自己犠牲こそヒーローの意義なんだって!   作:アールワイ

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期末試験はヒーローのライジングなんだって!

 

 

「期末試験まで残すところ1週間だが、お前らちゃんと勉強してるだろうな。当然知ってるだろうが、テストは筆記だけでなく演習もある。頭と体を同時に鍛えておけ。以上だ」

 

 

 期末試験まで残り1週間をきった。夏休みにある林間合宿へ向け、クラスは赤点回避にやっけになっている。中でもやばい生徒が若干2名。

 

「「全く勉強してなーい!」」

(中間試験19、20位)

 

「芦戸さん、上鳴くん、が、頑張ろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもん、ね!」

(中間試験4位)

「うん! 俺もクラス委員長として皆の奮起を期待している!」

(中間試験2位)

「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねえだろ」

(中間試験6位)

「焦凍、その言い方は色々と残酷じゃないか? 気にすんなよ電気。筆記で全てが決まる訳じゃないから」

(中間試験5位)

 

「言葉には気をつけろぉ!」

 

 体育祭、職場体験とイベント続きだったのは確かだが、現を抜かしてる暇は無いだろ。電気の肩に手を置いて慰める。私も範囲内の勉強はしているが、出来ることなら誰かと一緒に勉強したいな。

 

「おふたりとも? 座学なら私、御力添えできるかもしれません。…………演習の方はからっきしでしょうけど」

(中間試験1位)

「「ヤオモモー!!」」

 

 百の提案に目を輝かせる2人。それに続いて響香、範太、猿尾が百に集まる。

 

「おふたりじゃないけどウチもいいかな? 二次関数ちょっと応用躓いちゃってて」

(中間試験8位)

「……え?」

「悪ぃ俺も! 八百万、古文わかる?」

(中間試験17位)

「俺もいいかな? いくつかわからない部分あってさ」

(中間試験9位)

 

「「「お願い!」」」

 

「皆さん……、いいですとも!」

「「「ヤッター!」」」

「では、週末にでも私の家でお勉強会を催しましょう!」

「あ、じゃあ私もいいかな?」

「千刃は勉強できるじゃん」

「勉強会なんて行きたいに決まってるだろ」

 

 お勉強会……なんて楽しそうなんだ! 参加しない手はない。一人で居るのまだ辛いんだよなー。ぶっ倒れたあの日、響香が看病してくれたおかげで余計人肌恋しくなった気がする。

 

「私も私もー!」

 

 透も勉強会に参加したいとのことで参加メンバーは三奈、響香、透、電気、範太、猿尾、私の7人が百のお世話になることになった。開催場所は百の家、講堂やらお紅茶やら生まれの違いをわからされたけど、プリプリしてる百はとても可愛かったです。

 

 

――――

 

 

「へえー。演習試験はあのロボか」

「ん」

「それで伝わるんだ……」

 

 学食でたまたま唯と会って、私、響香、透、唯で席を一緒にした。私は大盛り焼肉定食、響香がミートソースパスタ、透がラーメン、唯がBLTサンドを頼んだ。男一人で肩身が狭い、なんてことはないが食事量が顕著に出て少し恥ずかしかった。

 

「ん」

「食べ盛りだからね。食べれる時に食べとかないと。餓死なんてよくある話だし」

「よくあることはなくない?!」

 

「随分と楽しそうだな」

「心操くん!」

 

 トレーを持った心操くんが話しかけてきた。体育祭以来だが、身体付きがかなりがっしりとしている。短い成果だが、確実にトレーニングの影響だろう。

 

「体育祭ぶりだね。頑張ってるんだ?」

「……ああ。緑谷とお前を見てな、色々考えたんだ。俺は必ずヒーローになる。その為に出来ることを」

「全体的に鍛えるのもいいけど、自分の強み、戦い方を考えながら鍛えるともっと効率上がるかも。比率で言うと腕に重き置いた方が良さそうかな。言ってくれれば放課後訓練手伝うよ」

「……なんて言うか、英護は変わってるよな、良い意味で」

「そうかな?」

「あんたら同じA組だろ。こいつの手綱しっかり握っとけよ。体育祭から薄々感じてたが、こいつ無意識に危ない橋渡る奴だ」

「言われなくても」

「はーい!」

「私はペットかな?」

 

