逆行喜多ちゃん   作:絶対読み専

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死ネタ注意です!!苦手な方はお戻り下さい!高評価、誤字報告ありがとうございます!


喜多ちゃん、未来を変える

 

 

 

 

 

 

プロのミュージシャンとして活動していく中で一流と超一流の間に技術では埋められない差を実感した事がある。

ギターボーカルとして行き詰まりを感じていた私はそんな壁を壊したくてリョウ先輩に相談した事があった。

 

 

「郁代は良い意味でも悪い意味でも人間として正常なんだよね」

 

「人間を辞めないと出せない音楽もある。…まぁそれに依存した音楽は長続きしないけどね」

 

 

「郁代の最終目標は〝それ〟すらも技術として使えるようになる事だと思う」

 

 

その言葉のお陰で私は一つの殻を破る事が出来た。そんなリョウさんとの大切な思い出であるが、何故それを急に思い出していたのかというと……

 

 

「おえ〜…」

 

 

家に帰る途中、見覚えのある酔っ払いが道の端で吐いているのを見つけてしまったのが原因である。

 

 

廣井きくり。

結束バンド、特にひとりちゃんにとっては無くてはならない存在であった。

これはバンドを続けていく中で感じた事だが、学生の頃に会う大人のバンドマンはその後の音楽人生に大きな影響を与える。ひとりちゃんは最初に会えた大人のバンドマンがきくりさんで幸運だったとよく語っていた。そんな私も影響を受けてベースボーカルを練習してみた事があるが、違う旋律をアタマとカラダで並行して奏でる難しさに驚いた記憶がある。

 

そんなミュージシャンとして尊敬するきくりさんだからこそ、あの終わり方にはメンタルが削られた。

日々黄色くなっていく肌。アルコールを辞めるように医者に言われても指の震えでマトモに練習も出来ない為、飲まざるを得ない状態だったという。やがてベースすら持てなくなったきくりさんは最悪の選択をした。

ボロアパートの中で1人、その選択をしたきくりさんの心情を考えると今でも胸が締め付けられる気持ちになる。

 

ここで関わりを持つ事は確実に未来を変える事になる。本来なら見て見ぬフリをするのが良いのだろうが、あの結末を避けられる可能性があるのなら声を掛けない選択肢は無かった。

 

 

「大丈夫ですか?お水飲みます?それとも味噌汁の方が良いですか?良かったら私の家で介抱しましょうか?」

 

「えっ、凄いぐいぐい来るね君…」

 

 

困惑するきくりさんを確保した私は家に電話を掛け説得し、酔っ払い受け入れの許可を取った。

 

 

「へー、君も楽器やるんだ。何やんのー?」

 

「ギター!いいじゃーん!後で聴かせてよ〜」

 

ヘラヘラと笑う彼女だが、アーティストとしての線引きが物凄くシビアな事を私は知っている。

私は生前、〝後藤ひとりの〟バンドメンバーとしか見られていなかった。虹夏先輩もリョウ先輩もそれは薄々感じ取っていたと思う。いつかそのフィルターを取っ払ってやろうと思っていたが結局、目標を達成出来ずにあの結末を迎えてしまった。

 

 

「んで、どのぐらい弾けるの?」

 

 

だから少しぐらい煽る事を許してほしい。

 

 

「日本で1番だと思います」

 

「…………へぇ」

 

冗談で言っている訳ではない事を察したのか、きくりさんの纏う雰囲気が少しピリついた物になった。こちらを見詰めるグルグルとした眼を真正面から見つめ返し私は笑った。

 

「家、見えてきましたよ」

 

 

 

 

 

 

家に着いた私はとりあえずきくりさんを浴室に詰め込みシャワーを浴びさせた。その間に母に状況の説明をする。

筋書きとしては道で酔っている女性がいて悪そうな男達に絡まれていた。一方的にだが知っている人だったのでつい助けてしまった。

絡まれていた云々は完全に嘘だが、良い理由付けになると思う。現にそれで母は納得し台所に戻って行った。

 

「いや〜悪いね〜」

 

シャワーを浴びて少し血色が良くなったきくりさんに水を手渡し、部屋に招く。

 

「気にしないで下さい!あっ、良ければ夕飯も食べていって下さい。母が今作ってるので!」

 

「…どうしてそこまでしてくれるのかな?」

 

 

楽観的なきくりさんでも流石に不気味に感じたのか恐る恐るといった風に尋ねられた。

 

 

「私、廣井さんの音楽がずっと好きで…だから一緒に弾いてみたかったんです」

 

「あー…なるほどね〜。ファンの子だったんだ」

 

「良いよ、やろっか。曲は何が良い?」

 

 

きくりさんはそう言いながらベースを取り出した。二度と見ることが出来ないと思っていたその姿に自然と笑みが溢れる。

 

「ありがとうございます!折角なので廣井さんの曲が弾きたいです!」

 

 

 

 

 

その後、母が迎えに来るまで合奏し、夜も遅いからと泊まって貰う事になった。

食器の片付けが終わり、ふと視線を向けると夕飯を食べ終えたきくりさんは窓際に座りぼんやりと夜空を眺めていた。

 

「隣、良いですか?」

 

頷くきくりさんの隣に座り込む。

 

「ありがとうございます。動画まで撮らせて頂いて」

 

「良いよ〜。泊まらせて貰う訳だし、それぐらいはね」

 

 

「「………」」

 

 

しばらくの間2人で夜空を見上げていると、きくりさんが思い立ったかのように口を開いた。

 

「喜多ちゃんって今何歳だっけ?」

 

「13歳です」

 

「そっかー…天才ってやつだ」

 

 

確かに事実を知らなければそう思うかもしれない。だが私から見れば大学からバンドを始めて数年で人気バンドSICK HACKを作り上げたきくりさんの方が余程天才だと思う。

 

 

「あの…廣井さんってどうして音楽を始めたんですか?」

 

「私?大学の先輩がバンドやってるのを見て憧れてね。まぁその先輩はすぐ辞めちゃったんだけど」

 

「今でもその先輩の音楽を追いかけてるんですか?」

 

「どうなんだろ。最近、うちのバンド迷走中だし〜」

 

 

SICK HACKはイライザさんが加入する前は迷走状態が続いていたと聞いたことがある。つまり今のギタリストとは上手くいってないのだろう。

 

 

「廣井さんっていつもお酒飲んでますよね。それもライブを良くする為ですか?」

 

お酒に依存するようになった理由はひとりちゃんから聞いている。だがこれはきくりさん本人から直接聞かなくては意味がない。

 

 

「いや〜…」

 

 

きくりさんは少し言い淀んだが、やがて覚悟を決めたように話し始めた。

 

 

「私って実は結構臆病でさ」

 

「初めてのライブで緊張を誤魔化す為に飲んだらそれが無いとステージに立てなくなっちゃって…」

 

「幻滅したでしょ?」

 

「幻滅はしないですけど…勿体無いとは思います」

 

「ミュージシャンってそういう殻を破った時に1番良い音を出すと私は思っているので」

 

「私、先に戻ってますね」

 

私はそう言いながら立ち上がり、その場を後にした。

 

 

 

 

尚、その数週間後「急に飲まずにライブでやるのは怖いから…」と言って訪ねて来たきくりさんと私は不定期に配信で演奏を披露するようになる。




キャラの口調難しい…この口調変ってのがあれば教えてください。

参考までに。喜多ちゃんは結束バンドに

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