【一年生】
川島正次朗(ショウジ)
→WS、公式通りの見た目
鈴木貫太朗(カンタ)
→WS、公式通りの見た目
森喜郎(ヨッシー)
→WS(ベンチ)、公式通りの見た目
【二年生】
名取蹴斗(シュート)
→MB、トンガリヘアー、寺泊基希系
広瀬球司(キュージ)
→MB、坊主糸目、海信行系
太白弓弦(ユヅ)
→セッター、オカッパ、白布賢二郎系
彼らも頑張っている、そんな第十話です。
よろしくお願いします!
「――影山」
「お前、もうベンチ下がれ」
第二セットが終わり、最終セットに向けて各チーム準備を進めている中、北川第一のベンチの空気は冷え切っていた。それもそのはず、セッターである影山のトスをチームメイトが無視した直後だからである。それを受けて、監督が影山を下げることを宣言するが、影山は食い下がる。
「なんでですかっ!」
「俺は、勝つために最善を尽くしています!」
影山のこの言葉に監督がため息をつく。
「……俺はお前がどんなトスを上げようと、どんなに暴言を吐こうと、お前をセッターに起用してきた」
「それは、お前が勝ちに必要だと思っていたからだ」
そう言って一拍おき、影山とそれを遠巻きに睨む選手たちへ目線をやる。監督は俯き、再びため息をついて続けた。
「勝ちに必要ならどんなやつでもチームに起用する」
「だが、俺は今のお前が
それは、監督から影山への最後通牒だった。周りの選手たちは、これまで頑なに影山を起用し続けてきた監督の心変わりに驚き、そしてそれ以上に安堵を感じていた。ようやく、暴君の絶対王政から解放される、と。
「でも、俺は……!」
俺はセッターだ、という影山の言葉は、食いしばった歯に噛み殺された。影山自身も、この試合に自分の居場所はないということが、自分に
地面を睨みながらベンチに座る影山に、声をかける者はいなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ところ変わり雪ヶ丘ベンチ、こちらはこちらで雰囲気が暗くなっていた。大差で第二セットをもぎ取ったにもかかわらず、なぜか。その理由は下級生たちのスタミナにあった。
「スンマセン……」
最後のセットアップ、そのトスミスは日向のスーパープレイによってカバーされたが、本来であれば前衛ライトにいた一年生WSにフォローできたはずのミスだった。しかし、実際には日向が跳ぶまでだれもライト側にはいなかった。それは、そのとき前衛ライトにいるはずだった一年生の川島正二朗の体力が底を尽き、動けなくなっていたからだった。
「ショウジ、一番跳んでたからな!」
キャプテンである日向が笑って声をかけるが、川島は悔しそうに唇をかんでいる。たしかに、一年生の中で最も背の高い川島はよく跳んでいたが、エースである日向の運動量と比べればその半分にも満たないものだった。
「ヨッシーいけるか?」
悔しがる川島の肩にタオルをかけてベンチに座らせ、その横にいた一年生、森喜郎へ声をかける。これまでベンチを温めていた森は、緊張を滲ませながら大きな声で返事をした。
「モチロンです!」
そうしてメンバー交代のため、各々声を掛け合う中、日向はセッターである二年生の太白弓弦へ話しかける。
「ユヅもキツそうな顔だなー!」
一人、元気のよい日向に呆れと尊敬を抱きつつ太白が反応を返す。
「ハハ……先輩は元気そうですね」
「まぁ、キツいはキツいですけど大丈夫です」
疲れた様子の太白が汗を拭き水を飲む。これまでで一番の運動量だと感じていた。実際のところ、試合時間はまだ一時間に満たないが、緊張や超速攻の負担からその数倍は動いているような気分だった。
「……僕だって勝ちに来ていますから」
薄く笑って答える太白に、日向は向日葵のように笑いながらその背中を叩く。
「よし、勝つぞ!!」
その声に反応して、他のチームメイトたちも「勝つぞ」と大きく声を上げる。その中には、このあとベンチに下がることになる川島の声も混ざっていた。
「先輩、痛いです……」
背中の痛みを訴える太白の声はチームメイトの声にかき消されていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
