「お疲れ様です!」
結束バンド15周年記念。武道館にて行われたライブは大盛況で終わった。
頭を下げるスタッフに軽く手を上げ挨拶を返しながら控え室に向かう。
アラサーに突入したこの現状でも誰1人として欠ける事無くバンドを続けられている。15周年という数字に改めて己の幸運を噛み締めた。
無論、解散の危機は何度もあった。だがその度に力を合わせ壁を乗り越えてきた。バラバラの個性が集まったからこそお互いに足りない部分を補い合う事が出来たのだろう。
「郁代〜!打ち上げ行くからぼっちちゃんとリョウ呼んできてくれる?」
機材の積み込みを手伝いながら声を上げる虹夏先輩に了解の返事を返し、喫煙所に足を向ける。
目的の人物はすぐに見つかった。
お揃いのピアスを付け、喫煙所の壁に背を預け2人並びながら何かを話し笑い合っている。
異様に絵になる2人を隠し撮りしたくなる欲求を抑えながら声を掛けた。
「ひとりちゃん!リョウさん!打ち上げですって!」
「ん、分かった。」
少しタバコの臭いが残る2人と並び、歩きながらライブの感想を語り合う。
ここは良かった。ここはこうした方が良かったのではないか?改善点を話し合い、夢に向かって語り合うこの時間が郁代は何よりも好きだった。
「郁代、本当に上手くなったよね。ギター」
リョウがふと思い付いたように呟く。皆に追いつきたいと必死に努力した結果気付けば
〝後藤ひとりに合わせられるのは喜多郁代しかいない〟
そう囁かれる程の腕前になっていた。
結束バンドはギタボだけ初心者。そう言われていた昔を考えると自分でも随分と成長したものだと思う。
「た、確かに…もう私に教えられる事も殆どありませんし…」
嬉しい筈のひとりちゃんの褒め言葉に何故か胸が痛くなる。
「郁代?」
原因不明の痛みに困惑していると、振り返ってこちらを見ている2人の視線に気付いた。
「何でもないです!それより飲み会楽しみましょうね!」
いつの間にか止めてしまっていたらしい足を動かし胸の痛みを誤魔化すように声を張り上げた。
「「「乾杯!!!」」」
スタッフ混合の打ち上げは終わったが、まだ解散したくないと誰かが言い出し結束バンドの3人は虹夏宅にて二次会を開いていた。
メンバーの中で一番お酒に弱く、先程の打ち上げの時点で既に限界を迎えていたリョウさんは今ではひとりちゃんの太股を枕に微睡んでいる。
「仕方ないですね…リョウさんは…」
微笑みながらリョウさんの頭を撫でているひとりちゃんを横目に、テンション高く声を上げハグをしようとしてくる虹夏先輩を抑えつつアホ毛を摘んで遊んでいるとひとりちゃんがこちらをじっと見ている事に気付いた。
「喜多ちゃん…何かありましたか?」
やはりひとりちゃんは周りをよく見ている。
「上手く説明出来ないのだけど…」
前置きを入れ、今日感じた事をぽつりぽつりと話し始めた。
「大丈夫ですよ」
「私もリョウさんも虹夏ちゃんもこれからまだまだ成長します」
「もちろん喜多ちゃんも、です」
「ひとりちゃん…」
「成長が止まらない結束バンドはやがて世界に旅立ち、いずれは国民栄誉賞を…」
うへへ…と笑いトリップしているひとりちゃんを見て頬を緩める。
そうだ。バンドは1人でやるものではない。結束バンドの4人ならお互いを高め合いきっとどこまでも羽ばたいていける。
心のモヤが晴れた私は新たに注文したビールを一気に傾けた。
その直後、頭の中でプツンと何かが切れる音が聞こえた。薄れゆく意識の中で私は何か音楽の〝核心〟のようなものに触れた気がした。
「郁代!」
「郁代、起きなさい!」
「ん…」
久しぶりに聞く母の声に意識が徐々に覚醒する。
「あれ…私なんで実家に…?」
周囲を見回すと見覚えがある筈なのに、どこか違和感のある部屋が目に入った。
まるで小学校の頃の自分の部屋のような……そこまで考えたところで意識が一気に覚醒し、布団から飛び起きる。それと同時に部屋のドアが開き別人かと思うほど若々しい母が部屋に入ってきた。
「なんだ、起きてるじゃない」
「入学式なんだから遅れないように早くご飯食べちゃいなさい!」
そう言い残し母は部屋を出て行った。
「え…?」
どうやら私の夢は未だ醒めていないらしい。
Q.何があったのか?
A.急性アルコール中毒
参考までに。喜多ちゃんは結束バンドに
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入ると思う
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入らないと思う