包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第137話 手渡し会

 期末テストを週末に控え、テスト勉強の時間も残りわずかとなっていた。

 

 いつもの放課後の勉強会。そこで俺たちはあることに気づいた。

 

「テスト一週間前はどこも部活動休止じゃん……」

 

 つまりCD・DVDのお渡し会で部活動のあるなしを気にする必要はなくなったのだ。

 そしてそのお渡し会は明日にしようとしており、既に透柳さんからもCDは回収済みだ。

 

 一人では持ちきれなかったので、大きめの紙袋に入れて俺と冬矢と陸で分けて家に運んだ。

 残りはしずはが担当だ。

 

「ラッキーだったね」

「でもテスト前だしあんまり時間とられないようにしないと」

 

 俺たちも勉強の時間をとられ過ぎては元も子もない。

 テスト期間が終わってからのお渡し会でも良かったのだが、待ってくれてる人もいるので早めに渡すことにした。

 

「一応先生に許可とっておいたから」

「さすが光流ぅ〜」

 

 玄関外で配りはするが、ただ帰宅したい生徒たちの邪魔になってはいけない。

 もしかするとトラブルになる可能性も考えて事前に担任の牛窪先生に連絡はしておいた。

 ついでに牛窪先生には学校用のCDとDVDは先に渡しておいた。

 

「さぁ〜明日は忙しくなるぞ」

「ちゃんと人集まるかなぁ」

 

 冬矢が明日のことを思い少し煽るが俺は本当に集まるのか心配だった。

 

「一応各クラスに連絡が行くように手配はしておいたから、多分大丈夫だとは思うけど」

 

 そう言ったのは理帆。

 名簿を配ったり集めたりする過程で、色々とコネクションが増えたらしい。

 理沙たちに委員長と言われるくらいには有能である。

 

「ありがとう。あ、もしサインとかその場で求められたらテスト後にって言おう」

「そうだな。じゃないと配り終わんない可能性でてきそうだもんな」

 

 そう言いながら全員がしずはの顔に視線を向ける。

 

「うへ〜。奏ちゃんだけで十分だっていうのに」

 

 少し嫌そうな顔をするしずは。

 でもテスト後と言ってもいつサインすればいいのだろう。別に手渡し会みたいなものはもう設けるつもりはないし。

 なら、教室とか廊下にいる時に声をかけられるのかもしれない。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 そうして、CD・DVDのお渡し会の日。

 

 放課後になると、机二台を玄関近くの校庭の端に設置。

 当初一台だったのだが、色々考慮した上で二台となった。

 

 俺、冬矢、しずは、陸、理沙、朱利、理帆でCDとDVDをその場に運ぶ。

 ちなみにいつも勉強会で一緒の深月は手伝わせるのもあれなので先に図書室に行かせている。

 

「重てぇ〜〜っ」

 

 大きな紙袋の中に入れた大量のCDとDVDを現場まで運んでくると冬矢が渋い表情で愚痴を吐いた。

 

「光流は軽そうだな……」

「鍛えてますから」

 

 陸も同じく両手で必死に運んできていた。しずは女子なのもあって枚数は少ない。

 俺は鍛えているので、少しだけ重いというくらいだった。

 

 DVDの方はそれぞれの家で焼き増ししてきたのでCDよりは重くはなかった。

 

 

 そうして一つの机には集金袋や名簿用紙を置き、もう一台の机には何十枚か重ねられたCDとDVDを並べる。

 一台の机では物を置くスベースが足りないと予想し、急遽一台机を増やしたのだ。

 

 そう準備している間にも続々と人が集まり始めていた。

 

 

「なんか、やべぇな……」

 

 

 冬矢がその光景を見て呟く。

 ざっと数えて五十人程度だろうか。

 

 授業が終わるのは皆一緒なので、掃除当番でなければすぐにここまで来ることができる。

 だから俺たちと同じスピードで玄関まで辿り着く生徒も複数いたのだ。

 

 でもこれならすぐにCDとDVDを捌けそうだ。

 

 

 

 …………

 

 

 

「――今からバンドのCDとDVDを渡します! 百円だけ手元に用意して二列に並んでくださーい!」

 

 俺は大きな声を出して、その場にいる生徒たちに呼びかけた。

 すると続々と二列に並んでいき長蛇の列が出来上がった。

 

 先頭は二人で来たと思われる女子生徒だった。

 理帆と理沙が手分けして名簿の名前を探す。

 名前の確認がとれるとペンでチェックをつけて、その生徒から百円を受け取った。

 

 お金をもらったことを確認したので、俺としずはでその女子生徒二人にCDとDVDが入った不織布の薄いシートを渡す。

 

「あっ、あの! 藤間先輩握手してもらえませんかっ!?」

 

 するとしずはの前に並んでいた下級生と思われる女子生徒がオドオドしながらお願いをした。

 少し恐れていたことが初っ端から訪れた。

 

「しずは……」

「まぁ、女子ならね」

 

