アーニャのあにっ!?    作:コーラを愛する弁当屋さん

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mission 12 うおっぷ! どえっむ!

 

 ココミンを助け出し、誘拐犯のアジトから脱出した僕達。しかし、外で待ち受けていたのは大勢の警察とヘリコプター。そして兄のそっくりさんのクゥースケだった。

 

「は、はい! 僕は見たんです! あの子がココミンとあの女の子を誘拐したんです!」

「わかりました。危険かもしれないので、下がっていてください」

 

 警官の一人がクゥースケを後ろに下がらせる。その後はクゥースケを守るみたいに奴の前に進み出る。

 

「そこの子供! 今すぐに女の子達を解放して投降しなさい! 少しでも動いたら、痛い思いをすることになるぞ!」

 

 子供向けの言い方に変えているが、要はその構えている拳銃で撃つぞって言ってるんだろ。

 

「あ、あにぃ」

「く、クスオ……」

 

 アーニャとココミンが僕の顔を心配そうに覗き込む。気持ちはわかるが、じっとしていてくれ。そうじゃないと僕の状況が悪くなる。

 

「ココ……いや君達! そいつからすぐに離れなさい!」

「ココミンに……ごほん! 彼女達に指一本でも触れるんじゃないぞ!」

 

 ほらな。……というか、警官の中にココミンファンが混ざっているな。だから子供相手にこんなに高圧的なのか?

 

「君達、早くこっちに来なさい!」

(……)

 

 さて、どうしたものか。超能力を使ってここから逃げ出すか?

 それ自体は簡単だろう。でも問題が2つある。一つは衆人環視の中だということ。どうせ記憶置換を行うつもりではあるが、この大人数に対して行うのは大変だろう。

 

 そしてもう一つは、この場にクゥースケがいるということである。

 

 テレパスキャンセラーを警察に使わせているあいつのことだ。きっと他にも僕対策の術を用意しているに違いない。

 

 ここはとりあえず、二人を警察の方へ向かわせるのが無難か? 

 

「……」

「……」

(……コクリ)

 

 いまだ僕の顔を見たままの二人に、僕は頷いてみせた。

 意図が伝わったのか、ココミンがアーニャを連れて警官達の方へ歩いて行く。

 

 これで僕一人が警官に囲まれる形になった。

 

「この子達の保護を優先する! 全員、私が戻るまであの少年から目を離すなよ!」

『ハッ!』

 

 アーニャ達は立場が上の警官にどこかに連れて行かれた。

 ここには僕とクゥースケ。あと僕を拳銃で狙っている警官達しかいない。

 

 さて、どうするか。僕の超能力に対する対策があるのかも分からないからな。一つ一つ相手の反応を伺いながら試して行くしかないか……ん?

 

 警官達を回し見しながら動き方を考えていると、クゥースケのところで視線が止まる。なぜかって、あいつがテレパスキャンセラーを外している姿が見えたからだ。

 

「……(あ〜、てすてす、テステス)」

(は?)

「(もう聞こえてるよね、楠雄)」

 

 な、なんだ? テレパシーが通る様になった途端、心の声でこっちに話しかけてきたぞ。

 

(……)

「(あ、その顔、聞こえているみたいだね。じゃあ問題ないし、一方的に話すね)」

 

 奴は僕の表情から思考を予測する装置を持っている。

 それで僕の反応を見ている様だ。

 

「(まず、君が知りたがっているであろう、楠雄が警察に囲まれていることに気づかなかった理由から言うね)」

(!)

 

 そ、それはぜひとも知りたい。

 

「(それはね、警官達が頭につけている装置のおかげなんだ)」

 

 テレパスキャンセラーのことか?

 いや、でも僕はアーニャにサイコメトリーをしたことで、テレパスキャンセラーの効果を避けたはずだ。

 

「(あ、違うんだ。僕のはそうだけど、彼らのつけている装置はテレパスキャンセラーじゃない)」

(は?)

 

 テレパスキャンセラーじゃないだと?

 それならどうして心の声が聞こえないんだ。

 

「(その装置の名前は……ネンディ チェンジャー)」

(!?)

