アーニャのあにっ!?    作:コーラを愛する弁当屋さん

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mission③ さとおやとちゅうにびょう

 

「お前らには明日、この施設を出て行ってもらうことになった」

(はい……え?)

「?」

 

 孤児院に入ってから数日が経ったある朝。管理人のサイドヘアオンリーことSHOおじさんから、朝食後にこんなことを言われた。

 

 寝耳に水だったので、驚いてしまった。ここ数日は外に出ずっぱりだったので、昼間にSHOおじさんがそんなことを考えていることに気が付けなかったのだろうか。……いや、ずっと院内にいたアーニャも知らなさそうだから、院内ではそう言う会話や思考はしなかったということなのかもしれない。

 

(あの、どうしてですか?)

「お前達を里子として受け入れてくれる家族が見つかったんだ」

(え)

「さとごん? かいじゅう?」

(……違う。少し黙ってなさい)

 

 アーニャの口を塞ぎ、僕はSHOおじさんの話に集中する。引き取り先はどんな家なのかは大事だ。

 

「よかったな。中々裕福そうな家だぞ」

(!)

 

 普通な暮らしができて、アーニャの安全が確保できるなら正直孤児院じゃなくてもいい。そうなったら戸籍や個人情報なんかは超能力でなんとかしよう。

 

 意外と悪くない話なのかもと思っていたが、そんな期待は次の瞬間に聞こえてきた心の声で消えていった。

 

(ふっ、やばそうな夫婦だったが、明らかにやばいこいつらにはお似合いだろ。さっさともらわれてくれて助かったぜ)

(……)

 

 おい、やばそうな夫婦ってなんだ。

 あと僕達のことをやばいと思ってたのか?

 

 ……いや、よく考えてみれば、勝手に物置を快適空間に改造してる子供って、管理側から見たら気味が悪いかもしれないな。悪かったなSHOおじさん。だが反省はしていない。

 

「じゃあ、晩飯までに準備しておけよ。部屋も元の状態に戻すんだぞ」

(……はい)

 

 SHOおじさんは鼻歌まじりに食堂から出ていった。その背中を睨んでいると、僕の服の袖をアーニャが引っ張った。

 

「ねぇあに。なんのはなししてた?」

(簡単に言えば、僕達は明日違う家に移ることになった)

「え! なんで?」

(僕達を家族にしたいって人達がいるらしい)

「! 家族!?」

(え? うん)

 

 家族という言葉を聞いた途端、アーニャの瞳がキラキラと輝きを放つ。

 

 そうか、こいつは家族に飢えてるんだよな。自分の家族になりたいなんて言われたら嬉しくて当然か。正直どうにか回避しようかとも思ったが、嬉しそうなこいつを見ると、断りにくい。……しょうがない。やばい夫婦ってことは黙っておこう。何かあっても、僕が守ればいい。

 

「アーニャとあにに、ちちとははできる!」

 

 あれ、パパとママとは言わないんだな。……いや、そこは触れるべきではないんだろう。

 

(うんうん。そうだな)

「あに、はやくあしたにして!」

(残念だな。そんな超能力は持ってない)

「……あに、ごみぃちゃん?」

(おい、どこで覚えた?)

「SHOおじさんがよんでたほんにでてきた。こころのこえできいた」

(そうか……)

 

 どうでもいいけど、SHOおじさんはガハママ推しだと思うぞ。

 僕? ……カマクラに決まっているだろ。

 

 

 

 

 —— 翌日の朝 ——

 

 

 

 部屋の荷物を全て廃墟に戻し、軽く掃除(超能力)をしてから食堂に向かう。食堂にはSHOの他に笑顔の男女が待っていた。どうやらこの人達が里親になってくれた人達のようだ。

 

「おう、来たか。お待たせした、こいつらがお望みの兄妹だぜ(ぐへへへ)」

「まぁ〜、要望通りの2人ね!(ぐへへへ)」

「助かるよ。お礼は弾むからな(ぐへへへ)」

「へへへっ、期待してるよ(ぐへへへ)」

(……)

