地獄発、地獄行き 作:有森
どうしても原作と同名のキャラがいるのは嫌だという方は申し訳ありませんがブラウザバックをお願いします。
「ともかく!」
コホン、と咳払いを一つして冷酷な算術使いことユウカさんは話を続けた。
「本当に諦めが悪いわね、モモイ。廃部を食い止めるために、わざわざ『シャーレ』まで巻き込むだなんて……でも無駄よ」
「わ、わかんないじゃん!」
要するに、ユウカさんの言い分ではゲーム開発部は部員数も足りていない上に実績もそこまで無い、むしろテイルズサガクロニクルが受賞した「クソゲーランキング一位」という称号によってミレニアムに泥を塗ったも同然だという。
確かに、そもそもミレニアムは結果主義。努力するのは当然で、その上でそこに結果がついてくるか否かというところが重視されるから、部費を貰っている以上はその〝結果〟をしっかりと出さなければ部活としての存在意義はないものとして扱われる。
その点でいえばユウカさんはだいぶ温情のある対応をしてくれてたんじゃないかな…
「でっ、でもでも!ほら!結果ならあるもん!私達もゲームを開発してるんだから!」
「そ、そうですよ!テイルズ・サガ・クロニクルはちゃんとあのコンテストで受賞、も……」
「……そうね、確かに受賞してたわね。ええ…」
チラ、とユウカさんはこっちに目線を向けた。
…あれ、成果扱いして良いのか…うーん、ちょっと悩みどころではあるんだけど…
「……その反応を見るに、先生はご存じないようですね。シグレさんは知っているようですが…テイルズ・サガ・クロニクル、このゲーム開発部における唯一の成果です」
「“あれ、受賞までしてるんだったら…”」
問題はないんじゃないか、そういう考えに至るのもまあ当然。その受賞内容がアレじゃなきゃね…
「…えぇまぁ、その…何というか、私も実際やってみたんですけど…その、えーと…」
最適な言葉を探す。
どう言う?どう言うのが一番
「…シグレさん、わざわざこの子達を庇う必要はありませんよ。実際、寄せられた感想はとても素晴らしいもので溢れかえってましたし」
〝私がやってきたゲーム史上、ダントツで「絶望的」なRPG。いやシナリオの内容とかじゃなくてゲームとしての完成度が〟
〝このゲームに何が足りないかを数えだしたらキリが無いけど……まぁ、一番足りてないのは「正気」だろうね〟
〝このゲームをプレイした後だと「デッドクリームゾーン」はもしかして名作の部類に入るんじゃ……って思っちゃうわ〟
「ま、まぁ…私も、ちょっとアレはゲームとしての擁護はしかねるといいますか…」
「し、シグレさんまで!?」
なんて言うんだろう…その、そもそもゲームの作り方とかシナリオとかというか、根本的に何か勘違いしてるんじゃないかって思っちゃうんだよね…いや、私にできないことをしてる時点で尊敬はできるし、すごいとは思えるんだけど…その、なんというか……
…誰に弁明してるんだろ。
「わ、私達のゲームはインターネットの悪意なんかには屈しな……」
「例えユーザー数が無限にいたとしても沢山の評価が収束すればそれは真実に一番近い結果よ、それに貴女達の持っている結果はそのクソゲーランキング1位だけでしょう?」
そう。
受賞
……まあ、でも。
チラ、と先生のほうを見ると、何かを思案するように目を細めていた。
……ま、だいたい考えてることはわかるけどね。
「…先生、」
「“…あ、ううん、何?”」
「言いたいことがあるならちゃんと言ったほうが良いですよ。ゲーム開発部にとっても、ユウカさんにとっても、
「“……お見通し、かな”」
少し苦笑して先生はユウカさんの方を向いた。
「“ユウカ、少し聞いても良いかな”」
「!な、何ですか」
「“多分だけど、たとえここで私が云々と言っても各学校の部活動にまで口を出すことはできないよね”」
「ええ。学校の部活については連邦生徒会より各学校へ委任されていますから」
と、先生はうん、と頷いて一度目を閉じ、強い目でユウカさんを見直した。
「“なら私は決めるよ。この子達は、きっと最高のゲームを作るよ”」
生徒に対する全幅の信頼をよせる。
先生は、そういう人だ。
「!!い、え、いや、それは…先生、私は先生よりも長くこのゲーム開発部を見てきました。そんな私の目から見ても、それは無理です。それに、シグレさんだって…」
「ユウカさん、私は確かにゲームの完成度についてはああ言いましたけど、別にこの子達を否定したわけじゃありませんよ」
「…はい?」
確かに、テイルズ・サガ・クロニクルはゲームとしては酷いものだった。というかそもそも題名がテイルズ(物語達)サガ(物語)クロニクル(年代記)とかいう何処かの1=1の議員もびっくりな名前だ。
