包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第171話 またアメリカへ

 今日はルーシーがアメリカに戻る日。

 

 時間は十三時を過ぎたところ。俺は冬矢と一緒に空港に来ていた。

 

 電車から空港のターミナルビルへ向かうエスカレーターを上ると、複数の旅行客やビジネスマンがその場を行き交っていた。

 さらには、お土産屋や食事ができる飲食店なども立ち並んでおり、時期が時期なので、多少混んでいるようだった。

 

 

 俺はルーシーに到着したことをメッセージすると、真空と一緒にお土産屋を回っているとか。

 なので、お土産屋エリアに向かうことにした。

 

 

 

「――あっ、ルーシー!」

 

 

 バームクーヘンをメインで売っているお土産屋にルーシーと真空がいた。

 物珍しそうにしながらその商品を手にとっていた。

 

 俺はルーシーを見つけると、手を振ってアピールした。

 

 

「光流っ!」

 

 

 こちらに気づいたルーシーが、バームクーヘンを元あった場所に戻して、俺の下まで駆け寄ってきた。

 

 あまりにも可愛い。

 彼女が笑顔で走るだけで、その場所がスポットライトが当たった舞台上のヒロインのようになる。

 

 

「わっ」

 

 

 すると、人目もはばからずルーシーは俺の両手を掴んでスキンシップをしてくる。

 ルーシーの手は温かく、そしてすべすべだった。

 

 近くを見ると、須崎さんと女性の使用人がいた。

 ルーシーの家でちらっと見かけたことのある女性だが、名前などは知らなかった。

 ちなみにルーシーの両親はいないらしい。別エリアで待機しているのだろうか。

 

「お土産見てたんだね」

「うん。こっち着いた時はすぐに家に向かったから。あんまりお土産見てなくて」

「日本のお菓子も面白いでしょ。こういうのって、普段近くじゃ売ってなくてこういうお土産屋でしかなかなか買えないんだよね」

 

 目の前にあるバームクーヘンだってそうだ。

 ただのバームクーヘンではない。なんとねじれていて、その上に砂糖のコーティングがされている。

 食べたことはあるのだが、甘さ控えめでかなり美味しい。砂糖のコーティングの部分もサクっとしていて食感も良い。

 

「そうなんだ。なら光流もあんまり食べたことないの?」

「たまに食べるよ。親戚の誰かからもらったりね。鞠也ちゃんの家族とか」

「あ〜、そうなんだ。良いなぁ」

「逆にアメリカのお土産とか全然知らないなぁ」

「なら次来た時になんか買っていくね!」

「楽しみにしてる!」

 

 アメリカのお土産はどんなものがあるのだろう。

 検疫で持ち込めるものは限られると思うけど、楽しみだ。

 

「そうだ。まだちょっと時間あるし、少しだけお茶して行かない?」

「俺は大丈夫だよ。真空は大丈夫なの?」

「真空っ! 良い?」

「良いよ〜! お茶しよ!」

 

 トントン拍子で、お茶することに決まった。

 

 

 

 …………

 

 

 

 

「もうあと二時間だよ〜」

 

 ルーシーが寂しそうな声を上げながら、甘いカフェオレを口にしていた。

 現在俺たち四人は近くのカフェのテーブルに一緒に座っている。

 

「そうだね。ってことで、俺と冬矢からプレゼント」

「えっ!?」

 

 俺は懐から小さな紙袋を取り出した。

 

「プレゼントってほどのものじゃないけどね」

 

 そうして、そのまま紙袋から中身を取り出して、ルーシーと真空に渡す。

 

「お守りだ!」

 

 俺と冬矢が渡したのはお守りだった。

 

「交通、安全……?」

 

 ルーシーの隣にいた真空がお守りを持ち上げながら目を細めて呟いた。

 

「なんだよ。文句あった?」

「ないけど……どっちかと言えば学業成就とかそういう系かなと思っただけ」

 

 真空の疑問も頷ける。

 

