地獄発、地獄行き   作:有森

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カイザー

結局あの後ゲヘナの風紀委員はあっという間にアビドスから退散していった。

あと、ハルカさんも含めて便利屋68の皆さんからめっちゃ謝られた。

どうやら、何故かハルカさんが柴関ラーメンの付近に大量の爆薬を設置していたらしく、迫撃砲の衝撃でそれが起動という形で爆発が起こってしまったらしい。

 

あれそういうことだったのか…

 

とりあえずハルカさんがなんか今にも死にそうな顔してたからほとんど傷も負ってないから気にしなくていいという旨を伝えて、でもその分大将さんに謝ることを約束させて解散した。

そして、それが昨日のこと。今日はというと…

 

「これは…」

「はい、カイザーローン…というよりカイザー系列会社の理事にあたる者の不正疑惑です」

サンクトゥムタワーにて、行政官兼連邦生徒会長代理のリンさんに直接先生と集めた資料を提出しているところだ。

…半分ほど悪い大人たちに手伝ってもらったのもあるけど。

 

一通りそれらに目を通しからリンさんは私の方を向き直して眼鏡を整えて口を開いた。

 

「それで、どうするのですか?」

「カイザーに対してシャーレの権限を使って直接捜査を行うそうです。それに差し当たって念の為連邦生徒会の方に連絡を取っておこうと思いまして。一応ヴァルキューレも巻き込んで」

「なるほど…分かりました。ここまでの証拠が揃っていれば言い逃れもできないでしょうが…こちらからも令状を出しましょうか。シャーレは発足からまだ日が浅いためその権限をよく理解されていない可能性もありますし、それにつけて多少日数が取られる可能性もあります。連邦生徒会そのものからの捜査令状ともなればそうそう言い逃れもできないでしょう。作成まで数日かかりますが…」

「あー…」

正直武力に物を言わせて殲滅するだけなら何の問題もなくやってのけられるし、それで解決するならとっくの昔にやってる。

でもそれをやったとしても根本的な解決には至らないし、元々私が()()()()()結末から少し遠ざかるからやってない。

なら日にちを遅らせて…本来攻め入るその日に提示してやるほうが良いか。

 

「分かりました、お願いします」

「了解です。…どうですか、シャーレは」

…?

用件を終えて部屋を出ていこうとしたその時に後ろからそんな言葉をかけられた。

 

「どうと言われましても…楽しいですよ。大変ではありますが…やりがいは、とても。先生も…まあ、書類には苦しめられてるみたいですが…」

「それに関しましては、申し訳ありません」

「…連邦生徒会長の捜索、どれくらいリソース使ってるんですか?」

ほんの気まぐれみたいな、ちょっとした好奇心みたいな感じではあった。

ただ…

 

「……八割ほどです」

「八割…そうですか。まあ連邦生徒会長の捜索ですからそれくらいは……八割?」

八割!?

これは想定してなんだ…想定より遥かに多いな…!?

 

「シャーレに流れ込む業務があんな量になるわけですね…もう少し削りません?」

「正直なところそれも考えていたのですが、連邦生徒会長が戻ってきてくれさえすれば業務量も格段に少なくなるはずという声が多く、現状維持という形に…」

あー、全体的にそういう声が多かったのか。

何というか…なぁ…ゲヘナ風紀委員じゃないけどワンマンプレイに頼りすぎてるとそのうち絶対痛い目見るって分からないものかな…いや、連邦生徒会長が優秀すぎたのも原因だったんだろうけど。

と、リンさんは長話をしすぎましたね、と咳払いを一つした。

 

「ともかく、カイザーコーポレーションに対する令状はこちらで作成しておきます。詳しい事実確認なども含めて三日ほどで準備できるはずですので、そこで」

「分かりました、よろしくお願いします」

一礼して部屋を出る。

よし…これでだいたいやれることは終わったね。

あとは先生からの招集を待つのみ…ん?

 

と、スマホがポケットで震えた。

 

『“ごめんね、今からアビドス来れる?今からカイザーに乗り込むことになったんだけど…”』

…はい?先制攻撃って事…?ユメさんがいることでまさか何かしら未来が変わって先制攻撃しようってことにでも…あ、違う、これあれだ。カイザーが砂漠で何かしてるって情報伝えられて確認しに行くやつだ。

 

『分かりました。これから向かいます。少しだけ待っていてください』

自室に戻ってSR(Moriens)HG(Memento-mori)の残弾を確認、カイザーに乗り込むなら相手はオートマタだから念の為単眼鏡のナイフモードを作動させて試し振り…うん、問題ない。

ロングコートの内ポケットにHG(Memento-mori)と単眼鏡、いくつかの武器と()()()()()()()()()()()()()も一応入れて最後にSR(Moriens)を背負って普段の状態を完成させ、部屋を出る。

シャーレの鍵もちゃんと閉めたのを確認してサンクトゥムタワーを飛び出て列車に乗る。

指示された駅へ揺られながら砂漠地帯へ到着…と。

 

「あれ」

「あ!やーっと来た!」

既に見覚えのある…アビドスの面々がおり、セリカさんが手を振ってくれた。

先生もいないのを見るとアヤネさんと先生は校舎待機って感じかな?

