地獄発、地獄行き   作:有森

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アンケートの結果先にエデン条約編やってからパヴァーヌ編2章をやることにします。正直なところ早く主人公とベアトリーチェを会わせたい。
あ、あと誤字報告ありがとうございます。


G-Bible

崩れかけた建物に水たまりや苔の蒸したアスファルト。

先日…というか昨日、アリスさんを見つけた廃墟に再度来ていた。で、現状は…

 

「ち、ちょっと!銃弾届かないんだけどっ!」

SRやMG、RL(ロケットランチャー)などの遠距離制圧兵器を大量に構えたオートマタに熱烈な歓迎をされてる。うん。

…うーん…

 

事の発端は数時間前。

黒服さんとの電話を終えてエンジニア部に戻ったところ、既にアリスさんが武器を選び終わったということで部室まで戻り、その途中で遅れてきた先生とも合流。

そしていざゲーム開発を開始しようという話になっていたところで、ユウカさんが入ってきた。

何でもいきなりゲーム開発部に新入部員が来たという話を聞いて不審に思ったらしく、確認しに来たらしい。

まあその場はなんとか凌げたんだけど…ミレニアムでの部活動のあり方が変わったらしくて、部は何かしらの成果を出さないと部の人数に関係なく廃部にされるということになっていたらしい。

本来ならゲーム開発部長のユズさんが部長会議に出てその話を聞くはずなんだけど、まあ…彼女の引っ込み思案な性格もあってモモイさんが部長代理として会議に出る…ということになってたんだけど、その当人がまさかのゲームのイベントを優先して欠席していたということで誰も知らなくて。

ゆっくりとゲーム開発を再開させるという予定を急遽変更し、今月中に開発を間に合わせないといけなくなった。

ということで再度「G-Bible」を求めて廃墟に来た…んだけど。

なんかオートマタの装備がガラッと変わってるんだよね。昨日来た時はほとんどARだったのに、全機遠方制圧兵器に変わってる。

…これあれかな。接近戦で私が滅茶苦茶しすぎたせいで距離取って叩く方針にラーニングされた感じ?まあ問題はないけど。

それに…

 

「い、行きます!」

「光よ!」

今回はユズさんとアリスさんも一緒に出てるし。GL(グレネードランチャー)RG(レールガン)、射程長いしね。

あとミドリさんもSRだったから、実質モモイさんだけ戦力外通告された感じになってる。

 

…で、私はというと。

 

「…え、シグレさん何やってるのあれ…」

「ユズ、私たちは分かったんだ。シグレさんは私たちとは別次元の存在なんだよ」

体勢を低くするために立て膝でSR(Moriens)を構え、向けられたMGやSRの銃口に向かってワンホールショットを決めつつ跳弾も使いながら着実に数を減らしていく。

この火力なら一発で倒せるから処理も早いし、弾が切れてもHG(Memento-mori)を撃って牽制しつつその間にリロードすればいい。

どうせSR(Moriens)も多少のブレを許容するなら片手で撃てるし、その間にHG(Memento-mori)をリロードすれば隙を晒さなくて済む。

 

「よし!このまま突っ込むよ!」

 

と、モモイさんの声を合図に、全員で走っていくつかある建物のうち一つに転がり込む。

 

「…ついてきてますね」

が、まあそう簡単に追跡を逃れられるわけでもなく。背後から気配が10ほど。EMP弾でも投げ込んで処理しとこうか。

 

「はぁ、はぁ…な、なんとかなった…?」

「侵入成功。ミッションをクリアしました」

「ねえねえ!もしかして私たちすっごく強いんじゃない!?今ならC&Cとか他の学校の戦闘集団と戦っても勝てちゃうかも!」

「そ、それは言いすぎ…ここまでスムーズに来れたの、半分くらい先生とシグレさんのおかげじゃ…?」

「それは、そう…すっごく戦いやすかったです…!」

わいわいと…まあ外に声が漏れないくらいの声量で興奮しながら一本道を進んでいく。

と…

 

「…?」

アリスさんが立ち止まって周りを見回しだした。

 

「どうしたんですか?」

「…分かりません……ですが、どこか見慣れた景色です。…………こちらのほうに行かないと、いけないような……」

そう言い残し、一人で一つの道に入っていった。

 

「えっ?」

「“追いかけよう”」

先生の言葉に従って追いかけた先で、アリスさんはまたキョロキョロと辺りを見ていた。

 

「アリス!どうしたの!?」

「……アリスの記憶にはありませんが、まるで『セーブデータ』を持っているみたいです。この身体が、反応してます……例えるなら、そう…チュートリアルや説明がなくても進められるような…或いは、何度もプレイしたゲームを遊んでいるような…」

「どういうこと……? 確かに、元々アリスがいたところと似たような場所だけど……」

索敵も兼ねて見回しながら進んでいると、前方の壁の一部から光が漏れ出ているのが見えた。

 

「あっ、あそこに何かある!コンピューターが一台……あれ?」

「あのコンピューター、電源が点いてる……?」

廃墟に入って目にした機械といえば完全に壊れているラップトップかオートマタかアリスさん……AL-1Sくらいのものだった。

その中で一つだけ光を発するコンピュータとなると、怪しさも相まってむしろ不気味にも感じる。

あとなんかすごい()()()()がする。

…データ上の存在ではあるはずなんだけど…神官である()のデータだけでこんな嫌悪感示すことある?

