なぜか空気めっちゃ重いです。
アンチヘイトのつもりは全くなく、かつ、原作再構築として妥当な展開だと思うのですが、気分が悪くなる人はいるかもしれません。
内容がショッキングだったら申し訳ないです。
一応ですが、恋愛なしタグは変わらず有効なのでBLを含め恋愛はなしです。
あと原作のセリフとか多少使っているんですが、大丈夫ですかね?(今さら??)
ということで第九話「裸の王様」、影山がメインの回です。
中学に上がったら三年生にすげぇ選手がいた。中学ってすげぇトコなんだなって思った。でもそういうわけじゃなかった。その人が、及川さんがすごかったんだ。
そう思っていたら、もっとすごい選手と出会った。身長は小学生くらいだったけど、プレーは飛びぬけて上手かった。もしかしたら自分よりも。
名前は、日向翔陽。
太陽のような男だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
影山飛雄にとって、日向翔陽は初めて出会う対等な相手だった。もし、兄弟がいたらこんな感じなのかもしれないなんて思う日もあった。その場合どっちが兄でどっちが弟なのか、なんて話はどこか気恥ずかしくて途中で考えるのをやめたけれど。
中学一年の春に出会い、それから丸二年間共にバレーボールを続けてきた彼らはまさに、ライバルと呼んで差し支えない関係になっていた。少なくとも、彼ら自身や周りの人間はそう思ってた。しかし、果たして本当に彼らはライバルなのだろうか。
本当に対等な存在なのだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
影山が二年間待ち望んでいた試合が、ついに始まった。試合前はチームメイトの態度にイライラしていた影山も、心なしかワクワクしているような表情になっていた。果たして日向はどんな試合を見せてくれるのか、日向はあれからどれほど強くなったのだろうか、と期待に胸を躍らせていた。そうして試合が始まり、日向はその期待を乗り越えてきた。試合開始直後のジャンプサーブ、その後のレシーブやブロックアウトはとても中学生のレベルとは思えないほどレベルの高いものだった。影山はそのプレーを見て昂揚していたが、その昂ぶりを打ち消す存在がいた。北川第一のチームメイトである。
正直なところ、影山には彼らがなぜバレーボールをちゃんとやらないのか理解できていなかった。最初の一年間はそもそもそのことに、自分と彼らとの差異に気が付いていなかった。影山の前を走り続ける先輩たちがいたからだ。少しずつ疑問が湧いてきたのは、及川や岩泉が引退してからのことだった。
なぜ彼らはまじめに練習しないのか。
日向なら居残ってディグの練習に付き合っただろうし、日向なら自分においていかれることなく坂道を走り切っただろうし、日向ならもっと真剣に一回一回の練習に向き合ったはずだ。
そんな気持ちが燻り始めたのが中学一年の途中、この気持ちが燃え上がり出したのが中学三年の春だった。最高学年になった影山は、キャプテンでこそないものの、他のチームメイトに指示出しをするようになっていた。それは、明らかに越権行為だったが、影山自身はそれが悪いことだとは思っていなかった。むしろ、練習のやり方がなっていない仲間たちに正しい努力の方法を示しているつもりでさえいた。つまり、ある種の啓蒙活動くらいのつもりで影山は他のチームメイトに檄を飛ばしていたのだ。(もちろん、影山は「啓蒙」という言葉を知らないが)
影山のその行為の念頭にあったのは、あるいは無意識のうちにイメージしていたのは、後輩を導く日向の姿だった。彼のその姿を、影山は「できないやつ」はこうやって導くのか、と受け取っていた。つまるところ、影山は、チームに日向がいない分、自分が日向の真似をしようとしていたのだ。少なくともそれがチームのためになると思って。
自分が口下手であることをある程度自覚していた彼は、しかし、自分に余裕がなくなると無口になり言葉足らずになることを自覚していなかった。そんな彼による「啓蒙」は、影山にとっては歩み寄りだったが、一方で他のチームメイトにとっては侵略だった。
そこから生まれるのは、すれ違い、軋轢、不和。影山なりの善意から始まった「啓蒙」へ返ってきたのは、チームメイトからの敵意だった。影山は、チームメイトに期待するのをやめた。そして残ったのは、どうしようもないチームメイトたちへの怒りであり、そこから生じる怒号だった。
雪ヶ丘との試合においても、チームメイトたちは腑抜けたプレーを続けていた。追えるボールを追わない、跳べるブロックに跳ばない、自分のトスに合わせられない。そんなチームメイトたちに対して影山がストレスを溜めているとき、あの超速攻が決まってしまった。自分のトス以上に速いトスを完璧に打ち抜く日向の姿は、あまりにも眩しいものだった。
