魔法少女リリカルなのは ――呪いの魔法少女と祈りの魔女――   作:fukayu

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プロローグ

 4月〇日

 

 今の生活にも慣れてきたので上からの指示で日誌を付けることになった。

 

 

 今日は取り敢えず俺について書くことにしよう。

 名前は蒼月(あおつき)(ハク)。苗字は訓読みで名前は音読みだ。

 一応死神をやっている。死神といっても名前を書いたら人が死ぬ類のノートを持ってくるタイプではなく、斬魄刀で戦うオサレな方だ。

 最もそれは前世での肩書きであり、新しく生まれ変わったこの世界でも肩書きとして名乗っているに過ぎない。

 

 転生者………とでも言えばいいのだろうか?

死んで違う世界で目覚める人間をそういうのなら俺は転生者なんだろう。

 

 通算死亡回数は覚えている限りで3回。

最初の世界は魔法や霊の存在が創作に過ぎなかった世界。もうその時の思い出は薄れかけているが、この世界での知識がなければその後の人生俺は長生きできなかっただろう。

次の世界、というか前世はさっきも言ったように『BLEACH』の世界。死神になる前となったあとに一度ずつ死を経験している。

 

 単純に考えれば他の転生者に比べて一度死んだ回数が多いことになるが、それがいい事なのか悪い事なのかはわからない。

 ただ、確実に言えることは確実に待遇は悪くなっている。

最初に転生したとき、死神になる前の人生はよくある赤ん坊からのスタートだった。しかし、何の力も持たずに(ホロウ)に嬲り殺された後に気がついたのは死者の魂が集まる街『流魂街』。姿は死んだ時のままだった。それはまだいい。基本的に尸魂界(ソウル・ソサエティ)では時は取らないか限りなく取るのが遅いかのどちらかだから。

 

 そして今回。今生は前世の死神の力を持ったまま姿形だけ10歳前後にランクダウン。

 

 …………手抜きとしか思えない。

 

 最初の転生の時は確かにいた親も住む家も戸籍すら無い状況で一体どうしろと………

 しかも最悪な事に死んだ時の能力と持ち物は多少抜けはあるものの殆ど揃っていた。

 つまり、生まれながらにして死神=霊体。

 尸魂界(ソウル・ソサエティ)なんて無い世界で俺は普通の人からは見えも触れも認識もされず、下手に霊力はあるので腹だけが減るという割と無理ゲーを強いられていた。

 

 本気で死ぬかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月△日

 

 コーヒーの淹れ方で怒られた………俺、お茶しか沸かした事無いっての。

 

 前回は途中で終わってしまったが、今日はこの世界とこの世界での俺の職業。そして俺の命の恩人であり雇い主の話をしよう。

 

 まず、この世界。

 多くの転生モノがそうであるように俺が今いるこの世界も原作と言える物語がある。

 

 『リリカルマジカル、全力全壊』と言えばわかるだろうか?俺はそれで理解しろと言われた………

 『魔法少女リリカルなのは』――――既に最初の人生の記憶が薄れかかっている俺からすればなんのこっちゃと言う話だが、まあ一応朧げながら記憶がある。確か、主人公の女の子が『話し合い』という肉体言語を使って対話をする話だったと思う。

 

 今回の俺のスタート地点はその舞台である『海鳴市』で、他の転生者から聞いた話だと原作の主要キャラ達は奇しくも俺と同年代らしい。

 転生者としては中々の好条件だが、少なくとも三週以上は精神年齢の離れている少女達と関わる気になれない。なりたくても触れられる生身の身体が無い。

 

 このまま誰にも知られずに消えていくかと思われたが、前述の通りこの世界には俺以外にも転生者がおりその内の一人に俺は捕獲もとい拾われた。

何でも、空腹を凌ぐために仕方なく食べ物を拝借するなどの行為が街の人々から心霊現象だと気味悪がれていたらしい。ですよねー。

 

 探偵と名乗る男には俺の姿が見えており、久々に人と話せた俺は感激のあまり抱きつき――特に抵抗も出来ないまま捕縛された。

 男の話だと転生者は勿論、魔力や霊力などの素養がある人間からは俺の姿はばっちり見えていて触ることも出来るらしい。

 

 話をしてみると男も俺と同じ境遇で他にもそう言う奴を何人か見てきたらしい。

 男は自分の探偵事務所も持っていて俺を雇ってくれるとも言ってくれた。

 願ったり叶ったりの提案に俺は男――以下、所長に再び抱きつき、再び伸された。

 

 所長マジ天使。変人だけど…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4月□日

 

 大分仕事に慣れてきた。もうすぐ給料日。

 

 今日はもう少しこの世界について触れておこうかと思う。

 

 まず最初にこの世界で原作知識というモノは殆ど使わない。

 いや、一応原作キャラはいるし、作品固有の用語や技術が満載なのである事に越したことはないよ?

 問題は俺たち転生者側の態度だ。みんな自分勝手に生きすぎなんだよ。

 

 俺に関しては今は生きるために資金を稼ぐという笑えない状態だし、ウチの所長は変人で原作と全く関係ないところで活躍して『海鳴探偵』とか名乗っている。他の奴も海鳴市に本来存在しない筈の馬鹿デカイビルを建てるわ、「俺より強い奴に会いに行く」とか言って勝手に街を出ていったりで、リリカルマジカル全くしていない。

 いや、わかるんだけどね?いきなり目が覚めたら前の世界から引き継ぎみたいな状況で、戸籍も学歴も無いんでまともな仕事は付けないし、もう既に別の人生を経験してるわけだから原作介入とかメンドくさい事はしたく無いって気持ちもわかる。

 でも、いくらなんでも勝手に会社立ち上げたりはやり過ぎだろ!