 人使は最近、相澤先生に戦闘訓練してもらってるらしい。確かに、人使も相澤先生も戦闘力に直結しない個性だ。搦手として強すぎる個性だから、そういう訓練は相澤先生が適任だ。

 

「そうだ、ヒーロー科来るならA組?」

「知らねえよ。まだスタートラインにすら立ててない。そんなこと気にしてる暇ねえよ」

「それもそうか」

 

 普段なかなか顔を合わさない人使や唯と主に他愛ない世間話をして、昼休みを過ごした。

 

 

――――

 

 

 週末になり、私達7人は八百万の家に来ていた。家というか……敷地? 曲がり角が遥か遠くに見える広大な敷地だ。

 

「うはー。セレブだと思ってたけど……まさかこれほどとは……」

「外からじゃ建物見えないんだけど」

 

 インターホンを押してゲートを開けてもらい、歩くこと数分。見えたのは家……いや、大豪邸だ。見たことも入ったこともない豪邸なんだが……既視感?がある。失くなった記憶関連かな?

 

「ようこそお越しくださいました。お部屋まで案内致します」

 

 金髪碧眼のクッソ美人なメイドさんに案内された部屋?にはクッソ長い机やシャンデリアがあった。豪勢な装飾だが眩しすぎず、気品と上品さが凄まじい。

 

「なんか、場違い過ぎて緊張してきた」

「俺も……」

 

「何か?」

 

「「「「「「んーん、なんでもー」」」」」」

 

 場違いだとか緊張だとか、そんなことティーセットやスタンドを載せたトローリーを押して来た百のプリプリに浄化される。

 

「では始めましょうか」

 

 

 勉強会は恙無く進んだ。わからない所を百が教えて回り、教科書と睨めっこして頭を抱えている。提出課題を終わらせた私は百に経過を報告する。

 

「英護さんには教えることがありませんわね……。全体的に理解出来ているので、後は当日にミスをしなければ大丈夫だと思いますわ」

「なら教える側しようか? 一人で全員見るの大変だろ?」

「ありがとうございます!」

「教えるのも勉強の一環だからね。理系科目はまだ何とかなりそうだけど……文系はまだ不安かなー」

「理系得意なんだ。じゃあ千刃ここ教えて」

 

 全員、名門雄英に入るだけの実力は備わっていた訳で、勉強会で置いてかれる人は出なかった。休憩のティータイムではお紅茶や洋菓子を堪能したが、流石の美味しさだった。

 

 

 

 

「紅茶貰ってしまった」

「美味しかったねー」

 

 外も暗がり、帰りは美味しいと呟いた紅茶の袋を抱えることになった。

 

「ヤオモモと英護くんが教えてくれたから筆記はもう大丈夫だよ!」

「赤点はないんじゃない?」

「それ最低限だよ?!」

 

 倒れた日から、何故か透との距離が近くなった。昼食で隣になったり、登下校で一緒になったりすることが多くなった。気の所為かスキンシップも……やめよう、背筋が冷えた。

 

「八百万が紅茶に詳しいのは当たり前として、英護があんな紅茶に饒舌なのは意外だったな」

「実はかなりの家柄だったりして?」

 

 範太と電気は私が紅茶に詳しかったことが意外だったらしく、私の家柄について聞いてくる。覚えてないんだけどな。

 

「英護は記憶喪失なんだから、そういうのはやめろよ」

「大丈夫だよ猿尾。でも……そうだな、私の両親はかなりの良家だった可能性はあるな。それか紅茶好きか」

「英護自身が紅茶好きだったとかは?」

「うーん。紅茶の知識は記憶喪失関連のことだと思う。百の家を見た時だって、思ったより驚かなかったし」

「まじか、ってことは……良いとこのお坊ちゃまだったってこと?」

 

 クラスの皆は私の記憶喪失に関して不快にならない程度に触れてくれる。私の記憶のことを過剰に気にしないのは、私の精神衛生上ありがたかった。紅茶の袋を大事に抱き締めて、揶揄うように笑ってみせる。

 

「どうかなー?」

 

 

 

――――

 

 

