地獄発、地獄行き 作:有森
早いところ
試し撃ちを少しさせてもらうとなんか若干硝煙の匂いにチャバスコの匂いが混じってたり、弾と一緒に多少のチャバスコが混じって出てきたりと一悶着あったりはしたけど、とりあえずは問題ないのを確認した。ただ調整にプラスで2時間かかった。なんで?
あとはまあ、相変わらずこの反動の大きい銃で体幹をブラさずに何故撃てるのかと不思議がられたくらいかな。
まあ技術と力と神秘の合わせ技かなぁ…キヴォトス人でヘイローがあるからできる荒業ではあるよ。
下手すれば、たとえ先生が滅茶苦茶鍛えたとしても多分これだけしっかり固定して撃てば肩外れる可能性あるし。
そんなことを考えながらゲーム開発部室に戻った。
と…
「あ、」
「!レアメンバーを見つけました!パンパカパーン!シグレさんがメンバーに再編されました!」
「おっと、しー」
部屋の中で一人でゲームをしているアリスさんがいた。
モモイさんとミドリさん、あといつの間にかいたユズさんはソファや床で寝てるし、先生の姿は見えない。
…あ、書き置きがある。…うん、今日はとりあえず帰ったみたい。でもあとは任せたって…放り投げが雑じゃないですか?
とりあえず、三人を起こさないように少し静かにするように口元に人差し指を添える。
「!スニークミッションですか?」
「スニーク…まあ、そんな感じですね」
「分かりました。あっ、報告です!アリスはアリスです。アリスは勇者として、既に三十二回のゲームオーバーの後に二回世界を救い、やっとトゥルーエンドを迎えました!」
……ふと近くを見ると見覚えのあるカセットが落ちていた。
…テイルズ・サガ・クロニクル。ゲームオーバー、三十二回で済んだんだ…いや、そういえばここに開発者達がいるわけだし、アドバイスとかも貰ってたのかな。まあセーブできるところがほんとに点々としかないから一回ミスしたらそこからかなり戻されたりするし…
「おー、そうですか。さすがは勇者」
というか、なんというか…まあ当然といえば当然なんだけど子どもを相手してる感覚だ…と、ゲームの画面から目を離してアリスさんが聞いてきた。
「そういえば、シグレさんのジョブは何ですか?」
「ジョブ…ですか?」
ジョブ?と一瞬考えて、
そうだなぁ…
「強いて言うなら
まあ接近戦もいけるけど。一番苦手なのは中距離戦。
それはさておきアリスさんの問いに答えると、彼女はなるほど!と言って少し考えたあとゲームに集中しだした。
集中してたし、呼び戻すのもちょっとアレなにもしたけどなんで聞いたのかを聞いてみると…
「アリスは勇者です!勇者はリーダーなので、仲間のことはよく知っておかないといけません!」
とのことだった。元気で何より。
そんな彼女の横でプレイしているゲームを眺めていた。
とはいえ、前にも言った通り私は夜に弱い。
廃墟から戻ってきたのは日が落ちかかっていた頃、それからエンジニア部の問題に巻き込まれてと色々あったせいでもうそれなりに遅い。
カチャカチャとコントローラーを操作する音をBGMにしていると、自然と瞼が落ちてきた。
シグレがゲーム開発部に戻る少し前。
「“それで、話って?”」
「はい、とりあえずこれを見てください」
先生はミレニアム内の一つの部屋の中に招かれていた。
廃墟から戻ってきて少しした後、シッテムの箱へ…というかシャーレへ連絡が来たのだ。内容は…『明日シグレさんのことについてお話があります。ヴェリタスの部室へ来てください』とのこと。
そしてその指示通り、ヴェリタス…ミレニアム非公認のハッカー集団の部屋の中に座った彼女の前には、周囲に丸い機械を3つほど浮かべた少女…ハレがいる。
と、彼女は一つの画像をモニターに表示させた。
「“これは…シグレの生徒情報?”」
表示されたのはPDFのような形式で記された、よく見知った人の顔写真と年齢などの情報の記載された…あんまり他人が勝手に見ちゃいけない気がする情報。
ちなみにハレ曰く「生徒情報のデータベースに勝手に入り込んでるからまあバレたら怒られはすると思う」とのこと。駄目じゃん。
…とはいえ。
「“…別にそこまでおかしい点はない気がするけど…?”」
