ようこそ褐色イケメン長身娘が行く実力至上主義の教室へ   作:褐色すこすこすこ太郎

5 / 11
今回もオリ要素は少な目です。


5,露見

「あ、長曾我部さん。急にいなくなったからちょっと心配したよ」

 

 教室に戻ったオレに平田が話しかけてくる。こいつがオレの話しかけてくる時は用がある時だけだ。つまり今、オレの用があるということだろう。はっきり言ってめんどくせぇ。

 

「ンなことで心配し合うような仲か? それでなんだよ。お前が話しかけてくるってことはなんかあんだろ」

「あはは…。それじゃあ早速なんだけど、放課後にCPtを増やすための話し合いをするんだ。そこで君にも参加してほしい」

 

 CPtを得る為の労力とこいつらに力を貸すメリットを天秤にかける。もし力を貸してやれば、女数人は堕とせるだろう。人というのは力のあるものに取り付く、汚く狡い生き物なのだから。

 だが、それをしたところで何の得になる? 肉欲が満たされるだけで、質より量を取っているだけだ。

 

「悪ぃが、やめとく。まぁ強制参加の行事なんかじゃある程度は力を貸してやるが、任意のものに関しちゃあ手伝う気はねぇよ」

「…そっか。でもそれが聞けて良かったよ」

 

 少し困り眉になり、だがそれでも笑顔を絶やさない平田に、心の中でため息をつく。どいつもこいつも、仮面、仮面、仮面。

 

 その後の授業も退屈なもので、少々不機嫌になりながら放課後を迎えた。

 

『1年Dクラスの綾小路くん、長曾我部さん。担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

 教室の中に響く校内放送。綾小路って確か、自己紹介の時に変なこと言ってた奴だよな?

 なんて思っていると、その綾小路が教室を出た。恐らくは先の呼び出しの件で職員室へと向かうのだろう。

 

「おい、綾小路。お前も呼び出されてたけどよ、なんか心当たりあるか?」

「…長曾我部か。俺も聞いてみたかったんだが、そっちはあるのか?」

 

 質問で質問で返してくるなよ。と思うも、よくわからん奴だから半ば諦めて話す。

 

「あるっちゃあるが、お前も分かんだろ?」

 

 オレがそう言うと、綾小路は少し考えて「ああ」とだけ言っていた。クラスの隅にいる癖にちゃんと話は聞いてんのな。

 

「お前はどうなんだよ」

「俺か? 俺は…………ないな」

 

 なんだよその溜めは。こいつなんか隠してんな。

 

 そんなこんなで職員室まで到着し、軽くノックをして入る。

 

「おーっす。茶柱いるか?」

「おい、長曾我部…」

 

 職員室に声を響かせるオレを、綾小路は焦って止めようとする。

 

「あ! 凛音ちゃん! サエちゃんさっきまで居たんだけど…」

「知恵か。今日もウェーブが色っぽくてかわいいな」

 

 オレがそう言うと「やだも~」とか言いながら嬉しそうに肩を叩いてくる知恵と、ちょっと…いやかなり引いた目で見てくる綾小路。

 

「すみません、二人って以前からのお知り合いだったり?」

「いや、全然。この学校入学してからの付き合い」

 

 そう答えるとさらに困った表情をする綾小路。こいつちょっと面白ぇじゃねぇか。

 

 その後も世間話、というか痴話を話し合っているとクリップボードを持った茶柱が現れた。

 

「何を話しているんだお前たちは……」

 

 少し困ったような、呆れたような言い方をする茶柱に、頬を膨らませる知恵。

 

「サエちゃんが居なかったから私が相手してただけじゃない」

「それにしてはかなり盛り上がっていたようだがな」

 

 そう言われ、うっとなる知恵。どうやら心当たりはあるようだ。

 

「待たせたな、綾小路、長曾我部。ここじゃ何だ、生徒指導室まで来て貰おうか」

「いえ、別に大丈夫ですけど。それより指導室って……俺何かしました? これまで一応目立たないよう学校生活を送ってきたつもりなんですが」

「口答えはいい。ついてこい」

 

 不服そうな綾小路と、特に異論のないオレと、笑顔の知恵が茶柱の後ろをついていく。そして茶柱は振り向き、その不機嫌な表情を露わにする。

 

