限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです   作:蒼魚二三

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四章 三つ巴陣営の人員争奪戦編
第29話 おじさん、一年Z組に友人が集っていると知る


 中等部校舎に入ると、私の噂――同性好きという噂だ――を知っているらしき子と目が合う。するとポッと頬を赤らめて逃げてしまうので、私は悲しい。

 

「はぁ、人の噂は七十五日。友達作りはシミュレーションのようにはいきませんね……」

「そこら辺で気付くべきだったモルね」

「挨拶だけはしっかりしとこう……」

 

 ダント氏と共に昨日の反省を交えつつ、私の教室に入った。

 

「あー、おはようございます!」

『……!』

 

 ぎゅんっ、と私に視線が集まる。

 何事かと身構えると、クラスメイトたちがざわざわし始めた。

 

「何かあったモル?」

「さ、さぁ?」

 

 私は黒板の座席表を見て、今度は廊下側の最後列と知り、席についた。

 

「おはようさん。先に行ったのに損した気分や」

「あ、おさげちゃん」

 

 私の左隣に座っていたのはおさげちゃんだった。

 

「私も居るわよ」

「わーいちごちゃんも同じなんですねー」

「もうっ、その名前止めなさいよっ」

 

 前の座席は黒髪の美少女。

 1500エモの子こと、いちごちゃんだった。

 

「じゃあなんて呼べば?」

「様をつけなさい」

「ははぁ、いちごの王様」

「あまおうさまー」

「あんたもおさげもいちごに引っ張られすぎなのよっ!」

「あははは」

 

 相変わらずとても話しかけやすい子だ。

 おさげちゃんとも打ち解けられてるみたいで良かった。

 

「それでいちごちゃん。どうしてクラスがざわざわしてるんですか?」

「あんた知らないの? 何も?」

「噂が立つ側ですけど噂話には縁がないんですよね」

「不思議よねー、その立ち位置」

 

 そうはいいつつも教えてくれた。

 どうやらテストで1000エモ以上を出した子がこのクラスに集中しているらしい。

 昨日の中等部一年はその話題で持ち切りだったそうで、周囲や赤城先輩に振り回されっぱなしだった私が知らないのも当然だ。

 

「サンデーちゃんと代表生のミロちゃんもここに?」

「そうよ。全員このクラスに来るから、みんな緊張してるのよ」

「エモ値のハードルが高いクラスですね」

「いや一番上げてるのあんたでしょうが」

「んふっ」

 

 私はおさげちゃんが笑い声を漏らしたのを見た。

 意外と笑いのツボが浅いのかも、と思う。

 

「座席とか分かりますか?」

「ここらへんよ」

「とは?」

「そのままの意味」

「へぇー」

 

 どうやら座席も相当固まった配置らしい。

 いちごちゃんの前と隣の席に二人が並ぶそうだ。

 

「これ、おさげちゃんの前の子が不憫では」

「その子も1000までは行かなかったけど、それに近い数値は出したみたいよ」

「どれくらいですか?」

「あんたのインパクトがデカすぎて覚えてない」

「誠に申し訳ない」

「うちに免じて許したってーな」

「どうしておさげが出てくるのよ」

神睦月(かむつき)大明神さまやからやでー」

「そうなんですか!?」

「嘘やでー」

 

 嘘かぁ。

 

「ま、来たら分かるでしょ」

「そうですね。ダントさん覚えてます?」

「夜見さんが覚えてない人を僕が覚えてるわけないモル」

「確かに」

 

 キーンコーン――

 チャイムが鳴った。授業の時間だ。

 みんな座席について先生が来るのを待つ。

 ちなみにおさげちゃんの前の座席には地味な子が座った。

 メガネっ娘だったと記憶している。

 

 一年Z組の担任の先生は綺麗な人で、颯爽と教壇についた。

 

「おはようございます。Z組担任の長瀬です。朝のホームルームを始める前に連絡することがあります。これから名前を呼ぶ生徒は総合訓練室に向かいなさい」

「総合訓練室?」

 

 またクラスがざわざわ、とし始める。

 先生は手で制した。

 

「夜見ライナ、神奈月琴鈴《かんなづきことり》、黒瀬玲香《くろせれいか》、朱ノ宮真莉愛(しゅのみやまりあ)、皇結衣《すめらぎゆい》。以上の五名です。詳しい説明は訓練室で聞いて下さい」

 

 私は左を見て、前を見て、ああ絶対に彼女たちの名前だろうと即座に理解した。

 名前だけで誰なのか、何となく想像がつくくらいに。

 

「……固まってないで早く行きなさい。授業に支障が出ます。総合訓練室は隣校舎の三階にあります」

「「「は、はい!」」」

 

 指示された私達五人は、隣校舎の三階に向かった。

 道中、私は特に何も感じていなかったが、他の四人はなぜか死ぬほど緊張していた。

 

「夜見はんは、ライナはんやろ?」

「はい」

「う、うちの名前は分かる?」

神奈月琴鈴(かんなづきことり)ちゃんですよね」

「ここ、これからは、ことりって呼んでな?」

「はい。ことりちゃん」

「えへへ」

 

 にっこりとはにかむ、おさげちゃん改め琴鈴(ことり)ちゃん。

 

「ちょ、ちょっとライナ? 私。私の名前はどうよ?」

「いちごちゃんは黒瀬玲香《くろせれいか》ちゃんですよね」

「ふふん、正解よ。黒瀬様って呼びなさい」

「れいかちゃん呼びじゃダメですか?」

「えー? その呼び方は大人っぽさがないじゃない」

「ライナはん? 様付けて呼んだら調子に乗るから扱いやすいで」

「余計なこと言わなくていいのよ! もうっ」

 

 玲香《れいか》ちゃんは状況次第で呼び方を変えることにしよう。

 

「で、サンデーちゃんが朱ノ宮真莉愛(しゅのみやまりあ)ちゃんで、ミロちゃんが皇結衣《すめらぎゆい》ちゃんで合ってますか?」

「え、ええ。私がサンデーことマリアよ。よろしいかしら?」

「すす、皇結衣です……ミロです」

 

 二人とも同意してくれた。

 彼女たちの間合いはまだ分からないのでこれくらいにしておこう。

 

「ライナはん、あんな? (すめらぎ)って苗字はな?」

「待って下さいそれは言っちゃダメですぅ……!」

「くふふ」

 

 琴鈴ちゃんは相変わらずいたずらっ子だ。

 話は気になるが、まだ教えてもらえないので心にとどめておこう。

 

「夜見さんが笑顔で静かにしてるのびっくりするくらい怖いモル」

「距離感を掴みあぐねてるだけですよ」

「訓練室についたでー」

「私が一番乗りですわ!」

 

 琴鈴ちゃんの一言で、サンデー改めマリアちゃんが教室の中に飛び込んでいった。

 後を追いかけるように金髪の代表生、結衣ちゃんが飛び込み、琴鈴ちゃんと玲香ちゃんは私を盾にしながら部屋に入る。

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