七神だと?私こそが神だァァァッ!! 作:レベルゼロ
Q.新檀黎斗とはなんですか?
この問いかけに対して、後に答えてくれた旅人さんはこう語った。
「そうだね……そもそもなんで『新』をつけているのかも意味分からなかったし、一言で言い表すのは難しいかな。あらゆる場面によって印象が変わってくる人だったよ。最初はそうだね……
とにかく、チュートリアルを聞かない人だったなぁ」
▽
「新檀黎斗?」
パイモンは頭にハテナマークを浮かべるように首を傾げる。
「というか……今、神って言った?」
聞き間違いじゃないのかと自分を疑ってしまう蛍。あまりにも破天荒すぎる自己紹介と謎の力の顕現。これに困惑しないわけがなかった。
「コンティニューしてでもクリアする!」
そして、仮面ライダーゲンムに変身した黎斗。それを見たスライム達は矛先を黎斗に向けた。スライム達はバウンドしながら近づいてくると黎斗に体当たりをする。
「遅いな」
黎斗の変身するアクションゲーマーとは、軽快なジャンプが魅力な身軽なアーマーである。その身軽さから出るステップとジャンプでスライムの体当たりを悉く躱していく。
スライムは旅人にとっても雑魚キャラなのだが、それとは関係なく黎斗の動きはとても戦いの素人とは思えないほどに戦闘慣れしていると感じた。
「フッ!ハッ!」
黎斗は躱しつつ、スライムに対してパンチとキックを繰り出す。スライムはバウンドしながら少しふっ飛ばされるが、めげずに立ち上がって黎斗に体当たりしていく。
それを見て黎斗は分析をする。
「ふむ、柔らかいから物理攻撃はあまり有効ではないのか」
「そうだった!黎斗!スライムは元素反応を駆使して戦うのがおすすめだ!火には火以外を、水には水以外の元素をぶつけるんだ!」
パイモンはひとまず黎斗の変身する仮面ライダーのことは置いておいて、ガイドとしての役目を果たす。
しかし、黎斗はそれを無視して構わず物理攻撃を繰り返した。
「おい!チュートリアルを無視するなぁ!」
「このような雑魚に遅れをとる私ではないわァァッ!!」
無視する黎斗ではあるが、話を聞いていないわけではない。今の黎斗はタドルクエストのガシャコンソードのような属性を持つ武器は持っていないが、どうすればいいのかは既に頭の中で解決策を見出していた。
「元素反応だと?……つまりこういうことだろうゥゥッ!?ヌァァァッ!!」
黎斗は水スライムを両手でガッチリ掴んで持ち上げると、そのまま炎スライムに向けて投げつける。
すると2つのスライムが激突し、互いの属性が合わさったことで『蒸発』反応が起きてダメージを与えた。
「なんか違うんだよなぁ……」
パイモンの言いたいことが上手く伝わらず、旅人も困惑している。
『ガシャット!キメワザ!』
黎斗はガシャットを腰の横にあるキメワザスロットホルダーにセットする。
「ハァァァッ!!」
宙に高く飛び上がり、右足に溜めたエネルギーをぶつけるようにライダーキックを繰り出した。
スライム達はその攻撃を受けて力尽き、溶けるように消えていく。
雑魚相手とはいえ、神の目も持たない人があっさりと倒せたことに蛍とパイモンは驚いた。
「つ、強い……というか、その姿はなんなの?」
『ガッシューン』
黎斗は変身を解除する。
「これは仮面ライダーというのさ。そして、私は仮面ライダーゲンム。覚えておきたまえ。
「仮面ライダー?」
「私が仮面ライダーなのは別に重要ではない。それより、君達に聞きたい。この世界は一体なんだ?ここはなんていう土地の名前だ?」
「この世界って……まさか、あなたも異世界からやってきたの?」
「あなたも……か。なるほど。君も私と同じか」
黎斗は同じように異世界から来たという蛍の話を聞いて、この世界のことを知る。しかし、あまりにも知らない単語が多く出てきたことで流石の黎斗も頭を抱えた。
「……ちょっと待て。情報を整理する」
とりあえず聞いたことを簡潔にまとめることにした。
まず、ここはテイワット大陸というらしい。この大陸には7つの国が存在し、各国を治める神が1人ずついる。
その神に無意識ながらも認められた極少数の者に与えられる外付けの魔力器官が『神の目』というもので、蛍の友人の殆どがそれを身に付け、先程パイモンが言った元素力を扱うことが出来る。
ちなみに今いるこの森は7つの国のうちの一つ、モンドの中だと言う。
