和風ゲー世界の回復祈祷師~鬼畜世界で推しを助けるために治癒を極めてたら、いつの間にか周りが病んでいた~   作:鬼怒藍落

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第捌話:解呪

 理性が無いのか殆ど無力化された状態でも唸り声を上げる狼。

 そんなそいつに近づいた俺は敵意が無いことを伝えるためにも刀を収めて

ゆっくりと近づいた。

 

「えっと……今からお前を解呪するんだが、暴れないでくれると助かる」

 

 さっきは神楽の前だったから格好付けたが、俺としては少し気まずかった。

 敵対したとはいえかなり攻撃しちゃったし……結構酷いこと言ったし。

 でも……助けると決めた以上はちゃんと救う。

 かなり強力な呪いを受けているこの狼、触れなければ助けられそうにないので俺はそいつのお腹に手を当てて。

 

「――――――――」

 

 いつものように祝詞を唱えて、祈るように霊力を注いだ。

 目の前の黒狼は最初それを受けて暴れるように声を上げたが……次第におとなしくなり、体から妖気が消えて別の気配を放つようになった。

 

 それは神楽も持っている神の気配である神威、今まで封じられていたそれが一気に解放されたのかこの場に神聖な圧が充満する。

 その圧は黒狼を拘束していた氷を破壊して、そいつは解放されてしまったが……暴れる気配が無い――それどころか。

 

「っと舐めるなよ、びっくりするからさ」

 

 弱っているのは明らかだが、はっきり理性の持った瑠璃色の瞳で俺を見ながら顔を舐めてきた。馬鹿でかい狼に舐められる初めての経験に少し笑いながらも解呪されたそいつを撫でた。

 

「神楽、解呪したぞ」

 

 そして俺は元気になったそいつにじゃれつかれながらも神楽の方を向いてピースする。それを見た彼女はふふっと笑った。

 

「ありがとう夜見、この子を助けてくれて」

 

「神楽の頼みだからな、絶対に叶えるさ」

 

「流石は夜見――真神、もう行っていいよ。これなら帰れるでしょ?」

 

 神楽が黒狼にそういえば、狼は意思の持った瞳でしっかりと頷いてその場から去ろうとする。だけど、その際に一瞬、俺の方を名残惜しそうに見たかと思ったが、気のせいだったのかどこかに行ってしまった。

 

「……水を差すようで悪いんだが、僕達の事を忘れないでくれ」

 

「あ……すいません、お仲間さんは無事、ですよね」

 

「君が治したからね……礼が遅れたが、本当に助かったありがとう」

 

「どういたしまして。えっとそういえばなんですけど、貴方達はなんでこの森に?」

 

 この森のことは殆ど知らないけど、いる妖怪の密度からかなり危険な場所だということは分かる。そんな森に三人のみでやってくるなんてことはあんまり無いと思うし……何か用があるのかなとそんな事が気になった。

 

「調査だよ。この森から莫大な神威が放たれたって情報があって新たな神が降りた

可能性があったからね――それでその調査中にその黒狼と遭遇した感じさ」

 

「……災難でしたね」

 

「そうだね。だから上位の加護持ちとしては不甲斐ないけど、本当に助けてくれてありがとう――君がいなかったら僕達は死んでいた」

 

 ……そう言って屈託のない笑顔でお礼を言われて照れてしまう。

 お礼に慣れてないって事のせいで恥ずかしかったからだ。

 

「どう、いたしまして」

 

「それで改めて聞きたいんだが、君達は何者なんだ? 森の奥から二人は来たようだけど、もしかして反対側から来たのかい?」

 

「……ですね。二人で旅してるですが、森を抜けるために数日いました」

 

「やっぱりそうか。その歳で凄いな、多分だけど俺の弟より若いだろうに、えっと何歳何だい?」

 

「……十三歳です」

 

「二個も下なのかい、将来有望だね」

 

 そう言って彼は俺の頭を撫でてきた。

 急に撫でられたことで驚いたけど、悪い気はせずそれを俺は受け入れる。

 

「そうだ名乗るのが遅れたね。僕は雄馬(ゆうま)、この森から少し離れた町に所属する防人だ」

 

「えっと……夜見です。で、一緒に旅してるのが」

 

「私は神楽……よろしく」

 

「夜見君に神楽ちゃんか――恩人の名前は決して忘れないよ」

 

 そうして自己紹介を終わらせて、俺は雄馬さんの仲間が起きるのを待とうとしたのだが、その瞬間に急に目眩がした。

 

「あ、あれ?」

 

 ……意識が、朦朧とする。

 あまりに倦怠感と体の痛さに何事かと思ったけど、そういえばこの恩恵には制限時間があったことを思いだした。

 

「――ごめん神楽、ちょっと倒れるわ」

 

「そっか――お疲れ夜見、初めてなのに頑張ったね」

 

 そんな労いの言葉を聞きよかったと思いながら、俺はそのまま意識を落とした。

 最後に神楽に抱きかかえられる光景を目にし、安心しながら。

 

 「ゆっくり寝てね、私の夜見」

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