「お前はついてくるな」

「冷たいこと言わないでよ~。聞いても減るものでもないでしょ? だって、サエちゃんって個別指導とか絶対しないタイプじゃない? なのに、新入生の凛音ちゃんと綾小路くんをいきなり指導室に呼び出すなんて……何か狙いがあるのかなぁ? って」

 

 笑顔でいながらも、言葉の節々から敵意のようなものを感じる。

 

「もしかしてサエちゃん、下剋上でも狙ってるんじゃないのぉ?」

 

 下剋上…つまりCPtで他クラスを上回り、上位のクラスになると言うことか。確かに、何を考えているのか読めねぇ茶柱なら考えていてもおかしくねぇ。

 

「バカを言うな。そんなこと無理に決まっているだろ」

「ふふっ、確かに。サエちゃんにはそんなこと無理よね~」

 

 明らかな敵意。それらを向けながらも、知恵は後ろをついてくる。

 

「どこまで着いてくるつもりだ? これはDクラスの問題だ」

「え? 一緒に指導室だけど? ダメなの? ほら、私もアドバイスするし~。凛音ちゃんに"シドウ"…してあげたいし♡」

 

 こいつ、本気(マジ)でオレとヤる気だろ。完全に目がそっちのやつ(レズ)のそれじゃねぇか。

 なんて思っていると、薄ピンクの髪をした美人な女が現れた。

 

「星之宮先生。少しお時間よろしいでしょうか? 生徒会の件でお話があります」

 

 胸も大きく、人当たりも悪くない。そしてなにより、純情(ビッチの卵)そうなのがそそられる。―――決めた。オレはアイツもセフレにする。

 

「ほら、お前にも客だ。さっさと行け」

「もう~。これ以上からかってると怒られそうだから、またね、凛音ちゃんに綾小路くんっ。じゃあ職員室にでも行きましょうか、一之瀬さん」

 

 一之瀬。覚えた。オレは上々のメスを前に、ヤる気がムンムンと湧いて出て来ていた。

 

 だが本題を忘れてはならない。オレと綾小路は茶柱に呼び出されたのだ。まずは要件が何か、から。

 

「で……何なんですか、オレたちを呼んだ理由って」

「うむ、それなんだが……話をする前にちょっとこっちに来てくれ」

 

 そう言うと、オレと綾小路は生徒指導室の奥にある、給湯室に通された。

 

「お茶でも沸かせばいいですかね。ほうじ茶でいいすか?」

 

 このバカは何言ってんだ。もっと面白れぇ冗談吐きやがれ。

 

「余計なことはしなくていい。黙ってここに入ってろ。いいか、私が出てきていいと言うまでここで物音を立てずに静かにしているんだ。破ったら退学にする」

「なんだそれ。横暴ったらありゃしねぇな」

 

 給湯室のドアが閉められ、綾小路と二人になる。お互い話すこともできないのでかなり気まずい。

 だがそんな空気は直ぐに終わり、生徒指導室に誰かが入ってきた。

 

「まあ入ってくれ。それで、私に話とは何だ? 堀北」

 

 堀北。確か黒髪ロングで、性格がキツそうな女だ。

 

「率直にお聞きします。何故私が、Dクラスに配属されたのでしょうか」

「本当に率直だな」

「先生は本日、クラスは優秀な人間から順にAクラスに選ばれたと仰いました。そしてDクラスは学校の落ちこぼれが集まる最後の砦だと」

 

 なるほど、もう読めた。自分を優秀だと思い込んでいる堀北は自分が最底辺なことである事実が受け入れられず、納得できないのだろう。だからこうして教師に直談判しに来ている。

 

「私が言ったことは事実だ。どうやらお前は自分が優秀な人間だと思っているようだな」

「入学試験の問題は殆ど解けたと自負していますし、面接でも大きなミスをした記憶はありません。少なくともDクラスになるとは思えないんです」

 

 当たった。ズバリと言ってくれる性格のおかげで答え合わせが速くて助かるな。

 

「入試問題は殆ど解けた、か。本来なら入試問題の結果など個人には見せないが、お前には特別に見せてやろう。そう、偶然ここにお前の解答用紙がある」

「随分と用意周到ですね。……まるで私が抗議のために来る、ことが分かっていたようです」

「これでも教師だ。生徒の性格はある程度理解しているつもりなんでな。堀北鈴音。お前の入試結果は自分の見立て通り、今年の一年の中では同率3位の成績を収めている。一位二位とも僅差。十分すぎる出来だな。面接でも、確かに特別注視する問題点は見つかっていない。むしろ高評価だったと思われる」

