和風ゲー世界の回復祈祷師~鬼畜世界で推しを助けるために治癒を極めてたら、いつの間にか周りが病んでいた~   作:鬼怒藍落

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第弐拾参話:再会

 朧様のところに戻れば、そこには慌ただしい光景が広がっていた。

 水を汲んではかける野狐達、完全に目が死んでいる真神……そして、その光景をあわあわと慌てながらも残る野狐に何もするなと止められる朧様……。

 

「うむ、案の定だな……」

 

「これ、俺が悪いのかなぁ」

 

「あ――貴方様、これは違うのでございます! ただ少しお湯加減が分からず、早いほうが良いと思って狐火を使っただけであって――決して私が家事が下手などと!」

 

 これでもかと顔を紅くして俺の方を見て弁明をする朧様。

 ……とりあえず火事はやばいので俺も消火活動を手伝うことにしながら、この少しどころかかなり抜けている朧様を宥めることにした。

 

「あぅ……(わたくし)だって、私だって家事ぐらい出来るのですただ教わってないだけ」

 

「分かったから落ち着こうな、誰も責めてないからさ」

 

「うぅ、貴方様……本当に優しゅうございますね」

 

「のう朧、せっかくの再会なのだが……妾にも構ってくれぬか?」

 

 そうやって朧様を宥め、彼女を落ち着かせたところで月詠様がそう言った。

 そこでようやく彼女の存在に気づいたのか、彼女は言葉を失い……少し後退った。

 

「妾が言う資格はないが、逃げるでないぞ朧……それに妾は分霊だ」

 

「そう、なのですか? ……しかし、何故貴方がここに?」

 

「汝を神へと変質させたとき、本体が妾を創ったのだ。それから妾は汝を見守っておった」

 

「ッ――ということは今まで、ずっと見ていたのですか? 私は貴方に会わせる顔など……許されて良いはずなどなく」

 

 ……少し険悪な空気が流れる。

 会わせるのは不味かったという考えが頭に過り、俺の浅はかな思いで喧嘩が起こると思ったのだが……。

 

「聞くがいい朧。汝は無理矢理課した神としての役目ですら真面目に取り組み、月蝕の村を守ったこと。野狐達を束ね村人達と過ごしたこと、あの村の神として役目を果たし続けたこと――それだけで十分、元より妾は怒っておらぬ」

 

「……月詠様」

 

「それにな、汝が食べ過ぎで体調を気にし少し散歩を増やしたことも、少女向けの書物を供物に要求し、それを赤面して読んでいたことも、毎日社で妄想したことも妾は見ていたぞ」

 

「――えっと、あのぉ?」

 

「昔は男に会うだけで赤面し気絶すらしていた汝がよくここまで成長した。だが……流石に狐火で理想の相手を創るのは如何なものだと思う」

 

「月詠様!? えっと、待ってくだされ、そんなところまで見ていたのですか!? しかもこの方の前で暴露するとか貴方様に人の心はないのですか!?」

 

「……むぅ?」

 

「この鬼畜様ぁ、本当に変わってませぬね!」

 

 ……最初は普通に褒めていたと思ったら、なんか急に暴露大会が始まった。

 そのせいで完全に朧様は涙目になったし、それどころか俺に弁解を始めたし……まじでなんなんだろうこれは? というか、消火活動を終えた真神が俺をジト目で睨んでいるし。

 

「なんだ真神、その視線は?」

 

「別に……あるじは相変わらずって思っただけ」 

 

「そこら辺詳しく」

 

「……言っても無駄だから別にいい」

 

 なんだろう不服だけど、文句が言えないような雰囲気だ。

 ……たまに神楽にも似たような視線で睨まれるし、そろそろ何かを改めた方がいい気がしてきた。

 

「あうぅ……私の秘密が、何故こうも暴露されるのですか?」

 

「……大丈夫か、朧様?」

 

「慣れてはいたので……しかし、久しぶりだとくるものがあります――貴方様、決して私は狐火を悪用なんかしてませんからね?」

 

 彼女は俺の肩をがっちりと掴みそのまま力強い言葉でそう言ってきた。

 目がマジだし、有無を言わせぬその態度に俺は分かったという意味を込めて首を縦に振りこの話を早急に終わらせる。

 

「それよりです月詠様、何故姿を現したのでしょうか?」

 

「この人間に汝を救って貰うためだ。まだ魂が浄化できてなかろう?」

 

「待ってくだされ、この方をこれ以上巻き込むつもりなのですか?」

 

「……了承はとった。あとは汝の決断次第だ」

 

「嫌でございます――私は今は正常です、だからこれ以上の迷惑をこの方にかけるわけには行きませぬ」

 

 断固とした意思で、月詠様の提案を拒否する朧様。

 その時の態度からは接した中で一番の意思が感じられ、絶対に嫌だという事が理解できる。

 

「――しかし、それでは朧が……」

 

「……私を救うのならば、月詠様の力で封印してくだされ」

 

「それは嫌だぞ!? なぜ救う手立てがあるのに汝を諦めなければいけぬのだ!」

 

「私はこれ以上、人の世に迷惑をかけたくないのです。それに、この月食の結界も維持が出来なくなります――だから、ことが進む前に封印するか私を滅してください」

 

 そう言って彼女は笑う。

 ……月詠様に向かって本心を伝えるように、言葉を続けて微笑んだ。

 

「私は、幸せ者なのですよ? 人と関わり命を営みを見守り、この方に助けられてまたこうして貴方に出会えた――それだけで、十分なのです。だからこれ以上は求めません」

 

「ッ――馬鹿者め! 元はといえば妾の責だろう!? 貴様が背負う必要なんて!」

 

「あの……水を差すようで悪いんだが、朧様俺は何を言われても貴方を助けるぞ?」

 

 熱くなる二人を見ていた俺は、これ以上はやばい喧嘩になりそうだからと口を挟む。そして、俺なりの言葉を朧様に伝えることにした。

 短い間だがここまで二人を見てそして接して、その上記憶を見た俺だから精一杯の言葉を朧様に伝える。

 

「……外から来た俺だけどさ、貴方の記憶を見たんだ。ずっと一人で苦しんで月詠様のために汚名を被った朧様の記憶を。それで実際に貴方と関わって、救いたいって思ったんだよ」

 

 それに、とそこで言葉を止めて、俺は大切な神の事を思い浮かべながらも彼女に伝える。

 

「俺の神様はさ、貴方を見たら助けろって言ってくる。誰よりも優しいあの神様なら、絶対にな。貴方みたいな優しいヒトが笑っているのが見たいから、俺は俺のためにも貴方を助けたい――だから頼むよ、俺に貴方を助けせてくれ」

 

 俺のその言葉に彼女がどう答えるか分からない――でも顔を見れば迷っているようで、顔を赤くするどころか、しどろもどろになりながら目を合わせられなくなり視線を逸らし。

 

「…………本当に私を救うつもりなのですか?」

 

「俺の神様である神楽に、その覡として誓って――絶対に貴方を助けます」

 

「本当に、貴方様は大馬鹿様ですね――はぁ、ここまで言われて断れるわけが無いじゃないですか」

 

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