 

 ね、燃堂チェンジャーだと!?

 

「(違う違う。ネンディ チェンジャーね)」

 

 あ、そっか。いやどっちでもいいわ。

 

(ネンディ チェンジャーってなんだよ)

「(この装置をつけた者の脳波を、リッキー・ネンディの脳波そっくりに変えてしまう装置だよ)」

(恐ろしすぎる装置を作ってるんじゃない)

 

 なんて恐ろしい装置だ。その装置を付けたものはもれなくネンディーBとかネンディーCと化すってことだろ?

 

 そんな世界嫌すぎる。……いや待てよ、今気にすべきはそこじゃないな。考えてみれば、ネンディと同じ脳波になるってことは、誰のテレパシーでも心の声を聞くことができないってことじゃないか?

 

 そうか……だからアーニャでも警察に包囲されていることに気づけなかったんだ。それも当然だ、燃堂やネンディは基本的になにも思考してないんだから。誰だって思考してないものを読み取ることなんてできない。

 

(どうやってそんなものを)

「(こっそりネンディ君の脳波を記録させてもらってね。それを元に作ったんだ)」

 

 絶対何かの犯罪を冒してるだろ。

 

 僕のその疑問に答えはなく、クゥースケは話を進める。

 

「(これでテレパシーが機能しなかった理由はわかっただろ?)」

(ああ)

「(じゃあ次に、どうして僕がこんなことをしたのかって動機についてなんだけど)」

 

 動機か……兄のそっくりさんのこいつのことだ。

 どうせ何がなんでも僕に勝ちたいとか、負けて悦に浸りたいとかそんなとこだろ。

 

「(君の変態兄貴と一緒にしないで? 僕のはもっと高尚な理由だ)」

(高尚?)

「(その通り。……でだ。君はこの前、ココミンのライヴに来ていたね?)」

 

 ココミンのライヴ?

 ああ、確かに行ったな。そういえば、この騒動はあのライヴが発端と言えるかもしれない。

 

「(そうだ。全てはあのライヴが発端なんだ。あの日お前は、ココミンにステージから声をかけられていたね?)」

 

 そうだったな。急にデートしてあげる、とか意味わからんこと言われたっけ。

 

「(……それだよ)」

(え?)

 

 急にクゥースケの声に抑揚がなくなった。

 

「(……)」

(……)

 

 なぜだろう、クゥースケの周りに禍々しいオーラみたいなのが見える気がする。

 ついでに背景に「ゴゴゴ」ってテキストが表示されてそう。

 

「(それがこの騒動を起こした動機だ)」

(は?)

 

 それが理由ってどういうことだよ。

 

 

「(君……いや貴様は、にわかのくせにココミン、いやココミン様からデートに誘われるという一億うおっぷが必然のご褒美を受けたにも関わらず、そのお誘いを平然と拒否しやがったんだっ! 万死に、万死に値するぅ!」

(は?)

 

 急に声に怒気がこもりはじめ、さらに語気も強まって行くクゥースケ。

 

「(それだけじゃないぞ! 貴様は家にココミン様が来てくれたという、一京うおっぷはくだらない奇跡を引き当てたのにも関わらず、またも平然と拒否した! 万死に、万死に値するぅ!)」

 

 ……えっと、つまり。プライベートのココミンと会ってたことが許せないってことか?

 

「(ちっ、がーう!)」

 

 違うんだ。

 

(じゃあ何を怒っているんだよ)

「(まだわからないのか!? 貴様はココミン様のお願いを拒否してんだよ!)」

 

 

 ココミンからのお誘いを受け入れないのが信じられないってこと?

 

「(拒否するのはココミンの担当! 僕達ファンは拒否された上に罵倒される担当だろうが! 履き違えんなよこのゴミが!)」

(えっ、怒ってるのそこなの?)