 

 会話の内容から、僕達はなんらかの見返りのために里子に出されるらしい。おそらくこの夫婦の出した要望に僕達が運悪く合致してしまったのだろう。

 

 にしても、心の声が3人揃って下衆すぎる。

 

「わくわく。わくわくっ!」

 

 聞こえてくる心の声に意味はないし、現実の言葉は難しい言葉だからかアーニャは何の心配もなくワクワクしている。……いや、スパイアニメが好きなこいつにはスリリングな経験はむしろ歓迎するのかも。

 

 

「じゃあ行きましょうか、クスオ君、アーニャちゃん」

「うい!」

(……)

 

 手を差し伸べる女性の手にアーニャが飛びつく。両手を男性と女性に握られ、アーニャニコニコしながら孤児院のドアをくぐっていく。僕はその後ろをついていった。

 

 ドアを抜ける直前、後ろを振り返ってみたが、SHOおじさんに手で「しっしっ」ジャスチャーをされてしまった。元の世界に帰る前には、ぜったいこいつに仕返ししようと思った。

 

 

 

 

 

 —— ウィリアムズ家邸宅 ——

 

 

 

 車に乗って連れて行かれた場所は、小さめの街にあるお屋敷だった。割と裕福なのは本当だったようだ。まぁ、どうして裕福なのかは推して知るべしだが。

 

 移動中の心の声を聞く限り、この夫婦は身寄りのない子供達を引き取っては外国に売り捌いているらしい。要はガチガチの犯罪者である。で、今回の売り先の要望がピンク髪の10歳〜5歳くらいの兄妹だったそうで、僕達に白羽の矢が立てられたということらしい。

 

 ——さて、どう対処したものか。

 

「今日からここが君達の家だよ」

「そうよ。今から2人の名前はクスオ・ウィリアムズ。そしてアーニャ・ウィリアムズになるわ」

「あ、あーにゃ・うぃりあむず!」

「そうよ! 私達は家族になったの!」

 

 女性……もとい母がアーニャを抱っこしてくるくると回る。アーニャは嬉しそうだ。父親はその様子をにっこりしながら見ている。傍目には素敵な家族に映っているだろうが、僕にはそうは思えない。

 

 この心の声を聞いてみてくれ。

 

(ははとちち! アーニャうれしい!)

(ゲヘヘ。今のうちに懐かせておかないとね)

(あとで怖がられても面倒だからな。ゲヘヘ)

 

 ——な? 全く素敵じゃないだろ?

 

「じゃあ、家の中を案内してあげるわね」

「うい!」

「……あ! 待って!」

「? どうしたのあなた」

 

 アーニャを連れて家の中に入ろうとする母を、なぜか父が慌てて止める。どうしたのかと思えば、その理由はなんともひどいものだった。以下はとても小さい声でのひそひそ会話だ。

 

「アレを出しっぱなしだった!」

「はぁ!? 何してんのよ! こいつらに見られたらどうするの! すぐに片付けるわよ!」

「わかってるよ! お前も手伝ってくれ!」

「私はちびの相手をしないとでしょうが!」

「そんなの男のガキに任せればいいだろ! 兄妹なんだし!」

 

 ……そんな醜い会話を繰り広げた母と父は、にっこりと笑顔を貼り付けながら僕に声をかけてきた。

 

「クスオ。少し家の中を片付けてくるから、ちょっとだけ妹の面倒を見ていてくれる?」

(……うん)

「いい子ね。すぐ済むから、玄関の前から動かないでね。勝手にどこかに行っちゃダメよ」

(わかった)

 

 僕の頭を撫でると、母は父と共に家の中に入っていった。僕は撫でられた頭を手で払い、横にいるアーニャを見た。

 

(……おいアーニャ。逃げ)

「……ふっ。そんなとこにいると危ないぜ?」

(え)

「?」

 

 アーニャに逃げようと言おうとしたその瞬間。背後から見知らぬ少年に声をかけられた。なんかこっちを気にしてる奴がいるとは思っていたが、まさか話しかけてくるとは。

 

 一体どんな奴なんだと思って振り返ったのだが……っ!

