わちゃわちゃ青春騒動 作:ケンゴリ
ふためいと向け短編小説。クレームは受け付けません
短編企画 学園
学園の朝は早い。早朝4時には正面の校門が開放され……え?4時?早くない???
そんな時間に誰があけるん??……っと、実際に毎日朝4時には事実として門は開かれていて生徒の出入りは自由となる。まあ、そんな時間に登校してくる生徒などどこにも……
「エッホエッホ、タンパク質はこの世全ての戦争を止められるって伝えなきゃ、エッホエッホ」
………えぇ。謎の掛け声と共になんかゴリラのパーカー着た不審者が汗だくになって走りながら校内に入って行ったんだけど。学園の生徒だろうか?だとしたら随分早い登校である。
こんな時間に学園に何用だろうか……おっと、どうやら学園が生徒向けに提供しているトレーニングルームに入って行ったようだ。ただのトレーニーである、放っておこう。
………………………。
この学園は3つの学級に分けられている。初等部、中等部、高等部の3つ。それぞれのクラスには個性的な面々が集められておりそれらを束ねる担任の教師もまた個性的な面々である。
時刻は午前8時40分に差し掛かる。ゴリラはまだ筋トレしている、放っておけ。ちらほらと学園の生徒達が登校する姿を見せる中、中等部の生徒の1人であるムイは大きなあくびをしながらとぼとぼとゆったりとした速度で登校していた。
「………ねムイ…」
あくびを噛み殺しながらそんなぼやきをしつつもムイはこの学園の毎日は悪くないと思っている。単純に学園での生活は楽しいのだ、クラスメイトや担任の先生との関係は良好で初等部の後輩や高等部の先輩たちも個性的な面々で見ているだけで楽しい。
しかしまあ眠いものはねムイ。遅刻しないように時間に余裕を持って投稿している分睡眠時間は数十分の差ではあるが減ってはいる。そもそも昨夜に夜更かしをしなければいいのだがそんな都合の悪い事実には目を背ける事にした。
推しの配信を見ていたのだ。昨日も推しは可愛かった、美しかった、きっと今日も推しは可愛いし美しい。いやフライアウェイGO。推しが可愛いし尊すぎて世界は今日もラブアンドピース、俺の心もヒートアンドデストロイ。
あああああ、今日は配信ないんだよなあああ、あああああ。でもいいんだゆっくり休んでくれ推し。推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し推し。
ああ今日も世界は美しい。
なんてトリップしていたためか猛スピードで学園の門に向かって疾走してくる人影にムイは真横を通り過ぎるまで気づかなかった。
「う○こーーーーーー!!!!!」
「ぬぅえ!?」
あまりのスピードと発言に変な声をあげて驚いてしまう。前傾姿勢で全力疾走で駆け抜けた人をムイは何とか視界に捉えて誰か判別する。
「ぽ?ぽっちゃん?」
初等部の生徒である。野生のぽち、皆んなからはぽっちゃんという愛称で呼ばれている。彼女は学園内でも目立つ人である。学園内の移動は基本全力疾走、口を開けばうんこか犬の鳴き声、めっちゃ絵が上手い。
高等部の筋トレゴリラと並ぶ学園の奇行種の1人である。そして偽物か本物かわからない獣耳と尻尾を携えている謎の多い人物である。
「………担任のナノちゃ先生、よくまぁ初等部まとめられてるよなぁ」
今日も学園は騒がしくなりそうだ。
……………………………。
朝のHRの始まりを告げるチャイムが響きわたる、初等部の生徒たちは先生が教室に来る前に慌てて皆んなそれぞれ席に着いた。全員が席について静かになったところでそれを待ってたかのように教室の扉は開かれる。
「皆んなおはよー!ちゃんと静かに待ってるのえらいじゃんー!」
と、黒縁伊達メガネで髪を一つにまとめリュックサックの女性教諭が登場した。いもっていた。すごくいもいもしていた。
「誰っ???????????」
初等部の生徒であるちくわが驚いてそんな声を上げる。その驚きも無理はない、本来初等部の担任であるナノちゃ先生はもっとこう、何というか…うん!とにかく今の姿とは真逆の格好をしていて元気のいい先生なのだ。元気がいい事に変わりはないが服装が普段と真逆で生徒は皆んなざわつく。
