今回若干重めかもです。
それではお楽しみ下さい。
この世界における絶対の支配者は誰か?
三大勢力に名を連ねる“四皇”か?“王下七武海”か?“海軍本部”か?はたまた自然界における強者蔓延る“モンスター”か?それらを狩り、人々の安全を守る“ハンターズギルド”か?否、そのどれでもない。
この世における絶対の支配者。それは─“世界政府”だろう。
800年前、世界の秩序を作り上げたとされる原初の勢力。
三大勢力に名を連ねている“海軍本部”も、実質的には世界政府の戦力であり、そこに所属する170以上の加盟国、直属の組織である“
しかし決して一強と言えるわけではない。海賊達の中でも頂点に立つ存在─“四皇”ともなると無視できない存在になるし、事実“四皇”同士の接触は、海軍や七武海を差し向けて接触を防ごうとする程度には警戒している。裏を返せばこれ程の戦力でもない限り、世界政府を脅かすには至らないということの証明でもあるが。
だがその世界政府を相手に真っ向から取引している組織が─“ハンターズギルド”である。
彼らはモンスターの対処を一挙に引き受け、「直属の勢力となれ」という政府からの要求を何度も断っておきながらも、一個の組織として勢力を保っている。それは偏にハンター達のモンスター討伐、生態の解明、有事の際の戦力提供など、世界にもたらした実績があまりに大きいからだ。
そしてそれ程の組織ともなれば、政府だけでなく海賊も目を付ける。
特に自身の部下を血の繋がった家族で集っている“ビッグマム海賊団”は腕利きのハンターを家族として迎え入れようと何度も縁談を持ち掛けているし、四皇の中でも特に武闘派集団である“百獣海賊団”は軍を率いて下るよう圧力を掛けている。
だがあくまで“脅威となるモンスターの対処及び研究”を主目的としている彼らはそれらの勧誘を全て断り、報復として送られてくる軍勢も全て返り討ちにしている。
これはハンター達の強さのおかげでもあるが、各勢力の思惑が複雑に絡み合った結果でもある。
“ハンターズギルド”は海賊達無法者や海軍を筆頭とした政府側、どちらにも肩入れしない“中立”の立場を謳っている。
今三大勢力のバランスが取れているのはハンターズギルドやモンスターがどの勢力にも属していないからであり、もし何処かに味方するようなことになればこのバランスが一気に崩れてしまう。
自分達を脅かす海賊に対しては武器を振るう行為が例外的に許されているが、これは正当防衛が成り立った上での話であり、これがもし集会所で飲み食い買い物する程度なら全然許すし、きちんと金と素材を持って来たのなら防具や武器だって作る。
立場としては本当にとっちつかずのギリギリのラインであり、政府も四皇も
しかし時と状況が噛み合えばどの勢力とも敵にも味方にも成り得る。そう、例えば世界的に途轍もない被害を齎すモンスターが現れた時なんかは、世界政府と連携して対処に当たることもある。
無論そんなことは滅多に起きないものの、起きないとも限らないのがこの世界だ。そしてその内の一つにこんなことがあった。
突如一定地域内で謎の黒いモンスターが出現。そのモンスターが行き着く先々で人間もモンスターも皆狂ったように暴れ狂う奇妙な伝染病が確認された。
その病の名は“狂竜症”。人間からモンスターまで侵されてしまう凶悪な伝染病である。
そしてその狂竜症のウイルスをばら撒いているモンスターの名は“黒蝕竜”、ゴア・マガラというモンスターだった。狂竜症の凶悪さはもちろんとして、固有のウイルスをばら撒くモンスターという前代未聞の事態に世界中はパニックに陥り、それによって生み出された悲劇は数知れない。
そして更に驚くべきことに、黒蝕竜は他のモンスターとは類を見ない生態をしていた。
そもそも黒蝕竜は存在を確認された当初からどの分類に属するのかずっと議論が続いていた。今や数え切れない程の種が存在するモンスターだが、おおよその括りとして分類に分けることができる。摩訶不思議な力を扱い天災のように思える“古龍種”すら、どれも共通の成分が宿った血が取れるという共通点がある。
しかし黒蝕竜の骨格はどの種とも共通点がなく、古龍種に分類しようにも血の成分が確認できなかった為古龍種にもできない。
