地獄発、地獄行き   作:有森

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暁と夢

結局そのあと現連邦生徒会長と直接会って、(未来の)連邦生徒会長に話したのと同じ内容を話した。

少し面白がって聞いてくれてた気がする。

で、色々話を聞いた結果、私が元々ミレニアム生だったっていうのもあってミレニアムに編入って形で入学することになった。

体の時間は巻き戻ってなかったけど、正直身長も体型も高一生の時からさほど変わってなかったからバレずに一年からそこに転入っていう形で。…ここで三年に転入でもしたら、あの悲劇が起こる前に卒業してしまう。

ともあれ、新学期が始まってまだそこまで時間が経ってないみたいで、なんとかそういう形に落ち着いた。

 

「…さて…」

で。

今の私には学籍がないどころか、学生証がないために戸籍がない状態と同じでその発行まで少々時間がかかるし、そこから制服の取り寄せとかもあるからそれまでだいたい一週間くらい自由にしててね、と言われたから仮の学生証を貰ってとりあえず各学校に行ってみることにした。色々様子も見ときたいからね。ただの時間遡行じゃないことは確かだから、何かの差異がないかを探さないと。

 

 

…というか戸籍って一週間で取れるの?

いや、制服の注文と発注とか転入手続きとかもあるから…余計に一週間は無理じゃない?

 

まあ、連邦生徒会権限でなんとかしたりするのかな。そこは置いておいて。

 

 

まずミレニアム。

さして変わることなく平和だった。せいぜい、多分エンジニア部と思われる方から爆発音が聞こえるくらいで…これ平和って言って良いのかな…うん、平和だね。多分。

あと、今は二年前、私が一年のときと同じ…つまり先生が来たときの三年生が一年生の状態みたいだ。

…私の体は時間の変わりようがわかりにくいから気付かなかったけど、丁度時期的には元通りになった感じだね。

 

次にゲヘナ。

まだ連邦生徒会がバッチリ機能してるのもあって、治安はまだマシな方。……正確には、(生徒会長失踪後のあの頃から考えると)まだマシな方。全然治安悪かった。

銃撃戦は日常茶飯事、住宅街で爆発が多発したりするのが現状。万魔殿と風紀委員さん、もうちょっと頑張ってください…いや、頑張ってるのは分かってるんですけど…

 

そして数日かけながらトリニティや百鬼夜行、レッドウィンターとかも回ってみたけど、連邦生徒会が機能してるからかやっぱり治安が元よりそれなりに良いくらいで、他にそれほど変わりはなかった。

 

そして最後に、今行ってるのがアビドス。

 

「…あっつ…」

ここを最後にした理由にもなるんだけど、私暑いの苦手なんだよね…寒いのは得意なんだけど。

砂に覆われた完全な砂漠地帯の中、まだ薄すらとすら見えない場所にあるアビドス高等学校。

…うん…何と言うか、特に悲惨だった場所というべきか…うーん…あ、やばいちょっと色々ありすぎてこみ上げそう。とりあえず無名の司祭とゲマトリア…というかベアトリーチェは許さん。ついでにカイザー。ボコす。

 

……それはさておき、今はホシノさんも一年生なわけでまだギリギリ生徒会が存在してる時だったっけ…?

 

アビドス高等学校は地域を襲った砂嵐の処理に追われた上、更にいろんな事情が重なったせいで悪徳金融からお金を借りる羽目になって、莫大な借金が嵩んでる。

二年後の時点で多少返済は進んでたとはいえ9億6500万ちょいちょいの借金があったはず。その時点でおおよその残り返済年数は確か309年ちょっと…となると、利息除いて年の返済価格は単純概算で大体300万強くらい?月で26万くらいで、現時点の借金は大体9億7000万強くらい?…うっわ、全然減ってない。まあこれ単純計算だから利息が大きすぎて利息しか払えてなかった時があったこととかを考えるともうちょっと低くなるかもしれないけど、にしても重すぎるのにも程があるよね。…カイザーめ。

こりゃ絶望感半端ないしホシノさんも半分黒服に負担させるために交渉しようとするわ…あの人、普段ぽわーっとしてるけど根が良い人だからなぁ…まあ良すぎて問題起こしたんだけども。

 

……また嫌な記憶が蘇りかけた。

 

「にしてもあっつい…」

それにしてもやっぱり暑い。

水筒二本持ってきてて正解だったな…ん?