第三セットが始まろうとする中、日向は異変に気が付く。いや、それは異変ではなくある種の予定調和なのかもしれないが。
「影山がいない……?」
日向は、影山がこの試合を楽しみにしていたのと同じかそれ以上にこの試合を待ち望んでいた。それもそのはず、彼にとっては
雪ヶ丘のプレーは安定しており、贔屓目なしに県内有数のチームに育ったといえるだろう。それに対して、北川第一は不安定で嚙み合っておらず、全員が苦しそうにプレーしていた。それを見た日向の心に浮かんだのは、失望、落胆、期待外れ、その類のものでは
日向にとって北川第一のメンバーはチームメイトのようなものである。たしかに、影山はその中でも特別な存在だったが、金田一や国見などの他のメンバーたちがどうでもいい存在だというわけでは決してなかった。もしかしたら、影山は日向だけを仲間だと思っていたかもしれないが、日向にとっては影山だけが仲間だというわけではなかった。
日向が公式戦に出られなかった去年や一昨年、応援しに行った北川第一が勝てば自分のことのように嬉しく、逆に負ければ自分が負けたように悔しがった。金田一が止めれば声援を送り、国見が決めれば歓声を上げた。試合に負けて泣く金田一と一緒にラーメンを食べた日もあった。珍しく居残り練習をする国見に頼まれてブロックに跳んだ日もあった。
そんな仲間たちが苦しみながらプレーする姿が、日向にとっても苦しく辛く悲しいものだったのは当たり前のことである。そして今、最も信頼する相棒である影山がベンチに下げられ、控えのセッターがコート上に立っていた。その彼を交えて明るく声をかけ合う北川第一のメンバーからは、先ほどまであった陰鬱とした雰囲気がなくなっていた。影山のいなくなった北川第一のコートはこの試合で、いや、これまで一年間の試合の中で最も輝いているようだった。
そんな北川第一の様子を見た日向の心境は複雑なものだったが、日向の頭の中にあったのは、
勝負を決める最終セット、決着の第三セットが始まる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
第三セットは、第二セットに引き続き雪ヶ丘優勢で進むかに思われたが、その予想を裏切る展開となっていた。そう、第三セットは終始北川第一が押し、リードする展開となったのだ。その理由は大きく二つあった。一つ目は北川第一の新セッターである。
彼はまだ二年生で試合経験もほとんどなかったが、その丁寧なセットアップで北川第一スパイカーの力を十分に引き出していた。速さに囚われていた影山のトス回しとは異なるリズムから繰り出される本来の北川第一の攻撃に、雪ヶ丘メンバーは翻弄されていた。もちろん、個人の技量としては影山に大きく劣る二年生セッターだったが、むしろチームとしての力は強くなっていた。それは、大きく崩れた第二セット後半と比べてではなく、影山が十全に力を発揮していた第一セットと比べても、である。
彼の丁寧なセットアップのおかげで余裕のできたスパイカー陣は、的確に雪ヶ丘の穴を突いていた。たとえば、クロス側に日向がいればストレートを打ち、フロアディフェンスに日向がいるときは出来るだけ一年生を狙い撃ちしていた。これは、トスの時点でコースを指定してくる王様のトスがなくなったことによって可能になった打ち分けだった。そのおかげでスパイカーたちはスパイクを気持ちよく打ち抜き、たとえブロックされたとしても暗い顔をせず切り替えることができていた。また、できるだけ日向と勝負しようとしていた影山がいなくなり、日向を避けて勝負ができるようになったのも北川第一有利の大きな要因だった。
北川第一リードの第二の理由は、やはり雪ヶ丘のスタミナ不足だった。その対策としてインターバル中に一年生WSを交代させた雪ヶ丘だったが、しかし、第三セットではこれまでうまく嚙み合っていたのが嘘のように失点を重ねてしまっていた。特に、交代しなかった方の一年生WS鈴木貫太朗と、第二セット終盤にトスミスをしたセッター太白弓弦の体力は絶望的だった。鈴木も懸命に食らいついていたが、元々身長が低いところにスタミナ切れが重なり、ブロックの大きな穴となってしまっていた。
