ようこそ褐色イケメン長身娘が行く実力至上主義の教室へ 作:褐色すこすこすこ太郎
オレには誰にも言えねぇ、過去がある。それは血生臭く、ドロドロとしていてとても人に言えるものではない。正に『臭い物には蓋をする』ってやつの通りに隠して生きてきた。
オレの両親は、駆け落ちして結ばれたのだと言っていたのを覚えている。母はいい家の出だったらしく、当時のオレは幼いながらにも母の所作を綺麗だと思っていた。だが、問題だったのは父。父は、母と結ばれるまでは性格のいい男を演じていたそうで、駆け落ちし、結婚した後にその本性を現したのだ。
父は女、ギャンブル、喧嘩好きの清々しいほどのクズだった。女遊びに明け暮れ、ギャンブルで勝ったお金を使って豪遊し、気に入らない奴は拳で黙らせる。そんな日々を送っていたらしい。
だが父は、ある日突然、多額の借金を残して蒸発した。その当時オレは6歳位だったらしい。母は借金よりも屑な父を呆れながらも惚れていたらしく、悲しそうにしていた。だがオレが大きくなるまでは育てなければならないと息巻く、そんな美しくも強い母だった。
「凛音。また大きくなったんじゃない?」
母は笑顔でそう言う。オレは父に良く似て褐色肌で、図体も人一倍大きかった。6歳のこの時点で身長が140cmを超える程だ。
当時からずっと、オレは疑問に思っていることがある。オレは父にそっくりだ。だから時々、父そっくりなオレを恨んでいないのかと聞いてみたかったのだ。
だがそんなことを聞けるほど母に時間はなく、オレを学校に行かせるためにパートを幾つも掛け持ちして働いていた。もう少しで身長を抜かしてしまうほど小さな身体。笑う顔はお姫様のように綺麗で、心はそこらの男なんかよりよっぽど強い。オレはそんな母が自慢だった。
時は過ぎ、オレは中学生になった。元々大きかった身体は二次性徴を迎え、女性らしくなる。胸や尻は大きくなり、勿論生理も始まった。だがオレはそれだけにとどまらず、筋肉もかなりつき始めた。以前から馬鹿力だった筋力が目に見えて隆起し始めたのだ。これもきっと父の遺伝なのだろうと母も言っていた。
14歳の夏、ついに借金を完済したらしい。母は嬉しそうに、オレに抱き着いてきた。だがオレは既に母よりも大きく、身長は180cmに届くかどうかといったところだった。
―――そんな時、父が唐突に家に帰ってきた。
「おい
勿論、母は反論した。「オレを大学まで行くためにお金を溜めなきゃいけない」と。オレは母のそんなセリフを聞き、嬉しくも母がまた身を粉にして働くことが心配だった。
そして父は、そんな母の態度が気に入らなかったのだろう。あろうことか、手をあげたのだ。
「ごめんなさい、凛音。お夕飯、
母はオレを家から出したかったのだろう。オレは二人でしか話せないこともあると思い、その財布を持ってその場を離れた。―――その行動を一生後悔することになるとも知らずに。
オレがおつかいから帰ると、夕日が地平線と交わっており空が綺麗なオレンジ色に染まっていた。
「母さん、帰ったぞ………母さん?」
家に入ると、やけに静まり返っていた。それはもう不気味なほどに。
靴を脱ぎ、さっきまで母がいた部屋に入る。その刹那、オレの視界に飛び込んできたのは赤。部屋を覆いつくすほどの赤。
血だ。
血? なぜ部屋に血が?