…いや、違う。これは……まさか恐怖(Terror)…?

と、そんなことを考えていると、コンピュータのディスプレイに文字が書きだされた。

 

『Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください』

 

「おっ、まさかの親切設計。G.Bibleについて検索してみよっか?」

「いや、ちょっと怪しすぎない?それより「ようこそお越しくださいました」って事は……ディビジョンシステムっていうのがこの工場の名前……?」

「キーボードを発見……G.Bible、と入力してみます」

と、モモイさんとミドリさんが話をしているとアリスさんがディスプレイの下にあったキーボードを見つけたらしく、そこに『G-Bible』と入力した。

すると……

 

『………tghrthjrjydryjdrtyjrd』

ディスプレイが壊れたように意味のない文字列を吐き出し始めた。

 

「こ、壊れた!?アリス、一体何を入力したの!?」

「い、いえ、まだエンターは押してない筈ですが……」

うろたえるアリスさん。

その隙にそのコンピュータにちょっと寄ってみてみると、充電プラグと思われるものどころか、そもそも電力供給源となるようなものはなかった。やっぱりこのコンピュータ自体がオーパーツみたいなもので確定、問題は内部データだけじゃなかったみたいだね。

G-bibleを転送し終えたらこのコンピュータは壊しておいた方が良さそう。

 

『あなたはAL-1Sですか?』

と、周りをウロチョロしているとバグみたいな挙動が収まってそんな問いが表示された。 

 

「「!?」」

「……?いえ、アリスはアリスで……」

「待ってアリスちゃん!…何かおかしい、今は取り敢えず入力しない方が……」

『音声を認識、資格が確認出来ました。おかえりなさいませ、AL-1S』

「音声認識!?」

制止しようとしたモモイさんの声を貫通してコンピュータはアリスさんの声を認識したらしい。

 

というかそもそもだけどなんで名もなき神々の王女の神官のデータと一緒にゲームクリエイターのデータがあるんだろ。容量の無駄だし、確かこれG-Bibleの原本だったよね。

じゃあG-Bibleの作者はわざわオーパーツのコンピュータにG-Bibleを残して、しかも放置したってことだよね。

……うーん、意味不明。

 

その後、アリスさんが自分の事について色々と聞いてみてたけど結局文字化けか無回答だけで特に変わった応答は無かったんだけど。

 

『電力限界に達しました。電源が落ちると同時に消失します。残り51秒』

唐突に告げられた電力の限界。

そもそも充電機関がないのにどうやって電力を保持していたのかというところは置いておくとして。

 

「えぇ!?だ、駄目!せめてG.Bibleの事を教えてからにして!」

 

《……あなたが求めているのは、G.Bibleですか?〈YES/NO〉》

 

「イ、イエス!!」

ミドリさんの返答に、一瞬止まったコンピュータはすぐに再起動した。

 

《G.Bible……認識完了、コード:遊戯……人間、理解、リファレンス、ライブラリ登録ナンバー193、廃棄対象第1号。残り35秒》

 

「廃棄!?どうして!?それはゲーム開発者たちの…いや、この世界の宝物なのに!!」

 

《G.Bibleが欲しいのであれば、提案します。データを転送するための保存媒体を接続してください》

 

「…えっ、G.Bibleの在処を知ってるの?」

 

《――あなたたちも知っています。今、目の前に》

《正確には、私の中にG.Bibleがあります。しかし現在私は消失寸前、新しい保存媒体への移行を希望します》

…希望、ね。

最初は提案だったのに希望する、ってね。

まあ私が知ってる状態のまま動いてくれるなら別にとやかく言わないけど…やっぱりこっちにも感情はあるんだよなぁ…

 

「急に保存媒体なんて……お姉ちゃん、なにか持ってない!?」

「わたし!?え、えーっと…あ、『ゲームガールズアドバンスSP』のメモリーカードでも大丈夫?」

 

《………………………まあ、可能ではあります》

 

「何だかすっごく嫌がってる感じがするんだけど……気のせい?」

嫌がってるね。まあ、名前的にギャルゲーみたいだし…

ま、ちょっとだけ手助けでもしようかな。

 

「もう使わなくなったスマホがあるのでこっちにしましょう。ゲームのメモリーカードだと容量が足りなくなるかもしれませんし」

「あ、そっか!」

データの入っていないスマホ。エンジニア部に行ってた時にあらかじめもらってきた。もともと改造したりしようと思って壊れた機械類を各所から集めてたらしいけど、その中でもスマホの量があまりに多くて若干取り扱いに困ってたところで一個譲ってもらったやつ。

 

まあそんなこんながありつつもスマホを接続してデータを転送、モモイさんが満面の笑みでデータを確認しようとするもパスワードがかけられていてまた気分が落ちこんでいた。

結局そこはヴェリタスの人たちに頼むことにして、ミレニアムに帰ることにした。

 

 

 

 

 

「………」

帰り際にもオートマタとの戦闘になったけど、どさくさに紛れてコンピュータは壊しておいた。

二台目のスマホから見定めるような、警戒するような気配を感じた。

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