 

 ——シュン!

 

「……あれ?」

(……)

「あに、ここどこ?」

(……悪い。思わずテレポートしてしまった)

 

 驚きすぎて廃墟にテレポートしてしまった。まずい。すぐに戻らねば。

 

 ——シュン!

 

「うおおおっ!?」

(……)

「……」

 

 すぐに戻ってはきたが、一瞬消えてしまったこと驚かれてしまったようだ。本当ならやばいのだが、こいつならなんとかなると思う。……なんでかって? それはこいつがあの男にそっくりだからだ。そう、あの空前絶後の中二病、漆黒の翼こと海藤瞬に。

 

「……今お前ら、一瞬消えなかったか?」

 

 もう一度よく見ても、やはり海藤にそっくりだ。制服らしきものを着ているが、こいつも手に包帯を巻いている。左手じゃなくて右手だし、色も黄色だけど。

 

(いや、気のせいですよ)

「きのせいきのせい」

 

 僕のごまかしにアーニャも乗ってくれた。しかし海藤のそっくりさんは全く聞き入れず、なぜか嬉しそうに笑い出した。

 

「ククク……ついに現れたのか。俺と同じ運命さだめを持つ男が!」

(……)

「……」

 

 声をかけられる前から感じていたが、こいつは内面まで海藤そっくりのようだ。つまりは中二病である。

 

(そんなものありません)

 

 こういう奴には関わらないが吉だが、経験上こういう奴ほど逃してくれないものだ。

 

「見え見えの嘘をつくな。お前も俺と同じなのだろう?」

 

 何が? 僕は中二病でもないし、ぼっちなことを悩んでもいないぞ。まさか「お前もフォースを持っているのだろう?」とか聞いてくるなよ。そこまで一緒にしなくていいからな。

 

「お前も俺と同じで……マジカルパワーを持っているのだろう?」

「……」

(……)

 

 

 ——ダサっ!

 

 え、そこはフォースでいいだろ。何でマジカルパワーなんだよ。魔女っ子かよ。

 

(……)

「……」

「ふっ、そうか。まずは俺のマジカルパワーについて聞きたいんだな? いいだろう。俺から話してやる。だがまずは自己紹介からだ!」

(いや、何も聞いてないんだが)

 

 何も返さずにいると、偽海藤は一人で語り始めてしまった。

 

「俺の名前は、ジョン・ケイドゥ」

 

 おいおい、名前まで似てんのな。

 

「10歳で名門イーデンの初等部五年生……というのは仮の姿だ。奴らからの目を欺くためのな!」

「や、やつらってだれ?」

 

 あ、やばい、アーニャが興味引かれてしまっている。ワクワク顔を隠し切れていない。

 やめろアーニャ、その世界に行くにはまだ8年早いぞ。

 

「やつらとはもちろん……人類陶汰を目論む闇の組織。——ダークリユニオンだ!」

「だーくりゆにおん!? わくわくっ!」

(そこは一緒なのかよ)

 

 よかったな海藤。お前以外にもダークリユニオンを信じてる奴がいたぞ。

 

 しかし、ダークリユニオンまで出てきたということは……こいつもコードネームは漆黒の翼なのか?

 

(……おい、お前のコードネームはなんだ?)

「! ……ククク。コードネームを知っているとは。やはりお前も俺と同じなのだ(やっぱり、この人も僕と同じなんだ!)」

「こーどねーむ? あにもだーくりゆにおんとたたかってる? アーニャ、わくわくとまらぬ!」

 

 落ち着け。戦っていないからワクワクするのを止めろ。こいつもかっこつけてるけど、内心すごい喜んでいるだろ。

 

「ククク……いいだろう。教えてやろう。(えへへ〜)」

 

 嬉しそうなのが隠せていないぞ。話に乗ってもらえたのが嬉しかったんだな。

 

 一度咳払いをすると、偽海藤ことジョン・ケイドゥは奇妙な動きをし始める。

 

「ふっ! はああっ!」

「のろいのおどり!?」

(やめとけ。ジョン君傷ついちゃうだろ)

 

 しばらく踊って動きを止めると、とても嬉しそうなドヤ顔で口を開く。

 

「よく聞けよ。俺のコードネームは——純白の羽毛だ!」

「……」

(……)

 

 

 ——ダサっ!

