包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第185話 旅立ち

 光流が中学校を卒業した。

 

 そして、私も真空と共に卒業した。

 うちの中学の卒業式は盛大にパーティーも行われた。

 

 まぁ、なんだかアメリカらしいというか。

 日本ではない形だったらしい。

 

 光流に電話して、どんな内容だったか話した時には驚いていた。

 

 卒業パーティーは会場でダンスが行われたり、ビュッフェスタイルの食事があったり、DJの音楽が流れたり。

 とにかく盛り上がり方がすごかった。

 

 私も真空もお揃いの白のワンピースドレスを着て楽しんだ。

 それに、これでもかというほど写真を撮りまくった。

 私が包帯を取ったことで、普段はあまり話さない子にも写真を撮ろうと言われたりもした。

 

 そんな卒業式では、三年間評定がAという最上位の成績をキープした人のみに与えられる成績優秀者の授賞式があった。

 真空は転入生なので受け取れなかったが、数名しか選ばれないその賞を私は受け取ることができた。

 

 最後には卒業アルバムと記念品のパーカーが配られ、下級生に見送られて私たちは学校を去った。

 

 

 本当に素敵な学校だった。

 ずっと包帯姿だったのに私を差別せずに受け入れてくれて、仲良くしてくれた同級生には本当に感謝している。

 

 またいつか再会できるかな。

 それとも、もう会えないだろうか。

 

 そう思うと感極まってしまった。

 

 

 私は学校へ向けて、心の中で感謝の言葉を述べた。

 

 たくさん成長させてくれて、本当にありがとう。

 そして、真空と出会わせてくれたこの学校に最大の感謝を。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 私は今、五年住んだマンションの部屋を引き払うために、荷物をまとめていた。

 

 五年も住めば、愛着が湧く。

 そもそも日本にはほとんど良い思い出がなかったために、光流と出会って変わった私が構成されていったのはこの家と学校。

 

 だから愛着が湧くのは当然だろう。

 

 この勉強机も、大きなベッドも、やってきた色々なスポーツの道具も。

 お洒落で可愛くしたいと思って選んだ家具もここで一旦はお別れだ。

 

 実家には全てが揃っている。

 この部屋にあるものは実家のどこかの部屋に置かれることとなるだろう。

 

 そして、机の上にポツンと置かれた一つの写真立て。

 そこには光流と初めて出会った時に撮った写真が飾られている。

 

「ここから、全部始まったんだよね……」

 

 今でも鮮明に思い出せる、光流との会話。

 

 綺麗だと言われたことがあまりにも嬉しくて。

 家族じゃない他人の言葉だったからこそ、信じられた。

 

 今思えば、病気だって言ってるのに包帯の下を見たいだなんて、光流もすごい子だ。

 そんなデリケートなことのはずなのに、結局押し切られて見せてしまったけど。

 

「ルーシー、準備はできた〜?」

 

 リビングの方から母の声が聞こえてきた。

 

「もうちょっとー!」

 

 そう返事をすると、私は写真立てを手に取ってキャリーバッグに入れた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「――なんだか、冬に日本に行ってからあっという間だったね」

 

 

 そう、呟いたのはキャリーバッグを持って私たち家族と共に空港に来ていた真空。

 もちろん真空の家族も見送りに来ている。

 

 

「うん、早く日本にまた行きたいなって思ってたけど、本当にあっという間だった」

 

 歌の練習や収録、推薦入試やバレンタインにホワイトデーなど、そんなイベントでぎっしりだった。

 なんだかんだすぐに時間は過ぎていった。

 

「これからしばらくは日本だね」

「そうだね、できればずっといたいな」

「ルーシーはさ、多分有名になっちゃう。けど、光流くんを離したらだめだよ?」 

「わかってる。もう離れないから」

 

 五年も我慢したんだ。

 最低でも五年は一緒にいないと。

 

 そんな会話をしながら、以前日本行きの便に乗った空港の手荷物検査場の前までやってきた。

 

「宝条さん、真空のことよろしくお願いします」

 

 真空の父と母が深く頭を下げる。

 その母の隣には弟の真来斗くんがくっついている。

 

「任せてください」

「細かく連絡しますから、安心してくださいね」

 

 私の父と母が返事をすると、真空が自分の両親の前に出る。

 

「お父さん、お母さん、真来斗……」

 

 真空はその場にキャリーバッグを置いて、三人同時にギュッと抱き締める。

 

「あなたのことだから心配はしてないけど、寂しくなったらいつでも電話するのよ」

「長期休暇とれたら、真来斗も連れて日本に遊びに行くからな」

「お姉ちゃん、たくさん写真送ってね!」

 

 三人それぞれ、真空に最後の言葉を送った。

 そうして、離れると再度キャリーバッグを持った。

 

「真空のことは任せてください! できるだけ一緒にいますから!」

 

 真空を日本に誘ったのは私だ。

 だから、一番の責任は私にあると思っている。

 

 真空のことを蔑ろには絶対にしない。

 

「ルーシーちゃん、ありがとう。もし喧嘩しても最後には仲良くしてあげてね」

 

