口調に違和感あったらコメントください!
たぶん今日明日でもう少し投稿します。
日向翔陽と影山飛雄の出会いから早一ヶ月、日向は北川第一中学バレーボール部にすっかり馴染んでいるように見えた。少なくとも表面的には。ほぼ毎日の練習に混ざるようになった日向の送迎は、結局彼の母が担当することになった。当初は顧問である日下部が担当するはずだったが、女子バレーボール部の指導や日々の業務に支障が出るため泣く泣く辞退することとなったのだ。とはいえ、女子バレーボール部の有志による朝練を通して、彼女と日向翔陽の関係は続いている。そのため、そこまで悲観的な状況ではないのかもしれない。勉強も英語を中心として順調に進み、バレーボールの練習も昨年以上に量と質の高いものを積み重ねていた。まさに、順風満帆、前途洋々。
その矢先のことだった。
GWに設定された練習試合において、ミスが多発した及川がベンチへ下げられてしまった。それだけであれば単なる交代で済んだが、代わりにコートに立っていた選手が問題だった。その選手は影山飛雄、及川の背後に迫っていた天才のうちの一人だった。この時点で、これまで水面下で大きくなっていた問題の存在に、それがついに表面化しかけていることに気が付いている者は誰一人としていなかった。いや、もしかしたら相棒である岩泉だけは薄々勘づいていたのかもしれない。少なくとも、他の一年生と同様に試合のサポートをしつつ、これが影山の中学デビュー戦か~と眺めている少年、日向翔陽は欠片も気が付いていなかった。
彼が他校の練習試合に同行しているのには大きく二つの理由がある。第一に、この練習試合がGW中の練習の一環として組み込まれており、他の練習だけ出て練習試合だけ席を外す必要がなかったからだ。第二に、北川第一との関係を順調に継続していくためにどうするべきかを日向なりに考えて行動に移したからである。つまり、練習に参加するだけして、試合の応援やサポートをしないのは、いわゆるフリーライドであり一種のズルであると日向は考えたのだ。もちろん、日向自身は「フリーライド」などという言葉を知っているわけではなかったが、体感的にこの不公平感が不和を生むことを理解してはいたのだ。
日向は試合には出ないが、試合に同行し、当たり前のように片付けまで参加していた。それゆえ、あの場面に遭遇してしまったのだ。それも、単なる傍観者としてではなく、及川を追い詰める加害者として。あるいは、及川に拒絶される被害者として。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
岩泉一は悩んでいた。
相棒、あるいは腐れ縁たる男の不調に。
後輩、あるいは天才たちのプレッシャーに。
及川の不調は、少し前から続いていることであり原因は明白だった。これまでは、白鳥沢のエースにして絶対的な壁として立ちはだかる男、牛島若利の存在が彼の不調の原因だった。そして、現在はそれに加えて、影山飛雄と日向翔陽という二人の天才の存在が彼の不調に拍車をかけていた。セッター候補である影山の存在が、及川に影響を与えているのは想像に難くないことであり、幾人かがそれには気が付いていた。しかし、ポジションも選手としての方向性も異なる日向までもが、及川に影響を与えていると気が付いている者は少なかった。しかし、岩泉にはわかっていたのだ。及川が、日向翔陽という小さな怪物を通して、牛島若利という怪童を見ているということに。
なぜなら、おそらくそれを、日向翔陽の大きさを及川以上に感じているのが岩泉本人だったからである。現在の北川第一におけるエースは岩泉一である。もしかしたら、高校に上がってもそれは変わらないかもしれない。他方で、日向翔陽もまた、エースの素質を備えた選手であり、その才能は高校に上がり身体が出来上がるにつれて開花していくことだろう。つまり、及川がセッターとして影山を脅威に感じているように、岩泉も日向をエースとして脅威に感じているのだった。
だが、及川と岩泉の立場には明確な差があった。それは、スパイカーはコート上に何人も存在しうるが、セッターはたった一人しかいないという違いである。もちろん、彼らの生来の気質の違いや、そもそも日向は正式なチームメイトではないという点も大きな差を生む要因にはなっているだろう。また、エースもセッター同様チームに一人しかいないという視点もありうるかもしれない。なにはともあれ、こうした様々な事情が及川と岩泉の間に意識の差を生み、似て非なるそれぞれの考えがすれ違うことで、及川が抱えていた問題を顕在化させてしまったのだ。
たしかに、岩泉は及川の不調を気にしていたし、その原因が後輩にあるという点まで見抜いていた。しかし、その不調の深さには気づけなかったのだ。なぜなら、岩泉が感じていた脅威と及川の感じていた脅威には大きな差があったからだ。
脅威は焦りを生み、焦りは恐れを生んでいた。
いつしか、脅威は恐怖になっていた。