 

 え、何そのコードネーム。中二病にあるまじきネーミングだろ。オリジナルを見習え。

 

 そしてなんだ純白の羽毛って。ビジュアル系の中二病なのか?

 

「かっこいいいい〜!」

「! ふっ、そうだろうそうだろう!?」

(おい)

 

 お前もセンスおかしいのかよアーニャ。かっこよくはないだろ。羽毛さん喜んじゃってるよ。

 

 アーニャに褒められて嬉しかったのだろう、羽毛さんはさらに続けた。

 

「ダークリユニオンの奴らは、俺の持つ光のマジカルパワー——ホワイトワルツを狙っているんだ!」

「ほわいとわるつ! つよそう!」

 

 さっきから思ってたんだが、こいつのワードセンス魔法少女アニメから引っ張ってきてないか?

 誰と契約したんだよお前。

 

「ああ。この力を使えば、俺は世界の闇を一瞬にして打ち払うことができるんだ。しかし強大すぎる力の為にこうして封印しているというわけさ!」

「おおお! ふういん!」

 

 アーニャに右手に巻かれた黄色い包帯を見せびらかすジョン。やめてくれ。真似したらどう責任を取るつもりだ?

 

 さすがに面倒になってきた。さっさと話を終わらせないと。僕はこのあと犯罪者である里親の対処法を考えないといけないんだ。

 

(……それで。僕達に何か用なのか、純白の羽毛)

「ふっ。決まっているだろう。まぁお前が俺と同じである以上、余計なお世話だったみたいだな」

(……いいから話せ)

「えっ? ……う、うん。警告しようと思ったのだ。この家に住む夫婦はやばい奴らだからな」

(!)

 

 少し素が出てしまっていたが、それよりもその後の情報だ。こいつは俺達の里親のことについて何か知っているということか。

 

(おい、知ってる事を全部話——)

「お待たせ〜。もう中に入ってもいいわ——っ!」

 

 ジョンから話を聞こうとしたその瞬間、母が家の中から出てきてしまった。そして僕達と話しているジョンの姿をみるやいなや——。

 

「うちの子達に近づくんじゃない! このくそがきっ!」

「ひっ、ひいいいい〜」

 

 鬼のような形相で怒鳴る母。怒鳴られたジョンは悲鳴を上げながら逃げていってしまった。

 

 おいおい。右手の封印解いて悪者をやっつけてくれないのかよ。

 

「あれ、ほわいとわるつ、つかわないの?」

(……そうだな。つかえばよかったのにな)

 

 ぽかんとした顔でジョンの逃げ去った方向を見つめる、アーニャの頭をポンポンと叩く。

 

「クスオ! アーニャ!」

「ひっ!」

 

 母は外に出てくると、僕達の腕を掴んで自分に向き直させた。今朝とはまるで違う顔に、アーニャもビビってしまっている。

 

「いいこと! あの子には近づいちゃダメよ!」

「え」

「あの子はこの辺じゃ有名な悪い子なの! だから近づいてはダメ! 話しかけるのもダメ! いい!?」

「う、うい」

(……はい)

 

 僕達が頷くと、母の表情が優しくなった。

 

「よし! じゃあ家の中を案内するわね!」

 

 そして僕達は手を掴まれたまま、家の中へと引きずり込まれてしまった……。

 

 

 

 ——  屋敷内 ——

 

 

 屋敷に入ると、最初に現れたのはエントランスだった。左右に二階へ繋がる階段があり、真ん中にはどこかに繋がる扉がある。

 

「こっちよ」

(あれ、一階の扉には入らないのか?)

