自己犠牲こそヒーローの意義なんだって!   作:アールワイ

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ヒーロー名はヒーローの表明なんだって!

 

眼下の死屍が 来るべき姿とは思いもよらぬ

まもなく 金の刃は降り 薙いでいく

眩き陽を背に 射手は姿を現す

一矢報い 一命をつなぎとめようとて

竜は より速く 児戯を楽しむかのように

より高くから

新たな金色の墓標を築く

 

 

――――

 

 

 体育祭は閉幕し、学校も通常授業に戻る。この日は朝から雨が降っていた。傘に乗る雨粒は心地よく、アスファルトから跳ねた雨粒は不快に私を濡らしていく。雨は疲れるから好きじゃない。

 

「すみません、英護くんだよね!?」

「え」

「本物だ! 体育祭カッコよかったよ! 握手して下さい!」

「あ、はい」

「サインもらえますかー!」

「サ……サイン?」

 

 登校中に発生した私のファン?に目を回しながら学校に着いた頃にはクタクタになっていた。校門をくぐり、下駄箱前で出久と天哉に会う。

 

「出久、天哉、おはよう」

「おはよう英護くん」

「おはよう」

「……天哉、大丈夫か?」

 

 体育祭の日、天哉は家庭の事情で早退していった。出久に聞けば彼の兄、プロヒーローのインゲニウムがヴィランに襲われ入院したらしい。私が踏み込んでいい話題ではないが、私は天哉の兄より天哉自身に問題が生じたように感じた。

 

「兄の件なら心配ご無用だ。要らぬ心労をかけてすまなかったな」

 

 天哉はそそくさと教室へと歩いていった。

 

「出久はどう思った?」

「英護くん、どうって……?」

「天哉の様子、変じゃないか?」

「……うん。何か隠してるように見えた」

「出久が言うなら確実か。ニュース見たか?」

「うん。“ヒーロー殺し”が保須市に現れたって」

「今の天哉は復讐に燃える炎だ。なあ、出久――」

 

 

―復讐に暴走する友を、君はどうしたい?

 

 

――――

 

 

「おはよう」

「「「おはようございます!!!」」」

 

 相澤先生の入室に条件反射に着席を済ます1年A組。相澤先生の合理的思考が染み付いてて何より。

 

「ケロ……相澤先生包帯とれたのね。良かったわ」

「婆さんの処置が大袈裟なんだよ。んなもんより、今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ」

 

 特別と聞いて教室内に緊張が走る。相澤先生のことだ、抜き打ちテストで除籍させてきてもおかしくない。自由な校風って怖いね。

 

「コードネーム……ヒーロー名の考案だ」

「「「胸膨らむやつキター!!!」」」

 

 先日で話があったプロヒーローからのドラフト指名に関係するらしい。指名が本格化するのは即戦力として判断される2、3年から。1年の私達に来た指名は将来性に対する興味に近い。つまり、ここでの指名は自身に対する期待値のようなものか。

 

「で、その集計結果がこれだ」

 

 

英護:3659

轟:3248

爆豪:2703

常闇:360

飯田:301

上鳴:272

八百万:108

切島:68

麗日:20

瀬呂:14

 

 

「例年はもっとバラけるんだが、3人に注目が偏った」

 

「千刃が1位なのは異論ないとして。2位轟、3位爆豪って……」

「順位逆転してんじゃん」

「あんだけ暴言吐きまくってたらそりゃあなぁ」

「うっせぇ! プロがビビんなや!」

 

 

 端末から前に映し出された集計結果にクラスは少し浮つく。今回、指名が無かった生徒は多くいる中で、大っぴらに喜ぶものはいなかった。それはそうと勝己は好き勝手言われてキレた。

 

「この結果を踏まえ、指名の有無に関係なく。所謂、職場体験ってのに行ってもらう」

「職場体験……?」

「ああ、お前らはUSJの時、一足先にヴィランとの戦闘を経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってことだ」

 

 なるほど、職場体験に備えてのヒーロー名考案か。実際に現場に出るわけだし、ここでの名前がそのまま認知されて定着する可能性もある。慎重に考えないとな。

 

「まあ、そのヒーロー名はまだ仮ではあるが……適当なもんは―」

「付けたら地獄を見ちゃうよ!」

 

 突然に教室に入ってきたのは18禁ヒーローミッドナイト先生。18禁なのに……先生? 大丈夫なんですか? 男子数名ニヤけてますけど……。凄いスタイルを曝け出すコスチュームは中々にエチチなのは同意する、だが今は授業中なんだが。

 

 

