限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです   作:蒼魚二三

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第24話 おじさん、クロックアップ世界で無双する

「ぎゃああ!」

「先輩!?」

 

 しかし私が早すぎたため、紐が千切れ、おぶっていた先輩が背中から剥がれてしまった。

 慌てて回収し、地面に置いた。

 

「すみません早すぎたみたいで!」

「吾輩に構うな! 敵を倒せ!」

「はい! Y組から順番に開放していきます!」

「いけー! 後輩ー!」

 

 敵は味方との連携が取りやすいように、必ず片側の教室の扉を開けてくれていたため、素晴らしい速さで少女を取り囲むテロリスト共をぼこぼこに叩くことが出来た。

 

 もちろん、廊下の見張りにも応戦出来るような隙は与えない。

 目につく敵はとにかく叩いて行動不能にさせ、最後のA組を開放し終わる辺りで警棒が使い物にならなくなったので、最後はヘルメット剥ぎパンチで片付けた。

 

「ラストォッ!」

「グ――ゥゥ゛ッ」

 

 次第に周囲が加速していき、標準速度の世界に戻る。

 凄まじいスピードでの制圧だったため、全ての教室からほぼ同じタイミングで少女たちの悲鳴が上がった。

 

「ぐぅぅ……頭痛が痛い……」

「あ、よ、夜見はん? 夜見はん!?」

 

 そんな中、見覚えのあるおさげの子が駆け寄ってきてくれた。

 

「や、やぁ、おさげちゃん」

「こ、これ、もしかして夜見はんがやってくれたんか!?」

「そういうことだよ、うぐ」

「ああっ、夜見はん!」

「ハァッ、追い付いた! 後輩くん! 魔剤を飲むのだ!」

「はい……んぐっ、んっ――」

 

 慌ててやって来た青メッシュ先輩が出したエナドリを飲んで、再び元気になる。

 

「――はぁ、生き返る……!」

「もう大丈夫なん!? さっきまで死にそうやったのに」

「ええはい。これから逃走経路を確保しますので、また後で話しましょう」

「ッ、夜見はんちょい待ち! 教えることがあんねん!」

「は、はい!?」

 

 敵が動く前に階段を制圧しようと立ち上がると、おさげちゃんが袖を引っ張って座らせてきた。

 

「なんですか!?」

「仕組まれたように現れた敵はな、先生だった人形だけでなく、シャインストーンが成る木、シャインマスカットツリーの占拠も狙っとるねん」

「は、はぁ」

「でもな? この状況はシャインストーン争奪戦やない。ほんまもんのテロなんや。勘違いしてたらあかんで」

「知ってますよ?」

「ええ!?」

 

 私の一言に衝撃を受けたようで、おさげちゃんは慄いていた。

 

「てっきり、ゲーム感覚で敵倒してたもんやと」

「そもそも私、シャインストーン争奪戦で何をするのか知らないです」

「なんや、まだ説明受けてへんの? ほな説明せんでも良かったなぁ」

「二人とも、そろそろ私語はやめて欲しいのだ。敵が騒動に気付いた。こちらの動きに対抗するためか、高等部校舎への攻撃が強まってるらしいのだ」

「「すいません」」

 

 二人して青メッシュ先輩に謝った。

 どうしても友人と情報共有して安心したかったので、申し訳ない。

 

「それで先輩、私はどう動けば?」

「おさげの一年生、先に言っておく。これからこの後輩くんが近くの階段を制圧するから、ダントというモルモットの聖獣の指示を受けたら急いで階段を登るのだ」

「は、はい!」

「後輩くんも分かったね?」

「了解しました。またあとでね。おさげちゃん」

「うん、ほなまたな」

「先輩行ってきます!」

「ああ! あとで追うのだ!」

「ブーストッ!」

 

 キィイイイイイ――――

 私は再び教室を出て、加速世界の中を走る。

 

「武器が無いのがつらい! 誰か警棒を持ってないのか!?」

 

 バキッ、ドゴッ――

 階段を登り、見かけた敵のヘルメットを剥いでは殴っているが、戦いを知らない少女の拳が悲鳴を上げ始めた。とても赤くなっている。

 

「拳が痛い……! ええい、だったら!」

 

 私二階の階段に備え付けられていた消火器を持ち出し、ブオンと敵に振り落とした。二人組の内一人は、ヘルメットが破損するほどのダメージを負う。

 

「あっ! この人たち警棒持ってる!」

 

 すると腰辺りにキラリと光る物が見えて、抜き取ったら黒色の特殊警棒だった。

 私は二本の警棒で滅多打ちにし、通り道の邪魔にならないよう二階の廊下に投げ捨てた。

 

 キィィィ――……

「ははっ、任務完了……」

 三階までたどり着くと加速が終わった。

 目の前には援軍であろう、魔法少女――見た目はカラフルなロリータ姿の少女だ――に変身した先輩たちの姿が見えて、私は一安心する。

 

「うわぁ!? 君、どこから!?」

「は、話は後です! 一階全域と、この階段付近は制圧しました! 一年生の救助と制圧の維持に向ってください!」

「君……! 分かった! いくよみんなっ!」

『はいっ!』

 

 ダダダダダ――

 赤腕章の先輩方は急いで降りていった。

 私は壁に寄り添って休憩する。

 しばらくすると青メッシュ先輩が階段を駆け上ってきた。

 

「――管制室! 一年Z組の聖獣ダントくんに『A組側の階段を制圧した』と伝えろ! 逃げ方を聞かれたら『Z組からA組に向かって順に出ろ』だ! よし、切るぞ! オーバー! ……ふぅ、はぁ」

「これで人質は開放されましたかね?」

「ああ、これで人質は消えた。反撃の手筈は整ったのだ。次は急いで中央校舎に向かうぞ後輩くん。あそこを抑えないとパワーバランスが崩壊するのだ」

「そんなに凄いんですか?」

「当たり前なのだ。最終フォームまで至った変身武器ばかりだぞ」

 

 それはヤバい。

 負ける気しかしない。

 

「急ぎますか?」

「その前に聞いておくぞ後輩くん。筋肉痛はないのだ?」

「あー、微妙にありますね。ふとももとか」

「くっ、急いで高等部の保健室に向かうのだ。じゃないと本当に戦闘不能になる」

「やはり魔剤だけでは筋肉は回復しないのか……でも大した痛みじゃないですよ?」

「いいから診てもらうのだ。湿布を貼ればなんとかなるから」

「分かりました」

「ほらジュース」

「ありがとうございます」

 

 回復した私は、魔法少女な先輩たちに軽い会釈をしながら連絡通路を抜け、高等部の保健室で、人形ではない生身の先生に湿布を貼ってもらった。

 

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