 

「こんにちは。話は先生からあらかた聞きましたが、詳細までは聞けていないので行きながら聞いてもよろしいですか?」

『“あ、それは私の方から話すよ”』

と、通信越しに先生が声を上げた。

どうやら柴関ラーメンの大将さんから柴関ラーメンのあった場所から立ち退き令を出されていた事を教えてもらって地籍図を確認したところ、アビドスのほとんどの自治区がカイザーコーポレーションに渡っていたらしい。

更にヒナさんから、アビドス砂漠でカイザーが何かをしているという情報を伝えられたらしくて、それの確認に今向かっている、ということらしい。

 

ちなみに私は移動しながらビナーに見つからないか内心ビクビクしてる。

まあ会敵しても真っ向から叩き壊せばいい話なんだけど…ホシノさん達もいることだし、先生の指揮も一応受けられる状態だから勝てないわけじゃない筈…いや、なんか強化段階が上がったみたいな話黒服さんからもらったな。

となるとやっぱり直接対峙させるのは良手とは言えないか。

 

「あっ、ここ…」

と、ユメさんが声を上げた。

何かあったのかと思って周りを見回してみて…あー、と思い出した。

 

「ユメさん、どうかしたんですか?」

「ここ、前に話したすごい大きい蛇のロボットと戦った所だ…」

「…やっぱりですか。似てるだけかと思ったんですが…ん?」

周りを見渡そう…として。

視界の隅、かなり遠くに点のようなものが見えた。

 

「シグレさん?」

単眼鏡を出してズーム、点の方を覗く。

 

「あれは…進行方向に何かありますね」

明らかに二年前来たときにはなかった人工物があった。

…人工物と言うか…人工所?場所なんだけど。

 

…カイザーPMC基地だ。

 

『!!本当です!何かあります!』

「えっ、何も見えないんだけど!?シグレさんよく見えたわね!?」

目は結構良いので、と答えて考える。

…さて、そういえばここあの理事がいるんだよな…うーん、冷静にならないといけないけど大丈夫かなぁ…うわー、嫌だなぁ…出会い頭に殴りかからないように気をつけとこう…

 

『あれは…巨大な町、工場…或いは駐屯地?と、とにかく物凄く大きな施設のようなものがあります!』

「こんなところに施設?本当にこっちからは何も見えないんだけど…」

『取り敢えず、肉眼で確認できるところまで進んでみて下さい!』

途中襲い掛かってくる野良オートマタをなぎ倒しながら、基地が見える場所まで近づいていく。

そして残り100メートルもない所まで近づいて、ようやくその全貌と詳細が見えるようになった。

 

「……なにこれ?」

「工場?石油ボーリング施設、ではなさそうな……」

そこにあったのは本当に巨大な施設。

塀には有刺鉄線が張り巡らされており、その隙間から見える内部もなかなか物々しい代物。

 

「これが…」

これがPMC基地か。

確かにここまでの規模となると落とすのは多少苦労しそうではある。

…苦労しそうではあるができないとは言わない。むしろこの程度ならまだ楽な方だ。これならビナーと対峙したときの方が万倍キツイ。

 

『施設に何らかのマークを発見しました!』

と、通信からアヤネさんの声が聞こえた。

 

「…これって…!」

「…カイザーPMC」

ユメさんも見たことがあったみたいで、その言葉をホシノさんがつないだ。

 

『っ!?…はい、ユメさんとホシノ先輩の仰る通りカイザーPMCです』

「カイザー…?こいつらもカイザーコーポレーションってこと!?」

「はい、カイザーコーポレーションの系列会社で…」

「もうどこに行ってもカイザー、カイザー、カイザー!一体何なの!?」

あの、セリカさん、気持ちはすっごい分かるんですけどアヤネさん話続けたそうなんですけど…

 

「それに、PMCっていうことは…」

「…え、なんか不味いの?」

「PMCっていうのはPrivateMilitaryCompany…まあ言うところの民間軍事会社ですよ」

「ぐ、軍事会社!?」

「ヘルメット団のようなチンピラとはレベルが違います、本当に組織化されたプロの軍隊のようなものです!」

「……軍隊…!」

こんなところにそんなものがどうして、と言いたげな表情だ。

正直まあそう感じるよね。

 

「退学した生徒や不良の生徒達を集めて企業が施設兵として雇っている噂は聞いたことがありますけど…」

と、そんなノノミさんの声を遮って、どこからともなくけたたましいサイレンが耳を衝いた。

 

「な、何何!?」

 

「侵入者だ!」

「捕らえろ!逃がすな!」

武装したオートマタがぞろぞろと湧いて出てきた。

 

「うへぇ、この量はちょっとびっくりだなぁ」

「ん、熱烈な歓迎」

「い、言ってる場合!?ちょ、これどうするの!?」

 

『“皆!一旦撤退!もう少し広めのところに出てそこで迎え撃つよ!”』

と、そんな時に先生からの指示が飛んできた。

 

殿(しんがり)は任せてください、この程度の量ならまだなんとかできます」

HG(Memento-mori)を抜いて次々発砲、一番近くにいるオートマタを次々落としていく。

それも抜けてさらに近づいてくるオートマタにはインファイトで弾き飛ばして、少し余分に撃って沈黙させる。

 

「射撃精度えげつないね…」

「慣れてますから」

隣でタンク役を買って出たユメさんの言葉にそう返しながら弾倉を交換、それを隙に見て接近してきたオートマタを蹴り飛ばしてバランスを崩し、ついでにその足を掴んでそこら辺のオートマタに投げつけておく。

 

『“よし、ここらへんで迎え撃つよ!陣形はいつも通り、ホシノと梔子さんを最前衛で相手を止めて、アヤネとシロコはオートマタをできるだけ一箇所に集めて!ノノミは後衛から纏まったオートマタを!シグレも基本後衛にいてもらうけど、ホシノと梔子さんが不味そうなら指示を出すから前衛に出て!”』

了解、という旨の返事を帰す。

 

…さて、削れるだけ削りますか。




ちょっと端折りすぎ…かな…?
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