 

 この学校の言う"優秀"というものは、運動神経や学力だけではないのだろう。人当たりの良さやリーダーシップ、カリスマ性なんてものも評価されるのかもしれねぇな。

 

「ありがとうございます。では――何故?」

「その前に、お前はどうしてDクラスであることが不服なんだ?」

「正当に評価されていない状況を喜ぶ者などいません。ましてこの学校はクラスの差によって将来が大きく左右されます。当然のことです」

「正当に評価? おいおい、お前は随分と自己評価が高いんだな」

 

 ついつい笑いがこぼれるような笑い方をする茶柱。

 

「お前の学力が優れている点は認めよう。確かにお前は頭が良い。だけどな、学力に優れた者が優秀なクラスに入れると誰が決めた?」

「それは――世の中の、常識の話をしているんです」

「常識? その常識とやらが今のダメな日本を作ったんじゃないのか? ただテストの点数だけで人間を評価し、優劣を決めていた。その結果無能な人間が上で幅を利かせて本当に優秀な人間を蹴落とそうと躍起になる。そして、結局最後に行きつくのは世襲制だ」

 

 まぁ茶柱の意見も間違っていないのだろう。だが実際、今の日本の状況を教育機関一つでどうにかできるのか? この学校は1学年160人。つまり、もしこの場所で優秀な人間を毎年160人排出できるとしても、世の中は全く変わらない。優秀な人間、罪のない人間は力あるものに迫害される。…だからあいつは―――いや、その話は今はいい。

 

「確かに勉強が出来ることは1つのステータスだ。それを否定するつもりはない。しかし、この学校は本当の意味で優秀な人間を生み出すための学校だ。それだけで上のクラスに配属されると思ったら大間違いだ。この学校に入学した者には、それを一番最初に説明しているはずだがな。それに、冷静になって考えてみろ。仮に学力だけで優劣を決めていたのなら、須藤たちが入学できたと思うのか?」

「っ……」

 

 これは茶柱の正論だ。須藤やそれにつるんでいる男女数人。あれらは勉学が本文の学生とは程遠いような言動をする。まあそこに関しちゃ、オレも人の事言えねぇけどな。

 

「それに、正当に評価されていない状況を喜ぶ者は居ない、と決めつけた発言をするのも早計だな。Aクラスともなれば、学校から受けるプレッシャーは強く下のクラスからの妬みも強い。日々重いプレッシャーの中で競争させられるのは想像よりも遥に大変なものだ。中には正当に評価されないことを良しとする者もいる」

「冗談でしょう? そのような人間、私には理解できません」

「そうかな? Dクラスにも居ると思うがな。低いレベルのクラスに割り当てられ喜んでいる変わり者の生徒が」

 

 オレはじーっと綾小路のほうを見ていると、無表情で「俺じゃない」と言わんばかりのジェスチャーを返してくる。胡散臭い。

 

「……そうですか。改めて学校側に聞くことにします」

「上に掛け合っても結果は同じだ。それに悲観する必要はない。朝にも話したが、出来不出来でクラスは上下する。卒業までにAクラスへと上がれる可能性は残されている」

「簡単な道のりとは思えません。未熟な者が集まるDクラスがどうやってAクラスよりも優れたポイントを取れるというのですか。どう考えても不可能じゃないでしょうか」

 

 確かに、堀北の苦言は尤もだろう。定期的にCPtが貰えるのかもわからず、いくらもらえるのかもわからず、今その段階でAクラスに勝てるという算段は0に等しい。

 

「それは私の知ったことじゃない。その無謀な道のりを目指すか目指さないかは個人の自由だ。それとも堀北、Aクラスに上がらなければならない特別な理由でもあるのか?」

「それは……今日のところは失礼します。ですが私が納得していないことだけは覚えておいてください」

「分かった、覚えておこう」

 

 椅子を引く音が聞こえ、扉が開くかと思いきや、聞こえてきたのは茶柱の声。

 