その後の調査で黒蝕竜は“天廻龍”、シャガルマガラの幼体だという驚きの事実が発覚したが、幼体の時点では古龍たる特徴に当てはまらなかったという頭を抱えたくなる情報が分かった。
長年の議論の末、遂に黒蝕竜は古龍に準ずる種として“亜龍種”の項目を作ると同時にそこに属することとなった。
狂竜症に関してもハンターと世界政府の奮闘の末遂にワクチンが完成し、今は一般にも流通し不治の病として恐れられていた狂竜症は今や治る病気として扱われている。
しかし自然に生きるモンスターに対してはワクチンを打てるはずもなく、黒蝕竜及び天廻龍は変わらず特級の危険生物として扱われ、その悍ましいとも取れる生態から世界政府特別懸賞金が懸けられている。
その金額はなんと黒蝕竜が10億ベリー、天廻龍が20億ベリーという四皇の最高幹部に匹敵、上回るものだった。
あまりに高過ぎるのではないか、と思うかもしれないが、彼らの及ぼす影響を考えると決して高いとは言えない。
まず彼らの散布するウイルス─鱗粉はモンスターを狂わせる上に風に乗って広範囲に散らばって行く。そして鱗粉を摂取して狂竜症を発症したモンスターが他のモンスターを襲うとそのモンスターも狂竜症に感染する─所謂パンデミックが起きる。
そして狂竜症によって暴れるモンスターは自身の力を限界以上に引き出された状態であり、その寿命は短いとされている。
問題はここからで、狂竜症によって死んだモンスターの肉体とウイルスがある程度適合すると─なんとそこから黒蝕竜が生まれるのである。そして新たな黒蝕竜がある程度成長するとまた鱗粉を撒き散らし…という、パンデミックのサイクルが出来上がってしまうのである。
そう考えると、そのまま繁殖し続ければ世界中黒蝕竜で溢れてしまうのではないか…と思うかもしれないが、それを防ぐのが他ならぬ成体、天廻龍の存在である。
まず天廻龍に至るには黒蝕竜が成長し、脱皮することで至ることができる。そして成体になっても生殖細胞を兼ねた鱗粉を撒き散らす、というところまでは同じなのだが、天廻龍の撒くウイルスにはもう一つ、黒蝕竜のものとは別のものが混じっている。
それは─黒蝕竜の成長阻害物質。
「なぜ同胞を殺す物質などを撒くのか」と思うかもしれないが、天廻龍及び黒蝕竜にとっても成長、繁殖の為の他生物は必要不可欠な存在であり、狂竜症によって考え無しに始末しては自身の成長に必要な他生物まで絶滅に追い込んでしまうのである。故の無意識下の自然に対する自浄作用であり、そうでなければ子孫を存続させることができない。故に成長を阻害し、他の黒蝕竜は全て死滅させるのだ。
しかし天廻龍の散布範囲は黒蝕竜の比ではなく、国の一つ二つは軽く滅ぼしかねない程のもの。見逃しては多くの人々が死に絶えてしまう。だから鱗粉散布前に天廻龍を討ち取れば新たな黒蝕竜は生まれないのではないか─と考えるかもしれないが、そう簡単な話でもない。
確かに鱗粉散布前に天廻龍を討ち取ればそれによって死ぬハズだった人々は助かるが、同時に黒蝕竜の成長阻害物質を撒かれない─つまり新たな天廻龍に至る個体が出てしまい、今度はその被害を食い止めなければならない。
つまり本当の意味で天廻龍、黒蝕竜を絶滅させるにはとにかく存在を確認すると同時に狩り続け、狂竜症に侵されたモンスターも討ち取り、黒蝕竜を生み出す要因を全て死滅させることなのである。
当然、とてもじゃないが現実的な話ではない。
そもそも幼体たる黒蝕竜の時点で並の大型モンスターと同等以上の実力を誇る黒蝕竜を討ち取ることが可能な人員すらザラにはおらず、古龍たる天廻龍など尚更だ。
それでも少しでも討伐しようと思われるよう特別懸賞金まで懸けているわけだが、結果は芳しくないというのが現状だ。
故に抗体が開発されてなお世界各地で恐れられるモンスターであり、存在が確認でき次第腕利きのハンターが派遣される手筈となっている。
しかし、こうは思わないだろうか?
もしこの力が─誰かの手の内に渡ってしまったら。
天廻龍に限らず、モンスターならば皆そうだ。
もし、空を自在に飛ぶことができたら?もし、竜すら捻じ伏せる怪力が手に入ったら?もし、天候を操ることができたら?もし─あらゆる生態系を思いのままにすることができたら?