「えっ?あ、やばい!最悪ーーー!!学園についてから着替えるの忘れちゃった!みんなにこんな姿見せたくなかったのにー!!」
「ヒヒーーン!!ヒヒヒーーーンっ!??」
ムンクの叫びのような反応するナノちゃ先生に対して普段から馬の被り物をして馬の鳴き声しか発しない初等部のシドルンは何事か叫ぶ。
「あ、これー?これねぇ、最近ナンパがうざいからこっち来る時はこの格好してんだよねー」
何故何を言ってるのか理解できるんだお前は。
「わん!わん!わうわうわうわうわうーー!!!」
「あはは!ありがとぽっちゃん!大丈夫だよー、なんか前にナンパしてきた人は1人はダンベルで拘束されて1人はなーぜ先生がコロ……お話ししてくれて1人はなんか記事で吊るされてたから!」
わあ、怖い。だから何で何言ってるか理解以下略
「ほらそんな事より、ホームルーム始めまーす!!先に言っとくけど今日も1時間目から最後の授業まで絵を描くからねー!皆んなクーピーちゃんと持ってきた?」
「ええ…今日もですか?他の授業やらなくていいんです?」
「私は絵以外教えられないからねー!皆んな神絵師にしちゃうから任せて!」
ちくわの疑問に満面の笑顔で神絵師のナノちゃ先生は答えるのであった。
それなら何で初等部の担任やってるねん。
………………………………。
「なーぜママ………今日もいいなぁ。見てるだけで幸せ」
「コラ霞さん、授業に集中してくださいね?」
「アッアッアッ、は、はいっ」
中等部の4限目の授業、この時間が終わればお昼ご飯の時間である。科目は国語、担当はこのクラスの担任でもあるえれなーぜ先生だ。綺麗な赤い長髪を靡かせてメガネをクイッと位置を都度整えながら授業を進める。
「少し進みが予定より遅いですねぇ、少しペース上げますからついてきてくださいね?」
「えぇ?だるいよ、なーぜ先生〜」
「だ〜る〜い〜」
「ちほさん?ムイさん?2人でアルチキやってる手を止めればついてこれますよ?」
「めざとい」
「怖っ」
「ふふ、何でもお見通しですよ〜?」
中等部のこのクラスは癖ものの集まりである。えれなーぜ先生をママと呼んで信仰する霞、忍たま映画を後10回は見直そうとしてるメロ好きちほ、推し至上主義ムイ、そして………
「………うんうん、捗るなぁ」
そんなクラスの風景をえれなーぜ先生にすら気づかれずに毎日スケッチしている若葉。この面々が地頭はいいのに授業をサボるせいで学内の平均偏差値爆下げクラスと言われている由縁である。
一年以内にえれなーぜ先生の奮闘でそんな汚名を返上するのはまた別の話……。
………………………………。
「マッスルぅ……ふんっ……マッスルぅ…」
「ケンケンさん、授業中にダンベルを持つのはやめなさい?」
「寝る先生、ピザ届いたんみたいなんで取りに行っていい?」
「コテさん、あなたもう高校生でしょ?今そんなことしちゃいけないって分かるでしょ?」
「幼女わよー?」
「…………」
「Jさん、ノートの代わりにパソコン使うのはこの際良いけど従業中は同時に配信聞くのやめてね?」
「え?でもちゃんと授業も聞いてるよー?別にそれなら良くない?」
「…………」
「………ロッキーさん、私の方を見てペンを握って何を待ってるの?」
「いやぁ、なんか寝る先生がやらかしたらすぐに記事にしようと思ってるからぁ」
「………………………」
時刻は15時を回り本日最後の授業の英語を自らの担任のクラスで進める寝る寝る寝るね先生、皆んなからは寝る先生と呼ばれている。
後頭部の寝る先生が担当するこのクラスは1番な自由人たちの集まりである。時と場所を選ばずいつも筋トレをするゴリラ、エセ文春記者ロッキー、行動が自由奔放すぎるコテシ、注意して良い事してるのにいつも言い返せなくなる事言ってくるJ。
寝る先生の胃はストレスマッハでキリキリしている。
「あ、寝る先生」
「……何ですかケンケンさん?」
「まだ授業終わりまで30分くらいあるけどもうジム行って良い?」
堪忍袋の尾が切れた音がした。
衝撃音、直後光より速い速度でゴリラの机が消えたかと思うと上に打ち上げられたのか天井に突き刺さっていた。そして持っていたダンベルは真っ二つになっていた。え?鉄の塊ぞ?
