アーニャのあにっ!?    作:コーラを愛する弁当屋さん

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お久しぶりです!


mission11 へるぷ! へるぷ!

 

「何者だテメェら! 降りてきやがれ!」

 

 兄のそっくりさんのせいで、誘拐犯に見つかってしまった。

 しかも空中浮遊している状態でだ。

 

「う、浮いてる?」

 

 ココミンにも見られてしまった。この後の処理を考えると頭が痛い。

 

 目を押さえていると、上空からイラつく笑い声が心の声として聞こえてきた。

 

「あはははっ、楽しくなってきたねぇ」

 

 クゥースケが楽しそうに笑っているようだ。あの野郎め、絶対に罰を与えてやるからな。

 

 なんて考えているのを察したのか、クゥースケの乗っているヘリコプターが急に旋回を始めた。

 

「なんか危険を感じたし、僕はここで失礼させてもらうね」

(は、待て。帰りはどうすればいいんだ)

「じゃあね〜☆」

(おい、待て!)

 

 旋回したヘリコプターは、急激にスピードを上げてどこかへ飛んでいってしまった。

 

 

 くそ、あいつの力を借りようとした僕が間抜けだった。……今すぐ追いかけてぶっ飛ばしてやりたいところだが、とりあえずはココミンを助け出すことが先決だ。見られてしまった以上、遠慮することもあるまい。超能力を存分に使わせてもらおう。

 

「あに、ど、どうする?」

(ふむ。とりあえずはココミンを助け出す)

「う、うい」

 

 まずはどうするかな。ココミンのところまで高速で移動し、彼女を抱えてもう一度空中浮遊をするか?

 

 それが一番手取り早いだろうか。

 

 ——ん? なんだ? 誘拐犯たちが何やら騒ぎ出したぞ。

 

「おい、あいつがボスの言っていた奴じゃないか?」

「空に浮いてるし、そうだろうな」

「なら、フェーズ2に移るぞ。おいみんな、アジトに戻れ!」

 

 誘拐犯たちは、突然ココミンを連れてアジトの中にダッシュで戻っていった。

 

「あに、いっちゃったよ」

(チャンスだったのにな。まぁいいさ)

 

 それなら、当初の作戦通りに遂行するだけだ。

 

 しかし僕はこの後、すぐにココミンを奪って逃げればよかったと後悔することになる。

 

 

 ψ    ψ   ψ

 

 

「ここからはいる?」

(そうだ)

 

 空中から着陸した僕達は、先程誘拐犯達が使っていた出入り口にやってきた。

 

 

「かっこいいドア!」

 

出入り口を閉ざしていた大きな鉄製の扉を見て、アーニャが目を輝かせる。

 

(かなり新しいな。建物の老朽化具合とミスマッチすぎる。)

 

 あと、サイズ的にも開閉にかなりの力が必要だろうな。

 

 誘拐犯達は簡単に開いていたみたいだが、おそらく遠隔で開閉を操作できる装置みたいなのが内側にでも付いているのだろう。もちろん僕達が入りたいからといって、ご丁寧に開けてくれるわけもない。鉄壁の防衛策といったところか。

 

 まぁ僕にとっては発泡スチロールと変わらないけどな。

 

「あに、どうやってはいる?」

(穴を開ける)

 

 殴って風穴を開けてやればいい。簡単な話である。誘拐犯たちの心の声も聞こえないし、入ってすぐに攻撃されることもないだろう。

 

(心の声は聞こえない。今なら安全だろう。行くぞアーニャ)

「え? まって、あに。アーニャにはきこえ——」

 

 アーニャが何かを言いかけていたが、僕はすでにモーションに入っていたのでかまわず扉を殴りつける。

 

 ——ドゴン!

 

 結果、綺麗な円形の穴が鉄の扉にできた。 

 

「く、くぎぱんち!」

(違う。雑誌は一緒だが違う)

 

 アーニャのメタい発言をさらりと流し、僕は建物の中に足を一歩踏み入れる。

 

 ……その瞬間。アーニャが大きな声で叫んだ。

 

「あに! うたれてる!」

(は?)

 

 ——ズガン!

 

(なっ!?)