国によって人や思想や環境は様々で、蛍とパイモンはその7つの国を旅することで、天理の調停者というテイワットの神より上位の存在の手がかりを集めている。
そして、離れ離れになった自分の兄を見つける。これが蛍とパイモンの目的らしい。
「こんなところか」
(しかし……本当に何故私はこの世界に?ガシャットを使ってみたが、今の所異常が感じられないぞ)
コンティニュー機能を使ってはいないから全てが異常無しとは断言できないが、未だにこの世界に来た原因が分からずにモヤモヤが晴れない黎斗。しかし、それを今ここで考えても答えは出ないことは分かっていたので一旦忘れることにした。
説明を聞いたのち、蛍とパイモンの案内の元、黎斗は無事に森を抜けた。そして、彼女達はどこかの目的地に向かっているようなのでそれに合わせて黎斗も一緒に歩いている。
「まさか、この世界で最初に出会ったのが同じ異世界からの来訪者とは驚いた。だが、聞いた感じだと君はかなり前からこの世界にいるようだな。私はさっきこの世界に来たばかりだというのに」
「私達はこれまで天理の調停者の手がかりを探すため、そして私のお兄ちゃんを探すために旅をしてきた。お兄ちゃんとは一度再会したけど……私の知っているお兄ちゃんは……変わってしまった」
自分の身の上話をし、暗い顔をする蛍。兄妹の間で何かあったのは分かるが、黎斗にとってはどうでもいいことだ。しかし、一つ気になることがあった。
「……ふむ、しかし解せないな。だとしたら、何故わざわざこのモンドという国に戻ってきた?先ほどの君の旅の話を聞くに、このモンドは最初にきた国のはずだ。そんな大事な目的があるなら、さっさと次の国に行くべきではないのか?」
「確かにそうかもしれない。でも、旅は急いで目的に向かうものじゃないの。色々なところを見て、触って、感じて……偶には来た場所へ戻って、色々な出会いや景色を楽しむ。それが私にとっての旅。楽しまなきゃ、それは旅とは言わない
それが私とお兄ちゃんがしてきた旅だったから……」
兄との確執があるように言っておきながら、その兄に固執する蛍の様子を見て、黎斗はこれ以上この話をしても暗いだけなのが分かっていたので、さっさと本題に入るために切り出した。
「……まぁいいだろう。君の旅に私が口を出す権利はない。さて、私は一刻も早く元の世界に戻らなければならないんだ。とりあえず行く当てもないから君達に同行させてくれ。色々とこの世界の情報が欲しい」
「あっ、それならこの先はモンド城があるから、そこで情報収集しようぜ!もしかしたら、西風騎士団が何か知ってるかもしれないしな!……おっ、『七天神像』だ!ってことは、もうすぐモンド城に着くぞ!」
歩いていると、パイモンが指さす方向に一柱の像が立っていた。そのてっぺんにはローブを纏った人を型どった彫像まであり、まるで地球にある仏像のような……そう、まさにこの人物を讃えるために造られたものに見えた。
「パイモン、七天神像とはなんだ?」
「七天神像は、この世界に存在する神をかたどった像で、大陸に点在してるんだ。因みにこれは、七神のうちの1人『風』の神の像だな!」
「そうだ。私はこの像に触れて元素の力を手に入れたんだ。黎斗もこの像に触れてみたら?もしかしたら私と同じように元素の力が身につくかも」
「新檀黎斗だ!」
「あっ、うん。なんかめんどくさいねこの人……」
顔をずいっと近づけて訂正させる黎斗。このやり取りで蛍は彼の扱いがめんどくさいことに気づいた。
提案された黎斗だったが、彼はその提案には乗らずにクククと妖しい笑いを浮かべながら両手を広げる。
「要は神の加護を得られるというわけか。ふっ、だが私は他の神の施しをうけるつもりはない。何故なら……私こそが唯一神なのだからァ!!ヴェアハハハァァッ!!」
「なんだコイツ」
狂った笑いに対してパイモンからの辛辣なツッコミ。冷ややかな目を向けられても気にしない黎斗は高笑いをしながら前へと進んでいく。
黎斗に聞こえないようにパイモンと蛍はヒソヒソと話す。
「旅人……オイラ、黎斗を吟遊野郎に会わせちゃいけない気がしてきたぞ」
「うん……まぁでも、彼は正体を明かさないだろうし、会っても問題ないと思うよ」
こうして旅人とパイモンの2人の旅に、頭のおかしい仮面の戦士が加わったのであった。