 

 母がすぐに二階に上がろうと一階の扉がどこに繋がっていると聞いてみる。だが、なぜかその扉の中には絶対に入るなと強く言われるだけでおわってしまった。

 

「二階の右側フロアは、あなた達の専用なの」

「ひ、ひだりは?」

「それはお父さんと私のフロア。あ、そっちにも入ってはダメよ」

 

 今度は声こそ変わらないものの、目力が凄かった。アーニャもすっかり怯えてしまっている。

 

 二階の右側の扉を開けると、わりと長めの細い廊下があった。その奥にはまた扉。

 

 ……なんだ。僕達専用のフロアだとか言うから、部屋が複数あるのかと思ったんだがな。

 

 廊下を進み切り、母が最奥にある扉を開く。

 

 ——ガチャ。

 

「ここが2人の部屋よ。必要なものは全てここに揃っているわ」

(……)

 

 扉の先には、広めの部屋があった。左右に扉のない出入口があるが、その先にはトイレとバスルームが見えていた。そして部屋の片隅には、おそらく食事などを運ぶための小型エレベーターが取り付けられている。

 

 ……必要なものは全てここにそろっている、か。これはつまり、この部屋だけで生活ができるようになっている——そういうことじゃないか。

 

 この夫婦は僕達を監禁しようとして「わぁ! ひろい!」——あ、おい待てアーニャ!

 

 僕が部屋を駆け回ろうとするアーニャを止めようとしたその瞬間だった。

 

「じゃ! 時間になったら迎えにくるからね! 食事はそのエレベーターで運ばれるから!」

 

 ——バタン! ガチャン!

 

「あ」

(……やられた)

 

 一瞬の隙に母が部屋から出て行き、扉にかけられてしまった。

 

 ——ガチャガチャ。

 

 アーニャが扉を開けようと試みるが、もちろん開くことはない。

 

「ぬ〜。あかない〜」

(鍵をかけられたみたいだな)

 

 こじ開けようとするアーニャをドアから引き離す。が、アーニャはジタバタして僕から逃れようとする。

 

「あに、はなせ。こんなとびらあーにゃがぶちぬいてみせる!」

(なに馬鹿な事を言ってんだ。お前は力が弱いだろ)

「ふっ……あによ。おまえはアーニャのことをなにもわかっていない」

(は?)

(いまみせてやろう。……アーニャのしんのちからを!)

 

 アーニャはニヤニヤしながた右手を自分の右目に添える。……海藤みたいなことしやがって。嫌な予感がする。

 

 アーニャは左手を扉に向けてかざし、あの言葉を口にする。

 

「——やみのほのおにだかれてきえ」

(おいやめろ!)

「ぬ! なぜとめる!」

(その台詞はダメだろ! 原作違いだろ!)

「げんさく? ……ぬぅ。ならば——! はぜろりある! はじけろしなぷす! ばにっ」

(やめろ! それも同じだろうが! お前まさか恋とかしてないだろうな!)

「むぅ! これじゃあーにゃのちからをあににみせれぬ!」

 

 全く。あのジョンとか言う海藤もどきのせいでアーニャの中二病が覚醒しちゃったじゃないか。あいつにはあとでおしおきしてやろう。

 

 今は先にアーニャに教えることだ。世界で一番強い力は……筋力だということを!

 

(いいかアーニャ。こんな扉など、超能力を使う必要すらないんだ)

「え? じゃあどうするの?」

(こうするんだ)

 

 力を最大限に弱く加減して、右足を扉に……当てるだけ!

 

(よっと)

 

 コツン。……バコーン!

 

「うわぁ! あにすごい!」

(しまった。加減が甘かったらしい)

 

 扉は枠から外れ、廊下の壁へとすごい勢いと衝突音を上げながらぶつかった。

 

 このままではまずいので急いで扉の時を戻そうとしたのだが……。

 

「何の音、って……はあぁぁぁ!?」

(……どうしよう)

 

 時すでに遅く、母に見られてしまったのだった。

 

「あ、あに……」

(……助けてくれ、純白の羽毛)




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