 

 いや、取るべき役割が逆転してたことを怒ってるのかよ。

 

「(あとなぁ! 僕はTHE・ココミィの会員No.1なんだぞ! そのご褒美は本来僕が享受して、でもデートの直前でやっぱり無理って拒否されちゃって、ココミンの足元で泣きながらうおっぷするべきなんだよぉ!)」

(いや、知らねぇよ)

 

 こいつ、ど変態かよ。見た目は兄に似てるが、中身はほとんど「照橋誠」じゃねぇか。

 いや、兄も似た様なもんか。あいつは僕に負けて悦に浸りたい奴だからな。

 

「(そして貴様の粛清がTHE・ココミィの会議で決定した日の夜、僕は異世界と交信する装置を作り上げた!)」

(なんの日になんの発明してんだよ)

「(僕は実際に装置で交信相手を探し始めた。その時に出会ったんだ……お前の兄貴になぁ!)」

(そういえば確か、同じ時期に同じ発明をしたことで出会ったとか言ってもんな)

「(僕達は意気投合したよぉ。当然だろ!? お互いに相手は違うが、相手に完膚なきまでに敗北したいという熱い想いは同じだったんだからなぁ!?)」

 

 だから知らねぇよ。

 ドM同士で共鳴してんじゃない。

 

「(会話を交わす中で僕は、空助の弟と僕の粛清対象が同一人物だと気づいた。だからあいつの貴様への執着心を利用させてもらったんだぁ! 貴様を元の世界に戻す手助けをするという最もらしい理由を付けて、貴様に対抗するための装置の作り方のアイデアをもらったりしてなぁ!)」

(……なるほど、それでこの騒動を思いついたってわけか)

「(そうだ! 僕は貴様を粛清できる、それに加えて推しを悪人から救った英雄にもなれる! それだけの功績を上げれば、THE・ココミィの会員No.1の座は未来永劫僕のものになるはずさ!)」

(……くだらないな)

 

 

 全くもってくだらない。そんなショーのために、僕はわざわざココミンを助けに来たというのか。

 

(……お前こそ、万死に値するぞ)

 

  僕の貴重な時間を奪った罪は重い。今すぐにその罪を償わせてやろう。——そう思って一歩進もうとしたその途端、クゥースケが手でマッタをかけてきた。

 

「(おっと動くなよ。少しでも動いたら撃たれるぞ)」

(残念だったな。僕に拳銃など効かないぞ)

「(そうらしいな。でも、拳銃が効かないことを東国オスタニア中のココミンファンに知られてもいいのか?)」

(は?)

「(言っていなかったな。実は上空を飛んでるヘリ達。あれにはテレビ局のクルーが乗っているのさ。もちろんカメラだってある。それを通して、この現場の状況は絶賛生放送中だよ!)」

(は……)

 

 はぁぁぁ!? 

 生放送中だと?

 

 つまり僕達がアジトから出てきた瞬間からずっとこの状況がテレビで流されているってことか!?

 

(ど、どうしてそんなことを)

「(ココミンは大人気アイドルだ。そんな彼女が誘拐されたとあっちゃ、メディアが放っておくわけないからな! これで僕がココミンを救ったことは東国中に知れ渡る! さらにこうすれば、貴様は無闇に超能力を使えないだろ!?)」

(ぐっ)

 

 クゥースケの言う通りだ。何人の目に晒されているのかわからない状況で、超能力なんて使えない。使おうとしたとしても、その瞬間に蜂の巣。そして蜂の巣になっても生きている僕の姿が東国中に放送される。たとえ蜂の巣を避けたとしても、僕が超能力を使えば、アーニャを監禁していた組織に必ず見つかってしまうだろう。

 

 頭の中に、アーニャの顔が浮かぶ。

 

 ……そんなことできるはずがない。

 あいつのためにも、それだけは避けないといけないんだ。

 

(……)

「(ハハハ! お前はもう、警察に捕まって、その後秘密警察によって粛清されるしか道は残っていないんだ! ざまぁみろ!)」

(……)

 

 ——僕に残された選択肢は、一つしかなかった。

 

 

 

 ψ   ψ  ψ

 

 

 

「誘拐、監禁の罪で逮捕する」

 

 ——ガチャリ。

 

 数分後、戻ってきた警官によって僕は手錠をかけられた。

 

 そのまましばらく森の中を歩かされ、森を抜けたところでパトカーへと押し込まれる。

 

 僕は、クゥースケの作戦に負けたのだ。

 




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