そこで、違和感。微かに地面が揺れているような気がする。

まあここの砂漠化の原因は砂嵐だし、もしかしたらその系統のものかもしれない。でも。

だとしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ──!?」

目を凝らしてみると、突如、前方の遠くの地面が凄まじく蠢き出していた。

…いや、ちがう!あれは…砂の中から何かが出てきてる!!…待って、まさか、ここでこれって…!

 

「ッ!ビナー…!!」

白い重鎧のような外殻を持った蛇の形をしたロボットのような物。過去に対峙したことはある。

神を解析し、それと対峙するために組み立てられた対絶対者用人工知能、神名十文字(デカグラマトン)。電子戦にも強く、油断はしていたとはいえどもあのヒマリさんのネットワークをハッキングすることもできたまさに神の如き力を持っている。

その第三の預言者、ビナー。

しかも悪いことにその近くに人影らしきものがあるようにも見えた。

 

「ッ…間に合わない…!」

でも、どう考えてもここからあのビナーのいる場所までは全力で走っても数分はかかる。数分もあれば、アレからすれば人一人殺すのは造作もない。

 

「……神秘、をッ…!」

だから、使()()

ヘイローを輝かせ、体中に神秘を流す。

…私の神秘の性質は蓄積、もしくは保管。意識すれば神秘をタンクのように溜め込んで、任意の時に使うことができる。

元々溜め込んでた神秘はもう完全に使い切っちゃってたけど、この数日でほんの少しとはいえ回復してる。万が一用に溜めてて良かった。…いやまあ、ほとんど溜めるのが癖になってるだけなんだけど。

 

砂を蹴って跳躍、さっきまでの数倍の速度を出して急ぐ。

と、走ること十数秒。やっと見えてきた。が…

 

(!!不味い!)

ビナーが光線を吐き出そうとしているその刹那。前には、防御していた盾を吹き飛ばされたのか、多少よろめいている女学生が一人。

まあ、あの体勢からならまだ防御までは持っていけるだろう。

…でも、だからと言って勝てるかと言われて首を縦に振れる状況じゃないのは確か。

 

咄嗟に手榴弾を五、六個出してビナーの前に思いっきり投擲、背負ってた愛銃であるSR(Moriens)を構えてそのうち1つを狙う。

 

───ここ。

 

不安定な体勢で放った弾丸は、それでも確かに手榴弾のうちの一つを撃ち抜いて、ビナーの顔の真下で爆発を起こし、その反動でビナーの顔が少し上に弾かれて、光線は虚空に打ち出された。

ッ…セーフ…

 

「大丈夫ですか」

「あな、たは…?」

近づいてみると、彼女は既にかなりダメージを受けているみたいで。制服も一部破れたりしていて、そこから見える肌にも傷がついて血が滲んでいる。どこからどう見てもかなり消耗してる。

…この人は…いや、今はそれどころじゃないか。

見上げたところで、ギロリ、とビナーの目が私を捉えた。

 

「…望むところ」

愛銃を構えて足元を大きく踏み込む。

衝撃で砂が爆発したように舞い上がって砂煙が舞った。

 

「やっ!と、ほっ…ァ!」

それでも乱発される攻撃を躱しながら接近、大穴の近くまで来て大きく跳躍する。

…無論、私一人でどうにかなるなんて思ってもいない。あの時は先生の指揮があって、他の生徒もいっぱいいて、支援も、前衛もいた。それでやっとだった。

しかも私は基本後衛陣営だからむしろ前進するなんて愚策も良いところだ。

でも、今の目的は撃破じゃなくて()退()()()退()。相手を退かせる、もしくはこっちが逃げ切れれば何の問題もない。

しかし、相手も馬鹿じゃない。爆撃やその巨躯を活かした衝撃、触れればただでは済まない光線などをバンバン放ってくる。

 

