのか、アーニャたちがどうなっているのかわかっていなかったみたい。したをみてきづいたのか、あにはあわててテレポートをしました。
(——テレポート!)
……しかし、それでももんだいはかいけつしなかったのだ!
——シュン!
(ん?)
「う?」
てんいしたさきでは……おひさまさんさん。
ひろいすなはまに、しろいなみがぶわぁあ〜。
「……ここ、どこ?」
(……うみ、だな)
「ココミンは?」
(いない、な)
「どこにテレポートしとるん!?」
はい、ということでアーニャたちは、ビーチにきてしまいましたとさ。
—— 楠雄side ——
「おい! ビーチにきてどうすんだ! およぐのか!?」
(仕方ないだろ、制御装置が外れた後は、しばらく超能力の制御がおぼつかないんだ。そして泳がない)
アーニャに制御装置を抜かれた僕は気絶してしまったらしい。運良くアーニャが元に戻してくれたから助かったが、しばらくの間は体の制御は効きそうにない。テレポートも見知らぬビーチに来てしまったくらいだしな。
心の声も聞こえてこないし、周囲には誰もいないだろう。とりあえず、ここがどこかを早く確認しないと。
(おいアーニャ。とりあえず……)
——そうアーニャに声をかけようとしたその時。
「やぁ!」
(!?)
「えっ!?」
心の声は何も聞こえなかったのに、突然背後から声が聞こえ、振り返るとそこには一人の男がいた。
白緑色の髪、そして頭に僕の制御装置と同じようなデザインのカチューシャをつけている。……似ている。顔つきも完全にあいつに……兄にそっくりである。
「やぁ楠雄、元気だったかい?」
えっ? やはり本人? あいつなら僕と同じように異世界に来ていても不思議ではない。
(兄!?)
「えっ!? あにのあに!?」
「あ、ちがうよ。僕は君の兄、空助じゃない。クゥースケ・サイキィさ」
(は?)
発音はほぼ一緒だな、文字ボケはやめろ。
とにかく、こいつもそっくりさんだったようだ。
……にしては同じすぎな気もするけど、気のせいだろうか。
(なぜ空助を知っている)
「君の兄、空助とは知り合いだよ。たまたま同じ時期に異世界と繋がる通信機を発明してね〜」
そんなものすごいものをさらっと発明するな。
「そして偶然通信が繋がってさ、そこから僕達は通信友達、略して〝ツシフレ〟なんだ」
ツシフレてなんだよ。
……いや待てよ? そんな装置があるということは、まさか僕がこの世界に来たのは兄とこいつの仕業か!?
「あ、違うよ? それは僕らの仕業じゃない」
(! なんで僕のモノローグが聞こえてるんだ?)
「正確には心の声を聞いたわけじゃない。空助に表情から楠雄……じゃなくてクスオの思考パターン予測する装置の作り方を教わってね、そのおかげさっ」
変なもんを異世界の人に教えてんじゃねぇよ。
「君が突然いなくなったから、必死で居場所を探そうとした結果の発明らしい。いいお兄さんを持ったね」
……なんか嫌だなそれ。それに兄とこいつが僕がこの世界に来たことと無関係とも思えないんだがな。テレポートした先でいきなり話しかけてくるのも怪しすぎる。
僕が訝しみながらクゥースケを見ていると、アーニャが服の裾を引っ張ってきた。
——くいくいっ。
(! どうしたアーニャ)
「あに、はやくココミンをたすけにいかないと」
(あっ)
しまった。突然現れたこいつのことでココミンのことを失念していた。もうすでに誘拐犯のアジトに連れ去られているかもしれないし、急がないとまずいな。しかし今の僕は超能力が正常に機能しないし、どうやって助けに行ったものか……。
「それなら僕に任せてよ! ココミン・テルシーの居場所ならすぐに分かるから、そこまで連れて行ってあげるよ!」
「えっ!?」
(……なんでわかるんだよ)
「僕はTHE・ココミィのリーダーだからね! ココミンの居場所ならいつだって分かるのさぁ!」
クゥースケは懐から何やら怪しい機械を取り出して、ボタンをポチポチと操作しながらドヤ顔を浮かべた。
というか、ココミンに住所バレたのもお前のせいだな。
もはやすべての元凶だろ。
……というか、どうして手助けしようとするんだ。
(どうやってココミンの居場所まで連れていくつもりだ)
「いい質問だね。……こうやってだよ!」
——ピッ!
……。
機械を操作したようだが、何も起こらない。
「……」
(……)
……。
……バタタタタ!
「!」
(!)
