包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

38 / 190
第38話 お揃い

「お嬢様、こちらをどうぞ」

 

 すると控えていた氷室が小型冷蔵庫の中を開くと、そこにはホール型のクリスマスケーキが出てきた。

 

「うおっ、これフランスの高級洋菓子店『ファン・シャルマン』の最高級クリスマスケーキじゃねーか!」

 

 なにそれ、全然知らない。冬矢くんはこういうのに詳しいのだろうか。

 

「あんた、よく知ってるね」

「あぁ、こういう知識は女を喜ばす為に必要だろ? 当たり前だ」

「はぁ……?」

「ちなみにな『ファン・シャルマン』ってのは、フランス語で可愛い子鹿って意味なんだ。ほら、モチーフの子鹿がケーキの上に乗ってるだろ?」

 

 真空がゴミを見るような目で冬矢くんに視線を送る。

 

「ふーん……」

「反応悪いな……とりあえず早く食おうぜっ」

「なんであんたが仕切ってるのよ。ここはルーシーか光流くんでしょ」

「それもそうだな。二人に任せるよ」

「なによ……聞き分けがいいわね……」

 

 真空と冬矢くんのやりとりが、なぜか夫婦漫才のように見えてきた。

 

 その後、氷室がケーキを切り分けてくれて、一緒に温かいコーヒーも淹れてくれた。

 

「せっかくだから、氷室と須崎もどう?」

 

 ケーキは結構大きいので、四人で食べても全然余る。それなら、氷室も須崎も一緒に食べたほうが嬉しい。

 

「じゃあいただきますか、氷室さん」

「老体に甘いものはつらいので、少しだけなら……」

 

 そうして、リムジンの中のソファの前にあるテーブルにそれぞれケーキとコーヒーが並べられる。

 

「クリスマスケーキ食べる時に掛け声とかないよね?」

「ない、かも……」

「でもクリスマスといえば、これしかないよね……メリークリスマスっ!」

 

 私がクリスマスの挨拶をすると、それぞれに『メリークリスマス』と復唱してくれた。

 

「んん〜〜っ! 美味しいっ!!」

 

 真空は目をぎゅっと瞑りながら美味しさを表現する。

 

「ルーシーこれ凄く美味しいよっ!」

 

 光流も目を見開いて美味しそうな顔をする。

 

「うっめええええっ! なんだこれ……最高じゃねえか。生クリームだけでも相当うまいぞ」

 

 冬矢くんも満足したようだ。ケーキのブランド名を知ってるくらいだ。それでも美味しいってことは、相当に美味しいのだろう。

 

 それぞれケーキを頬張り、一同に幸せそうな顔をする。

 そんな中、真空がゴソゴソとカバンを漁りだす。

 

「ルーシー。二回目だけど、メリークリスマスっ」

「あっ……用意してくれたの?」

 

 真空がプレゼント用に包装された紙袋を渡してくれた。

 

「実は言うとね、用意してなかったんだ。クリスマスプレゼントって、私達くらいの年齢になると、男女で贈り合うものかなって思っちゃって……」

「ちょっとわかるかも。家族は別だけど、友達にクリスマスプレゼントって中々イメージつかないかも」

 

 それでも用意してくれたということは、やっぱり真空は優しい。

 

「昨日、鷹村屋を一緒に見て回ったでしょ? ルーシーがトイレ行ってる間に……ね?」

「そうだったんだ……ありがとう……」

 

 鷹村屋とは商業施設だ。公園の下見に行った後に真空と一緒に寄っていた。

 私は真空からもらった小さな紙袋開けてみる。するとーー、

 

「あっ! これクリスマス限定のリップ……!」

 

 真空と一緒に見ていたものだ。『このリップ、デザインとか色も可愛いね』とお互いに言っていたもの。

 

「これ、欲しかったんだ……! 本当にありがとうっ」

「どういたしましてっ」

 

 真空は、はにかんだ笑顔をくれた。

 

「実はね……私も昨日まで用意してなかったんだけど……」

「えっ!?」

 

 私も同じく鷹村屋の小さな紙袋を取り出して真空に渡した。

 

「私にっ!?」

「うんっ」

 