 俺はしずはに目配せをしてどうするのかを聞くと前に言っていた通り女子なら問題ないという話になった。

 ただ、あの時の会話は確かサインの話だったはず。握手も問題ないということになる。

 

「じゃあ……はい」

 

 すると、しずはは渋々ながらもその女子生徒の両手を包み込むように両手で触れた。

 

「あわわわわわっ、神対応っ! 今日は手洗いませんっ!」

「洗って?」

 

 両手を包みこむという神対応を見せたしずは。

 恥ずかしながらも喜びを見せた女子生徒はどこぞのファンのような言葉を発するも、しずははそれに対し冷静に返した。

 

「あの〜。九藤先輩、私も握手良いですかね?」

「えっ、俺!? しずはじゃないの?」

 

 俺の目の前でCDを受け取った女子生徒が俺に握手を求めてきた。

 

「はい……九藤先輩もお願いしますっ」

 

 "も"ということは俺だけではないようだ。

 俺は別に握手は禁止とか考えていないので、とりあえず握手することにした。

 

 女子生徒の右手に対して俺も右手を差し出して軽く握手をした。

 さすがにしずはのように両手で包み込むような神対応はできない。

 

「ありがとうございますっ!」

 

 すると、その女子生徒は横にスライドしてしずはからも握手をもらう。さらにそのままもう一度スライドして冬矢と陸にも握手をしていた。

 バンド自体のファンなのだろうか。

 

「藤間さんっ! 握手お願いします!」

 

 すると最初に握手の流れができてしまったので、後ろに並んでいた別の生徒からも握手を求められるようになってしまった。

 そしてしずはの前に並んでいたのは、同級生と思われる男子だった。

 

「男はダメ。ほら次行った」

「えええええ〜〜っ!」

 

 その男子はかなり残念がっていたが、涙目を浮かばせながら横にずれていった。

 すると――、

 

「男は俺で我慢しとけっ」

「ぐわああああ〜〜っ! お前のはいらねえ〜〜っ!」

 

 冬矢が無理やり同級生の手をガッチリと握っていた。

 叫びだす同級生の男子。

 冬矢の知り合いなんだろうか。

 

 さすがに男子は俺に握手を求める人がおらず、その後はスムーズに手渡しが進んでいった。

 

 

「あのっ! ライブ凄く感動しました! また見たいです! 握手お願いします!」

 

 そう思っていたのだが、今、俺の前に並んでくれているのは一年生徒思われる男子生徒だった。

 その男子生徒に握手を求められてしまった。

 

「俺でよければ」

「ありがとうございますっ!」

 

 その男子生徒はまだ背も低く小学生と変わらない容姿をしていた。

 ただ、そのキラキラと俺を見上げる目は純粋で、本当に応援してくれているように感じた。

 

「俺さ、秋皇学園に行く予定だから、もし文化祭でライブすることになったら遊びに来てね」

「はいっ! もちろんです!」

 

 実際にやるかはわからないけど、また見たいですという期待に対する答えを言っておきたかった。

 

 

「ひっかる〜! 来たよ!」

 

 すると次に来たのは、鞠也ちゃんだった。隣には奏ちゃんもいた。

 

「来てくれてありがとね」

「うん、すっごい人だね! さすが私のひかる! はい百円」

「ははっ」

 

 俺が私のかどうかはわからないが、そのまま百円を受け取り理帆に手渡す。

 名簿にチェックが入るとCDを渡した。

 

「あっ、サインは?」

「今は時間ないからさ、またテスト終わってからで良い?」

「オッケー! じゃあ握手っ」

 

 言っていた通りサインを求められたが、ここで対応してしまうと時間がなくなる。

 そうして俺は鞠也ちゃんと握手をした。

 

「しずは先輩握手お願いしますっ!」

 

 隣では奏ちゃんがしずはと握手していた。ついでに頭もなでなでしていた。

 昔からの知り合いということで、特別対応だ。

 

「九藤せんぱいっ! 来ましたよっ」

 

 すると、そこにいたのは二年の水野春瑠、綿矢陽真莉、森川伊世の三人だった。

 俺に音源が欲しいと言った最初の女子たちだ。

 

「来てくれてありがとう」

「いえいえっ。では握手お願いしますっ」

 

 春瑠ちゃんが俺と握手を交わすと満面の笑みでブンブンと上下に手を揺らした。

 その後も陽真莉ちゃん、伊世ちゃんとも同じような握手を交わした。

 

「しずはちゃんっ。もう人気爆発だね」

「あ、菜摘ちゃんに舞香ちゃん」

 

 中学に入ってから最初の方に仲良くなった神代菜摘と沼尻舞香だった。

 彼女たちとは俺も一緒にプールへ行った仲だ。

 

「じゃあ一応握手しとく?」

「普段話してる人と握手って変な感じだね」

 

 そう言うとしずはと神代さん、沼尻さんが握手を交わす。

 

「じゃあ九藤くんも」

「お、おうっ」

 

 なぜ握手を求められたかわからないが、一応二人と握手しておいた。

 

「じゃあまたね〜っ」

 

