地獄発、地獄行き   作:有森

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あけましておめでとうございます。(極遅)
遅れた理由としましては
・単純に死ぬほど難産
・低評価の連発によるモチベの急激な低下
・掲示板回の削除と補足、改正作業
・ついでに共通テスト
といった具合です。
また、評価コメントをもらいまして上記の通り掲示板要素を全削除、加えて今後掲示版はもう書かないことにしました。
勝手な判断、ご容赦いただけると幸いです。
あと、まだ二次試験が残ってるので大学合格するまでは低浮上です。合格したら多分また週一投稿に戻ります。


ちび先生

えーと…なんでこうなった…

 

「‘?’」

キーボードを叩き、ペンを走らせ、積もった書類を消化していく私。まあそれ自体は別に珍しいものじゃない。むしろもう常日頃このシャーレの部室の中で起こっている光景。

…ただ…ただなぁ…

 

「‘どうしたの?()()()?’」

「…なんでもないですよ」

肩あたりで切りそろえられた黒髪に、変わらず少し垂れ気味の黒目。身長は私の胸辺りまでで、柔和かつ大人しめな印象を与えるその子。ただし頭の上には本来あるはずのヘイローが存在せず、神秘も全く感じられない。

そんな子が、作業中の私にひっついてこちらを見上げており……そして何よりその子…本来私が先生と呼ぶべき人から「先生」と呼ばれているという状況。

……ほんとになんでこうなったかなぁ…!

 

 

 

 

 

 

 

ミレニアムでの一件が終わった数日後の昼下がり、私と先生が書類を片付けている時にエンジニア部の面々が押し寄せてきた。なんでも世紀の大発明が完成した、とのことで、連絡より先に見せたくて持ってきたという。

 

ウタハさんが言うには、名付けて腕時計型タイムマシン試作改Ⅳ。…はい、件のビナー素体のアレだね。なんというか…名前から最低でも4回は失敗してるのが分かるとても分かりやすい名前だと思った。

詳しい仕組みの説明は聞かせてもらったけど意味不明だったからとりあえず省略する。なんか先生が宇宙背負ってる幻覚を見た。まあ分かったところだけ書き出すと、未来には行けないけど過去なら行けるようになったってところくらい。

 

『────というわけでとりあえず現時点の設定では15年前にジャンプするように設定されており、そして12時間後に自動的に戻るようになっています!ただジャンプした時間を埋めることは厳しく、12時間過去で過ごした場合戻るのは明日になるのですが…ぜひ先生に動かしていただきたく!!』

なんでも、以前どこかで先生がロボットアニメとかが好きだという話していたのを聞きつけたらしく、そのタイムマシンを試しに使ってみてほしいとのことを頼みたいのだという。

 

私は当初は反対した。

そりゃあそうだ、先生はヘイローを持ってない。もし過去に行って何かのはずみに死にましたじゃお話にならない。

ただ、まあそういうのに対する防衛装置もいろいろと備え付けられているという話を聞いて、そして何より本人が動かしたがっているというのも加味して渋々ではあったけど承諾した。シッテムの箱もあるし、まあ死のリスクは低くはなるかと判断したってのもある。

 

…で、承諾した結果。

 

何がなんでそうなったのかは分からないけど先生が過去に飛ぶんじゃなくて先生の時間が15年巻き戻っちゃったみたいで。

ただ、元に戻す機構は過去に送る機構を反転させて作ってるらしいから一応ちゃんと時間が経てば元に戻るはずという話を神秘で脅し軽く威圧して聞き出して。

 

しかし弱ったことにミレニアムの一件の仕事の蓄積がまだ多少とはいえ残っている現状、お世辞にも暇とは言えない。先生は体だけじゃなくて精神年齢も巻き戻ってしてしまったみたいでまんま子供そのまま。仕事は追加でどんどん流れ込んでくる。

どうしろと?