 期末試験、3日間の筆記試験が終了し、演習試験の日がやってきた。三奈と電気も勉強会の成果が出たのか、自信あり。何の憂いもなく私は演習試験に臨むことになった。

 試験会場では先生達が揃い踏み。知ってる先生は全員居る。サポート科のパワーローダー先生までいる。

 

「それじゃ、演習試験を始めていく。この試験でも勿論赤点はある。林間合宿行きたけりゃみっともねえヘマはするなよ。諸君なら、事前に情報を仕入れて何するか薄々わかってると思うが」

「入試みてぇなロボ無双だろー!」

「花火ー! カレー! 肝試しー!」

 

「残念! 諸事情があって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

 相澤先生の捕縛布からひょこ、と飛び出した根津校長。……どうやって入ってたんだろ?

 

「これからは対人戦闘、活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ。という訳で、諸君らにはこれから2人1組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」

「なお、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度、諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ」

 

 

 制限時間は30分。目的はハンドカフスを先生にかけるか、どちらか1人がステージから脱出するか。相手は超がつくほど格上。実力差が大きすぎるなら応援を呼びに行く方が懸命。普通に考えれば逃げの一手だが、ハンデとして体重の約半分の超圧縮重りを着けたことで戦闘も視野に入る。戦って勝つか、逃げて勝つか。実戦に近い判断力が試される。

 相手はセメントス先生、私と百は1戦目から……作戦を練る時間はくれないか。ステージ前に待機して、試験開始を待つ。

 

 

「セメントス先生が相手か……。百、作戦はどうする?」

「……英護さんに従いますわ」

「……どうして?」

「英護さんの作戦ならきっと上手くいくはずですから。私が立てた作戦なんて……」

「ちょっと」

 

 両手を百の顔に当てる。翼で覆って私だけを見せる。響香の真似になっちゃうけど、今の百は想像以上に自信を失くしている。

 セメントスはコンクリートを操る個性。市街地なら無類の強さを誇る個性だ。無策で勝てるほど優しい相手じゃない。

 勉強会の時、百は楽しそうだった。頼られるのが嬉しそうだった。なら……無理矢理にでも、君を頼る。君は凄い人だと、私が気付かせる。

 

「私が何故、百に作戦をどうするか聞いたと思ってる?」

「でも、考えがあるのでしょう?」

「ある。百は、私を信じてくれる?」

「ええ、他でもない英護さんですもの」

「じゃあ」

 

 

 

 

 

「――」

「………………え?」

 

 

――――

 

―POOOOOO!

『英護・八百万チーム。演習試験、LadyGo』

 

 

 脱出ゲート前で待機していたセメントスは試験開始のブザーと同時にゲートをコンクリートで塞ぐ。

 

「気休めですがね」

 

 組み合わせを決める際、英護の相手は必然的にセメントスとなった。攻撃力、機動力、判断力と全体的に申し分ない英護だが、課題を挙げるなら仲間との連携。1人で特攻してしまう癖がある。自分の力が通用しない相手との戦闘経験が少ないのが原因だと考え、シンプルに強いセメントスが適任となった。

 八百万は万能だが、咄嗟の判断力や応用力に欠ける。それに、体育祭以降自信の喪失が見てとれる。自信を取り戻させる為にも同じ万能型の英護を相方とした。八百万が英護を、英護が八百万をサポートできれば試験はクリア出来ると思われる。

 

「本気でいきますよ」

 

 個性を使い、脱出ゲート前の無数の壁で要塞化。英護は対人に強いが対物にはそれほど、八百万は兵器を創造できるが消耗戦となれば耐久は容易。セメントスは戦闘より耐久を選んだ。

 

 

―バゴン!

 

 轟音と共に壁が数枚砕かれる。壊される壁の位置から接近してきたと分かる。接近での攻撃、英護だ。

 疲弊は期待できないのでコンクリートでの捕縛を試みるも感触がない。攻撃は止まず、1人で要塞を相手にするらしい。

 

「お手並み拝見です」

 

 

――――

 

『私を使え』

 

 そう言った英護さんは私の言葉を待つように口を閉ざしました。セメントス先生は下手に動かず構えてくるはず、考える時間はありました。

 

