和風ゲー世界の回復祈祷師~鬼畜世界で推しを助けるために治癒を極めてたら、いつの間にか周りが病んでいた~   作:鬼怒藍落

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第玖話:信濃の国へ

 私の(げき)が体を預けながら寝ている。

 その姿は愛おしく何より愛らしいもので……それだけで彼に信頼されていることを理解して気分が高まる。

 

 私を救ってくれた彼……何よりも大切で、大事な宝物。

 

 そんな彼の無防備な姿は妙に可愛らしくて、すーすーと立てる寝息が当たって心地よい。

 

「ふふ、可愛い」

 

「えっと、夜見君は……大丈夫なのかい?」

 

「あ、うん……ちょっと疲れてるだけだから」

 

「それならいいんだけど……そうだ君達は旅をしているんだろ、次どこに向かう予定なんだい?」

 

「暫くは次に着いた町か国で休む予定」

 

 勿論そんなことは決めてない。

 だけど、彼の消耗を考えるとゆっくり休ませた方が良いだろうし……何より食料のことを考えれば町に行くのが得策。

 

「それならば何だが、僕達が暮らしている信濃の国に来ないかい? お礼もしたいし、あそこならゆっくり休めるだろう」

 

 ……信濃。

 確か九頭竜が治めている国だったと記憶しているが、あの尊大馬鹿はまだ生きているのだろうか? 

 あれの性格を考えると夜見と会わせるのは悪手……でも話が分かりそうなのはアレみたいな馬鹿ぐらいだろう。元々アレも魔瘴寄りだし……。

 

「分かった言葉に甘える」

 

「それはよかった……そうだ僕が彼を背負うよ、いつまでも辛いだろう?」

 

「大丈夫、こう見ても力あるから。それにまだ夜見は子供だし軽い」

 

「君も子供じゃないのかい?」

 

「私も加護持ち、天津系列」

 

 天津神というのは高天原に住む神に付けられる称号。

 

 ……一般的にいる精霊や道祖神などの現世で生まれたものより強力な加護を与える存在で、この世界に早々降りてくる事が無い窮屈な神達のこと。

 

 天津神は殆ど人間に加護を与えないし、住んでいる国も限られているし有名なので言うと伊勢とかになる――一般人は天津神に会う機会が無いので隠れ蓑にして騙すにはちょうど良い……それにあれだけの力を見せたのなら説得力あるだろうし。

 

「……なんでそんな子がこの森に?」

 

「夜見と家出した、窮屈で」

 

「色々破天荒なんだね君達は……それに訳ありそうだ」

 

「察してくれると嬉しい」

 

「分かった恩人の頼みだ……ちゃんと守るよ」

 

「ありがとう……貴方に神様のご加護を」

 

「天津神様の巫女様に言われるなんて生涯思ってなかったよ」

 

 そんなやりとりをしながらも私は彼の雄馬という男の仲間が起きるのを待ち、起きたところで自己紹介をしようとしたん……だけど。

 

「え、何この可愛い子! ねぇ雄馬、何があったか分からないけど最高ね!」

 

 起きた彼の仲間は凄い濃い性格だった。

 赤い短髪の身軽そうな服装の女性、夜見に治された腕は完治しており、怪我らしい怪我が一切残ってない。私に抱きつこうとしてきたけど、寝ている夜見を見て止まったのを見るに常識がまだあるようだ。

 

「そう、私達その子に助けられたのね。本当にありがとうね、助かったわ。えっと私は、ほのか。その子に挨拶できないのは残念だけど先に名乗っておくわね!」

 

 腕を欠損するほどの怪我を負ったと思えない程に元気な彼女はほのかと言うらしい。お気楽なのか脳天気というか……とにかくあんまり深く考えない性格のようだ。

 

「……あれ豪己はまだ目を覚ましてないの?」

 

「…………とっくに起きてる空気読んで黙っていただけだ」

 

「貴方厳つい見た目なのに初心だものね! 神楽ちゃんの格好は……もが、雄馬口塞がないで!」

 

 私の格好がなんなのだろうか?

 それを不思議に思いながらも私は木に背中を預けている豪己という男に視線を送った。何故か気まずそうに目をそらされたが、この中で一番の加護を持っているようで倒れていたのが嘘みたい。

 

「とりあえず自己紹介もすんだし、森を抜けるか……備品もあの狼に壊されちゃったっし、降りた神もいなかったようだからね」

 

「無駄足だったけど、こんな可愛い二人に会えたのは良い事よね! この出会いに感謝ってことで帰ったらお酒飲みましょ!」

 

「子供の前で何を言うのだお前……それより神楽だったか、その子は俺が担ごう」

 

「別に大丈夫だけど……」

 

「そうか、力があるのだな」

 

 そんなこんなで眠る彼を担ぎながらも私達は信濃の国へ向かう事になった。

 

 ……今、彼はどんな夢を見てるんだろうか? 安心して眠る彼の吐息を感じながら私は一人で笑う。最初寝てたときはずっと魘されていたのに、こうやって安らかに眠るようになったのが自惚れじゃないけど、私が関わったからと思うと心が躍る。

 

「……神楽、俺がいるから」

 

「ふふ、大丈夫これからも一緒だよ。私の覡……私だけの夜見」

 

 私という天津禍津日を宿せる器など他の神からすると格好の餌だけど、何があっても渡さない。彼は……夜見は生涯ずっと私のものだ。

 

 はじめての覡、初めての加護を与えた大切な子。私を見てくれて救ってくれた男の子、英雄の素質を持つ特異点。

 

 きっと彼の未来には困難が待ち受けるだろう……でも、それでも――。

 

「誰にも渡さないから、死が二つを分かとうとも……絶対に離さない」

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