死にゲーと言うにも記憶できる部分がほとんどないし、謎解きと言うには難解というかもはや理不尽、物語の構成もかなりぐちゃぐちゃ。素人目に見てもかなり悪評が付くことは目に見えた。
でも。
「この人達は…ゲーム開発部は、心の底からゲームが好きなんですよ。その好きを詰め込めるだけ詰め込みたくて、ちょっと歯止めが利かなくなった結果がテイルズ・サガ・クロニクルなんだと思います」
悪く言ってしまえば二番煎じのような展開や操作形式が多かったのはおそらくそれだ。
あのゲームのこんなところがすごかった。あのゲームのこんなところに感動した。それらを詰め込んで、詰め込んで、詰め込みすぎた結果、組立てられなくなった世界、それがテイルズ・サガ・クロニクル。そういうふうに私は解釈した。
別に合ってるとか合ってないとかじゃない、そう感じさせるだけの「何か」があった。
「あとはその気持ちを整理させるだけです。きっと驚かされると思いますよ」
もしも。
そのゲームに籠めた気持ちを完全に表すことができるようになれば、きっとそれは「神ゲー」とやらに比肩するだろう。
「っ…よし、決めた!」
と、モモイさんが声を上げた。急な大声にびっくりした。
「私たちは『TSC2』……『テイルズ・サガ・クロニクル2』を出すよ!それがミレミアムプライスで受賞すれば、部を存続させる功績にはなるでしょ!!」
ミレニアムプライス。
ミレニアムで行われる技術コンテストのようなもの。
ゲームに限らず、電化製品や武器、芸術、果ては稀に新理論までも評価されたりする、いわば学園内のあらゆる総合品評会。
ちなみに去年の一位はノアさんの詩集だった。よく眠れるらしい。それでいいのか…とは思ったけど、まあそんなのも許可される結構なんでもありなやつだ。
それだけ受賞するのは困難だが、ここで受賞すれば部を存続させるには十二分な「成果」となる。
「…本気?あのクソゲーランキング一位に選ばれて、『デットクリームゾーン』すら名作だって錯覚させるようなクソゲーの続編を出すって言うの?」
「どんな評価でも、注目が集まってたゲームの続編なんだからネームバリューとしては十分に意味はあったもん!!」
「……いや、まあ…確かに気になるし、ちょっとだけ楽しみだけど………いいわ、じゃあ証明してちょうだい。ミレミアムの生徒らしく、結果で示しなさい」
「やってやるもん!もう勝利フラグは立ってるんだって見せつけてやる!!」
「お姉ちゃん、あまり言葉にすると負けフラグになっちゃうよ…」
まあそんな一幕もありつつ、ユウカさんはあとミレニアムプライスまでの二週間は待つ、という旨を伝えて部室をでていった。
「よし!なら尚更廃墟にいかないと!」
「だから、その廃墟の説明をまだしてないって…」
モモイさんの声にミドリさんが返す。
…確かに。なんだかんだで捨て置かれてたな…
廃墟というのは、連邦生徒会長が封鎖していたミレニアム内の謎の地域。
ちなみに、ミレニアムに限らず他の学園にも謎の区域というのが存在してたりもする。トリニティにあるカタコンベみたいなね。
封鎖理由は「危険だから」というものらしいけど、何がどう危険なのかは不明、というか詳細すらわからない。まあ連邦生徒会長失踪しちゃったし。
それに…まあ、あんなものがあるなら確かに封鎖するのが吉、としかいえない。
別にそれが悪というわけじゃないにせよ無名の司祭の遺産であることに変わりはないし、下手すれば一発でキヴォトスが滅ぶ。
……
でもそれじゃ駄目だ。個人的には、あの人も悪い人というわけじゃなかった。動機も納得はできなくても理解はできる。
…なら、今度は…今度こそ。
「───そうだから……シグレさん?」
「…えっ、あ、はい」
「どうしたの?何か考えてそうだったけど」
「あー…いえ、なんでも無いです」
いけないいけない。知ってるとはいえちゃんと話は聞かないと。
「まあつまり!最高のゲームを作るためには廃墟に行って、アレ…『G-Bible』を見つけないと!ってこと!」
ということで廃墟に向かうことになった。
……ちなみにだけど、実は今
まあ大型の敵が出るわけでもないし、
またまた誤字報告ありがとうございます。
あと、誤字報告内で結構言われてたのでここで一つ。
たまに使ってますが、会話部分が「、」から始まってるのは、気付き的な意味合いの表現です。「!」よりは弱い、「あっ、」とか「ん、」的な意味合いで、でも声には出なかった、的な…
例を出すと、
「!先生」←意図しない時に声をかけられてびっくりした
「あっ、先生」←予想外に先生を見つけた
「、先生」←たまたま視界の端に先生が映った
みたいな感じです。
…うまい言い方がちょっと見つけられなかったんですけど、まあともかく誤字ではないです。