地獄発、地獄行き   作:有森

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誤字報告ありがとうございます。


アンノウン・ガール

ということで廃墟に到着した…訳なんだけど。

 

「あっ、先生もうちょっと頭下げて…」

「“う、うん…”」

「っお姉ちゃん、この体勢キツイんだけどいつまでこうしてたら…!」

…はい、動き回って哨戒してる青めのオートマタに見つからないように瓦礫に隠れて動向を窺ってます。

チラ、と隙間から向こうの方を見ると、廃墟というにふさわしいエリアの中をかなりの数のオートマタがうろついていた。一部破損してたりしてるのがいるのもなんかいかにも廃墟っぽい。

とはいえ、時折連絡用なのか端末でコミュニケーションを取ったりしている個体もおり、軽く見積もって100はいる。まああの数相手は私もあんまりやりたくない。

別に私一人なら問題ないんだけど、先生がいるしね。

それに、タンクの役割を持てるのが現状いないのもある。まあ私が前線に出るしかないけど、とはいえ今は武器が完全に揃ってるわけでもないから多少戦力も低下する。

ビナー戦で神秘もかなり使っちゃったし、リソース確保という面でも戦わないに越したことはない。

と、そんなことを考えていると目に見える位置のオートマタは移動していったようだ。

 

「ふぅー……いやー。出入り禁止の区域だから、ある程度の危険は覚悟してたけど…冷や冷やするねー」

「あのロボット、いったい何なんだろう……ううん、それよりも…あんなのが幾つも徘徊している廃墟って…」

「確か…連邦生徒会長が居なくなってから兵力も撤収されて、そのまま放置されてるのがあのロボット達らしいね」

らしい、というのはどういうことなのかと先生が疑問を持ったところで、モモイさんが説明してくれた。

ここ、廃墟はもともと連邦生徒会長が封鎖していた場所であるが、失踪と同時にその封鎖していた人員も撤収、完全に捨て置かれた土地となっている場所。

そして、ミレニアム内の非正規ハッカー集団であるヴェリタスの部長、「全知」の肩書きを持つヒマリさん曰く、「キヴォトスから消えて忘れ去られた物が集まる場所」ではないかと推測できる、という。

彼女にしては珍しい曖昧な言い方だけど、それくらい正体のわからない場所なんだろう。

そしてモモイさんがヴェリタスにG.Bibleの捜索依頼をしたところ、最後にG.Bibleの稼働が確認された座標がここ、廃墟だったらしい。

 

「“……それで、G.Bibleっていったい何なの?”」

「あ、そういえば説明の途中だったね。G.Bibleは───」

かつてのキヴォトスに存在していた伝説のゲームクリエイター。その彼女(彼)がミレミアム在学中に作った、いわば最高のゲームを作るための秘訣、それがG.Bible。

詳しい内容は伝わっていないが、その中には最高のゲームを作れる秘密の方法が入っているとの事。それが物理的なものなのか、それともデータとして保存されているのか、それすら現状では分からない、と。

まあただ、G.Bibleの()()と言ってる時点でおそらくコンピュータ的な物な事は分かると思うけどね。

…いやー……改めて聞いてみても取った方法が不確実すぎない?結局現状、G.Bibleについても廃墟についても分からないことだらけなんだよね…ギャンブルが過ぎる気がする。

 

「…ねぇお姉ちゃん、一応聞くけど本当にこんな場所にG.Bibleなんてあるの?」

「ある!絶対にあるよ!」

「モモイさん、声、声」

気付かれる。

 

「でもここまで敵がいるのに行くのは危険だよ!先生だっているし……先生はヘイローを持ってないんだよ?シグレさんもいるけどカバーしきれるかわからないし!」

「ミドリさん、」

あれ、聞こえてない?

