そんな第十四話です!
よろしくお願いします!
前話からなぜか改行が打ち消されており、投稿した瞬間は非常に読みにくい状態になっているようです。
(修正済みです)
雪ヶ丘中学バレーボール部がミーティングをしている頃、観客席では火花散らす争いが始まろうとしていた。
「どーも、白鳥沢のウシワカちゃん」
「中学の大会の見学なんて、さすが絶対王者は余裕だね」
いつもの白々しい笑顔は消え去り、目の前の男を睨みつける及川と、それとは対照的にいつもと表情の変わらない牛島が、互いのことを見つけてしまっていた。
「その呼び方はやめろ、と何度も言っているはずだ」
「それに、白鳥沢はこの体育館からそう遠くない」
その昔、試合に負けた白鳥沢の生徒たちが走って学校まで帰らされたというのは、それなりに有名な話であったし、じっさい共に仙台駅周辺として括られる程度に近い距離にあるのだった。
「そういうソッチこそ、ずいぶん余裕なんだねぇ?」
天童が身を乗り出して岩泉の顔を覗き込み、両手の人差し指を使ってわざとらしく青葉城西コンビを同時に指さす。
「チッ……」
「めんどくせぇ」
呆れたような顔でそっぽを向く岩泉だったが、天童の言葉は止まらない。
「青葉城西ってけっこう山奥の方でしょ?」
「こんなところで油売ってていいのカナ~?」
天童の煽りに反応しないよう、岩泉は努めて冷静さを保とうとする。しかし、そこに絶対王者の天然が炸裂した。
「よせ、天童」
「時間の無駄だ」
牛島としては、早く帰って練習時間を作ろうとしている及川たちのことも考えて、「ここで立ち話を続けるのはお互いにとって時間の無駄だ」というつもりでの発言だったが、もちろんそうは受けられない。
「本当に、お前のそういうところがムカつくよ……牛島!」
黙って聞いていられなくなった及川が最初に怒りを露わにし、それに対して怪訝な症状を浮かべた牛島が無自覚に追撃をしてしまう。
「……?」
「練習に戻らなくていいのか?」
この言葉を聞いて、岩泉までもが怒りに飲み込まれ始める。
「
普段なら、対外的にはブレーキ役に回ることの多い岩泉まで発言に熱を帯び始め、まさに一触即発の状況に陥ったとき、彼らに声をかける者が現れた。
「すみません!!!」
それは、烏野高校バレーボール部、次期主将澤村大地その人だった。突然話しかけられた、それもこれまで話したことのない男を警戒しながら、強豪コンビ四人が一斉に澤村の方へ向き直る。意志の強い男たちの八つの瞳に貫かれるプレッシャーは、語るべくもなく強く重たいものだったが、澤村もその程度で怯むような軟な男ではなかった。
「……中学生たちが怖がってるでしょう」
「喧嘩なら他所でやってください」
宮城県の高校バレー好きであればだれでも顔と名前くらいは知っている、そんなビッグネームを前にして、これっぽっちも弱気になることなく突撃した澤村の背中を見て、後輩である田中は感激していた。「大地さん、カッケーっす!!!」という心の声が聞こえてきそうな田中の横で、菅原は少し引いていた。「たしかに迷惑だったけど普通注意しに行けるか?」と。
「まだやるっていうなら相手になりますよ、
「……ナンチャッテー」
しかし、菅原も友情に篤い男である。一人で飛び出した澤村を助けるために、慌てて後輩を差し出す。
「え?!」
突然売られた田中は、心の中で「俺っすか?!」と戸惑うも、生来の田舎ヤンキー気質が光り、すぐさま一歩踏み出して澤村の前に出る。
「年上だからって遠慮はしねぇぞ!」
そういってメンチを切る田中と、その後ろで田中の反応の良さを面白がって笑っている菅原の頭へ拳骨が落ちた。
「止めに入った俺たちが喧嘩売ってどうする!」
そんな烏野高校バレーボール部員による漫才のようなやり取りを見て、ようやく緊張状態が緩和される。
「すまなかった」