「あぁそうだった。もう二人指導室に呼んでいたんだった。一人はお前にも関係のある人物だぞ」

「関係のある人物……? まさか……兄さ―――」

「出てこい二人とも」

 

 そう言われ、綾小路の方をチラリと見る。すると首をブンブンと振り、出たくないと堅く意思表示をしている。

 

「出てこないと退学にするぞ」

 

 綾小路は絶望したような、呆れたような顔をして頷いた。

 

「はぁ…待ちくたびれたぜ。こんな野郎と密室に閉じ込めやがってよ」

「綾小路くんに……長曾我部さん? 私の話を…聞いていたの?」

「話? 何か話してるのは分かったが良く聞こえなかったな。意外と壁が厚いんだ」

「そんなことはない。給湯室はこの部屋の声が良く通るぞ?」

 

 綾小路の必死の抵抗も空しく、茶柱からの痛恨の一撃が入る。

 

「……先生、何故このようなことを?」

 

 もちろん茶柱の行動に納得も理解もしていない様子の堀北。

 

「必要なことと判断したからだ。さて長曾我部、綾小路。お前たちを指導室に呼んだワケを話そう」

「私はこれで失礼します……」

「待て堀北。最後まで聞いておいた方がお前のためにもなる。それがAクラスに上がるためのヒントになるかもしれないぞ」

 

 茶柱がそう言うと、ドアへと近づいていた堀北の動きが止まり、椅子へと戻る。結構正直なのな。

 

「手短にお願いします」

 

 茶柱はクリップボードを見ながら、こう話し出した。

 

「お前は面白い生徒だな、綾小路」

「茶柱、なんて奇特な苗字をもった先生ほどオモシロイ男じゃないすよ、俺は」

「全国の茶柱さんに土下座してみるか? んん?」

 

 茶柱なんて苗字そうそういないだろ。精々あんたの親族くらいか。

 

「入試の結果を元に、個別の指導方法を思案していたんだが、お前のテスト結果を見て興味深いことに気が付いたんだ。最初は心底驚いたぞ」

 

 そう話しながら、入試問題の解答用紙が並べられていく。どれも綾小路のものだ。

 

「国語50点、数学50点、英語50点、社会50点、理科50点……おまけに今回の小テストの結果も50点。これが意味するものが何か分かるか?」

 

 マジか。何か隠してるやつだとは理解していたが、まさかここまでだとは思わなんだ。

 

「偶然って怖いっスね」

「ほう? あくまでも偶然全ての結果が50点になったと? 意図的にやっただろ」

「偶然です。証拠はありません。そもそも試験の点数を操作して俺にどんな得があると? 高得点を取れる頭があるなら、全教科満点狙ってますよ」

 

 さすがにその言い訳はないだろう。隠す気がないのか?

 

「お前は実に憎たらしい生徒のようだな。いいか? この数学の問5、この問題の正解率は学年で3%だった。が、お前は問の複雑な証明式も含め完璧に解いている。一方、こっちの問10は正解率は76%。それを間違うか? 普通」

「世間の普通なんて知りませんよ。偶然です、偶然」

「全く、その割り切った態度には敬服を覚えるが、将来苦労することになるぞ」

「当分先でしょうし、その時になって考えます」

 

 そして茶柱はオレと堀北の顔を見て、どうだと言わんばかりの表情をする。

 

「あなたは……どうしてこんなわけのわからないことをしたの?」

「いや、だから偶然だっての。隠れた天才だとか、そんな設定はないぞ」

「どうだかなぁ。ひょっとしたらお前よりも頭脳明晰かも知れないぞ堀北」

 

 満点を取れていないオレや堀北よりも、点数を操作している綾小路の学力が高いのは明白だろう。

 

「勉強好きじゃないですし、頑張るつもりもないですし。だからこんな点なんですよ」

「この学校を選んだ生徒が言うことじゃないな。もっとも、お前の場合、高円寺のように、DでもAでもいいと思えるような、他の生徒とは異なる理由があるのかもしれないが」

 

 なるほど…。なんとなく、なんとなくだけだが分かってきた気がする。綾小路が何を求めてこの学校に来たのか。

 

「―――そして、長曾我部。お前も面白い生徒だな」

 

 そしてどうやら、まだまだ面倒くさくなりそうだ。

 

 




次回はオリ要素てんこ盛りなのでどうかご勘弁ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。