「かあ………さん?」
わからない。オレの足元に転がっているものは、何なんだ。わからない。
息を吸えば、鉄の匂いが鼻孔を擽る。やはり血だ。
じゃあ、これは? 足元に転がっているものは。お姫様のようなきれいな顔。オレや父と違い、シルクのような肌。細い髪。小さな、身体。
母さんだ。
オレが立ち尽くしていると、後ろから人の気配がした。
「おお、凛音か。渚がオレの言うことを聞かなくてよぉ。そうだ、オレと一緒に来いよ。一仕事して儲けようぜ」
言っている意味が分からない。言うことを聞かないから、なんだ。何をした。
「あー…だから、ちょっと静かにしてもらったっていうか…」
お前が。
お前が。
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そこからはあまり覚えていない。警察の人に聞いた話によると、オレは父を瀕死に追いつめるほど拳を振るったらしく、
警察が調べたところ、父と母は口論に発展し、何度も言い合っている声が近所に聞こえたらしい。そして叫び声が聞こえ、その後静かになったと。
母の死因はナイフによる刺突からなる出血多量と頭を強く打ったことらしい。そして他人から見れば、母の死体は母に見えない程にぐちゃぐちゃだったそうだ。ナイフがあれば、一撃で殺すことだって出来たはずだ。父―――いやあの男は母を感情のままにいたぶったのだ。
オレは自身の行為に対して後悔はないが、生きる意味も生き方もすべて失った。きっとオレは少年院に入れられる。そう思っていたのに、オレに下された処分は保護観察処分。父のあまりに残虐な殺し方を鑑みて話し合った結果、だそうだ。
一先ずオレの過去に関してはこんなものだろう。血生臭く、ドロドロとしていてとても人に言えるものではないと言った理由が分かったと思う。オレも思い出すだけで今も気分が悪くなる。
日に日に自分が父と重なる場面が多くなり、反吐が出そうになる。女遊びに、力に、容姿。その全てが父を彷彿とさせる。だがどう否定しても、オレは父に似ている。心も、身体も。
思い出すだけで疲れた、少し休もう。おやすみなさい、母さん。
中間テストも無事に乗り越え、6月。女の数も増えてきて少しずつ生活が潤ってきたように感じる。だがここで問題が一つ。それはPPtの不足である。
入学当初にオレは10万PPtにプラスして300万PPtを貰った(強引)。だがそのポイントを、週3回ほどの遅刻への補填、それに女たちとのデート代やプレゼントに回すとどうなるか。1か月もあれば食費等の生活費も合わせればすぐに減ってしまう。それに5月の20日に佐枝の誕生日があり、そこそこするプレゼントを買ったのもでかかっただろう。今残っているのは120万程度だ。
勿論クラスの連中は120万でもかなり多いと言うのだろう。それは実際0CPtのオレたちからすれば当たり前だ。だがオレには全く足りない。卒業まで困らない程度には稼いでおかねば、そう思うほどに。
「…! イイ事思いついたぜ…クク」
悪知恵の働くオレの脳は止まるところを知らないようだ。
▽▽▽
「ね、凛音。これめっちゃ良くない!?」
「ん? あぁ、お前によく似合うんじゃねぇか? オレンジとか黄色似合うもんな、なずなは」
数日後の晩、オレとなずなはベッドの上で抱き合いながらピロートークへと勤しんでいた。
なずながスマホで見ていたのは学生に人気のとあるブランドのネックレスだった。シルバーで出来た薄いチェーンの先にはイエローサファイアの装飾が付いており、どことなく高級感を感じさせる作りになっている。
「えへへ、そうかな。でもこれちょっとだけ高いんだよね~…。うーん…」
どうやらなずなは買うのを躊躇っている様子だ。値段を見れば、約140000円。実際学生には手が出しづらい値段だろう。
「ほら、これ使って買え。余ったら釣りはやるから」
オレは端末をササっと操作し、なずなの番号へと15万程送金する。
「ちょっ、凛音!? 貰えないよ!」
「律儀だな。別に感謝の一言さえくれればそれでいいんだが」
オレがそう言うと、なずなは少しモジモジと照れ臭そうにした後に「ありがと、凛音」なんて言いながらオレの頬にキスをしてくる。全く、オレの喜ばせ方を良く知ってんじゃねぇか。
「でもさ、そろそろ凛音もPPtなくなってきたんじゃないの? 300万貰ったって言ってもさ、私と真澄ちゃんとか結構デートとか連れて行ってもらってるじゃん?」