まあ個人情報であること以外はごく普通のページだ。わざわざ先生を呼び出して話をするようなものじゃない。
と、ハレはそんな先生を見てうん、と続ける。
「ここまでは、普通の生徒と変わらない。でも、問題はここから」
と、彼女はまたカタカタとキーボードを叩いて…
「ここからは、本来ならミレニアムに入る前の…中学、小学校とかの情報にアクセスすることになるはずなんだよ。でも…」
パチ、とエンターキーを打鍵した瞬間。
「“わっ!?”」
バババ、と大量に表示される赤い『ERROR』。
そして、すぐさまそのページから弾き出された。
「“今、のは?”」
「詳しい仕組みは省くけどね、今の私はデータ上じゃ連邦生徒会と同等の権限が付与された状態とほぼ同じなんだ。なのにも関わらず弾かれた…つまり、シグレさんの過去についてそれはもう厳重に隠されてるんだ、連邦生徒会ですら知ることができないくらいに。…多分、連邦生徒会長じゃないかな」
過去が…?と先生は眉をひそめる。
生徒情報そのものを隠すならまだわかる。だが、一生徒の過去のみを厳重に隠すというのはよくわからない。
「“…もしかして何か、過去にまずい問題を起こしてる…とか?”」
「否定はしきれない…けど、まあ考えにくいは考えにくいけどね」
第一まずい問題を起こしてたとしてもわざわざ隠す意図がわからないし、とハレは付け加えた。
そりゃあそうだ、わざわざ隠す必要なんてない。人目に触れることすら憚られるような事件を起こしたのなら矯正局に入れられるやらなんやらの前科をつければ良いだろうし、彼女の強さならばあの狐坂ワカモ達のような七囚人なんかに加えられていてもおかしくない。
それに、そこまでのことをしでかしたならばミレニアムが…というよりほとんどの学校は入学を拒否するだろう、それを庇うためにわざわざ連邦生徒会長が一個人の過去を隠したりなどはしないだろう。
「“………”」
アビドスの件からも思っていたが、やはり彼女にはわからないところが多数ある。
本人は何でも知っているようなのに、本人の事になると途端に尻尾が掴めなくなる感覚が、なんとももどかしい。
黒服との関係もある上、当人も何かに巻き込まれているようなことは自覚していると言っていた…なのに、頼ってすらもらえない。そもそもアビドスの件に至っては先生、ひいてはシャーレではなく黒服に協力を仰ぐ始末だ。
「“……強く、ならないと”」
「?」
「“ありがとう、ハレ。私の方でも色々調べてみるよ”」
「あ、うん、わかった」
そう言い残して、先生はヴェリタスの部室を出た。
多分シグレは部室に戻るだろうと踏んでゲーム開発部室には書き置きを残してあるから、今日はシャーレに戻っては来ないはずだ。
「“…アロナ、アロナはシグレについて何か知ってる?”」
『………シグレさんについて、ですか…すみません、あまり詳しくは知りません…ゲヘナ学園風紀委員会のアコさんが言っていたように、少なくともそこまで争い事を好むような人ではなかったってことくらいですかね…戦闘の痕跡は本当に三、四件ほどしか残っていませんし…』
「“うーん、そっか…”」
本人に聞いても良いが、聞いたところではぐらかされるだろう。しかしだからといって自分だけで調べてもできることはたかが知れている。
シグレもなんだかんだ察しが良いし、何かを探っていることにも感づかれるかもしれない。
黒服も何かを握っているかもしれないが、アレに聞くような事は最終手段にしたい。
「“まあ、まずはやるべき事を済ませよう…それでいつか、ちゃんと信頼してくれるようになったら詳しく聞こう”」
割と無理ゲーな気もしてきたが、とりあえずそこら辺に落とし込むことにした先生だった。
そういえば、以前に主人公シグレさんのイメージCVを高橋李依さんって書いたんですけど、よく考えるとそれで思いつくキャラってなるとリゼロのエミリアとかこのすばのめぐみんとかなんですよね…イメージ的には、ああいうハイトーン系とか元気系よりはラグナドールの覚みたいな、どちらかというと落ち着いたウィスパーボイスみたいな声をイメージしてるんですけど…
はい、余談でした。