 高校に受かってほしいという大前提でなら学業成就のお守りを渡すことが正しいとは思ったが、それよりも無事にアメリカに戻り、そして無事にまた日本に帰ってきてほしい。

 そういう気持ちを込めて交通安全にした。

 

「体優先ってこと。事故とかに遭わないようにね」

「そゆこと。ならありがたく受け取っておくね」

 

 すると真空はコートのポケットにお守りを突っ込んだ。

 一方のルーシーは自分の財布の中にそのお守りを仕舞った。

 

 

「――やっぱり、しずは……来ないかなぁ?」

 

 

 たった一日しか会っていないのに、もうお互いに名前で呼び合う関係。

 俺としては、複雑極まりないのだが、仲が悪いということではないのが救いだ。

 

「一応時間と場所は連絡したんだけどね。来るかどうかは言ってなかったから」

「そう……」

 

 少しだけ不満げな表情をするルーシー。

 彼女たちは友達ではない。何か別の関係。でも、ルーシーはもう友達だと思っているように思えた。

 

「もうあと一ヶ月後だね、受験」

「そうだね。ルーシーたちは一月の下旬だっけ?」

「うん、もうあと三週間後くらいだね」

 

 推薦入試と一般入試では、受ける日にちが違う。

 ルーシーたちは先に推薦入試があり、その後に俺たちの一般入試が始まる。

 

 受験の結果がわかるのは二月中旬だ。

 

「推薦組は良いよな〜」

「まぁそういう枠があるってだけ。私たちも日本にいたら推薦なんて受けられたかどうかわからないし」

「あ〜、そっか。帰国子女枠だっけ」

「そうそう。ラッキーだよ」

 

 ルーシーと真空がどれくらい成績が良いかわからないが、どちらも良いという話は聞いていた。

 なら、日本にいてもそれなりに成績は良いはずだ。

 

 これからの高校の勉強でも、英語ができるというのは、かなりアドバンテージがある。

 一教科は満点が確約されているようなものだ。

 

「あ、そろそろ行かなきゃ」

 

 すると、ルーシーがスマホで時間を確認したかと思えば、そう切り出した。

 名残惜しさを感じさせながらも、俺たちはカフェの席から立ち上がり、手荷物検査をするためのロビーへと向かった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「……光流。連絡するね」

「うん。俺もする」

 

 手荷物検査場の手前で、俺は眉を下げるルーシーと向き合っていた。

 寂しそうに俺の手を掴んで離さない。

 

「電話もする! あ、でも受験勉強しなきゃだから、あんまりしちゃだめか……」

「そうだね……終わったらたくさんしよう。それまで我慢」

「うんっ」

 

 多分ルーシーと電話なんてしてしまったら、毎回のように長電話になってしまいそうだ。

 絶対受験に影響が出てしまう。

 

「光流くん、また会おう。それまで元気にな」

 

 すると、近くにいたルーシーの父である勇務さんが俺に声をかけてくれた。

 まだ、ルーシーと手を繋いだままなんだけど……。

 

「はいっ! 勇務さんも……」

 

 俺は恥ずかしくなりつつも、そのままの状態で挨拶した。

 

「戻ったら、またゆっくりお家に遊びに来なさい? ご両親にもよろしくね」

「ぜひお邪魔させていただきます。オリヴィアさんもお元気で」

 

 ルーシーの母のオリヴィアさんも軽く挨拶をくれた。

 それにしてもオリヴィアさんとルーシーが二人並ぶと、とてつもない光景だった。

 海外の有名モデルとその娘のように、オーラが半端ない。

 

「じゃあ……光流。またね」

「うん。気をつけて、ルーシー」

 

 最後に言葉を交わすとルーシーは俺の手を離した。

 ルーシーの手は最後まで名残惜しそうにしていて、俺も同じような気持ちになった。

 

「ルーシーちゃん、真空またな!」

「真空もまた!」

「はーい、じゃあね!」

 

 ルーシーとは打って変わって、真空とは明るくお別れの挨拶をした。

 

 そうして、両親や使用人と共にルーシーと真空がそのあとに続いて手荷物検査の列に並ぼうとしたその時だった――、

 