 

 アーニャの言葉に足を止めた僕。その直後。僕のいる位置の数センチ先に、銃弾が打ち込まれた。

 

「おお〜、かんいっぱつ!」

 

 アーニャが叫ばなければ、僕はぎりぎりまで銃撃されていることに気が付かなかったと思う。

 

 なぜだ? テレパシーでも気配察知でも、何一つ引っ掛からなかったぞ。そんなことありえないはずだ。

 

 待て。それなのに、どうしてアーニャは銃撃されていることに気付いたんだ?

 

(おいアーニャ。どうして。打たれていることがわかった?)

「はいってくるときから、ゆうかいはんたちのこころのこえがきこえてたから」

(は? 入ってきた時から?)

「うい! だからうたれたのもわかった」

 

 どういうことだ? アーニャにはずっと心の声が聞こえていたというのか?

 ならどうして僕には聞こえなかったんだ。

 

 制御装置が外れた影響か?

 いや、もう制御装置は戻したし、さっきもちゃんと空中浮遊をコントロールできていた。

 

 それに外れたのが影響なら、むしろ聞こえていないとおかしい。制御装置が外れれば、僕の超能力は飛躍的にパワーアップしてしまうのだ。弱体化することはない。

 

 アーニャも簡易制御装置を付けた状態なら、テレパシー能力は僕よりもやや弱くなるはず——あっ。

 

「ん? どうしたあに」

(いや、なんでもない)

 

 改めてアーニャを見て思い出した。今のアーニャの頭には〝あれ〟がない。そう、アーニャのツノこと、簡易制御装置がないのだ。

 

 僕の超能力暴走を抑える為に、アーニャの角は今、僕の制御装置に被せられていた。つまり、今のアーニャの超能力は無制限状態。逆に言えば僕は2倍の制限をかけられた状態になる。2倍に制限しないとまともに扱えないなんて、僕の超能力も困ったもんだ。

 

 ならば、アーニャに制御装置を返せば、僕にも誘拐犯達の心の声が聞こえるかもしれない。

 

(よし、やってみるか)

 

 早速、僕はアーニャのツノだけを頭から外してみた。

 

 ……あれ、変わらず何も聞こえない。

 

 おかしいな。今度こそテレパシーの範囲外にいるということか?

 いやいや。僕は今超能力を半分しか制御していないんだぞ。まだ暴走状態だろうし、それだと地球外に出ないと心の声は聞こえてくる。というか、近隣の街の声とかも聞こえてこないとおかしい。それなのに、今はアーニャの声以外完全なる無音。絶対におかしい。

 

(おいアーニャ)

「なあに?」

(まだ心の声は聞こえているか?)

「うい」

 

 アーニャには変わらず聞こえているらしい。どういうことだ?

 

(……)

 

 少し考えてみると、とある可能性が頭に思い浮かんだ。

 

(なら、これならどうだ?)

 

 思いついた可能性を検証するべく、僕はアーニャのツノをお団子ヘアに戻した。

 

「あっ。きこえなくなった!」

(……やはりか)

 

 どうやら僕の疑惑は辺りだったらしい。僕は制御装置ありでもなしでもテレパシーがつかえないのに対し、アーニャはツノなしならテレパシーが使える。

 

 これらが意味することはただ一つ。おそらく、この建物近辺エリアを対象とするテレパスキャンセラーがどこかにあるのだろう。

 

 テレパスキャンセラー。空助やクゥースケが頭につけているアレのことだ。

 

 周囲の空間に効果をもたらすような設置型タイプを作ったのかもしれない。

 

 設置したのは犯人は確実にクゥースケだ。もしかしたら、ココミンの誘拐自体もあいつの企みなのかもしれない。

 

 制御なしの状態でアーニャだけがテレパシーを使えるのは、テレパスキャンセラーは僕の超能力を元に作られているからだ。別人の超能力者には効果がないのだろう。逆にアーニャのツノは僕の制御装置を元に設計している為、付けているとテレパスキャンセラーの効果対象にされてしまうのだと思う。

 

 これらの考えをまとめると、僕がこれから取れる最善の方法はこれしかない。

 