元々冷静だった牛島が最初に状況を理解し、周りの中学生たちへ頭を下げた。それを見て残りのメンツも口々に周りへ謝罪し、場がようやく落ち着きを見せる。
「感謝する」
「どうやら周りが見えていなかったようだ」
牛島が澤村の方へと向き直り、いさかいを止めてもらったことへ感謝を述べる。
「……烏野高校」
「そうか、いずれまた会うことになるだろう」
澤村たちのジャージから高校名を推察した牛島が意味ありげなことを呟き、他の面々がそれに戸惑っているうちに彼らはいなくなってしまった。
「天童、帰るぞ」
「はーい」
「いやー、すごかったね~」
「坊主がシュババって……!」
遠ざかる二人の声を耳に入れながら、烏野の三人は困惑していた。だが、青葉城西の方はすでに合点がいったらしく、ギリギリと歯ぎしりをしながら牛島への恨みを口にしていた。
「あの野郎、最後まで俺たちのことをバカにしやがって……!」
状況を理解しているらしい及川へ澤村が尋ねる。
「すみません、なんだったんですか?」
「また会おう、みたいな……」
お互いに自己紹介もしていない身、学年もわからない初対面であるため、敬語が選ばれていた。
「さっきの試合の、雪ヶ丘中学のエースのことですよ」
及川も説明をするために歯ぎしりも恨み節も止め、余所行きの態度で話を進める。
「エースって言うとあの、小さいのに一番活躍してた選手ですか?」
状況が飲み込めない中、とりあえず澤村が代表して会話を続け、突然降って湧いたこの謎を明らかにしようとする。
「えぇ、その彼です」
「話すと長くなるんですが……」
「彼、一応僕らの知り合いでして」
ついでにあのウシワカとも、と小さく付け加える。
「はぁ……」
まだ話の見えない澤村たちは、だからなんだと言わんばかりに気の抜けた相槌を打った。
「昔、烏野さんに “小さな巨人” っていたじゃないですか」
当然知っている異名を聞き、察しの良い澤村と菅原は何かに気づく。
「まさか……」
なお、田中はなにも気づいていない。
「そう、そのまさか」
「日向翔陽は烏野へ進学するつもりなんですよ」
「……え?」
「えぇぇぇぇ?!」
澤村、菅原の声が綺麗なハモリを見せ、二人の叫び声が観客席にこだました。その目の前で、誠に遺憾ですと言わんばかりの身ぶりで腰と頭に手を置く及川は、しばらく無視されていた。なお、田中はまだ理解していなかった。
「……ついでに」
「これはたぶんですけど」
無視されたことを無視して及川がさらに続ける。
「北川第一のセッター、影山飛雄」
「一応、僕の後輩なんですけどね……」
そこで及川は表情を変えた。嫌悪でもなければ敵意でもなく、さりとて好意でもなければ善意でもない。そんな捉えどころのない苦笑いを浮かべながら、及川は最後まで話しきる。
「どうせ飛雄は翔陽にベッタリだから」
「そちらへ行くと思いますよ」
「
ジットリとしたどこか重たい湿度と共に。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!」
今度は、三人のハーモニーが会場に響き渡った。
やっぱり未来の警察官はモノが違うぜ!
大地さんカッケーぜ!
絶対、烏野に戻ったあと澤村がいかにかっこよかったかって 延々と語ってますよ、田中は。
西谷も一緒になって騒いでそうですね。
本文中に入れる隙間がなかったので後書きにて補足ですが、
及川たちが歯ぎしりをしていたのは
「いずれ会おう 」
↓
「決勝で会おう」
↓
「青葉城西は決勝まで来ない」
って変換していたからです。
ところで、
夏至生まれっていうと太陽の化身!!って感じですが、
6月生まれっていうと梅雨の化身!!って感じで不思議ですよね。
次回はそんな梅雨生まれの日向翔陽くんと、試合の途中でベンチに戻された影山飛雄くんの会話です!
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