少しの静寂の後、周囲にけたたましいプロペラが回転する風切り音が鳴り響いた。その音から少し遅れて、僕達の頭上にヘリコプターが接近する。
頭上のヘリを指差し、クゥースケが口を開く。
「僕の自家用ヘリコプターだよ。さぁ、これに乗ってココミンを助けに行こうか!」
「おおお! あにめでみたやつだ!」
(……)
乗りたくはないが他に方法もないし、僕達はクゥースケの自家用ヘリコプターに乗り込んだ。
—— 上空にて ——
ヘリコプターは自動運転らしく、パイロットはいなかった。
「うぉぉぉぉぉ! たかーい!」
「誘拐犯のアジトには、10分くらいで着く。それまでは景色でも楽しんでおくといいよ」
初めて乗ったヘリコプターに興奮しているのだろう。アーニャは窓からの眺めに夢中になっている。それに対して僕はクゥースケから視線を外さないようにしていた。
兄のそっくりさんであり、突然現れて救いの手を差し伸べてきたこの男。
とにかく色々と腑に落ちないことが多い。
今は超能力の制御もおぼつかないし、心の声も頭のカチューシャに似たアクセサリーの影響で聞き取れないし、用心しておかないとな。
「ん?」
(……)
僕の視線に気づいたのか、クゥースケが僕を見てニコリと微笑む。笑い方もあいつそっくりだ。
「うーん、僕はどうも不審がられているみたいだね」
(……当然だ。怪しすぎるからな)
「はははっ。まぁそうだよね。でも、信じて欲しいなぁ。僕が手助けしているのはココミンのファンとしての使命、そして友人の為の善意だよ」
(なら、どうして僕がテレポートした先に現れた。あそこに来ることをなんらかの手段で知っていて、待ち伏せしていたんじゃないのか)
「そうだね。でも、それは通信で空助に頼まれたからだよ。弟がピンチだから、先回りして助けてやってくれないかって」
制御が効かない超能力の効果まで、兄には計算できてしまうと言うのか。全く面倒なことだ。
(……)
「……ま、僕を信じられなくても無理はないよね。それでも、君がこの世界に来たのは僕の仕業でも空助の計画でもないのは重ねて言っておくよ」
クゥースケはそう言うと、僕から視線を外して景色を見ているアーニャに視線を移してニコニコと笑い始めた。
—— 10分後 ——
10分ほどヘリで移動すると、森の中に小さな廃工場らしきものが見えてきた。
「ほら、あれがココミンを誘拐した奴らのアジトだよ」
「おお、わるいひとたちのいるところ!」
(あそこにココミンもいるんだな?)
「うん。……でさ、残念なんだけど、この辺には見ての通り森でヘリが着陸できるようなところがないんだ。だから君達にはここで降りてもらうよ」
(は!?)
「大丈夫! そろそろ超能力の制御も安定してきているだろうし、途中で空中浮遊すればいいのさ!」
簡単に言うな。10分やそこらで元に戻れるわけがないだろう。
(いや、さすがにまだ)
「きっと大丈夫だよ。さぁ、じゃあいってらっしゃーい☆」
(っ、アーニャ!)
「うい?」
危険を悟った僕は、窓のそとを見るアーニャの手を掴んで自分の側に引き寄せた。
——そしてその瞬間。
——パカっ!
……ひゅうううう〜。
「うわぁぁぁぁ〜!」
(くっ! あいつはやはり敵だったか! )
ヘリコプターには僕達が座っていた座席のみに仕掛けがしてあったのだろう。その仕掛けに嵌まり、僕達は空中へと投げ出された。本日二度目のスカイダイビングである。
「わぁぁぁあ〜! あに〜! こんどこそおわりぃ!?」
(落ち着け! とにかく落ち着け!)
今度は制御装置を引き抜かれないように、アーニャは胸に抱えているが、これからどうするかが問題だ。空中で静止しようにも、やはり超能力の制御がうまくいかずに止まらない。となると残る選択肢は、このまま地面に着地するか、テレポートするしかないわけだ。
着地した場合、今の僕では地面を抉って地中奥のマントルまで破壊しかねない。……この世界にマントルがあればだが。
テレポートをした場合は、また見知らぬ土地に行くと思われる。この二択ならテレポートしか選べないのだが……。
僕が音速で思考をしていると、アーニャが僕の胸を叩いた。
「あに! いまなら、せいぎょそうちは〝むっつ〟ある!」
(は? 何言ってんだ、僕には二つしかないぞ)
「あににふたつ、アーニャにふたつ。あわせてむっつ!」
(四つな。計算間違えてるぞ……いや、でも待てよ?)
確かに、今のままでは超能力を制御できないが、アーニャに作ったツノ、もとい制御装置二つが加わり四つになれば、いつものように能力を制御できるかもしれない!
そしたらテレポートしなくとも空中浮遊で止まれるはずだ!
(よし、アーニャ。お前のツノを貸してくれ)
「うい!」
アーニャはそう言うと、頭からツノを外した。そして取ったツノを手を伸ばして僕の頭に乗せた。
「しゃきーん! あに、よんほんツノばーじょん!」
(よし! これで制御できてくれ! 空中浮遊!)
僕は祈るように、空中浮遊を試みた。
——そして、その結果は……。
「おお! アーニャたちとまった!」
(ふぅ……なんとかなったか)
予想通り、超能力の制御に成功し空中で静止することに成功した。
とりあえずはよかった。あとはココミンを助けるだけだな。
……そう思った瞬間、頭上にヘリコプターの風切り音と共に、拡声されたクゥースケの声が響き渡った。
『誘拐犯のどもめ! お前らは完全に包囲されている! 今すぐ外に出てこい!』
なっ! 何をやっているんだあいつは!?
クゥースケの意味不明な行動により、廃工場の中から慌ただしく数名の武装した男達が現れる。そいつらに囲まれるように、ロープで縛られたココミンの姿も見えた。
僕は急いで透明化を図ったが間に合わず、誘拐犯達に空中に浮かんだ姿を目撃されてしまった。
「な、なんだテメェら! どこから現れやがった!?」
「動くと撃つぞ!?」
「え? クスオとアーニャちゃん?」
……はぁ。なんでこうなるんだよ。
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