和風ゲー世界の回復祈祷師~鬼畜世界で推しを助けるために治癒を極めてたら、いつの間にか周りが病んでいた~   作:鬼怒藍落

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第参拾弐話:町医者竜胆

「っし、問題ねぇぞ夜見。熱もねぇし、意識も戻ってやがる」

 

 信濃の国――城下町の医者である竜胆佐久馬(りんどうさくま)さんのところにやってきた俺は呪詛によって倒れていた二人の子供を見てもらい、そんな言葉をもらって安心した。

 急いで連れてきて慌てたこともあってか、その言葉でやっと一息つくことができ、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「まじで助かった。えっと受診料は明日改めて渡せばいいよな?」

 

「いらんいらん気にすんな、勝手にやってるだけだ。それにたかだか二人のガキの診察で金はとんねぇよ」

 

 この人はもとは別の国の藩で医師をやっていたそうだが、色々なしがらみ故にこの国に逃げてきたんだそう。結構な訳アリな人で高身長なこの人は厳つく口は悪いが、かなり面倒見がよく俺の祈祷師に関する仕事の宣伝をしてくれた恩人である。

 

「だめだ佐久馬さん、世話なってるんだから払わせろ。最近余計に怪我人こっちに送ってるだろ」

 

 そう今言ったとおり、この人は秋になってからの怪我人を全部俺の万屋に送ってるのだ。祈祷を行うぶんには問題ないが、純粋にこの人の事が心配だしちょっと困る。

 

「そっちに任せたほうが早いんだから仕方ねぇだろ、隠居人には楽させろ女誑し」

 

「言ったな、あんた言っちゃいけないこと言ったな?」

 

「はっいい気味だな。いつか刺されたら診察してやるよ」

 

「あの、仲が……悪いのですか?」

 

 俺達のやりとりを見て心配そうに聞いてくる早苗さん。

 これはいつも通りに言い合いだが、確かに初見の人には仲が悪く見えるかもしれない。言い訳しようとしたが、その前に佐久間さんが口を挟む。

 

「別に問題ねぇぞ、これがいつも通りだ」

 

「……そうなんですね、勉強になります」

 

 何のだろうか? と少し不思議に思いながらも、俺にこの場でやれることはないし二人の会話を見守ることにした。

 

「それよりあんたの方は診なくていいのか?」

 

「はい、夜見さんのおかげなのと一応私も加護持ちなので少しは耐性ありますし」

 

「ふぅん……ならいいけどよ、一応呪詛熱用の薬は頓服として渡しとくぞ」

 

「ありがとうございます。夜見さんも連れてきてくれて助かりました」

 

「あぁこっちこそな、仲いい子だったし本当に守ってくれてありがとな」

 

 今回野槌の被害を受けた子達は、よく万屋に遊びに来てくれる子供で運んでいる間気が気じゃなかったし、早苗さんが居なければ二人は命を失っていた可能性があったので感謝してもしきれない。

 

「とりあえず……早苗さんはどうするんだ? 夜も遅いしよかったら送っていくが」

 

「……大丈夫ですよ? かなり迷惑かけちゃいましたし、これ以上は悪いです」

 

 そう言われたが、今の時間は夜の八時の戌の刻。

 前世だったら平和な時間だが、夜の城下町は危険だし引き下がるわけにはいかなかった。

 

「早苗嬢危険だし送って貰え……夜見はヘタレだから安心しろ」

 

「ですが……まあそうですね、それなら夜見さんお願いします」

 

「任せろ……えっと子供達はどうしよ」

 

「そこは安心しろ、俺が送っとく……というかお前何も考えず行っただろ、こいつらの親が町中探してたぞ、他のガキが説明したからいいけどよ」

 

「あー悪いことしたな、明日会いに行かないと」

 

「そうしろ、とにかくお前は早苗の嬢ちゃんを守ることだけ考えろ」

 

「はいはい……任せたぞ佐久間さん」

 

 そういう事なので、俺は佐久間さんに子供達を任せることにして、暑いからと外に待機していた真神と合流して彼女を送ることにした。

 夏とは違って涼しい秋の夜道を真神と早苗さんの三人で歩くが会話はない。

 とくに話題もないしと思いながらも、今更ながらに目的地を聞いてなかったことに気がついた。

 

「えっと、家って……?」

 

「あー火之巫女亭(ひのみこてい)ですね。朝会ったお店です」

 

「了解。じゃあ向かうか」

 

「そうですね……」

 

 ここからはあと二十分で着くし、少し暗い顔をする彼女を元気づけようと話を探すがまだあって間もないって事もあってかあまり良い会話を見つけられなかった。

 

「あの、夜見さんはどうしてあんなに強いのですか?」

 

「あんなにって言われても……アレ殆ど俺の力じゃないし」

 

「でもあれは何かの加護の力でしょう? ……あれだけの力は、相当な契約が必要ですし……それを考えると凄いなぁって」

 

「……俺が凄いわけじゃないし、あれは神楽の力だからなぁ」

 

「でも――いえ、すいません。せっかく助けてくれたのに」

 

「気にしてないからいいぞ……あのさ、その火之巫女亭ってどんな店なんだ?」

 

 少し気まずい空気が流れたので、俺は話を変えるためにも今日誘ってくれた店のことを聞くことにした。料理のお店というのは知っているが、メニューとかが分からないし純粋に気になったからだ。それにそれなら少しは明るくなるだろうし……。

 

「……結構色々ありますね、山菜の天ぷらとかは美味しいですし……あとはなんでしょうか? お茶漬けとか。あ、あとは味噌を使った料理は信濃の中でも随一です!」

 

「そっか、今度になるが行ってもいいか?」

 

「――ふふ、はい構いません! 火之巫女亭はどんなお客様でも歓迎なので、夜とかはお酒を飲んだ方とかも居て楽しいですよ」

 

「そっか、ならお邪魔させて貰うわ」

 

 その後は暗い中でも分かるほどに彼女の表情は明るくなり、少し話が弾むようになった。最近食べたものとかはまっているとかの話にもなり、火之巫女亭に着く頃には少し打ち解けることが出来たみたいだ。

 

「本当に今日はありがとうございました夜見さん、今度来てくれたら今日のお礼もかねて美味しいものを用意するので同居人の方と一緒にきてくださいね!」

 

 そしてそうやって別れた俺は、店の中に消えていく彼女を見送って……真神と一緒に帰路についた。

 

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