呼び方で気づいたかもしれないが、なずなは真澄と結構仲良くなっている。少し落ち着き目のある真澄と陽気ななずなの組み合わせは案外良かったみたいだ。
「何、此間イイ事思いついてな。それで1000万ちょっと稼いできた」
「い、いっせんまん!?」
額の多さに目を白黒させて驚いているなずな。そりゃあ驚くよな。
「り、凛音……もしかしてこの大きな胸を…」
「売ってねぇよ。勝手に人を売女にすんな」
オレはなずなの額に軽くチョップしてやる。誰がオスなんかに身体売るかよ。
「ごめんって、冗談冗談。でもホントにどうやって稼いだの?」
「あぁ、別に大したことはしてねぇよ。ただ部活でちょっくら賭け事を…な」
「…えっ、もしかしてだけど色んな部活で…?」
オレが行ったのは単純明快。部活動に対して賭けを申し出た。最初はその辺のモブから倒し、最後には部長。そんな流れを7,8個の部活で繰り返していたらいつの間にかこうなった。運動部なんかはオレが女だからと手を抜いてくる奴が居たが、圧倒して吠え面をかかせてやった。
「でもよく問題にならなかったね。そういうのってうちの学校厳しいじゃん?」
「普通『一年女子に舐めてかかったら負けてPPtを支払った』なんて周りに言えねぇだろ。特に強えぇ奴ほどな」
「確かに…」
正直オレも問題になるかは賭けだったが、見栄っ張りが多くて助かったぜ。
「あ、そういや旬だったからマンゴー買ってきたんだった。食うか?」
「食べる~」
マンコを味わった後はマンゴーってか。
………忘れろ。
▽▽▽
「ん? なんか少なくねぇか?」
オレは全裸でクローゼットを漁っていた。その理由は下着がないことにある。最近、洗濯物がやけにワンパターンだと思っていた。そして現に今下着が一つしかない。
「……誰だ? オレの下着盗んでる変態ヤローは」
「
背後から聞こえた声にびっくりし、振り返ってみるとそこには―――。
オレの下着を頭に被り、さらに下着を口に含んだ森下がいた。
「……」
「ふっ、私がいることにそんな驚きますか。長曾我部凛音」
オレが絶句しているとべちゃりと濡れた下着を手に取り、そんなことを口にする森下。コイツ頭おかしいんじゃねぇの?
「あーもう、その下着やるよ。好きに使え」
「! 本当ですか。ありがとうございます。私は所用を思い出したのでこれで」
全く意味が分からん。とりあえず分かったのはアイツがこれからオナニーするってことだけだ。
っていうか下着二つしかねぇじゃねぇかよ。オレケツがでけぇからオーダーメイドで頼まねぇといけねぇんだが。
「はぁ……ケヤキモール行くか」
オレは重い足取りでケヤキモールにあるランジェリーショップへと行くことになった。
「いらっしゃいませ~」
入店すればそこそこの容姿の女が猫なで声ですぐにオレの傍に来る。押しは強えぇが悪くねぇ女じゃねぇか。
「ちょっと下着が欲しくてよ。オーダーメイド頼めるか?」
「はいっ。それでは採寸を行いますので、こちらにどうぞ~」
その後は採寸を行い、料金を支払ったり諸々の手続きをした。採寸の際にサラっと乳揉んできたのわかってるからな。
「ありがとうございました~」
用も済んだし帰るか、なんて思っていると見慣れたケヤキモールの中に、在り得ない人影を見た。お姫様のような可憐な顔つき。細く美しい髪。そして小さな身体。
「母……さん…っ!?」
気づけばオレは走り出しており、その人物目掛けてハグをしていた。
「はぁ……はぁ……」
「えっと、長曾我部さん……?」
声もよく似ている。鈴を転がすような声。
「ちょっ、凛音!? 何してんの!?」
横を見れば、真澄がいた。何がどうなっているんだ?
「あんたなんで急に坂柳にハグしてんの!?」
……さかやなぎ?
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長曾我部
凛音の母。良家の出で、所作に現れている。身長は150cm程で、細い髪、真っ白な肌、紫色の眼をしており、若いころの姿が坂柳有栖と酷似している。
性格は物腰柔らかく、我が子である凛音を溺愛している。欠点があるとすれば男を見る目がなかった点。
長曾我部
凛音の父。凛音から見た通りのガチの屑。身長190cm程で真っ黒な髪、褐色肌、ギザ歯。ほとんどコイツの遺伝子が凛音に受け継がれている。
坂柳と今まで会わなかったこと、凛音の容姿や性格のこと、過去のこと全てを回収できたかなと思います。きっと皆さんが抱えている疑問は次回判明しますので、お楽しみに。