そう、日向翔陽は太陽のような男。
太陽とは、見上げる対象。
太陽とは、届かぬ憧憬。
人は、太陽と対等にはなれない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
日向がマイナス・テンポの超速攻を決めて以降、第二セットは雪ヶ丘優勢で進んでいた。それというのも、もちろん日向の囮効果の増大によるところはあったが、それ以上に北川第一側の攻撃の乱れが目立っていたからだった。明らかに、超速攻を見てからの影山のトスが速くなってきているのだ。
「
影山の声がコートに響く。これまで、小声で呟かれる程度だった言葉がついに怒号となってチームメイトに突き刺さった。その言葉に、金田一を初めとした北川第一の表情が死んでいく。そう、すでに言い合いをする段階にはないのだ。本来、タイムアウトを取って監督から調整が入るような場面だが、北川第一の監督は何を考えているのかタイムアウトを取らない。タイムアウトを取っていない以上、プレーは進行していく。
バラバラになりだした北川第一とは対照的に、雪ヶ丘のコンセプトはブレない。個々の能力がまだまだ足りない分は、数とタイミングで補っていた。特に、三枚攻撃を仕掛けるときはWSもMBもセッターも、自分が打つつもりで走り込み、北川第一のブロックをこじ開けていた。日向の囮と攻撃枚数に翻弄される北川第一は押され、点差はどんどんと開いていった。
23-16、あと1点で雪ヶ丘のセットポイントである。
北川第一のサーブを後衛MBが見事に上げる。前衛レフトの位置には日向が、中央には前衛MBがいた。セットポジションに太白が入り、ボールをセットする。北川第一のブロッカーの視線が日向から離れ、ボールへ向かう。ボールはどこへ行くのか。注視していると異変に気付く。焦った雪ヶ丘セッターの表情、誰も走りこんでいないライト側へのトス。トスミスである。
ここまで二セット、日向の要望に応え、さらに攻撃が可能な時は走り跳んでいた太白の体力が底を尽きようとしていた。そもそも、マイナス・テンポを実戦で使用するのには無理があったのかもしれない。その無理を通した回数は、この試合で超速攻が使われた回数は片手で数えられる程度だったが、その程度の数で限界をむかえようとしていた。もうこのトスは失敗だ、と誰もがそう思った。
その、ほんのひと瞬きの間に、
日向翔陽が
かろうじて反応できたのは影山のみだったが、その影山にすらも触れられることなくボールは北川第一のコートに叩きつけられた。雪ヶ丘中学のセットポイントである。日向のスーパープレイに雪ヶ丘陣営が沸く中、本日何度目かの影山の声が響く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お前たちはなんで跳べない!!」
「なんで打てない!!」
影山のそれは、怒号というより叫び、叫びというより悲鳴だった。
「無茶すぎんだよ、お前のトスは!!!」
「打てなきゃ意味ねぇだろうが!」
負けじと金田一が言い返すが、それもまた泣き叫ぶような声だった。
「あ?」
「今、お前はなに見てたんだよ」
「日向なら!!!!!」
そこまで言って言葉を切り、息継ぎをして続ける。
「もっと速く動け!」
「もっと高く跳べ!」
「俺のトスに合わせろ!」
「勝ちたいなら!!!!」
気がつくとコート内は静まり返っていた。まるでそこだけ海の底であるかのように。
困惑しつつ様子を見ていた主審へ監督が頭を下げ、試合が続行される。今度は雪ヶ丘のサーブだった。そのサーブはやはり難なく上げられ、影山へと返る。
影山が雪ヶ丘コートへ視線を向けると、すでに日向を中心とした雪ヶ丘ブロッカー陣が陣形を整えていた。焦る影山はブロッカーを振り切るために
影山の背後から聞こえた音は一つだけ、ただボールが床へ堕ちる音のみだった。スパイクを打つ音どころか、ジャンプのためにコートを蹴る音すらも聞こえない。
背後へ振り返り、影山は
第二セット、雪ヶ丘のセットポイント。
トスを上げた先、そこには誰もいなかった。
前回のタイトルについて〜(空気激重)
初期の影山の「全部俺一人でやれれば……」という言葉と、擬似ユース以降の日向の「全部できるようにならなきゃ」という言葉の対比が好きです。
ということで第八話「全部一人で」は、発話者が影山に限らず日向でもあり、原作の対比を念頭に置いたタイトルでした〜。
第九話に関しては少し突貫で文字に起こしたので、加筆修正するかもしれません!
対等うんぬんについてはいずれ回収するのでご安心を。
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