 相澤先生はセンスが無いと言ってミッドナイト先生にバトンタッチ。ヒーロー名の査定はミッドナイト先生がすることに。名は体を現す。ヒーローとして活動するなら覚えてもらいやすく、わかりやすいものがいいだろう。

 

「千刃はヒーロー名何にする?」

「……うーん」

「そういえば、お前の個性って結局何なんだ?」

「……言ってなかったっけ?」

「俺も気になっていたぞ」

 

 席が隣接している猿尾、障子は私の個性が何だと聞く。なんだかんだ、言った記憶は無いな。過ごしていくうちに判明していくものだと思ってた。私の個性の名称を知ってるのって実は百しかいなかったりするのか。

 

「千刃は出来ること多いから。ウチも聞きたい。…………脚のこともあるし」

「百にしか言ってなかったな。私の個性は“千刃竜”。鱗が刃のように鋭い竜の個性だ。鱗を飛ばせたり斬れ味を上げたりできる。翼と尻尾は竜だから生やせる。脚はその応用で生やした」

「脚を生やせるなら義足を着ける必要はないんじゃないか?」

「翼とか尻尾は無いものを生やすから大丈夫だけど、脚を生やす場合()()()()()()()()生やしてるから普段使いはできない。使い過ぎると自我が飛ぶ」

「じゃあ結構危険な個性なんだな」

「だから相澤先生に使用制限されてるよ」

 

「「「へぇー」」」

 

 

――――

 

 

「I can not stop twink ling.略して、キラキラが止められないよ」

 

『『『短文じゃねえか!!!』』』

 

「ここはIをとってCan'tに省略した方が読みやすい」

 

『『『いいのかよ!!!』』』

 

 発表形式になった授業は初っ端から大喜利みたいになったが、各々自分が考えたヒーロー名を発表していく。

 

 

「“レギオン”」

「いい名前ね。何か意味はある?」

「……私が向き合っていくものです」

「ヒーロー名は己を表すもの、いいじゃない」

 

 

 色々考えたが、これが1番しっくりきた。ドクターが言うには、私は呪われてるらしい。夢に出てくる言葉は悪いものだから全部消しておきなさいと言われた。私がヒーローになる為に向き合う“レギオン”、千の悪霊。祓う方法はまだわからない。

 ちなみに、最後まで勝己は決まらず弄られてた。

 

「ボンバーマンとかどうだ?」

「舐めてんのか翼野郎殺すぞ!」

 

 ボンバーマンはお気に召さなかったらしい。

 

 

――――

 

 

 職場体験の期間は1週間。体験先は今週末までに決めなくてはならない。期限まであと2日しかないのか……。

 

「焦燥、お前は何処にする?」

「俺は、エンデヴァーヒーロー事務所」

「……大丈夫か?」

「クソ親父でもNo.2ヒーローだ。得られるもんがあると思う」

「そうか、なら止めない。何かあれば言えよ?」

 

 焦燥は父親と仲悪いだろうに。合理性を取ったからか、向き合っていきたいからか、その両方か。まあ、良い傾向だと思う。

 

「英護さんは何処にしますの?」

 

 昼休み。私、焦燥、百、響香で食堂に向かいながら職場体験について話す。プロの現場にも様々な方針がある。防災救助、ヴィラン制圧、事件解決etc……。私を指名したプロヒーローのリストを見たが、流石は雄英体育祭、トップヒーローの名前が幾つか見られた。

 

「今のとこミルコにしようかなって」

「えー! ミルコってサイドキックはおろか、事務所すら持ってないんじゃなかったっけ?」

 

 トップヒーローミルコ。彼女は響香が言った通り事務所を持たず、サイドキックも連れない活動体系。私も彼女からの指名があったことには驚いた。

 

「相澤先生に聞いてみたんだが、大丈夫とのことだった。事務所やサイドキックが無くても、それだけ学校側がミルコを信頼してるってことだと思う」

「ミルコか。流石だな千刃」

「名前呼び……」

「駄目だったか?」

「いや、いいとも」

 

 何か心変わりしたのか、体育祭の時より瞳が澄んでる。そういや母親に会ったと聞いたな。焦燥なりの速度で、寄り添ってるんだ。

 

「何か変わったか?」

「……少しずつだが、変えていけたらと思ってる」

「良かったな」

「これからだ」

 

 ざる蕎麦を食べながら微笑む焦燥。焦燥は変わっていってる。同じヒーローを目指す者として、置いてかれないようにしなきゃな。

 

「何の話?」

「焦燥の家庭の事情だ」

「なんで英護さんがそんなこと知ってるんですの?!」

「なんでだろうね」

 

 

 私達は道を歩き始めたばかりだ。皆、私の前で必死に走ってる。いつか隣で走れる日が来るといいな……。脚無いけど。

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