包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第27話 私があなたなら

 十一月二十日。

 三曲目の『包帯ガール!』の配信日となった。

 

 曲調がロックなために感動とかそういうものではないが、真空は『凄いカッコいい!』と言ってくれた。

 私もリリースした三曲の中で一番歌っていて楽しい歌だった。

 

 あと五日で光流の誕生日だった。

 ちゃんと私の手紙は届くだろうか。心配だ。届かないということは滅多にないと思うけど。

 

 そんな中、私は母に相談した。

 

「ねえお母さん。光流にしてあげられることって何かないかな?」

 

 誕生日プレゼントは贈った。今離れている中、何ができるだろうか。

 十二月ならクリスマスプレゼント。二月ならバレンタイン。

 イベントはあるが、そうではない時にも何かしてあげたい。

 

 やっと少しずつ、私は自分のことばかり考えていたことを悟っていった。

 光流の手紙には、我慢できなくて私に手紙を送ったと書かれてあった。私のエゴで連絡しなかったことで、光流は悲しい思いをしていたかもしれない。

 

「そうねぇ。私はお父さんに色々あげたわね。お金には困らない人だったから、それ以外で考えたわ」

 

 お金では買えないもの、ということだろうか。

 人によってはそれが嬉しいこともある。私だってどちらかと言えばそちらのほうが嬉しい。

 

「でもね。贈り物や何かしてあげることより、大切なことがあると思うわ」

「……どういうこと?」

 

 母はこれまでと違った雰囲気で、でも、優しく語りかけてくる。

 

「今までは光流くんからも連絡がなかったから、ルーシーも連絡しないことはまだお互い様の状態だったと思う。だから私も何も言わずにルーシーをただ見守っていたの」

「うん……」

 

 私も連絡しなかったけど、確かに光流からもこの五年間連絡はなかった。これをお互い様というのかはわからないけど……。

 

「でも、ついに手紙が来てしまった。これでお互い様ではなくなったのよ」

「……そう、かも」

 

 つまり、母が私に対して静観することはやめたということだろうか。

 光流からアクションがあったなら、私がどうすべきか。

 

 母は私の目を真っ直ぐに見つめながらーー、

 

「私があなたなら、クリスマスに会いに行くわ」

「……っ!」

 

 私はまたここで、自分のエゴを認識しはじめた。

 クリスマス……それはちょうど冬休みの期間だった。

 

「光流くんはね、とてもルーシーに会いたいはずよ。手紙の内容は読んでないけど、それだけの想いがあるはず」

「うん……」

「なら、直接顔を見せることが彼にとって一番嬉しいことなんじゃないかしら?」

「あっ……」

 

 そうだ。そうだよね。私は何をごちゃごちゃと考えていたんだろう。

 やっぱり自分都合で色々と理由つけて、学校の入学式の前に会えたらいい、全部こっちでのことを片付けてから会えればいい、そう考えていた。

 

 ーーでも、そうじゃない。

 

 光流が私のことをまだ想ってくれているなら、待ってくれているのなら。

 会って顔を見せることが一番のプレゼントになるんだ……。

 

 私は母の言葉で決意した。

 

「……私、日本に行く」

「ええ、それがいいわ。クリスマスに合わせるなら、二十二日くらいから行ったほうがいいと思う。この際、年越しも日本で過ごしてもいい。せっかくだし、真空ちゃんも連れて行ってあげたらどう?」

 

 一月の初旬までは冬休み。だから、一週間ほどは日本にいられる。

 一人で行くのは寂しいけど、真空もいたら……。

 

「うん……うん……」

「でも光流くんの都合もある。クリスマスに会えるかわからない。だからルーシーが何日の何時、どこにいるのか。その手紙を出してみなさい」

 

 もう日本なんて懐かしい。ずっと帰っていない。帰れるタイミングはいつでもあったのに。

 私はなんて馬鹿なことをしていたんだろう。これでは光流の気持ちを蔑ろにしているだけだ。

 

「わかった。手紙書く」

 

 その後、私は机に向かい、手紙を書いたーー、

 

『光流へ。十二月二十四日の十七時。私達が初めて出会ったあの公園で待ってます。もし、光流の時間が空いていて、私に会っても良いと思ってくれるなら、来て欲しいです。いつまでも待ってます。ルーシー』

 

 短い手紙だけど、伝えたいことは伝わるはずだ。

 手紙を封筒に包み、エアメールで発送する手続きに取り掛かる。

 プレゼントの時もそうだったが、須崎が手配してくれた。なので、今回も須崎に手紙をお願いした。

 

「あとはクリスマスまで、時間が過ぎるのを待つだけ……」

 

 

 

 ♢ ♢ ♢

 

 

 

 後日、真空に光流に会いに行くことを話した。

 

「うん……それで良いと思うよ」

「私、ダメダメだよね。今まで光流の気持ち全然考えれてなくて…」

 

 顔が既に治ったというのに、いつでも見せられるはずなのに、会いに行かなかった自分。

 私が光流なら『なんで?』と思ってしまうだろう。

 

「そんなの人それぞれ。ルーシーにはルーシーの考えがある。前にも言ったでしょ。完璧な人はいないって」

「うん。ありがとう……」

「逆に言えば、光流くんだって今まで連絡してこなかったのは同じなんだから。どっちが悪いなんてことはないよ」

 

 真空は私の家の部屋で、頭をなでなでしてくれる。

 

「でも自分が悪いと思っているなら、一度光流くんにこっぴどく怒られてもいいかもね。それで謝り倒して許してもらうの」

「うん。そうしてもらっても構わない。私だって怒られる覚悟……ある」

「でも光流くんなら、怒らなさそうな気もするけど……」

「どう、だろう……」

 

 そもそもまだ会いに来てくれるとは決まったわけじゃない。会いに来てくれると信じたいけど。

 

「この前、誕生日プレゼント買ったばかりだけど、クリスマスプレゼントも買わないとね?」

「そうだね……日本に行く時に持っていかないと」

 

 ヘッドホンを渡してその一ヶ月後にまた別のプレゼント。何か特別なものがいいだろう。

 

「プレゼントは私でーす! ……どう?」

 

 真空が手を空に広げてドヤる。

 

「い、いやさすがに……。何か形に残るものがいいかなって」

「その前に自分自身がプレゼントになってることを否定してよっ」

「あっ……ごめん。逆に光流が"俺がプレゼント"だって言ってくれたら嬉しいって思っちゃって……」

「こりゃー重症だ〜」

 

 頭に手を当てた真空が仰向けに転がる。

 芸人のような動きだ。

 

「だって本当だもん」

「どこの誰だー? 純粋なルーシーを変態にしたやつは〜?」

「……それ、ツッコミ待ち?」

 

 でも本当にちゃんとプレゼント考えないと。あまり時間はない。

 

「心のこもったものなら、何でも良いと思うけどね」

「心がこもった……。そういやお母さんもお金では買えないものって言ってた……」

 

 それならプレゼントは物に拘らなくてもいい。

 

「やっぱルーシー自身じゃない?」

「真面目に考えて〜〜っ!!」

 

 もう絶対面白がってる。

 プレゼント……本当にどうしよう。

 

 やっぱり実用的なものか。それとも私と一緒でもいいな、体験型なら水族館とか遊園地とかの年間チケットとか。

 それとも私に関することなら『何でもしてあげる券』……とか。

 

『なんでも』はさすがにやりすぎ? 

 

 でもこれだと真空が言った『プレゼントは私』と変わりないじゃないか。

 

 

 

 




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