包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第175話 面接試験

 今日で受験の最後。面接の日を迎えた。

 

 筆記試験の時同様に同じ並木道を歩く傍ら、筆記試験についてグループチャットでの皆からの反応を思い返す。

 

 それぞれ勉強してきたところはある程度は回答できたとのこと。

 ただ、応用や覚えきれていなかった内容が多少なりあったようで、特に理沙や朱利あたりがメッセージ上で唸っていた。

 

 勉強したことは覚えているのに、その詳細な内容が出てこなかった。

 よくあるパターンだ。

 

 例えば徳川慶喜や徳川吉宗や徳川綱吉など、名前が似ていたり漢字がうまく書けなかったり。

 そういう細かい部分までしっかりと覚えているかどうか。

 こういった点だけでも総合的に見た時に点数の差が出てくるのだろう。

 

 それは今日の面接だって同じ。

 

 質問されるであろう内容を想定して、用意していた回答をスムーズに話せるようにする。それを言葉に出して何度も練習。

 

 ただ、練習してきたことをロボットのように言おうとすると、話す内容を忘れた時に言葉に詰まってしまう可能性がある。

 なら、言いたいことだけを箇条書きのようにキーワードとして覚えておけば良い。

 

 例えば、『本校を志望した理由は?』と聞かれた場合、『自由な校風』『勉学に励める環境』『生徒に配慮した数々の設備』などだけ覚えておき、それを組み合わせる。

 そうすれば、覚えてきた言葉をそのままではなく言い回しも自然になる。

 

 筆記も面接も繰り返しやることが、高得点をとれる秘訣ではないかと思っている。

 当たり前のことかもしれないが、この繰り返しの数をこなせるかで、思い出したい時に思い出せる確率が上がっていく。

 

 

 

 面接の時間はそれぞれ決まっている。

 なので、今回は冬矢どころか、誰一人知り合いとは遭遇せずに秋皇学園の校舎まで辿り着いた。

 

 指定された控室となっている教室まで辿り着くと、筆記試験の時同様に複数の生徒たちが好きな場所に座っていた。

 

 筆記試験の時に話した氷室麻悠はいないようだった。別の面接日程もしくは別の控室で待機しているのだろうか。

 空いている席に適当に座り、呼ばれるのを待っていると、教室の入口の扉がガララと開いた。

 

 それは俺たちを呼びに来た担当の教師と思われる人物。

 無防備に胸元が開いたシャツからは大きな谷が溢れていて、その上にはだぼっとした白衣を纏っていた。

 百均で売っているような黒いヘアゴムで簡単に髪をまとめた長いポニーテールを揺らした彼女はクールな顔立ちで、タバコが似合いそうな雰囲気だった。

 

 よく見ると白衣が少し汚れていて、理科の実験で使うような薬品がかかったような薬っぽい匂いが俺の座る席まで香ってきた。

 

「受験番号二百一番、金剛大和。面接の時間だ」

 

 そんな彼女がハツラツとした声で最初の受験生の名前を呼んだ。

 

 日本の戦艦同士を組み合わせたような屈強な名前が呼ばれ、どれだけ強そうな人物かと注目をした。

 

「ひゃいっ!」

 

 しかし、想像とは真逆に少し高めの可愛い声が飛んできた。

 

 そんな声を発した彼に視線を送ると、俺は目を見開いた。

 

 顎まで伸びたストレートの髪は女子顔負けのツヤツヤキューティクルを持っており、小さい顔に長いまつげが印象的な大きい目、整ったパーツに加え、ぷるっとした唇は男でも勘違いしそうな魅力を放っていた。

 

 つまり彼女……もとい彼は、とんでもなく可愛い男子だったのだ。

 

「やまときゅん頑張って!」

「友希ちゃん……ぼく、頑張ってくるね」

 

 続いて笑顔でやまときゅんと呼んで応援の言葉を送った人物は、ショートカットで何かの部活をしていたと思われるようなスレンダーで筋肉質な体型の子だった。

 

 同じ制服のブレザーから、恐らく同じ中学だと思われる二人。

 やまときゅんが友希ちゃんと呼んだ人物に笑顔を送った瞬間、周囲の男子数人が『かわいい』『俺もう男でもいいや』と声を漏らした。

 

 そうして、やまときゅんは白衣の先生と一緒に教室から出ていった。

 

 

 …………

 

 

 

 続々と名前が呼ばれていき、控室の人が減っていった。

 

 そしてついに俺の名前が呼ばれた。

 

 

「受験番号二百十八番、九藤光流。次はお前だ」

 

 

 白衣の教師に名前を呼ばれ、俺は教室の外に出た。

 俺が教室の扉を閉めると彼女が一言。

 

「君が九藤光流か……じゃあ行くぞ」

「……?」

 

 俺の顔を見て、そう言った彼女は、どこか俺のことを知っているような口調だった。

 ここで余計な会話をする必要はないと思ったので、「はい」とだけ返事をして、彼女の後に着いていった。

 

 一分ほど歩くと面接会場へと到着した。

 

「ここだ。健闘を祈る」

 

 戦いにでも行かされるような言葉を最後に送られる。

 

 俺は、コンコンとドアをノック。

 

「どうぞ」

 

 中からそんな声が飛んでくるのを確認すると「失礼します」と言って、扉を開けた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「「「お疲れ様ー!!」」」

 

 

 数日後の休日、俺含む八人はファミレスに集まって打ち上げをしていた。

 