寝る先生はどこから取り出したのか誰かしらのプロ野球選手のサインが入った釘バットを右手で握っている。どうやらそれで机を天井に打ち上げダンベルを真っ二つにしたようだ。………どうやって?
「ヒェ」
ゴリラの顔が少し青ざめた。
「何だって?」
「え?」
「だから何だって?」
「えっとぉ……」
「授業が終わってないけどジム行くとかふざけた事言わなかった???」
「き、聞き間違いだと思います!!」
「だよね?」
「………うっす」
「おい幼女」
「にぇ?」
直後バッドがコテシの頬を掠める。しかしいい感じに血は出なかったが恐怖心を煽るのには十分だった。
「ピザ……幼女なのに1人で食べれそ?」
「うーん……食べれま」
「食べれないよね?」
「いや、全ぜ」
「無理だよね?幼女だからそんなに食べれないよね??」
「えっと」
「家族に持って帰ってあげるんだよね????」
「あ、はいっ」
「なら職員室の先生に代わりに受け取ってもらうから後で取りに来なさい?それでいいね???」
コテシは全力で頷くしかなかった。
仕切り直すように寝る先生はゴンと釘バットをを床に突き刺した。わあ、すごい……ちょっとしたクレーターができてるぅ。
「〜〜 」
そんな様子の寝る先生を見てもJは気にした様子もなくパソコンをカタカタさせながらモニターで何かの配信を見ていた。
あくまでスタンスを変えないJの目の前に寝る先生はにじりよる。
「何先生?暴力は反対だよ?」
「〜〜〜っ!!〜っ!!」
「え?なんて?」
「〜〜〜〜〜〜!!!」
「めっちゃ英語じゃん」
流石英語担当の教師というべきかめちゃくちゃ流暢に英語を披露するがJがそれを理解する事は流石にできなかった。
「いや、俺英語わかんな」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!?!!」
「怖い怖い」
Jが少し怯んだのを寝る先生見逃さずこのタイミングでドンっともう一度釘バットをJの足元に突き刺す。さっきより倍以上のクレーターができた。
「ヒョっ」
「………Do you understand?」
「お、おーけーおーけ……イエスイエス」
Jは脂汗を流しながらそう答えるしかなかった。
「寝る先生いいねいいね!これは記事が捗るぞぅ!」
勇気か蛮勇か、ロッキーは負けじとカメラとペンを持ってそう言ってのけた。
「じゃかしゃあ!!ボケっ!!なぁにぃが記事じゃい!!!そんなん怖くてここの担任が務まるかってんだい!!調子に乗るのも大概にsayよ!!!こっちが下手に出てやったらいい気になりやがってああん!!?記事にするならやってみなガキンチョ!それがお前の遺作になるけどいいんだなぁ!!?」
「………、こ、今回は掲載はやめておこうかな……あは、あはは……」
ロッキーのその言葉を聞いて寝るは満足げにうんうんと頷いて釘バットをどこかしらにしまった。そして、教壇に立ちパンっと手を叩いてから
「じゃ、授業に続き……しよっか?」
「「「「うっす」」」」
このクラスを機能させ、まとめ上げられるのはこの学園で寝る先生を置いていないのだ。
……………………。
理事長室からもこの学園の喧騒はよく聞こえてくる。理事長……ふたみんは作業をしていた手を止めふと椅子から立ち上がり窓から学園様子を覗く。
暴れ回るゴリラ、絵しか教えない初等部の教師、人間の言語を話さない生徒、怒ると水筒を地面に叩きつける図書委員、年齢詐称のイカ、他様々。
ふたみんは実写映画のピ○チュウみたいなしわくちゃな表情を浮かべて
「今日も……平和だねっ」
目を逸らして自身のデスクに戻り作業を再開する。生徒1人1人に向き合い快適な学園生活を送って欲しいと思うふたみんは1人1人に向き合うが故に1人の生徒のせいで毎朝4時に校門を開けさせれていらため寝不足である。
ここは学園。個性的なふためいとたちが集う「私立 双美(ふたみ)学園」
である。