 

 後もう一つ命に関わる事情がある。本来はこっちが先に説明すべき事なんだが、俺にも責任の一端があると思うと言いづらい。

 この街では最近人外による被害が増えている。人外といっても山から下りてきたクマとかイノシシによる被害というわけではない。

 (ホロウ)等の各世界の悪役(ヴィラン)による被害だ。どうやら転生者が引き継ぐのは前世と記憶と知識だけじゃなく厄介なものも連れて来てしまっているらしい。

 虚が現れ始めたのは俺がこの世界に転生したのと同時期らしいし、他にも前例があるらしい。

 

 『魔法少女まどかマギカ』の魔女もその一つだ。同じ魔法少女モノでも出てくる作品間違えているだろと言いたいが、かなり以前から被害が出ているらしく何処かに幼気な少女に契約を迫る白い淫獣か魔女の卵であるグリーフシードを大量に引き継いだ奴がいるらしい。

 恐らくは前者だろう。何故なら、魔法少女もこの街での災害の一つだからだ。

 まどかマギカさんの魔法少女は力の源であるソウルジェムが濁り切ると呪いの魔女となる。この事実を知っている俺達転生者はおいそれと契約などしないが、それにしては次々と世界中で魔法少女が増え続けている。この世界に来る転生者が全部魔法少女な訳も無いし、後考えられる原因は今日もどこかで何も知らない少女を巧みな営業トークで拐かしている野郎が居るわけだ。

 

 魔女に一般人が襲われている姿を見て見ぬ振りはできないが、魔女の相手は魔法少女の領分だ。下手に手を出せば獲物を横取りされたと勘違いするか新手の敵だと認識するか、どちらにせよ転生者の事を殆ど知らされてない彼女たちは俺達にすら牙を剥く。 

 話せば何人かはわかってくれるだろうが、彼女たちは魔法少女になった時点で将来魔女になるという未来が決定しているようなものだ。敵になるであろう相手に手を貸していいのだろうか?その一つの疑問が俺達と彼女達の共闘という未来を遠いものにしていた。

 結局所長たち大多数の転生者が下した決断は基本的には不干渉。後は個々の判断に任せるというものだった。

 

 と言うか、それ以外にも魔物や怪人、最近は魔女の結界の他に迷宮(ダンジョン)が現れたという噂もあるこの世界が異常なのだ!

 

 取り敢えず今日は自分の領分である虚退治の後に給料が出た時のために趣味である盆栽の下見に行く事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5月〇日

 

 今まで探偵見習いとは名ばかりの雑用兼事務仕事をやらされてきたが、今日ついに所長から探偵としての初仕事を任された。嬉しい。

 

 内容は荷物を指定の時間に指定の場所で待っている依頼人に渡す、というもの。

 所長から渡された巾着袋には宝石か何かが入っていそうな箱が入れられており、実際の重量よりズッシリと重く感じられた。

因みに霊体ですけど俺からは触れます。肌身離さず触れていれば身体の一部として認識されて周りからも消えるしね。あれ?これもう死神というよりただの幽霊じゃ―――――

 

 最早この世界とは全く関係ない道を歩き始めている気がするが、この依頼を達成したら正式に探偵見習いとして認めてくれるそうでその際の”昇給”という言葉に俺の疑問はすぐに吹き飛んでしまった。

 原作介入などをやる連中は長生きする気のない短絡的且つ刹那的な人間かしっかりとした衣食住を持っている恵まれた人間だけなのだ。

 

 早めに事務所を出る。

 場所はわかっているし時間まで余裕があるので自販機でジュースを買う。

 

 ベンチでジュースを飲むという周りから見るとちょっとしたポルターガイストを起こしていると、俺の今の身体と同年代の男女が視界に映る。それだけだと別に珍しくはないが、男女の内少年の方に目を惹かれる。

 

 ――――転生者だ。それも恵まれた方の。少女の方は茶髪で別に目立ちはしないが、少年は金髪のオッドアイってお前マジ何処の世界の人間だよと言わんばかりの容姿をしている。

 

 俺がBLEACHの世界に転生したようにこの世界が初めての転生先という人間もいる。俺の場合は死神に日系が多かったからそんなんでもなかったが、彼らは運が悪いことにこの世界に外側―――地球以外の世界が無数に存在するせいで結構姿にバラつきが出てしまうらしい。

 え――?特典?俺そんなのもらった記憶ないし、何が悲しくて周りから完全に浮く姿をしなくちゃいけないんだ。羞恥プレイかよ………

 

 少年は少女を連れて何もない壁に手を触れ、その内側に入り込んでいく。って、あれ魔女の結界か?魔法少女じゃない俺には近づかないと感知できないが、一般人が誘い込まれるようにこちらから入り込む事は出来る。

 だが、あまりに無謀だ。あの少女も転生者かはたまた魔法少女なら別だが、そんな雰囲気は感じなかった。自身と別法則の相手と戦うというのは想像以上に辛い。

 

 どうする?

 腕時計を見るとまだ約束の時間まで時間があった。

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