 

「なら私達が守ればいいでしょ!それに、こうしている間にもゲーム開発部は」

「“あ、あの〜、二人共?”」

と、先生が恐る恐るというふうに声を掛けた。

 

「?何?」

「“…多分だけど、気付かれてるよ”」

ぐるりと周りを見回すと囲むように立つ十数機のオートマタ達。

……うんうん…

 

「…伏せてくださいっ」

内ポケットからEMP弾をいくつか引っ張り出して振り回し、空中で撃ち抜いて周りのオートマタを再起不能にさせる。

 

「行きましょう、恐らくまだまだ湧いてきます」

「あ、も、もう──ミドリの馬鹿ぁ!」

「いやお姉ちゃんもでしょ!?」

HG(Memento-mori)を構え直して後方確認、先生がシッテムの箱を起動させた所のようだ。

 

「前衛は私が受け持ちます。モモイさん、ミドリさん、援護をお願いします」

「わ、分かりました!」

「まっかせて!」

とりあえず奥からさらに湧いてきたオートマタに向けてタンタンと引き金を引く。

六連リボルバー式の関係上、マガジン式のものよりも弾数が限られるから慎重に、外さないように。

 

「っ、」

と、言ってるそばから弾が切れた。まあそりゃそうなるわなと思いながら、前を見ると残り五、六体ほどがARを構えている。なら近づいてナイフで仕留めるかと考えていると、

 

「“モモイ!そこ!”」

「あなたたちのせいだからねー!!」

拡大する弾道と共に放たれる四連射にオートマタ達が吹き飛ばされた。おお。

が、すぐにまた敵の増援が到着する。しかも今度は盾を持った防御兵付きの中隊だ。

 

「それはちょっと面倒かな」

跳んで最前の盾を持ったオートマタに肉薄、盾を蹴り飛ばして怯ませながら左手の中で単眼鏡をナイフに変形させ、その腕の隙間に突き立てる。そのまま裂くようにナイフを振り抜いて腕を切り飛ばし、一瞬動作を止めた隙に頭を蹴り飛ばす。

が、もげるまではいかなかったらしく、首辺りから火花をちらして機能停止した。

…カイザーのオートマタなら今の蹴りで頭飛ばせたんだけどな。こっちが硬いのか向こうが脆いのか。

まあどっちでもいっか。

 

「っと」

まあこれだけに執着しているわけにもいかない。

盾を奪い取ってそれを構え、思いっきり跳躍。銃を構えている集団の真ん前に躍り出て盾に神秘を回し、その盾でオートマタを殴り飛ばす。

俗に言うシールドバッシュだ。

…にしても、やっぱり使い慣れてない武器に神秘籠めるのやりづらいなぁ…時間的には廃墟から戻った辺りならSR(Moriens)のメンテナンスが終わってる筈だから戻ったら速攻取りに行こう。

 

「…これ私達いらなくない?」

「シグレさん強ぉ…ちっちゃいのに…」

後ろからなんか聞こえた気がするけど…まあそんなに重要なことでもないでしょ。警告とかならもっと大声で叫ぶだろうし。

 

そんな風にしながら進んでいくと、建物のようなものが見えてきた。

 

「あれ!多分G.Bibleの稼働が確認されたとこ!」

「進みましょう!」

体を反転させてHG(Memento-mori)を向けて神秘を籠める。

まあ先頭を行ってたわけだから後ろには先生やモモイさん、ミドリさんがいるわけだけど…まあ大丈夫。

 

「…シグレさん!?」

「Argentum bullet!!」

3人の隙間から向こう側の追従してきてるオートマタを撃ち抜く。……げ、一体撃ち漏らした。

ただ、悠長にリロードなんてしてる暇はない。ということで…

リボルバーのロックを外し、弾丸を一発落とす。その前でHG(Memento-mori)を振り抜いて空薬莢を排出させて、それから落とした弾丸に向かってHGを振り直して、リボルバーの一番上に弾が入ったところでロックをかけ、前に向かって撃つ。

今回はちゃんと当たって倒した。

 

「え、え!?何今の!?」

「早く、入りますよ」

まあ…ちょっとした特技というか。最速で一発分のリロードを済ませる小技みたいな感じ。二発以上はさすがに重力と仲良くなれないと無理だから一発分だけ。使うところほとんど無いけどね…