 

しかもエンジニア部の人達には人見知りを発動したのかまともに話すらできず、しかし何故か私には懐いているためじゃれてくるという事になっており、今みたいに身動きが取れないくらいにまで引っ付かれていて。そのせいで…そのせいで?というかなんというか…エンジニア部の人達いわく「これ以上は尊死する」とか何とか言って結局帰っていったし…せめて書類手伝ってくれると大変ありがたかったんですが。

 

とはいえ…少し緊急要素のある書類も無いわけじゃない。事実上は先生が不在ということになるから私が先生代理としてある程度の仕事を引き継がないといけない。

…正直なところキツイ。

何がって…まあ個人的な話になるけど、子供の相手するのが結構苦手っていうのが…ね。

 

「‘せんせ、おしごとたいへん?’」

「…まあ、はい。でも慣れてますからね」

まあここで愚痴っても仕方がない。さっさと終わらせよう。

というかもう早いところこれペーパーレス化しないかなぁ……いちいち手で記入するの面倒なんだけど。

そんな事を考えながら1時間ほど手を動かしていると、シャーレの部室の前に気配が現れた。

ああ、担当の生徒さんか。確か今日は…

 

「失礼します、手伝いに来まし、た……」

ユウカさんだったか。

ガチャ、と扉を開けて入ってくると同時にユウカさんの動きが止まった。

 

「…あ、あれ?おかしいですね…そのー…シグレさん、私の目には…小さい先生がシグレさんにしがみついてるように見えるのですが…あ、あはは、疲れてるんですかね…」

「小さくなってるんですよねぇ…」

まあ目を疑いたくなる気持ちは分かるけどね。

 

「…え、何でですか?」

「エンジニア部の賜物、とだけ」

うん、その反応がたぶん正しいと思いますよ。

と…プルプルとユウカさんが震え始めて…

 

「かっ…かわいい───!」

「ゆ、ユウカさん!?」

飛びかかるように先生に向かって跳んだ。

 

「‘ひっ’」

「かひぁっ」

「ユウカさん!!?」

そして先生がちょっとおびえたみたいな声を出すと同時に後ろに吹っ飛んで壁に激突した。

…何今の変態軌道…物理法則完全に無視した動きしてたんだけど…

あ、あと先生、

 

「ち、ちょっと腕の力、緩めてくれますか…」

首締まってるから腕の力緩めて…ヘイローあっても流石にちょっと苦しい…びっくりしたのかもしれないけど…

 

「‘あ、っ、ご、ごめんなさい…’」

「…怒ってるわけじゃないですから。良いですよ」

で、ユウカさんの方に近づいてみると…

 

「……気絶してる…かな?」

地面に「せんせい」とどこから出てるのかわからない血で書いて倒れ伏したユウカさん。

…あー、そういえばユウカさんってロリコン説が出てたんだっけ。出どころとか根拠は覚えてないけど。

 

とりあえずユウカさんを執務室の隅にあるソファに寝かせておいて、私は私の仕事を進める。

ただし先生のひっつき度合いが上がった。…うーん、書きづらい。

 

……もういいか。期限の近いタイプの書類は終わらせたし…やっておいたほうが良いけどまだ時間的な猶予がある感じのものしか残ってない。

というわけで引っ付いている先生を引き上げてキャスター付きの椅子を机から離して地面を横に蹴る。と、椅子の台座部分が勢いよく回った。

 

「‘わ、わわっ!?’」

と、一瞬驚いたような声を上げた先生だったけどすぐに「‘きゃー♪’」と楽しそうな声を上げ始めたし、お気に召したようで何より。

右に蹴って左に蹴ってくるくると回転していると、ユウカさんが起きたのが一瞬目に入った。回ってるから分かりづらかったけど。

 

「あ、ユウカさん起きましたか」

「え、ええまあ…って、えーと、どういう状況ですか?」

「遊んでます」

遊んでます。(真顔)

当然と言えば当然だけどシャーレには遊具とかおもちゃなんて無いからね…マッサージチェアとかなら隣の部屋にあるけど。

あいにく先生が遊べそうなものなんてここには…ここ…には……

 

「あ、」

そういえば先生ロボットのプラモデルとか作ってたっけ。

でもどうなんだろう…目に見えるところには無いし、まさか勝手に先生の家に行くわけにもいくまいし…

いや、そういえばついこの間に休憩時間中に先生がテレビで戦隊もののビデオ見てたな。

確か借りてきたとか言ってたし…返却期限はまだだろうし、あれ見るか。

椅子から降りて先生をひっつけたままテレビのビデオデッキを探ってみると確かにTSURUYAから借りてきたらしいDVDがあった。えーと…覆面ドライバー雷王…?駄目だ、戦隊ものどころか特撮すら見たことがないから知る知らない以前の問題だ…

 