(アーニャ、お前のツノ、もうしばらく借りるぞ)

「うい」

 

 

 まず、アーニャのツノをもう一度僕の制御装置の上に乗せる。

 そして次に。

 

 ——ペリペリペリ。

 

「あに、とつぜんのじしょーこうい!?」

(違う。極薄の透明な手袋を剥がしているだけだ。というかその言葉どこで覚えたんだよ)

 

 アーニャには言っていなかったが、僕は普段から極薄の透明な手袋を付けている。それはあの超能力を発動させない様にするためだ。

 

 僕は手で直に自分以外の存在に触れると、ある能力が発動する。

 

 

『サイコメトリ—』

 

手で触れたものの残留思念を読み取ることができる。

読み取るものによっては相当な精神的ダメージを負う。

人間に触れると、その人物の語感で感じていることがストリーミング再生のようにわかる。

 

 素手の状態で、僕はアーニャは抱き上げた。

 

「ぬ!? あそんでくれるの?」

(違う。こうすることでお前が聞いている心の声を僕も聞くことができるんだよ)

「おお、いしんでんしん!」

 

 嬉しそうなアーニャと対照的に、僕はすでに気分が悪くなってきた。抱えた瞬間から、他人の心の声が滝の様に流れてきたのだから当然だ。

 

 この建物の周辺は森だけだったのに、こんなにたくさんの心の声が聞こえるとは。アーニャのテレパシーもかなり強力なことがよくわかる。そしてこんな沢山の心の声から、建物内の心の声だけを聞き分けることができるなんて。アーニャの超能力に対するコントロール能力も、出会った当初より成長しているみたいだな。

 

 とにかく、これで周囲の様子を探りながら進むことができるはずだ。さっさと誘拐犯達を捕まえて、ココミンを助け出すとしよう。

 

(よし、行くぞアーニャ)

「うい!」

 

 まずは心の声から、誘拐犯達の居場所に目星を付ける。それから千里眼を使って居場所を特定だ。

 

「あ、またあにがへんなかおしてる」

(千里眼だ)

 

 誘拐犯達を千里眼で捉えたところ、いろいろなことがわかった。この建物内は監視カメラが至る所に設置されているらしい。そして予想通りテレパスキャンセラーらしきものが設置されていることも確認した。

 

 設置されている位置や角度から考えるに、監視カメラを避けて進むのは厳しそうだ。ならば取れる手段は一つ。透明化して進むしかない。念の為に一度透明化して監視カメラに姿を晒してみたが、気づかれている様子はなかった。透明化の対策はされていないのだろう。

 

(今から透明化して進むぞ。大人しくしてろよ)

「うい!」

 

 僕はアーニャを抱えたまま透明化を発動した。

 

 透明化の持続時間は10分間のみ。

 透明化が解けてしまうまでに、全てを片付けるぞ。

 

 

 

 ψ    ψ   ψ

 

 

 

 僕は透明化したままアーニャと共に建物の中を進んでいく。

 そして散らばった誘拐犯の元まで辿り着いた僕は、虫の知らせで監視カメラの死角へと誘い込み、燃堂の歌声をテレパシーで聴かせることで一人ずつ気絶させていく。

 

 ……燃堂って、体のいたるところに凶器を持っているよな。

 

(たぶん、ネンディーの歌声も凶器なんだろうな)

「うい、こんどきかせてもらお〜」

(やめておけ。死ぬぞ)

「しぬ!?」

 

 変な期待をしているアーニャを宥めながら、僕はとある部屋の入り口にやってきた。

 

 この部屋が、監視カメラの映像などを確認できる場所。いうなればアジトの心臓部といったところだろうか。厳重な電動の扉が設置されている。

 

「ココミン、ここ?」

(みたいだな。心の声が聞こえるだろ)

「うい」

 

 中から聞こえてくる心の声からして、ココミンもこの部屋にいるようだ。

 

 

 さて、どうやって進入するか。さすがにこの扉だと気づかれずに進入することはできないだろう。となると、入った瞬間に制圧するしかない。

 

(行くぞアーニャ)

「うい」

 

 ——ドゴーン!

