包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第111話 中学三年生

 ――三年生になった。

 

 あれから個人練習と合わせ練習を繰り返し行い、二曲目の練習も始めた。

 

 春休みに突入してからも俺たちは何度も会って練習を繰り返した。

 

 そして四月。

 始業式を迎え、新たなクラスになっていた。

 

 俺は冬矢と陸とは別のクラスになり、なんとしずはと千彩都と同じクラスになった。

 

 深月が心配ではあったが、聞くと冬矢と同じクラスだったようで、とりあえず話せる相手はできるだろう。

 そのクラスには開渡もいるらしい。

 

「――光流〜〜っ!! なんか久しぶりなんだけど」

「千彩都は変わりないね」

 

 千彩都が俺が同じ教室にいるとわかると、彼女の代名詞ともいえるポニーテールを揺らしながら近くまでやってきた。

 

 いつも明るいその性格は、三年生になっても変わっていないようだった。

 開渡とは別れる気配はまるでない。仲良くやっているようだ。

 

「しーちゃんが髪短くしてたの見た時は驚いたよ〜。絶対光流のせいだって」

「そういうこと大きな声で話すなって! てか俺のせいにするなよ」

「光流以外あるわけないじゃん」

「いや……まぁ……」

 

 しずはに直接言われているからな。

 俺のせいでもある。

 

「――な〜に二人して楽しそうに話してるのさ」

 

 すると、聞き覚えのある声が後ろでした。

 

 というか数日前には聞いた声だ。

 

「しーちゃーんっ!!!」

「ちーちゃん久しぶり」

 

 千彩都がしずはに抱きついて喜びを爆発させる。

 

「学校では見かけるけど、なかなか会う機会ないね」

「そうだね。ちーちゃんは変わらないね」

「そうだよ〜。しーちゃんは変わりすぎー! なんか物怖じしなくなって、明るくなったっていうし」

「なんか吹っ切れちゃって。誰かさんのせいでね!」

 

 鋭い目線で見下ろしてくるしずは。

 このネタいつまで使うの?

 

「ほら光流のせいだ〜。しーちゃんが変わる時はいっつも光流が関係してるんだから」

「そんなこと言われても、意図してやってないんだけど……」

「あ〜このクラス楽しみだな〜。二人で光流を攻撃してやろう」

「お、いいね! そういや光流バレンタインたくさんもらったって聞いたぞ〜?」

 

 残りの一年が不安になる会話だ。

 そしてその情報はどこで漏れるんだ。冬矢か?

 

「しかも手作りチョコでお返ししてるんだよ?」

「なにそれ! それなら私もチョコ渡せばよかったー!」

「いや、なんで?」

 

 千彩都の場合はただの冷やかしだろう。

 彼女のチョコは多分開渡にしか渡していないと思われた。

 

「律儀にもほどがあるというかさ。光流がモテたらどうすんのよ……」

「私には光流の良さが全然わからないけどね!」

「ちーちゃんには理解できないと思うな〜」

「しーちゃん言うようになったなあ〜〜っ!」

「……うるさいよ」

 

 なんだか二人が騒がしくなってきた。

 

 続々と教室に生徒が入ってくると、その生徒たちが俺たちの様子をチラチラと見てくる。

 いや、俺たちというかしずはだが。

 

「お前ら、俺を笑い者にするのはいいけど、やりすぎたらさすがに怒るからな。千彩都の教室での悪行を開渡にチクってやる」

「そのくらいでかいちゃんは怒らないよ〜」

「……絶対弱み握ってやる」

 

 こんな会話をしているが、俺も心の中ではある程度話せる相手がいて安心していた。

 ただ、しずはと会話している時だけ、やはりなのか教室の男子からの目線が痛い。

 

 毎回思うが、しずはの人気は物凄い。

 前までは引っ込み思案だったために、それほど人と話してはいないようだったが、性格が変わってからは話せる相手が増えたようで、本当の人気者になりつつあった。

 

 十一月にショートにした髪も伸びてきている。

 今はボブに近いような髪型だ。しずはくらい美人なら、どんな髪型でも似合う。

 

 

 

 ――そうして、俺たちは、新たなクラスで残り一年を過ごすことになった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 そんなこんなで六月に入った。

 三年生になり、一度目の三者面談が行われることになった。

 

 俺のクラスの新しい担任は国語の牛窪《うしくぼ》先生。三十代の男性の教員だ。

 体育の先生じゃないかと思うくらいガチムチで筋肉が凄い。

 服がいつもはち切れそうになっている。

 

「――いえいえ……夏の時はお世話になりました」

「とんでもないです。光流くんは本当に良い子ですね。うちに欲しいくらいです」

 

 三者面談の日。

 

 俺は母を残して、トイレに行っていた。

 戻ってくると教室の外に用意された椅子に座っていた母が誰かと話していた。

 

「こんなに可愛いお子さんがいて羨ましい限りです。うちの灯莉は本当に自由過ぎて……」

「ふふ。この子にも姉がいるのですが、その子も自由過ぎて……結婚できるのかと心配になります」

 

 そこで会話していたのは、俺の母としずはの母だった。

 

 多分、顔を合わせて会話したのはこれが初めてだろう。

 夏の花火大会でしずはの家に泊まることになった時に少し電話をしていたが、ほんの短い時間だった。

 

 もちろんしずはの母の隣には、しずはもいて――、

 

「あっ。戻ってきたわ」

「花理さん、こんにちは」

 

 母が俺に気づくと、こちらに手を振ってきた。

 そうして、近くまで行くと俺は花理さんにペコリと挨拶した。

 

「光流、トイレに行ってたの?」

「うん」

「緊張でもしてた〜?」

 