 そうして二人は横にずれて去っていった。

 

「――二人の手、どうだった?」

「今それ聞く? もう色んな人と握手しすぎてよくわからないよ」

「それは私も同じ」

 

 どことなく握力も低下してきたような気もするし。

 

「どうも〜っ」

 

 次に来たのは千波優季と双葉澄実。俺と連絡先を交換した子たちだった。

 そして軽い挨拶をしたのが千波さんだ。

 

「きてくれてありがとう」

「いえいえ〜。ほら澄実ちゃん、百円だよ」

「うんっ」

 

 千波さんと双葉さんが百円を差し出して、名簿を確認してもらう。

 

「九藤先輩っ、握手お願いしますっ!」

 

 九十度に腰を曲げて右手を伸ばす双葉さん。告白の返事を待つような大勢になっていた。

 なんだかすごく握手しづらいのだが、握手しないと列が進まないのでとりあえず握手しておく。

 

「ありがとうございますっ!」

 

 双葉さんは笑顔を見せて喜んでくれた。

 

「それにしても本当に美人ですねぇ〜」

 

 千波さんがしずはの顔を凝視していた。

 

「これはこれは〜」

 

 俺としずはの顔を交互に見比べる。

 

「なんだよ。早く横にずれなさい」

「いやいやこれは失礼。ではまたっ」

 

 双葉さんと千波さんがCDを受け取って横にずれた。

 

「不思議な子ね」

「あ〜、彼女にも色々あるんだろう」

 

 俺にだってよくわからない。

 今日で会うの二回目だし。

 

 そうして、一通りCDとDVDを配り終えた。

 時間にして約一時間。

 

 途中クラスメイトの男子からも握手を求められたりもしたが普通にそういうノリだ。他意はない。

 他にも文化祭実行委員の志波さんや俺に連絡先を聞いてきてくれた子たちともたくさん握手をした。

 

 残った枚数は約五十枚ほど。

 この程度なら手分けして配ればすぐに終わるだろう。

 

 とりあえず今日は撤収して図書室へと向かうことになった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「ペン持つの大変なんだけど……」

「わたしも〜」

 

 図書室で勉強するために集まった一同。

 握手のしすぎで俺としずはの手がプルプルと震えていた。

 

 冬矢も女子生徒から握手を求められていたが、なぜか俺よりは少なかった。

 やはりこれがボーカルは目立つという宿命だったのだろうか。

 

「お前ら、二十五日空けとけよ。光流の家で誕生日会やるから」

 

 すると冬矢がそう話す。

 既に母には許可を取ったので家でやることは問題ないことになった。

 

「男子の誕生日会で家にお邪魔するとか初めてなんだけどっ」

「ねっ。わたしも〜」

 

 理沙の言葉に朱利が同意する。

 今回はこの二人に加えて理帆も参加する。

 

「ちなみに鞠也ちゃんと奏ちゃんと志波さんも来るらしいから。あと千彩都と開渡も」

 

 二人はいつも通りというか去年も参加してくれたので、今年も来るだろうなとは思っていた。

 鞠也ちゃんからは「まなちゃんも連れてっていい?」と聞かれたのでもちろんOKと返事をした。

 

「あ、なら蓮ちゃんも連れてっていい?」

「全然良いよ」

 

 陸の彼女の山崎さんももう俺たちのコミュニティにいるようなものだ。

 別の中学ではあるけど、文化祭にも変装して見に来ていたし。

 

「凄い大所帯になりそうだな」

「去年なんて姉ちゃんの友達がいたから大変だったよ。今年は連れてこないでって言っておいた」

 

 去年の誕生日は、ちょうど冬矢が怪我で入院している時だったので彼は参加していない。

 姉の友達のことを話した時は冬矢が行きたかったと話したが、色々とカオスな誕生日会になったので、今回は来ないようにと姉に釘を打っておいた。

 

「そうなんだ。残念」

「残念って、なによ」

 

 そう言葉にした冬矢だったが、気に食わなかったのか深月が冬矢を睨みつけた。

 

「高三らしいからさ、お姉さんって感じでなんか良くない?」

「知らないわよ……」

 

 こいつはわざとやってるのか?

 深月に対してはただの怒りの火種になるだけだろうに。

 

「まぁ、今回は俺も参加できるし、一緒に誕生日プレゼントでも探しに行くか?」

「行くわけないでしょ! 私はしずはと行くんだから」

 

 こんな大勢いる場で誘ってもそりゃ深月の性格上断るだろう。

 それともこれもわざとギャグっぽく言っているのだろうか。

 

「……余計なこと言って悪かったって」

「ふんっ」

 

 冬矢が謝ったものの深月は怒ったままになってしまった。冬矢の深月に対してのコミュニケーションの仕方がよくわからない。

 

 

 色々あったもののCDとDVDの手渡し会も勉強会ももう終わりだ。

 二日後に迫る期末テストに向けてそれぞれラストスパートをかける。

 

 

 

 ――そうして、期末テスト当日を迎えた。

 

 

 

 

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