「英護さん……あの……」

「思い付いた?」

「やはり、英護さんが考えた方が……」

「振り返ったんだけど、私は1人で突っ込むことしか出来ない。セメントスはそれで勝てる相手じゃない」

「でも、そこまで解っているなら……」

「私は君を頼ってるんだ、百。君なら勝てる作戦を考えられると思って、私の全てを託したいんだ」

「英護さんの全てを……」

「もちろん、戦うのは百だけじゃない。私と百、2人で勝つ。その為に、私は百が作戦を練って欲しい。君は強く、凄い人だから」

 

 私を真っ直ぐ見詰める金色の瞳に吸い込まれそうになる。つい足を止めてしまった私を、突然英護さんが抱き抱える。瞬間、私たちが居た場所をコンクリートが突き上げる。後数秒遅れていたら、私は怪我を負っていただろう。英護さんが翼を使い、建物の屋上へゆっくりと下ろしてくれた。

 

「放置はできないか……行ってくる」

「え?」

 

 私を屋上に置いてけぼりにして英護さんはセメントス先生が居るであろう脱出ゲートへ向かって飛んで行く。結局、私の力なんて必要ないと思ってしまった。このまま英護さん1人でも何とかなると……。

 英護さんはずっと1人で戦った。私の目が追えないスピードでコンクリートの要塞を攻撃し続けるも、次の瞬間には元に戻っている。体育祭で見せた大技を放とうとしても、拘束しようと伸びるコンクリートに阻害されて溜めを作れない。

 

 

『私は君を頼ってるんだ』

『君なら勝てる作戦を考えられると思って、私の全てを託したいんだ』

『君は強く、凄い人だから』

 

 

 

 不甲斐なかった。英護さんにあれだけ言われて、何も出来ずにいる自分に。

 

「でも!」

 

 信じてくれたなら、せめて……私に出来ることを!

 

「英護さん! 私を!」

 

 両手を広げて叫ぶと、英護さんはすぐさま飛んだまま私を抱える。逞しい腕の中、がっしりとした体躯に安心感を覚え、思い付いた作戦を話す。

 

「コンクリートの修復が早い箇所がありました。きっとそこにセメントス先生が居るはず」

「何処だ?」

「言いますので、鱗で牽制を」

 

 英護さんに指示を出し、刃鱗を左側から薙ぐように破裂させていく。すると1箇所だけ妙に修復が早い部分があった。

 

「そこです。これを鱗と一緒にあそこへ」

「了解」

 

 手渡したものを付けた鱗が指摘した部分に刺さる。破裂はしないようお願いしたので大丈夫。後は、私が彼を信じるだけ。

 

「合図であの場所に集中攻撃を。……信じてますから!」

「信じられた」

「では、体育祭の時の大技を!」

「抱えたままでか?!」

「信じます!」

 

 空高く飛び、印の真上で急降下の溜めを作ってる英護さんの腕を抜け出して自由落下する。抱えられながら準備していた大砲を創造して放つ。弾は鱗に付けた爆薬を誘爆し大爆発を起こす。分厚いコンクリートの壁は砕かれるが、まだ残っている。

 

「英護さん!」

「任された!」

 

 私を追い越した流星は光芒を引きながら、コンクリートの要塞を粉砕した。英護さんならきっとセメントス先生の元まで辿り着けたはず。かなりの高さから自由落下している私は、彼を信じて待つ。

 

 

 

「クレイジーなお嬢様だ」

「……信じてましたから」

 

 地面と激突する前に彼が優しく私を受け止めてくれた。翼を羽ばたかせて、地上の煙が晴れるのを待つ。

 

「飛び降りるかね、普通」

「屋上からでは届きませんでした。間を空けると修復されてしまいますし、ああするしか考えられませんでした。ごめんなさい」

「謝んないでよ。……ところでセメントス先生のことは気にしないの?」

「信じてましたから」

 

 

 煙が晴れた先に居たのは、カフスを着けられたセメントス先生でした。あの英護さんですもの、私が最初に見た拘束術に何の疑いもありませんわ。

 

「あれを突破してくるのか、見事だよ」

 

 

「やっぱ過大評価なんだよなー」

「あなたが信じた私の正当な評価です」

 

 

『英護・八百万チーム、条件達成!』

 

 

 

 

――――

モニタールーム

 

「いつまでお姫様抱っこしてんの……?」

「うわわわわわ」

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