誰しも夢、または野望を抱くことだろう。しかしそんなことはできない。人間とモンスターは違う。怪物として知られる七武海、海軍大将、四皇ですら、モンスターのような自然を自在に操ることはできないのだから。
しかしそれを可能とする唯一のものが─“悪魔の実”である
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とある島
その島は異様な様相に満ちていた。空は灰を被ったように暗くなり、生き物の生気をまるで感じない。人間がいないだけならまだしも、獣の唸り声や、鳥の囀りすら聞こえてこない。そして何より─死臭と血の匂いに満ちていた。
人に限らず獣や昆虫ですら、生き物は皆例外なく死んでいた。その死体も異様なもので、互いに食い合って肌の部分すら少ないものから、衰弱死のように青白い肌になって死んでいるものまで様々だ。血も明らかに異常な赤黒い色に染まっており、正に地獄絵図と言い表すことのできる状態だ。
そんな島の端に、人影が二人見える。
「嫌だ…嫌だよう…一緒に行こうよ…!」
啜り泣く声と共にもう一人の影に話しかける幼子の声。その子どもは普通の子どもではなく、肌からは黒い鱗が生え、肩の部分から異形の翼腕が震えて、顔に瞳は見られず、紫色の触角が生えていた。
「…悪いが、行けない…パパももう、眠くなってきちゃったみたい、なんだ…」
一方で男─その幼子の父親は見るからに顔色が悪く、足元すら覚束ない。口端からは血が垂れており、見るからに健康な人間の表情ではない。死ぬ寸前の人間だと言うのが妥当な表現だろう。
「嫌だ…!怖いよ…!私一人じゃ…生きていけないよ!!」
幼子─少女は必死で父親のボロボロの衣服に縋り付く。父親はその言葉と涙に口を歪ませながらも、震えを抑えながら優しく頭を撫でた。
「よく聞きなさい」
か細く、今にも消え入りそうな声だがそれでも少女は顔を上げ、父親の顔を見る。父親は崩れてしまいそうな膝を抑えながら、ゆっくりとしゃがんで少女の視線と目を合わせた。
「お前に罪はない。たとえあったとしても…パパとママは絶対にお前の味方だ」
「でも…村の皆が死んだのは─「それでもだ」
少女が震えながら言葉を口にしようとした瞬間、父親は語気を強めてそれを否定する。
「お前はパパとママの子。世界中見渡してもお前以上に大切な存在なんて他にいやしない。ママが
「だからどうしても寂しくなったり、死んでしまいたくなった時には─この詩を歌いなさい」
「闇がその目を覚ますなら 彼方に光が生まれ来て
大地に若芽が伸びるなら 此方に闇が生まれ来る
すべてを照らすは光なれ あまたの影は地に還り
いずこに光が帰る時 新たな影が生まれけん
やがては影が地に還り 新たな命の息吹待つ
共に回れや 光と影よ
常世に廻れや 光と影よ
そしてひとつの唄となれ
天を廻りて戻り来よ
時を廻りて戻り来よ
さァ、一緒に歌おう」
「…うん」
そして十回程度、少女と父親は一緒に歌った。少女が覚えるころには、ある程度涙を流すことはなくなっていた。
「上手じゃないか。パパより覚えるのも早いし、流石だな」
父親はそう言って少女の頭をワシワシと撫でる。不安げだった少女の表情に、少しだけ笑顔が見られた。
「そうそう、やっぱり笑ってた方がかわいいよ。お前は」
「…パパ、この歌はなに…?」
「…とても怖い、怪物の歌だ。だけどそれに立ち向かう、あるいは共に生きる強い人間の歌でもあるんだよ」
「怖い…怪物…」
少女の表情がまた不安げなものになる。怪物とは、ひょっとして自分の─
「良いかい。強い仲間を見つけなさい」
そんな少女の顔を覗き込みながら、父親は強く言い放つ。
「例えお前が怪物でも、弱い女の子でも、全て受け入れてくれる強い仲間を」
「でも…こんな…人殺しの─」
「さっき一緒に歌っただろう?人間は時に恐ろしく残酷で─そして、何よりも強く、優しい生き物だ」
「さっきの歌みたいに、お前を受け入れてくれる仲間も、きっと現れる。だって─」
そこで、父親は少女を強く抱き寄せる。
「パパとママがそうなんだから」
「…!」
少女がハッとしたように上を見上げるが、父親の表情は分からない。
「怪物になっても、泣き虫でも、お前はお前だ」