 しずはが俺に話しかけたと思いきやニヤニヤと俺をおちょくってくる。

 

「ふふ。本当に仲が良いのね」

「まぁ古い付き合いだし」

 

 そう母が話したものの、俺としずはのおおよそのことは知っている。

 

 なぜなら、俺の誕生日会の時、謎DGの煽りによって、しずはが俺に告白したことやまだ好きなことなどを大声で暴露していたからだ。

 そこには俺の父も母も姉もいたというのに、とんでもない状況だった。

 

 ただ、家族も俺がずっとルーシーのことを気にしていることも知っているために、多少は複雑だろう。

 

「次の方どうぞ〜」

 

 俺の前のクラスメイトの親子が出てきて、俺たちに頭を下げていった後に牛窪先生が俺と母を呼びに来た。

 

「じゃあお先に」

「いってらっしゃ~い」

 

 俺はしずはにそう言って、母と共に教室へ入った。

 

 

 

 …………

 

 

 

「――体育の成績は置いておいて、他はオール5だ。正直先生から言う事はない」

「ありがとうございます!」

 

 ガチムチな体に今日はメガネをかけている牛窪先生。

 話していて感じるが、かなり頭の良さそうな先生だとわかる。

 

 ちなみに体育の成績だが、陸上競技はまだしも球技は正直苦手だった。

 保健体育の筆記テストは点数はとれているが運動の部分はどうしようもなかった。もうちょっと積極的にでも頑張れば5をとれたかもしれない。

 

「お母様がどのような教育をしているか教えてもらいたいくらいです」

「ふふ、先生。私からは一度も勉強しなさいと言ったことはないんですよ。逆にそんなに勉強しなくてもいいとは言ったことはありますけどね」

「そ、そうなんですか……」

 

 母の言葉に牛窪先生が少したじろぐ。

 普通は逆の家庭が多いだろうからな。

 

「では、九藤個人が頑張っているという話だな。このまま続けるといい」

「はい。頑張ります」

「――それで、進路はもう決まっているのか?」

 

 本題に入るように、牛窪先生が俺の方を向いて聞いてきた。

 

「はい、決まってます。秋皇学園に行く予定です」

「ほう、秋皇か。多少偏差値が高い学校ではあるが、あそこなら九藤の成績でも問題ないはずだ。正直に言えばもっと上も目指せそうだけどな」

「いえ。もう決めてます」

「そうかそうか。ならその道を応援するよ」

 

 冬矢から一緒に行こうと言われてから、俺は秋皇学園に行こうと決めている。

 冬矢も成績は悪い方ではないので、多分問題ないだろう。しずはと深月はちょっと心配だけど。

 

「教師として九藤の成績だと勉強に関して言えることは少ない。勉強の他に何か要望とかあるか?」

 

 勉強の他か。とすればアレしかない。

 早めに言っていてもいいだろう。

 

「実は、他のクラスの生徒と一緒にバンドを組んだんです」

「バンド? あの、楽器を弾いて歌うやつか? 九藤がか?」

「はい」

「九藤の普段のイメージからはあまり想像できないが、良いじゃないか」

 

 否定されるわけではなくて良かった。

 ただ、これがもし俺の成績が悪かったとすれば、先にやっておくことがあるんじゃないかと言われていたような気もする。

 

「それでですね。文化祭の出し物として出ようと思ってるんです。なので、体育館か校庭にステージ作ることに許可いただきたくて」

 

 出し物には許可がいる。

 バンドなんて音を出すものだ。周囲の住民にも騒音だと思われる可能性もある。

 そういうことにも気遣わなくてはいけないはずだ。

 

「九藤は成績が良いからな。多分通しやすいはずだ。俺からもできるよう推薦しておこう。ダンス部だって音楽流しているからな」

 

 そういえばそうだった。爆音ではないが、ダンス部も普通に音楽を流している。

 

「ありがとうございます」

「体育館か校庭、どちらでやれるかは今の段階では言えないが、体育館になると思う」

「わかりました。そのつもりで考えておきます」

 

 といっても冬矢が作った足りない音も流すはずなので、校庭だと音を出すのに学校の機材も移動させないといけないだろうし大変だろう。

 現実的なのは体育館での演奏だ。

 

「他になければ、面談を終わるが他にないか? お母様も他になければこれで終了とさせていただきます」

 

 そう言われ、俺は母と顔を見合わせる。

 

「大丈夫です」

「わかった。それではこれで終了だ。気をつけて帰ってくれ」

 

 俺と母は教室を出た。

 

「――光流、どうだった?」

 

 外で待っていたしずはに声をかけられた。

 

「文化祭でバンドやることだけ言っておいたよ」

「そうなんだ! 大丈夫そうだった?」

「うん。多分体育館でやることになるだろうってさ」

「そっかそっか。わかった。そのつもりでいるね」

 

 ニコニコしながら、しずはが立ち上がる。

 

「ほら、お母さん行くよ」

「はいはい。もう……言うようになっちゃって。前までは自分から言う子じゃなかったのに誰かのお陰で積極的な子になっちゃったわ」

 

 花理さんが俺の顔をチラリと見て、そう言った。

 とりあえず俺はペコリと頭を下げておいた。

 

 そうして、二人は教室へと入っていった。

 

「光流、あなた影響力があるのね」

 

 それを聞いていた母が俺に向かって言う。

 

「そんなつもりないんだけどね」

「良い方向に影響を与えているなら、良いことじゃない」

「それはそうだね」

 

 こうして三者面談の日を終えた。

 

 あとは、文化祭に向かって練習するだけ。

 

 文化祭まで残り五ヶ月。

 練習をひたすら頑張ろう。

 

 

 

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