「これ、見ます?」

「‘!見る!!’」

「ちょ、ちょっとシグレさん?仕事どうするんですか?」

「緊急の分は終わらせました。直接先生の確認が必要なものを流石に私が勝手にやるわけにもいきませんし…正直集中できないので明日に回します」

ユウカさんも見ます?と言うと若干の葛藤があって「…見ます」との返事をもらったからテレビの前にソファを移動させてデッキにDVDを入れた。先生はなぜか自然に私の膝の上に座った。何故。

 

結局1時間くらいビデオを見たり先生がさっきのビデオに出てきていた雷王なる覆面ドライバーのマネをしているのを微笑ましく見ていたり、その他色々と暇つぶしのようにしていると日が若干傾き始めていて、先生が私の膝の上で船を漕いでいた。

まあ子供の体力だしね…にしても急に電源切れたね。

あ、ユウカさんは途中で帰ったよ。ノアさんからセミナーの方での業務に関する連絡があったらしい。先生が小さく手を振ってたところ、なんか「かひゅっ」とも「こはっ」とも表現できない変な声出しながらよろよろ出ていった。ドア出たあともう一回倒れるみたいな音してたけど大丈夫だったんだろうか。

 

まあそれは置いておいて。

 

お風呂…入れるにももう寝ちゃってるし、私の部屋で寝かせておこうかな。ご飯は…どうせ私はロクなもの食べてないしシャーレには大したものないし…エンジェル24でなにか買ってこようか。

先生を抱っこしたまま自室の方に行って何とかドアを開け、ベッドに寝かせて一旦エンジェル24に行こうと思ったところ…

 

「……うーん」

しっかりとロングコートが握られていた。もっと言うとロングコートの下のカッターシャツもしっかり握られてる。

参ったなぁ…身動きが取れないぞ…

 

結果、起こさないように細心の注意を払いながらシャツを掴んでいる小さな指だけを外してロングコートを脱ぎ、先生に被せておいた。

 

その後エンジェル24から戻ってくると先生が起きてたみたいで、半泣きになって私を探してた。ごめんって。

 

で、買ってきたお弁当をあげて(私は傍らでゼリー吸っておいた)お風呂は最近暖かいのもあってシャワーだけにしておいて、早めに寝かしつけることにした。

まあ早めといってももう9時だけど…子供の寝る時間とかはよく知らないからなぁ。

 

「‘…せんせ、手、握ってて…’」

「良いですよ」

とのことなので手を繋いだ状態で私は床で寝ようとしたんだけど…まあ、先生にベッドでちゃんと寝て、とのことを言われたから狭いベッドに2人で入ることになった。

まあ癖の関係上私が先生を抱き込むみたいな体勢になったけど。いつも丸まって寝てる弊害が…

まあそんなこともありながら、さして上手くもない私の子守唄を聞きながら先生は完全に眠りに入ったみたいで。

私も普段より数時間早い睡眠をとることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなり早めに寝たせいかいつもより数時間早く目が覚め。

目を開けると同時に入ってきたのは見慣れた顔で。

 

「──っ!」

危うく叫ぶところだった。寝起きで先生の顔が目の前にあるの心臓に悪い…

 

起こさないように気をつけつつ握っていた手を外して時計を見ると、まだ午前三時半。睡眠時間で考えればまあまあか。

制服に着替えて顔を洗い、スマホのライトで銃を軽く点検。それが済んだらゆっくりとドアを開けてシャーレ部室に向かう。

電気をつけてデスクの方を確認すると、昨日終わらせた分は無くなっててその無くなった分の2倍くらいの書類が置かれていた。

ま、そりゃそうなるかぁ。

早めに始業しておこう、と書類を片付かにかかること数時間。

 

 

後に聞いたところ、バッチリすべての記憶が残っていたらしい先生の声にならない叫び声が聞こえてきた。今日もキヴォトスは平和になるといいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、なんで私のこと先生って呼んでたんですか?」

「“うっ…思い出させないでほしいけど…その、シグレが私の小学校の時の先生に似てるんだよ。雰囲気とかは違うけど、背丈だったりとか、若かったのに白髪だったりとか言葉がずっと敬語だったりとか。あとすごい優しくてね…私が先生を目指したのもあの人に憧れたからってのが大きかったくらいだからね”」

「あー、それでですか…。話変わりますけど先生って小さい頃結構甘えたがりだったんですね」

「“ミ゜ッ”」

 




次からやっとエデン条約編?
本当なら1話番外編挟むつもりだったんですけどエデン条約編内でさらっと挟む程度にすることにします。
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