「だからこそ、希望は捨てるな。いつか会えるその日を信じて」
「…うんっ!」
少女は涙でぐしょぐしょになった顔を拭い、目元を真っ赤にしながらも強く頷いた。
「パパ…私…」
そして父親の腕の中から抜け出し、島の端に立って最高の笑顔で言い放つ。
「いってきます!!!」
「…ああ!いってらっしゃい!!!」
父親はその姿に泣きそうになりながらもグッと堪えて、同じように笑顔で応えた。
「━━━━━」
そして少女が低く身体を構えると、その身体の様子が見る見る内に変化していく。小さな腕は黒い竜鱗に覆われた前脚に変化し、肩から生えていた翼脚は更に大きく肥大化していく。腰の部分から生えていた短い尾は長く、頑強そうに伸びた。顔も僅かな幼さの残る表情から完全な異形の竜と化した。
「━━━━━ッ!!」
竜と化した少女は脚で強く大地を蹴飛ばし、翼脚を広げて大空へ飛び立った。僅かに身体をグラつかせているものの、本物のモンスターと比較しても遜色ない程度には上手く飛行できていた。
その姿を見送り、父親は少し悲しげな表情で呟く。
「…やっぱりあの子は、君の子だ。望めばきっとどこまでだって飛んで行ける」
やがて完全に竜となった少女の姿が見えなくなると、その足元にポロポロと涙が落ち始める。
「…結局…!何一つしてやれなかった…!夫らしいことも、父親らしいことも…!」
父親はその場に泣き崩れる。娘の前ではらしく振る舞ってこそいたが、結局のところ何もできなかった。まだ年端も行かない娘をあまりにも過酷な島の外に送り出してしまった。不可抗力で得てしまった“能力”も、あの身体と知識では持て余してしまうだろう。
いや、むしろ枷になってしまう可能性も高い。母親は
にも関わらず、導くことも守ることも、傍にいてやることすらできず…ここで終わってしまう。父親失格だ。
(もう…視界が…)
「ウッ…!ゲホッ!ガハッ…!」
視界がぼやけ、血の塊を吐き出す。今までは意地で意識を保っていたが、ここに来て遂に限界が来たようだ。
(すまない……せめて、あの子を受け入れてくれる仲間を……どうか、神様………
せめて最後に娘の無事を祈り、父親は海に身を投げ出す。
この日、その島の住人、生存者は本当の意味でゼロとなった。
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(…勢いで飛び出して来ちゃったけど…どうしよう…)
竜と化した少女は空を飛びながら考える。今の所は天候も安定しているが、ここは“偉大なる航路”。いつどんな天候に変化してもおかしくはない。だからこそ早く島にでも降り立つべきなのだが…
(こんな怪物の姿…絶対皆に怖がられちゃう…それに…この粉も…)
こんな異形の竜の姿、まず常人には恐ろしく見えてしまうだろう。人の姿からの変化は何度か練習してできるようになった為、人の目につかないところで戻るのが理想だ。
しかしそれがクリアできても二つ目の問題がある。それはこの姿になったら自然と身体から撒かれる黒い粉だ。細かいことは分からないが、人体にとって害になるものであることは確かだ。
(これをどうにかして出ないようにしないと…どこかで練習するべきだよね)
そう考えをまとめてしばらく飛行していると、眼下に一つの島が目に入った。見たところ無人島のようだが、逆を言えば思い切り身体を動かせるし、人を巻き添えにしてしまう心配もない。
(…よし、あの島にしよう)
少女は島の砂浜目掛けて降下し、ゆっくりと着地すると竜の姿から人の姿へと戻った。
「ふー…それじゃあまずは粉をまかないようにするのと…後ごはんや寝るのは…あまり気が進まないけどさっきの姿ですませようか…」
軽く見回して脅威がないのを確認すると、自分のやるべきことを再確認した。食料と寝床の問題は竜の姿になって済ませれば問題ない。使うのは気が進まないが、こんな所で死ぬわけには行かないのだ。
「それじゃあまずは寝られそうな場所を……ん?」
そして島の内側、見えている樹海に足を運ぼうとすると、木々を折るような音が中から聞こえる。そして後ろを振り返ると─
「キュルルルルルル…!」
「うぎゃああああああああああ!!??」