 

「――ルーシーっ!!」

 

 

 俺の後方から、聞き慣れた声が聞こえた。

 

 

「えっ……?」

 

 

 すると俺たちに背を向けていたルーシーも振り返って、こちらに体を向けた。

 

 

「しずは……っ」

 

 

 ルーシーの名前を呼んだ人物。それはしずはだった。

 

 走ってきたのか、息を切らしていたしずは。荒く呼吸を繰り返し、膝に手をついていた。

 

 

「もう……遠いのよ、空港……っ」

 

 

 愚痴をこぼしながら、ダウンジャケットのポケットに手を突っ込む。

 そして、そこから何かを取り出した。

 

 見覚えるある小さな紙袋だった。

 

 

「来て、くれたんだ……」

「光流が言うから来てやったわ」

「……嬉しい」

 

 

 ルーシーはしずはに近づいていくと、目の前で立ち止まった。

 

 

「ほら、これあげる」

「えっ」

 

 すると、しずははポケットから取り出した紙袋をそのままルーシーに渡した。

 ルーシーもその紙袋を見て、何かに気づいたようだった。

 

 ルーシーは紙袋を受け取ると、その中身を取り出した。

 

 

「お守りだ……」

 

 

 その紙袋は、俺が先ほどルーシーたちに渡したお守りと同じ。

 同じ神社で購入したと思われるものだった。

 

 

「学業成就……」

 

 

 そして、ルーシーから紡がれたのは、『学業成就』の言葉だった。

 俺が元々渡そうと思っていたものだ。

 

 

「あんたがちゃんと受からないと……意味ないでしょ。死んでも受かりなさい」

「ふふっ……ふふふふっ」

 

 ぶっきらぼうにしずはが言うと、ルーシーはその場で笑いはじめた。

 一方のしずはは、ルーシーをおかしなものを見るような目で見ていた。

 

 今のしずはは、昔に戻ったようだった。

 あの頃の彼女は少しツンデレだった。

 

「……あれ? もう一個ある」

「あの子にも渡しておきなさい」

「真空にも?」

「えっ!? 私!?」

 

 それは俺も驚くことだった。

 恐らく真空とは一言も話していない。だからこういった行為をする意味もないとは思うのだが……。

 

「あんたが一人だけもらってたら、あっちの子がかわいそうでしょ」

「…………優しい。優しい優しいっ!!」

 

 多分、今のルーシーの気持ちはこうだ。

 こんなに優しい子と仲良くなれて嬉しい。そんな喜びようだった。

 

「ちょ、ちょっと! 肩掴むなっ!」

「いいじゃんっ! 嬉しいんだもんっ!」

 

 ルーシーはしずはの肩を掴みながら飛び跳ねていた。

 

「ほら、真空! 私とおんなじ学業成就!」

「ほんとだ……」

 

 ルーシーからお守りを受け取った真空は目が点になっていた。

 

「あの……しずはちゃん……ありがとう」

「仲間外れにしたくなかっただけだから。ただのついでよ、朝比奈さん」

「朝比奈さん、かぁ……」

「なによ」

「私も真空って呼んでもらえるよう努力するねっ」

「勝手に頑張りなさい」

 

 ルーシーと仲が良いからなのか、真空にもルーシーと同じような態度をとるしずは。

 真空もしずはを見る目が変わったようだった。

 

 

「じゃあ、今度こそ行くね!」

 

 

 そうして、ルーシーたちは手荷物検査場をクリアし、出発ロビーへと入っていった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 数十分後、俺たちは雪が少し残る展望デッキへと上がっていた。

 

 

「しずは。お前敵に塩送りすぎじゃないか?」

 

 冬矢が隣にいるしずはに向かって、お守りを渡したことについて言及した。

 

「私も直接あいつから塩を送られてんの」

「ふーん。大変なこった」

 

 俺もいるのに目の前でそういう会話困るんですけど……。

 

「あっ、あれじゃないか?」

 