 テーブルに広がるのは、山盛りのポテトフライや熱々のハンバーグ。コップにはドリンクバーのジュース類が注がれていて、そのコップを持って俺たちは乾杯をした。

 

 勉強会メンバー全員の面接試験が終わり、お疲れ様会という形で今日は集まった。

 

「あ゙〜心配すぎる〜」

 

 そう呟いたのは理沙。

 試験が終わっても結果が気になりすぎて、落ち着かない様子だ。

 コップを両手で抱えてちまちまとジュースを飲みながらも、目の前の食事は進んでいない。

 

「もうやることはないんだし、今を楽しもうよ」

「そうなんだけど〜っ」

 

 理沙に声を掛けるも、簡単には心配する気持ちは治まらないようだった。

 

「理沙ちゃんは頑張ったよ。絶対皆で秋皇行けるよ。胸張ってご飯食べよっ」

 

 隣に座っていた理帆が優しい言葉を理沙にかける。

 ギャルと真面目な委員長タイプの相反する二人。しかし見た目関係なくとても仲が良い。

 

 ただ、理帆も最近は彼女たちに影響を受けてか、少しずつ見た目がお洒落に変化していった。

 以前までつけていなかった髪飾りや手元のアクセサリー。今日は休日ともあって私服だが、これまでには見られなかったお洒落だった。

 

「うん。皆と行きたい……でも、私だけ行けなかったらどうしようって」

「理沙が行けなかったら、私も行けないよ。大差ないんだからさ。もし行けなくても理沙からは離れないから安心して」

「それって受かったら辞退するってこと? そんなの絶対だめ。今まで努力したことが無駄になるもん」

 

 朱利が慰めの言葉をかけるも、話の流れから秋皇に受かっても理沙が受からなければ辞退するとも受け取れるような言葉でもあった。

 

「大丈夫だって。あたしら頑張ったじゃん。試験会場に行った時はさ、頭良さそうな連中ばっかでビビったけど、全員がそうじゃないっしょ」

「今心配しても結果は変わるわけじゃない。せっかくなんだから楽しもう」

「わかったよぉ」

 

 理沙にどんな言葉をかけてもなかなか表情は晴れることはなかったが、ひとまず手を動かして食事は開始してくれた。

 

「それよりお前ら見たか? 校舎もそうだけど、他の場所もすげーよな?」

 

 ずっと明るい冬矢が秋皇学園の設備について話しはじめた。

 

「そんなに見る時間あった?」

「あぁ、帰り際に少しな。食堂っぽいところ通ったんだけどさ、すっげぇ綺麗で広かったんだよな。商業施設のフードコートみたいな」

「フードコート……それは凄いね」

 

 そもそもフードコートは人が密集していて綺麗なイメージはそれほどないのだが、お店はたくさんあるというイメージ。

 もしかして、食堂のメニューもたくさんあるのだろうか。

 

 結局俺は弁当を持っていくことになるとは思うが、食堂の料理も一度は食べてみたい。

 

「今から楽しみだな〜」

「もう受かった気でいるよこいつ」

 

 気が早い。冬矢の成績なら受かるとは思っているが、名前を書き忘れるような凡ミスをしていないか不安だ。

 

「しずははどうだった?」

 

 ルーシーとの約束もあり、しずはの手応えが気になった。

 

「まぁ、面接の方が大丈夫だと思うけど。ピアノの実績話したらそれだけで食いつかれたよ」

「あ〜、そういうのもあるのか」

 

 確かにそのような情報は、学校にとっては重要だろう。

 もし今後、秋皇に入ったしずはが国際コンクールで優秀な成績を収めれば、それだけで学校の名前も広がるというものだ。

 

 さらに卒業したあとも、我が校にはこんなに凄い子がいたという話もできる。

 しずはのような才能を持っている人物こそ、学校にとっては欲しい人材だろう。

 

 ただ、どこまでこのような要素が評価に繋がるかわからない。

 しかし、面接官がそこに食いついたということは加点と見て良いはずだ。

 

「深月は……えーと、大丈夫だった?」

 

 正直この中で一番面接が苦手そうだと思っていた。

 なので、少し心配だったのだ。

 

「あんた……私を何だと思ってるのよ。普通にできたに決まってるでしょ」

「えっ、そうなの?」

 

 失礼な言い方だったかもしれない。でも、今までの俺たちとの会話からそう思うしかないじゃん。

 

「大人と話すことくらい普通にできるわよ」

「そうだったんだ……ごめん」

 

 深月のことは全くわからない。

 深月の母親が深月のことが大好きという情報しかしらない。

 

 でも深月自身が言うんだ。ちゃんと受け答えができたのだろう。

 

「光流〜まだまだ甘いな。深月だってやる時はやるんだぞ。だって将来の夢の一つが――ぐはぁ!?」

「――あんた何言おうとしてるのよ! 殺すわよ!」

 

 深月の将来の夢を語ろうとした冬矢。

 しかし深月の鉄拳によってシャットアウト。少し前の真空のパンチに近い感じだった。

 

 今の冬矢の言い方だと将来の夢は複数あるようだ。

 恐らく一つはプロのピアニストだろう。でも、他は全く思いつかない。

 

 しずはがつっこまないということは、しずはも深月の将来の夢を知っているのだろうか。

 

 こうして、皆の状況を聞きつつ、楽しい打ち上げは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

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