 真空の母が私の両手を握って、温かい言葉を送ってくれた。

 彼女と喧嘩する未来なんて全く想像できない。でもそうなる未来もあるかもしれない。

 

 これは母にも言われたこと。真空の母にも言われては、必ず守るしかない。

 

「はいっ!」

 

 親友は絶対なんだから。

 

「それじゃあ行くか」

 

 父の言葉で私たち一同は手荷物検査場を通り抜け、出発ロビーへと入った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「――ルーシーと真空はもう飛行機に乗った頃かな」

 

 

 秋皇合格者メンバーでの打ち上げやクラスでの卒業式後の打ち上げも終わり、秋皇の入学式まで毎日が休みになっていた。

 勉強の手を休めるというのは久しぶりで、暇な時間が多くできてしまう。

 

 そして、今日はルーシーから聞いていた彼女たちが日本に来る日。

 長時間飛行機に乗った後、あの豪邸へと戻る。

 

 ルーシーはエルアールとして、アメリカで収録した最後の五曲目を数日後にアップするらしい。

 彼女もアクティブだ。この短い間に五曲もアップした。

 

 今回の曲はちょっと恥ずかしかったけど、可愛く歌ったつもりだと言っていた。

 今までの曲とは全く違う曲調で、アメリカにはタイプの曲だとか。

 

 そこで、日本のクリエイターにも手伝ってもらったらしい。

 ルーシー自身は関わってはいないが、作曲に協力してもらったそうだ。

 

 具体的にはどんな曲かはわからないけど、今から楽しみだ。

 

 そんなことを思いながら、俺はエルアールがアップしたこれまでの四曲を順番にギターで弾いていた。

 

 

「――あっ」

 

 

 しかしそんな時、ブチッと弦が切れた。

 

 文化祭が終わってからもしばらくは変えていなかった。

 受験勉強の合間にも気分転換に弾いていたし、腕は鈍らせたくなかったのでできるだけ触っていた。

 

 そのせいか、弦にもガタがきていたようだ。

 

「そういえば……」

 

 冬矢はお年玉もらったら新しい自分たちのギターを買いに行こうと言っていた。

 なら、今は休みだし、良い機会ではないか?

 

 そう思い、俺は冬矢にギターとベースを楽器屋さんに見に行かないかとメッセージを送った。

 

 冬矢の返事はもちろんOK。

 今日の午後に一緒に出掛けることになった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「二人で出掛けるの久々じゃない?」

「そういや……そうかもな」

 

 予定していた通り、俺と冬矢は楽器屋に向かうため街を歩いていた。

 

 平日の昼間に出掛けるというのは、なんだかいけないことをしているみたいだ。

 ただ、学生は春休みの期間ということからも、全く人がいないというわけではなかった。

 

 冬矢とはずっと会う機会はあったけど、二人きりで出掛けるという機会は最近はほとんどなかった。

 

 彼と遊ぶ時はいつも他の誰かとも一緒に遊んでいる。

 だから今日は少し不思議な気分だ。

 

「あ、ここだね」

 

 会話しながら歩いて行くと、目的地へと辿り着いた。

 二階建ての建物で、ギターやベースにドラム、弦楽器からピアノまで取り揃えられている大きなお店だ。

 

 二人で中に入ると圧倒される、楽器の数々。

 さすがにしずはの家でもここまでの楽器の数はない。

 

「あの〜」

 

 まず俺は、ギターエリアを通り過ぎ、そのまま会計のある場所へと向かった。

 

「なんでしょうか?」

 

 そこにいた丸メガネにヒゲを蓄えた中年の男性店員に話しかけた。

 

「滋野……さんでしょうか?」

「ん? そうだが……いや待てよ……そうか! お前たちがトオルの言ってた坊主か!」

 

 俺がその人物の名前を呼ぶと、険しかった顔が思い出したようにパッと明るくなる。

 

 そう、俺は事前に透柳さんにギターを買うならおすすめのお店はどこなのか聞いていたのだ。

 だから、俺のことも話を通しておくと言われていた。

 

「坊主が九藤で、そっちの坊主が池橋だったか?」

「はい、そうです」

 

 気さくに話しかけてくれる彼――滋野さんは、透柳さんと大学時代一緒にバンドをしていたとか。

 その後、メキメキと一人で成長し続けた透柳さんは、別のバンドにヘッドハンティング。

 さらには音楽プロデュースに有名アーティストのバックバンドなどをしていったそうだ。

 

 別に当時のバンドが空中分解したわけではないので、喧嘩別れではなかったようだ。

 滋野さんは音楽活動を続けつつ、最終的には雇われ店長として大手楽器メーカーの店舗で働いているというわけだ。

 ちなみに滋野さんがメインでやっていたのはベースだそうだ。

 

「よーし、あいつの紹介だ。いくらでも付き合ってやる」

 

 パシッと手を叩いた滋野さん。

 

 俺も冬矢もどんなギターとベースを買おうか全く決めていなかった。

 なので、そこも相談しつつ、お勧めを聞くことにした。

 

「じゃあこっちについてこい。まずはギターから行くぞ」

「はい!」

 

 俺たちの新ギター、新ベース選びが始まった。

 

 

 

 

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