 しばらくすると、ルーシーたちが乗ったと思われる飛行機が無事に飛んでいった。

 雪の影響で遅延するかと思いきや問題なかったようだった。

 

「これでしばらく戻って来ないわね」

「くくっ……おもしれーなぁ」

 

 しずはの言葉に冬矢が堪えきれずに笑う。

 確かに敵キャラのセリフっぽい感じではあったけど。

 

「それにしてもあんたね。朝比奈さんとばっか喋ってんじゃないわよ」

「ああ?」

 

 すると、初詣の時のことについてしずはが振り返った。

 

「深月怒ってたでしょ」

「あ、あ〜」

 

 そういえば、あのあと深月を家まで送ったのは冬矢だった。

 

「初詣の時、深月全然喋らなかったもんね。あのあとどうだったの?」

「家につくまで全然喋ってくれなかった」

「アホ」

「いでっ」

 

 しずはが冬矢をボディブローした。

 

「あんたね、少しは深月の気持ちもわかってんでしょ。ならいつも通りに深月にも気を回しなさいよ」

「そうしたいのは山々なんだけどな。うまくいける時といけない時があんだよ俺にも」

 

 やはり、深月にだけは他の女子と同じような態度はとれないのだろうか。

 

「まぁ、気長にやるさ」

「深月泣かせたら本気で殺すから」

「その時は甘んじて受け入れるよ」

「そこは絶対に泣かせないでしょうが!」

「いでぇ〜〜っ!?」

 

 冬矢の言葉に満足しなかったのか、しずはが再びボディブローをぶち込んだ。

 その悲鳴は空港の冬の空に轟いていった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「ねぇ。まさか私にもくれるだなんて……」

 

 ファーストクラスの飛行機の中、隣にいる真空がしずはからもらったお守りのことについて話した。

 

「そうだよね。全然話してなかったのに」

「仲間外れにしたくなかったからだってさ」

 

 そう、しずはが真空にお守りをあげた理由は、私一人だけがお守りをもらうと真空が仲間外れになってしまうからという理由だった。

 ちょっと変な理由だけど、それは明らかに彼女の優しさからくる行動だった。

 

「しずはちゃんの見方変わったかも」

「私はわかってたよ、絶対良い子だって。光流を好きになるくらいだもん」

 

 最初からあんな風に優しかったのかはわからない。

 でも、光流と関わることで優しくなったかもしれない。

 

 結局、光流の周りに集まる子は皆良い子なんだ。

 

「もし受かったら、次に日本来るのは三月か〜」

「二ヶ月なんてすぐだよ」

「そうかな」

 

 素敵なクリスマスを過ごせて、たくさんの思い出を光流にもらった日本での約十日間。

 やっぱり光流は光流で、中身はあの時と全然変わっていなかった。

 

 また早く会いたい。

 だから、ここからもどかしい二ヶ月が始まるのかもしれない。

 

「あとさ、ルーシー忘れてるかもしれないけど、もう素顔なんだよ?」

「ん? そうだけど……」

 

 ふと、真空が私がもう包帯をとっていることを話題に出した。

 

「アメリカの学校の生徒たちはルーシーの素顔を見るのが初めてになるってこと」

「あ〜、それで?」

「まだわからないのっ!? 皆仲良くはしてくれてたけど、今度は目の色が変わるってこと!」

「そういうこと……」

 

 そう言えばそうだった。

 

 まだ包帯を外して一週間程度。

 アメリカの生徒たちは包帯を巻いている私ともずっと仲良くしてくれてはいた。とても優しい子たちだった。

 でも、真空が言う通り素顔を見せることで何か私に対する態度が変わったら? これは良いのか悪いのか……。

 

「でもどうせ二ヶ月しかいないし」

「帰るまでにデートしようとか誘われると思うよ」

「ええ……」

「私ですら誘われてたし」

「そうなの!」

「でも今のところあいつらに興味ない」

「へぇ〜真空のタイプは日本人かぁ。これはメモ」

 

 私はまだまだ真空のことをあまり知らない。

 だって、出会ったのはほんの少し前なんだから。

 