 

「…あれ?ロボットたち、急に追ってこなくなった…?」

建物…もっと言えばどちらかというと工場に似ているそれに入ったところ、さっきまでの勢いが嘘のようにオートマタからの追従が止まった。

まあなにはともあれ一段落ついた感じか。

 

ただ、そのまま進んでいっても本当に何もなく、道中完全に壊れたラップトップみたいなのが複数転がってたりするだけで本当にただの廃墟みたいになってた。

 

「…ね、ねえ、ここ本当に合ってるんだよね…?」

「…行き止まりですね」

で、たどり着いたのは行き止まり。道中にはほとんど何も無し。

分かれ道はいくつかあったけど、何かがある気配すらしなかった。

 

「そ、そんなはずない!きっとここらへんに隠し扉とかが…」

とモモイさんが走っていったところ…

 

『接近を確認』

「!?」

何処からともなく機械音声が聞こえてきた。

 

「えっ、何何!?」

『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』

「え、え!?何で私の事を知ってるの?」

『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』

「私の事も…一体どういう……?」

『対象の身元を確認します─────』

…あ、あれ?

 

『ERROR』

え?

 

「え?」

『ERROR,ERROR,ERROR……不明存在を確認、仮称Uと命名、対象の存在を確認しています、しばらくお待ちください─────ERROR 失敗、各学園データベースにアク──ブロックされました、第一ファイアウォールの解──ERROR、再確認不可──仮称Uの情報、一部会得』

「え!?各学園データベースって言った!?」

……()じゃこんなことは起こらなかった。ということは…いや、そういうこと…か?

 

『Uの存在を確認──明日、ジ、繧キ繧ー繝ャ、資譬シ縺御ク?驛ィ縺ゅj縺セ縺──』

「なんて!?」

うわバグった。

と、ふと視線を向けると先生の持ってるシッテムの箱から光が漏れていた。…電源入れっぱなしにしてるのか…

 

『…──…──対象の身元の確認を再開します…──先生。資格を確認しました、入室権限を付与します』

「“!”」

と、さっきまでの荒ぶりようが鳴りを潜め、改めて確認作業に移ったみたいだ。

 

『才羽モモイ、才羽ミドリ、──譏取律繧キ繧ー繝ャの三名を先生の生徒として認定。同行者である生徒にも資格を与えます、承認しました』

…やっぱり私の名前だけ正確に認識されてない…?

 

「と、とりあえずこれで扉が開……扉どこ?」

まあ流石に気づくよね。

目の前には完全な壁、一本道故に右を向いても左を向いてもただの壁。

…ま、自然に開くのなんてここしかないよね…

 

『下部の扉が開きます』

「…え?下部?」

…来るか。

その瞬間に床に触れる感覚が消え、内臓が浮き上がる感覚に襲われる。

体を捻って体勢を変え、ついでに近くにいたモモイさんを引っ掴んで引き寄せ、迫ってきた地面に下腕を横に向けて添えて一回転して受け身を取る。

ミドリさんと先生は…あ、先生がクッションになってる。

 

「うぅ…な、何…」

「先生ー、大丈夫ですか?」

まあ、一階層分程度、高さにすれば4メートルもない高さから落ちた程度では、ヘイローがなくともで骨は折れないだろう。

まあ子ども一人が上に乗ってるからその分内臓は圧迫されるかもしれないけど。

 

「“う、ここは誰、私はどこ…”」

「大丈夫そうですね」

そんな冗談が言えるくらいなら問題はなさげ。

さて、と目線を前にやる。

 

広い部屋だ。

その真中に、一人の少女がいる。

どこから降っているのか幻想的な微光に照らされて、硬質で機械質な椅子に座って…まるで眠っているように見える。

 

円型に象られた微かな段差のせいか、はたまたこの廃れた背景の真ん中に鎮座するという非現実的な状況のせいか。それはどこか、ステージに上る主役のようにも、祭壇に捧げられている存在のようにも見えた。




あー夏休み終わっちゃったよー
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