「まだまだ…!!」

それでも。もう残り心許ない手榴弾と神秘を利用して急接近、蛇のような体の首あたりの装甲にしがみつく。

 

「ッ…ぁア!」

体をよじるように振り回されて吹き飛ばされそうになる。でも、手に集中的に神秘を回して離さない。

反動を利用しつつ、白い装甲と装甲の間、接続部に向かって更に神秘を籠めた膝蹴りを思いっきり打ち付ける。そして、そこにできた小さな亀裂に…

 

「退、け…!!」

再度愛銃を至近距離で乱射し、手持ちの手榴弾を全て使って装甲を一枚破壊、引き剥がした。

想定外の衝撃だったんだろう、数瞬止まったその隙。お得意のレーザーを撃つことすら忘れたのであろうその隙を狙って再度、もうなけなしの神秘を篭めて顔面部を蹴り上げて視線を外させる。

その間に地面に着地、説明するヒマもなく一人のその生徒の方に走る。

爆風で愛銃が吹き飛んだけど今は気にしてられない。

 

「逃げますよ!!」

彼女の構えていた盾はあまりに重かったから後で回収しにくればいいと説得して、怪我でうまく体が動かないという彼女の体を抱えて全速力で駆け抜ける。

私の銃も彼女の盾も、後で回収しに行けば何とかなるはず。

 

必死に走って、走って、少しの間感じていた背後からの気配が消え去ってようやくスピードを落として振り向くと、ビナーの尾が砂の中に潜り込んでいくところだった。

……危なかった…ギリッギリも良い所だ。もしここで追撃でレーザーなんて食らわされてたらそれこそ一溜まりもなかった…もう神秘の蓄積残ってないし…

腕の中の彼女にももう動けると言われたから下ろしたけど、ふらついているのもあって肩を貸して。

彼女も通っているという、この近くの学校へ…本来の目的地、アビドス高等学校に向かうことになった…その時。

 

「…!あ、ホシノちゃんだ…」

「はい?」

ふと気づいたように声を上げた彼女の目線の方を向くと、確かに遠くの方から、小柄な女子生徒が走ってきているのが見えた。

 

「せ、先輩、それ…!?」

桃色の短髪を振りながら近づいてきてたのは、オレンジと青のオッドアイを持った生徒…うん、彼女が言ったように確かにホシノさんっぽいんだけど…なんだろう、なんか違う気もする。

目も髪も記憶どおりで…いや、まあ髪の長さはショートだけど、髪の長さくらいいくらでも変わるからなぁ。

それに…なんていうんだろ、雰囲気が若干刺々しい?どう考えてもあのふわふわした感じのホシノさんと同一人物とは思えない感じがする。

…むしろ、この隣の人の方がホシノさんと似ている感じがして……

 

「……あの?」

「!あっ、すみません、考え事をしていました。何ですか?」

なんというか、視線が鋭い。

 

「……おそらくですが、何かに巻き込まれていたユメ先輩を助けていただいたんでしょう。ありがとうございます」

「ホントだよぉ…もうへとへとで、あのままじゃ暑さにもやられて干からびちゃいそうだったよぉ…」

「縁起でもないこと言わないでください。あと、どこかに行くときは最低限連絡をくださいと何度も───」

 

「…!!」

ユメ…そうだ、梔子(くちなし)ユメさんだ、思い出した!

砂漠の中で衰弱死してしまったって言われてた、アビドス高等学校最後の生徒会長、ホシノさんの2年年上の先ぱ、い………

 

 

 

───あれ、私もしかして過去捻じ曲げた?




正直これがやりたかった。
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