 だからこういう小さい情報も拾っていきたい。

 

「また曲作るんでしょ?」

「うん。アレックスとは一ヶ月ペースでって話してあるから、多分そうなる」

「光流くんと会ったあとのルーシーの曲楽しみだなぁ〜」

「ふふ。どうなっちゃうんだろうね」

「どうなっちゃうのよ〜っ!」

 

 そう会話を交わしていると真空が肩で私をグイグイと押してくる。

 こう、茶化されるのも悪くない。

 

 

「――ルーシー。ちょっと良いか?」

「お父さん。どうかしたの?」

 

 

 すると、すぐ横の席にいた父が私に呼びかけてきた。

 

「伊須実から伝言を頼まれてな」

「伊須実おばさん?」

「あぁ、ルーシーとの会話が楽しくて伝え忘れたと言ってて」

「そうなんだ」

 

 なんの話だろう。

 見当もつかなかった。

 

「母さんが腰を悪くしたというのは聞いただろう?」

「うん。なんか杖も持ってたし、悪そうだった」

 

 腰が悪い話をわざわざ私に?

 どういうことだろうか。

 

「あ、もしかして私にマッサージして欲しかったとか!?」

「いや、全然違う」

「ルーシー……腰痛い人にマッサージは良くないと思うよ」

 

 私の考えは的外れだったようだ。

 

「二十四日、あの日に母さんは腰を悪くしたらしい」

「……イブの日?」

「そうだ」

 

 イブといえば、私の記憶に焼き付いている光流との再会の日だ。

 

「あの日、光流くんはお前のところに行くが少し遅れなかったか?」

「え……なんで知ってるの?」

 

 光流が遅れたことについては、両親には言っていないはずだ。

 

「光流くんは遅れたことについてなんて言ってた?」

 

 なんて言ってただろう。私は考えた。

 

「確か、公園に向かってる途中、腰を悪くしたおばあちゃんを助けたとか…………あれ?」

 

 自分で言っていて気づいてしまった。

 点と点が繋がるような感覚。

 

「まさか……まさかっ」

 

 そしてもう答えが出ていた。

 

 

「――母さんを救ってくれたのは光流くんだったらしい」

 

「――――っ」

 

 

 父から聞くまでもなく、私は答えを理解した。

 そして、今父からその答えを聞いたことで、それが確信へと変わった。

 

「ルーシー……こんなことって、あるの? 凄いよ……光流くん」

「うんっ……うんっ……あの日、光流は遅れて良かったんだ。だって……だって……」

 

 私の目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。

 

「母さんはあの日、ルーシーへのプレゼントを買おうとして、一人で出かけてたらしい」

「あぁ……だからあのサシェ……」

 

 点と点が繋がり、線となってからもさらに繋がってゆく。

 

「光流くんは、安心させようとしてルーシーには、軽い感じで言ったかもしれない。ただ、もし光流くんが助けてくれなかったら、母さんは……」

「すごいっ……光流すごいっ……私だけじゃなく、おばあちゃんまで……っ」

 

 私は光流とどこか縁で繋がっているのだと感じた。

 それが、今回のことでより強く感じた。

 

 いつの間にか私は真空の手をとって握っていた。

 この感情を誰かに伝えたかったんだろう。

 

「本当にこんなことってあるんだね……」

「うんっ……すごいっ……」

 

 

 光流がいる日本から遠い雲の上。

 

 父から聞かされた衝撃の出来事は、私の胸を強く打った。

 

 

 私が知らないところでも光流は色々な人を助けている。

 

 私とおばあちゃんだけじゃない。

 多分、光流の傍にいる友達だって、どこかで助けられているんだ。

 

 だって見てたらわかる。特に冬矢くんやしずはだって、光流のことを心の底から信頼している。

 そんな表情や行動をしている。

 

 また一つ、光流を好きになる要素を見つけて嬉しくなった。

 

 

 大切な思い出が増えた日本での十日間。

 忘れられない時間を過ごした私は、こうしてアメリカに戻った。

 

 

 

 

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