─ギョロリとした目玉が間近でこちらを覗いており、思わず叫び散らしてしまい、その場にパタリと倒れて気絶してしまった。悲しきかな、如何に強大なモンスターの力が宿った悪魔の実を食べたとしても、本人の度胸までモンスターと同じになることはないのである。
「キュルルルルルル…」
なお驚かせた本人は突然叫んで倒れた少女の頬を前脚でペチペチと叩くが、目を覚まさないことから興味を失い、そのまま虚空に溶け込むように姿を消した。
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“聖地マリージョア、パンゲア城“
神々─天竜人の住む聖地。その奥には他の建造物と比較しても更に立派な城がある。その城の一室、だだっ広い広間にはこの世界における最高権力者がいる。
「何?件の娘が?」
「ええ、住人達の死体と少し離れた無人島での
5人の老人に対して報告するのは白いスーツに仮面を被った男。淡々としたその声色からは感情を伺うことが出来ない。
「なんという不運…いや、これは我々にとってはある種吉兆か…」
「そうだな、少なくとも海賊達の手に渡るよりは余程幸運と言えるだろう…」
「あのモンスターの力を手中に収めることができればまた一つ、我々の手札が増えるだろう」
「一刻も早く捕らえなければ…被害が増大しては面倒だ…」
「直ちにこの少女に懸賞金を懸けろ!なんとしてでも我々がこの力を確保するのだ!」
「はっ!!」
指示を受けた仮面の男は頭を下げると部屋から出て行く。残るのは5人の老人だけとなる。ただならぬ気配を漂わせるこの5人の老人達こそ、この世界における最高権力者─
「しかし
5人の内一人の呟きは、誰に拾われることもなく部屋の中で響いた。
そうして次の日の新聞には、一人の少女を指した手配書が同封されることとなった。
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“2年後”
「んぅ…もう朝か…」
眠たげに目を擦りながら、無人島の樹海の中から一人の少女が出て来た。この島に上陸してから2年が経ち、成長したことで僅かにあどけなさを残しつつも、顔立ちは整い、女性らしい身体つきとなっていた。
「さて…いよいよ今日、だね」
少女は覚悟の決まった表情で水平線を見詰める。そう、今日がいよいよこの島を出る日なのだ。何度も練習を繰り返して身体から撒かれる鱗粉の量も限界まで抑えられたし、人間と竜の混じった姿に変化できるようにもなった。人と会うことは無かったが、それでも得たものは間違いなく多い。
「服は…もう仕方ないよね」
少女は自身の身体に纏った黒い外套を見ながら呟く当時着ていた衣服は流石に着れなくなってしまったので、仕方なく僅かに身体を竜のものに変化させ、黒い外套のように見えるようにしている。衣服は自力で金を貯めて買うしかない。
「…いるのかな。私を受け入れてくれる仲間…」
空を見上げ、不安げに呟く。2年経っても、そこだけは未だに不安だ。
この世界は自分が思うよりずっと広い。それは分かっているが、それでも自分が怪物だと言うのは言い逃れできない事実だ。こんな怪物を受け入れてくれる人間がいるのか。
「…“常世に廻れや 光と影よ そしてひとつの唄となれ”…弱気じゃダメだよね。やってみなきゃ分からない」
少女は父親から教わって片時も忘れたことのない歌の一節を呟き、自分を勇気づける。自分を知る人間はまだいない。ならば自分から歩み寄り、知ってもらうしかない。自分は怪物ではなく、皆と共に生きたい一人の人間であると。
「まずは大きめの国を見つけよう。小さな島とかだと見つけられかねないし」
軽く身体を伸ばしながら少女は最初のコンタクトを考える。見える範囲に島はない為、自然と飛行する必要があるわけだが、異形の竜の姿を見た上で受け入れられる人間はいないだろう。故にまずは人目につかない所で着地して人間の姿に戻る必要がある為、小さな島国などではダメだ。ある程度の大きさのある、なおかつ人の目のつかない山があるような島が良い。
「まあ実際に見てから考えれば良いよね。それじゃあ、行こうっ!」
言葉を言い切ると同時に身体を竜の姿に変化させ、大空へ飛び立つ。不安半分、しかし自分を受け入れる存在に期待しながら。
「─出立を確認。どうやら島を出たようです」