 

「!」

「なんだぁ!?」

 

 サイコキネシスで扉を壊し、部屋の中に進入する。当然気づかれるが、行動を起こされる前にテレパシーで燃堂の歌声を強制デリバリー。

 

「がわぁぁぁ!?」

「たすけてぇぇ!?」

 

 断末魔の叫び声を上げながら、残りの誘拐犯達は全員意識を失った。やはり恐るべし、燃堂の歌声。

 

 これで静かになった部屋の中に残っているのは、声を震わせている女の子一人。ココミンである。

 

「な、なんなの? 急に叫んだと思ったら倒れた?」

 

 まだ透明化したままなので、ココミンには僕達が見えていない。急に誘拐犯達が叫び出して倒れたものだから、困惑するのも当然か。

 

 僕はアーニャを床に降ろし、透明化を解除した。

 

「えっ!? 急にクスオとアーニャちゃんが出てきた!?」

 

 目を見開いて僕達を交互にみるココミン。驚きすぎて漫画みたいな表情になってるぞ。

 

(落ち着いてくれ、君を助けにきた)

「どこから湧いて出たの!?」

(虫か。だから落ち着いて)

「というか、さっきあんた達空中に浮いてたわよね!? 羽も生えてるの!?」

(羽虫でもない。いいから落ち着け)

「私はGにデートしてあげるとか言っちゃってたのぉん!?」

 

 ついに言いやがったな。

 僕はGが世界で一番嫌いなんだ。やめてくれよ。

 

 しかし困った。パニックになってしまっていて、落ち着かせようもない。こうなったら眠らせて外に連れ出すしかないか?

 

 テレパシーで子守唄を聴かせようとしていると、急にアーニャがココミンの足に抱きついた。

 

「なに!?」

「……じょーぶ」

(アーニャ?)

 

 アーニャは抱きついたまま、何かを呟いている。

 

「だいじょーぶ」

「だ、大丈夫?」

「うい。もうわるいひといない。ココミンはもうだいじょーぶ」

「えっ。——あっ」

 

 ココミンは周囲を見回して、倒れている誘拐犯達の姿を確認した。

 

「……本当だ」

「うい。だからココミン。いっしょにかえろ?」

「……そうね。一緒に帰りましょう!」

 

 ココミンは完全に落ち着いたらしい。

 偉い、グッジョブだぞアーニャ。

 

「……」

(……コクリ)

「!」

 

 アーニャがチラリと視線を向けてきたので、頷いて見せた。

 それを見ていたアーニャは嬉しそうに笑った。

 

(よし、じゃあすぐにこんなところからは出るぞ)

「そ、そうね。でもクスオ?」

(なんだ)

「さっきあなた達が宙に浮いてた理由は後で説明してもらうわよ」

 

 冷静になっても、さすがに宙に浮いていたことは無かったことにしてもらえなかったようだ。まぁいい。どうせ後で記憶置換しないといけないんだ。口だけの約束をしておけばいいのだ。

 

(……わかったよ)

「よろしい! じゃあ行くわよ!」

 

 ココミンを加えた僕達三人は、まっすぐ出入り口に向かい、そのまま外へと出た。

 

 あとはココミンを家まで送り届ければ救助は完了だ。

 

 ——しかし、外に出た僕達を待ち受けていたのは。

 

 空中で静止した数台のヘリコプターと、建物を囲む様に配置された大勢の警官……そして僕達に向けられた無数の銃口だった。

 

(なっ!? 警察にヘリだと? そんなものに囲まれていたなんて、どうして今まで気づかなかったんだ!?)

 

 アーニャをサイコメトリーしたことで、僕もテレパスキャンセラーの効果は回避したはずなのに!

 

 固まってしまった僕達に、二人の警官と一人の男の声が投げつけられる。

 

「そこの少年! 動くな、手をあげろ!」

「あの少年で間違いないですか?」

「は、はい! 僕は見たんです! あの子がココミンとあの女の子を誘拐したんです!」

(!)

 

 どうやら、僕はココミンを誘拐した犯人だと思われているらしい。

 

 僕を犯人だと言った男は、僕を見てニンマリと笑う。

 

 その男とはもちろん、兄のそっくりさん……クゥースケである。

 




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