太白も中盤までの精密なトス回しは鳴りを潜め、基本に忠実なプレーが増えていた。この限界状態で教科書通りの動きができるというのは彼の練習密度の表れといえるが、基本に忠実ということはつまりある程度単調ということを意味していた。超速攻はもちろん、意表を突くような速攻やバックアタックは減り、日向を中心としたオープン攻撃と二年生MBたちとのコンビ攻撃が増えていった。当然、そんな攻撃が本来の動きの取り戻した北川第一に対応できないはずもなく、点差は少しずつ広がっていた。
そして、この試合の趨勢を決する出来事が、雪ヶ丘側の接触事故が起きてしまった。ブロックに跳び、着地しようとした二年生MB名取蹴斗と、そのブロックをかわしたフェイントに飛び込んだ一年生WS鈴木貫太朗が衝突してしまったのだ。後ろから追突された名取は足を押さえてうずくまり、顔から突っ込んだ鈴木は鼻血を垂らしながらもボールの行き先を睨んでいた。幸い、いやまさに不幸中の幸い、鈴木がなんとか上げたボールはネットを超えて北川第一のコートを転がっていた。
しかし、不幸は不幸である。名取は足を挫いて動けず、鈴木は鼻血を垂らしながら名取へ駆け寄っていた。
「シュートさん、すみません……!」
「俺、おれ……」
汗か涙か、顔をドロドロにさせた鈴木が名取へ謝罪する。疲れもあるからか言葉はまとまっていなかったが、その気持ちは名取に届いていた。
「……っ、しょうがねぇよ」
「フリョの事故ってやつだ」
痛みに顔を歪ませつつも、後輩を安心させるよう口角を上げる。後輩に責任を感じさせていること、同期が戦っているのに自分一人だけベンチへ下がること、そして何より
同じMBである広瀬球司に支えられながらベンチへ向かうが、二人とも無言のままだった。広瀬は元々無口な方だったが、この場ではあまり関係がなかった。小学生時代、それぞれ種目は違えど共にエースとして活躍してきた以上、怪我には慣れていたし、途中退場するチームメイトも見てきた。しかし、自分が誰かの重荷になってしまうという経験を今までしてこなかった彼らには、こんなとき言うべき言葉が見つからなかったのだ。
ベンチに着き、交代が告げられる。でもすでに部員は出尽くしているのでは、と疑問に思う名取たちの前には、これ見よがしにストレッチをする助っ人三年生の二人がいた。そう、サッカー部三年の関向幸治とバスケットボール部三年の泉行高の二人が、雪ヶ丘中学男子バレーボールのユニホームを着てそこに立っていた。万が一に備えて一応、彼らもメンバーに登録されていたのだ。
「よう、シュート!」
「あとは先輩に任せとけ」
元々同じサッカークラブの後輩だった名取へ、関向が拳を突き出した。
「……!」
言葉にならない想いを乗せて、名取は関向の拳に自身の拳をぶつける。その拳の勢いに顔をしかめつつ、しかし想いはしっかりと伝わったようで、関向は真剣な眼差しをコートへ向けた。そして、正式に名取・鈴木両名と関向・泉の交代が言い渡される。中学バレーボールでは珍しい二枚替えだった。
「翔ちゃん、いよいよ俺たちのデビュー戦だね……!」
緊張に震えながらも、その緊張に負けじと泉が冗談を言う。
「まァ、引退試合でもあるけどな~」
後輩の想いも背負った関向が、真剣な目つきはそのまま茶々を入れる。
「二人とも……!」
無理やり引っ張ってきたも同然の幼馴染の前向きな態度に、日向は感動が隠せなかった。そんな日向に対して、泉と関向が異口同音に言葉を送る。
「
第三セット中盤、スコアは12-18。
第三セットは後半戦へ突入し、勝負は決着へと加速する。
影山飛雄、誕生日おめでとう!!!!(空気激重)
影山の中学時代は影山自身の回想の中でダイジェスト的に流されましたが、あれをちゃんと描写したらキツすぎるよな〜〜って思いますよね。
思いませんか??
思います。
さて、第一章も佳境に入りましたが、皆さんの感想と高評価とハイキュー!!への愛がこの作品の原動力です。
ぜひ感想、高評価、愛、よろしくお願いします!!(愛?)