『分かった。近隣の島々に派遣している者に警戒させるよう伝えろ』
─しかし少女は知らなかった。
島の外ではとうの昔に自分のことは知られていること、自分がどんな存在として知られているかも─
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“新世界”、とある島
本物の強者しか生き残ることのできない“偉大なる航路”後半の海、“新世界”。前半側の海とは違いそこは海軍や七武海の影響力が低く、四皇やモンスター─その中でも古龍種が統べる海だ。
この島もまた、とある古龍の支配─というよりは住まう島。
その島の古龍は既に役目を果たし、余生を悠々と謳歌していた。一応島つきのハンターが監視しているものの、特に大きな動きを起こすこともなく、上手く共存することができていた。
「ッ!」
島の最奥部─縄張りで寛いでいた古龍は何かに気付いたように顔を上げて島の外に顔を向ける。
「グルルルルル…!」
そして不服そうに唸ると翼を広げて空に向かって飛び立ち、他のものには目もくれず前半側の海へ向かって行った。
そしてその様子は当然島に住む人間達の目にも入る。
「おい!アイツが空へ!」
「なんだあの感じ…少なくともちょっと外に出たくなったって感じの動きじゃねェが…」
「言ってる場合じゃないよ!アイツが外に出たってことは…」
「だな。アステラにも連絡を入れておいた方が良さそうだ」
島の住人達─普通に生活する者から防具と武器を背負ったハンターまで様々だが、全員この島に住む古龍が外に出たことに驚きと動揺が広まっていた。いかに年老いていようが大人しかろうが、他の生物と一線を画す実力、影響力を持った古龍種である以上、楽観はできない。
ましてや今回の古龍であれば尚更だ。
「
ハンターの腑に落ちない発言をよそに、古龍─天廻龍は空を駆ける。黒蝕竜と骨格と身体つきこそ同じだが、体色は正反対と言っても良い。
僅かに金色を混ぜたような眩く輝く純白の龍鱗。黒蝕竜には見られない、黒く頑強に聳え立つ角、翼を広げたその姿はまるで空に浮かぶ月のよう。
この姿こそが、黒蝕竜が悠久の時を経て成長し、廻ったその果てに至る姿─
天廻龍はいてはならない“異物”の存在を本能で感じ取っていた。放置していれば自分の子孫が脅かされるであろう異物を。そしてそれを排除するべく動き出した。
「お、あの島なんか良いかな。行ってみよ」
「グルルルルル…!」
光と影が交錯する時は、そう遠くない。
一話で収めたかったのに前置き長過ぎた…反省。
・世界政府
原作通り。ハンターの戦力欲しい。改めて戦力図整理するとやっぱ海軍含めたら最強だなってなる。海軍無しだとよぐわがんにゃい…
・百獣、ビッグマム
ハンターの戦力欲しい。
・ハンターズギルド
今回説明した通り立場としてはかなりグレーゾーン。全勢力集めてサバイバルしたら多分最後に生き残る。四皇クラスのハンターもいる。予想してみてね。
・マガラ種
誕生罪。生きることが背負いし罰。頼むから死んでくれ(辛辣)
ワンピ世界でも変わらずやべー奴。ゴアちゃんは懸賞金高過ぎと思うかもだけど狂竜化モンスが出す被害もゴアちゃんカウントしたらこの金額でも納得かなって。
・モンスターの悪魔の実
あります。禁忌とかその辺は…まあ気長に待ってて下さい(不穏)。
・フィリアちゃん
不運な子(圧縮言語)。自分がやったことについての自覚はある。ただ能力の練度はかなり高めたから同じ失敗はしないと思う。周りは分からんけど(なお懸賞金額)。
・パパ
普通の人。詩はあくまで知ったってだけ。
・ママ
生きてるよ!よかったね!
・五老星
今は傍観中。マガラの悪魔の実欲しい。
・島であった透明化するやつ
たまたま通りすがっただけ。エッチなことはしませんでした()。
・シャガルマガラ
もうウイルス撒いて余生謳歌中。ただ何かを感じ取ったようで島の外へ。ちなみにシャガルは自身のウイルス影響範囲外に他のゴアが逃げ出すとシャガルにならないよう殺しに行くらしいね。
・時系列
混乱するかもだけど2年経ってルフィ達の原作に追いついた形です。頂上戦争前ってことね。
こんなもんかな。次で終わる…と思う。終わらなかったらごめんなさい。
評価、感想もよろしければお願いします。
それでは次回をお楽しみに。