逆行喜多ちゃん   作:絶対読み専

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喜多ちゃん、不安になる

 

それからしばらく呆けていたが一向に夢は醒める様子が無く、母から再度お叱りを頂いた私はしぶしぶ中学校へと足を向けた。

十数年ぶりの校舎に懐かしさを感じながらも割り振られたクラスへ足を向ける。

学校生活は久しぶりだが一度は通った道だ。不安はあるが何とかなるだろう。

 

 

 

そうして夢が醒めるのを待ち3日が経った。

それだけ経てばこれが紛れもなく現実なのだと認めざるを得ない。

今まで積み上げてきた物が崩れ去った虚無感と、また新たに始められる興奮がごちゃ混ぜになりながらそれを表に出さない様に努めていたが遂に我慢の限界が訪れた。

 

 

「もう限界…!ギターを買わなくちゃ!」

 

 

皆に会えないのはまだ良い。だが大好きなギターの腕が錆び付くのだけは耐えられなかった。

 

 

「お小遣いの前借りは無理よね…」

 

 

両親は自分にかなり甘い。前回間違えてベースを買ってしまった時も前借りとはいえ10万円以上をポンと出してくれた。

だがそれも高校生になっていたから許されたのであり、小学校を卒業したばかりの今の身では流石に両親も大金を貸してはくれないだろう。

となれば自前のお年玉貯金を解放するしかないのだが…

 

 

「全然足りないわね…」

 

 

長年連れ添った相棒と同じモデルを買うには資金が全く足りていなかった。幸い安くても性能が良いギターはある。当面はそれで我慢するしか無いだろう。

そう自分を納得させた郁代は貯金を下ろす為に両親の説得に取り掛かった。

 

 

 

当初は不安もあった中学校生活も要領を思い出せばむしろ以前よりも楽に過ごすことが出来た。

気が合う人合わない人は何となく覚えていたし、卒業後も会っていた友達の事はハッキリと覚えている。最初から馴れ馴れしくし過ぎなければ打ち解けるのは時間の問題であった。

 

このまま前世と同じく流行のものを追い掛け、周りに同調していれば何も問題はない。

だがそれで良いのだろうか?

今更周りに埋もれて凡人になるのが嫌だといった青臭い事を言うつもりはない。〝普通〟それはそれでとても尊いモノだと今なら胸を張って言える。

だが折角の二度目の人生、前世でやり残した事をやるべきではないだろうか?

 

前世、私はギターヒーローを最後まで越える事が出来なかった。

メジャーデビューし、プロとなってからはのめり込む様に練習に取り組んだ。

その甲斐もあり技術的な面では後藤ひとりにも劣らないと評された事もある。

だがその先の一歩が越えられなかった。

ひとりちゃん程の真に迫った魂が宿っているような演奏が私には出来なかった。リョウ先輩ほどの音楽性は無かった。虹夏先輩程の執念は無かった。きっとそれは音楽に全てを注ぎ込まなければ辿り着けない境地なのだと思う。

だとすれば音楽に青春を捧げてみるのも悪くない…筈。

 

勿論友達付き合いを完全に蔑ろにするつもりはない。学校では程々の立ち位置を確保しつつ私生活は全て音楽に注ぎ込む事にした。

 

放課後の遊びの誘いを習い事があると断り帰宅し、夕食が出来上がるまでの1時間で宿題を済ませお風呂に入りながらボイトレを始める。

ボイトレが終わったら夕食を食べ、寝るまでギターの練習を深夜までひたすら続ける。

そんな生活を1ヶ月続けたある日、私はこのルーティンの致命的な欠陥に気付いた。

 

 

「つまらないわね…」

 

 

ギターを練習する事が既に習慣となっている自分ですら退屈さを感じている。これをひたすら3年間続けていたひとりちゃんは病んでいたのではないだろうか?

そんな失礼なことを考えつつ練習しているとギターヒーローのアカウントがそろそろ開設されている時期である事に思い当たる。

 

「ちょっと覗いてみようかしら…」

 

黒歴史を漁るようで申し訳無いがモチベーション維持の為に必要な事である。そう心の中で言い訳しながら父のパソコンを立ち上げ、動画サイトを開きアカウント名を検索した。

 

 

「おかしいわね…」

 

 

検索しても出るのは海外の動画ばかりであり、それらしいアカウントは見つける事が出来なかった。中学校の入学式が終わってから一ヶ月が経っており前世と同じならば既に動画投稿をしている筈である。

 

 

「時期がズレているのかしら?」

 

 

不安を紛らわすように仮定を口にするが入学から半年が経ってもギターヒーローのアカウントが立ち上げられる事は無かった。




少し違う世界線のようです

参考までに。喜多ちゃんは結束バンドに

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