そう、及川は感じ取っていたのだ。背後に迫りくる脅威に、喰われ、咀嚼され、糧にされる恐怖を。それはまさしく捕食者に対する恐怖であり、拒絶は防衛本能であった。
「及川さん」
「サーブ教えて下さい」
「おれにも!」
「教えてください!!」
明日も早いのにまだ練習を続けている及川を止めるため、体育館に入った岩泉の耳に飛び込んできたのは、先輩に教えを乞う後輩たちの無邪気な声だった。岩泉の目に飛び込んできたのは、目を輝かせる二人の後輩と、
「落ち着け!このボゲッ!!」
及川の腕を受け止めつつ、声をかける。いや、怒鳴ると言った方が適切かもしれない。
「すまん、影山も日向も」
「悪いが今日は終わりだ」
驚き、冷や汗をかいている影山と、予想だにしていなかった光景に唖然としている日向を追い出し、岩泉と及川の会話は続く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「”6人”で強い方が強いんだろうが!」
「ボゲが!!」
岩泉の怒鳴り声を背景に、日向と影山は帰り支度を済ませていた。日向は難しい顔をして腕を組みながら、影山は涼しい顔をしておにぎりを頬張りながら。
「影山、お前もっと……こう、なんかないのかよ?!」
日向はその切り替えの早さにびっくりしていた。なんなら少し引いていたかもしれない。
「いや、ああいうのよくわかんねぇし……」
「まぁ及川さんにも色々あるんだろ」
「……日向こそなんでそんな難しい顔してんだ?」
影山にとっては、むしろいつも太陽のように笑っている日向が表情を曇らせていることが不思議だった。
「なんつーか、おれにとっての及川さんってもっと”大王様!”って感じなんだよ」
「……でも、及川さんも
一人で納得してたような顔の横目に、今度は影山の方が難しい顔をすることになる。
「大王様……??」
「わかるような、わかんねぇような……」
目を細めて、脳内に王冠を被った及川を思い浮かべる影山。そんな影山に日向が真面目な顔をして声をかける。
「ところで、影山クン?」
初めて呼ばれる呼び方に戸惑う影山だったが、続く言葉に顔を明るくした。
「中学初のセッターはどうだったよ」
問いかける日向も、その答えがわかっているかのように口角を上げる。
「……最高だった!」
今日の練習試合を思い出したのか、珍しく興奮した様子で声量を上げ拳を握りこんだ影山は続ける。
「次は公式戦に出る!」
「その次は正セッターだ!」
「そんで、全国に行って強いやつらと戦う!」
未来の相棒、永遠のライバル。
これから待ち受ける苦悩の数々を知らず、ただ笑う。
無邪気に、そこに確かな友情を乗せて。
「……つーか、日向は早く部員集めろよ」
「俺だけスタメンになっても試合できないだろ」
水を差された日向はとりあえず遠い目をして、「まだ影山の言葉遣いが荒くないんだなぁ」などと現実逃避をしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝。
「及川さん!」
「サーブトスのコツを教えて下さい!」
日向は正直ドン引きしていた。昨日の今日で遠慮なく踏む込めるその無神経さに。
「え?何?」
「俺の座右の銘を聞きたいって?」
日向は正直ドン引きしていた。まったく聞き耳を持とうとしないそのあまりの大人げなさに。
「いえ、サーブトスのコツを教えてください」
日向は正直ドン引きして……。
「”叩くなら折れるまで!”」
日向は正直……。
「……そうですか」
「サーブトスのコツを教えてください」
日向は…………
……考えるのをやめた。
その後、岩泉が止めるまで彼らの言い争いは続き、日向は影山が及川に苦手意識を持っている理由と、及川が影山に大人げない態度を取る理由の一端を知った。
――約二年と数か月後。
市民体育館。
中学時代、最初で最後の
そのうち追記します。
とりあえず「GW中の〜」という設定はオリジナルですのであしからず……。(公式設定があったら教えてください)
日向
→影山が「ボケェ!」と言わないことにいまだ慣れていない。噂に聞く「"6人"で強い方が〜」を生で聞いた。これを聞いて「何を当然のことを」って思っていた影山に再びドン引きしたが、友情に陰りはない。
影山
→そりゃ6人で強い方が強いに決まってるだろ、と思っている。日向の前では少し口数が多くなる(日向が会話を広げてくるので)。及川さんの前でも少し口数が多くなる(及川さんが聞く耳を持たないので)
及川
→一ヶ月で限界がきた。岩泉がいなければどうなっていたか、と影で反省していた。それはそれとして影山にコツは教えない。
岩泉
→なんとなく察していた問題が顕在化してしまったが、目の前で起きてくれてよかったと思っている。人知れず日向のことをライバル視し始めている。
日下部
→出番ゼロで泣いている。オリキャラなのでサブとしてちょこちょこ出ます。(たぶん)
ハイキューの日が近い!!
感想、高評価待ってます!!!!!
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