和風ゲー世界の回復祈祷師~鬼畜世界で推しを助けるために治癒を極めてたら、いつの間にか周りが病んでいた~   作:鬼怒藍落

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第参拾参話:信濃の姫の捜索依頼

 戸隠れ神社の鏡池、最早慣れ親しんだお茶会にて――俺達万屋の四人はそこで集まり、いつものように龍水様と会っていた。

 今回のお茶会は久しぶりなのと、初めて朧様が参加するって事もあってかいつもより少し豪華。二柱の神と二人の神使がいるこの場で場違いだなぁと思いながらも俺は彼女たちの話を聞く。

 

「……さて、こうして喋るのは初めてか月白朧?」

 

「そうでございますね……九頭竜、いえ龍水様」

 

「こう視るにもう神としての役割はないのか、夜見のおかげか?」

 

「はい夜見様のおかげで、(わたくし)は元に戻りましたので――私が神でいられたのは、月詠様の穢れがあってこそ……それがなくなれば神使に戻ります」

 

「そうか――聞きたい話はかなりあるが、それより前に貴様等に依頼を頼みたい」

 

 一度お茶を飲み、思い出したかのようにそう言ってくる龍水様。

 前にもこんな事があったと思いながらも、どんな依頼かを聞くことにする。いつもなら世間話をしたりとか神楽とかをからかったりするのに、直球で依頼されるのは珍しく少し重要なものなのかと気になった。

 

「吾も最近知ったのだがな、どうやら半年ほど前から信濃の姫が行方不明になっているらしいのだ」

 

「……一大事だろそれ」

 

「あぁそうだな……長月の三週目には信濃の豊穣祭があるが、今回の祭事はその姫がやるようなのだが……今のままでは開催できなくなるだろう」

 

「信濃の豊穣祭って……確か二年おきにやる奴だったけ?」

 

 万屋の客から聞いた話で俺も詳しい訳ではないのだが、その豊穣祭は信濃の国を治める龍水様が力を使うことが許される期間で、簡単に言えば雨を願うお祭りだ。

 出店が並び観光客も沢山くるこの信濃国の中でも一番大きいお祭りで、二年に一回しか開催されない事からも話題性があるそれ。

 

 原作が始まったあとの神歴八九十年にも行われた物であり、主人公一行がこの信濃の国に関わるきっかけになった祭りでもある。

 信濃の国のストーリーのヒロインの一人であるやべぇ姫と関わる話が展開されるのだが……あれが行方不明なのだろうか? 

 

 え、あれが……行方不明?

 

 俺の原作をプレイした故のその姫の印象は、簡潔に言うと天災ヒロイン。

 龍水様の眷属であり、彼女の現し身と言えるほどに傲慢不遜な暴君ながらも幼い頃から信濃を統治した天才だ。その時点で国が回らなくなると思うほどの化け物がいないとなると相当やばいと思うのだが……。

 

「……それ国の方も大丈夫なのか?」

 

「まぁそこは、なんとかしてるとは聞いたぞ? でだ、今回の依頼は祭事を行う姫の捜索だ。特徴は吾と同じ桃髪(とうはつ)で桃色の目をした貴様と同い年の少女だ」

 

「……龍水様、他に特徴は無いのか? 今のままじゃあまり分からん、桃髪は珍しいけどさ」

 

「吾は基本的に関わっておらんからな、会ったのも子供の時に加護を与えたきりだ――名は戸隠凪沙(とかくれなぎさ)……だったはずだ」

 

 戸隠凪沙……うん、原作通りの名前だ。

 というか本当にあれが行方不明なのか……あの破天荒を探すとなると苦労するだろうし、なんか変に拗れそうで……今から気が重くなる。

 何より……連れ戻すとして、話聞いてくれそうにないし。一応他にいる桃髪の知り合いは早苗さんがいるが、あの人の性格的に百割くらい別人だし。

 

「まぁ今日はそれぐらいだな――まだ話し足りないが、時間もないので早速頼めるか? 吾の占いでは信濃にはいるようだが、如何せんそこまで万能ではないから見つけれぬのだ」

 

「了解、龍水様。夜は時間取れないけど、それまでは探してもみるぞ」

 

「む、なにかあるのか?」

 

「最近知り合った人の食事処に今日遊びに行く予定があるんだよ」

 

「ほぉなら依頼料ついでにその食事処の代金は吾に請求しろ……で、どこの店だ?」

 

 気前に良いな思いつつ、俺は火之巫女亭の名前を伝えれば……龍水様にしては珍しく目を見開いて驚いた。

 

「そういう偶然もあるか、そこは吾の戸隠れ神社が運営している店だ。あとで伝えておくのでな今日の食事は無料で良い、しっかり英気を養い依頼に挑んでくれ」

 

「……今更ながらに聞くけどさ、やっぱり姫様って」

 

「む、知ってるのか? 確かに吾よりやばい奴ではあるな、噂しか知らぬが相当な暴君だと聞くぞ?」

 

「あぁー……まじかー」

 

「まあ貴様のことだしまた面白く……いや上手くやることだろう、では存分に今日は食べてくると良い」

 

 そうしてそこでお茶会を終えた俺達はあまり話さぬまま戸隠れ神社から出て信濃の城下町に戻ることにした。

 

 夜までは情報収集はする予定だが、これから先の苦労と胃痛を考えると少しは心の安寧が欲しいので今日は美味しいものいっぱい食べようと決めて、夜頃に火之巫女亭に向かうことにしたのだった。

 

 

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