 真空は驚いていた。私も真空にもらえると思ってなかったが、逆に真空ももらえると思っていなかったようだ。

 

「開けてみるね……」

 

 真空は綺麗に小さな紙袋のテープを剥がして開けていく。

 

「……えっ……ええっ!? ええええええっ!?」

 

 真空は何度も驚きの声を漏らした。それもそうだ。

 

「こっ、これ! 私がルーシーにあげたリップと同じやつじゃんっ!!」

「まさか同じものをプレゼントすることになるなんて……私も驚いちゃった」

 

 そう、私も真空がトイレに行っている間に即座にリップを購入した。

 真空が言っていた通り、お互いに可愛いねと目をつけていたリップだ。

 二人共、互いの言葉を見逃さずに購入したというわけだった。

 

「ねー、なにこれ! プレゼントもらったこと自体も嬉しいけど、お揃いだなんてもっと嬉しいっ!」

「私も……真空とは性格全然違うのに、こういう所はどこかで通じてるのかもね」

「ルーシーっ!!」

 

 真空は相当嬉しかったのか、私に抱きついてくる。

 私も同じく嬉しい。お揃いのものを使える……嬉しいなあ。

 

「おいおい、光流。どうなってんだよ。ここは天国か? 美少女同士が抱き合ってるぞ……?」

「俺だって、二人が友達だって今日知ったばかりだし。女の子同士って距離感近いらしいから、ありえることなんじゃないか?」

「そうだけどよ……どっちも美少女ってのが中々見られないだろ……」

 

 横で光流と冬矢くんが私達のことを話していた。

 そういえば、私と真空はよく抱き合ったりしている。これって実は普通じゃないのかな……?

 

「はいっ、これ。光流くんにも」

 

 すると抱擁を終えた真空が再びカバンをゴソゴソして、今度は光流に小さな紙袋を渡した。

 真空、優しすぎない?

 

「えっ、俺にも!?」

「今日のことルーシーから聞いてたからね。だから渡せるなら渡そうと思って」

 

 光流は紙袋を開けていく。

 

「写真……立て……?」

「そうそう、お洒落な感じでいうとフォトフレームね。それでルーシーと撮った写真飾りなよ」

 

 真空が渡したのは、しっかりとしたフォトフレームだった。今やフォトフレームは百円でも購入できるが、真空が渡したのは額縁もしっかりしているように見えた。

 

「真空……なんかまだ呼び慣れないけど……とにかくありがとうっ! ルーシーとの写真飾るよっ」

「……光流」

 

 そうやって堂々と私との写真を飾るだなんて言われると、さすがに恥ずかしい……。

 

「お前よくそんなセリフ吐けるな。あちーあちー。暖房効きすぎか?」 

「だって……そのための写真立てだし……」

 

 言ったはいいものの、冬矢くんに指摘されて、少しだけ恥ずかしがる光流。

 ……どんな光流も可愛く見えてしまう。

 

「ってことはさ、俺にもなんかあるんじゃ!?」

「ないわよっ!!」

 

 光流が真空からプレゼントをもらったことで、冬矢くんは自分ももらえるのではないかと思ったらしいが、言葉を被せるように真空がそれを否定した。

 

「そもそも今日あんたがここに来るだなんて知らなかったし、用意できるわけないじゃん」

「え……もし来ることがわかってたら、くれたの……?」

「あげるわけないでしょっ!!」

「そんなぁ〜〜〜っ」

 

 冬矢くんはがっかりする。

 本当にこの二人を見てると夫婦漫才を見てるかのようだ。なんでこんなにも綺麗にツッコミが決まるのだろう。

 

「ふふふっ」

「はははっ」

 

 私と光流は同時に笑った。

 

「おいおい、お前ら笑うなよ。俺は悲しいんだぜ……?」

「じゃあ、あんたはこれでも食べてなさい」

 

 そう言うと真空が切り分けたケーキの上に乗っていた主役フルーツであるイチゴーーではない小さなキウイをフォークで一つとって、冬矢くんのお皿に置いた。

 

「あっ……あっ……」

「ふんっ。そんなに嬉しかったか。チョロい男ね……」

 

 冬矢くんが、感動しているのか口元を震わせていた。

 それに対して真空はドヤ顔でふんぞり返っていた。

 

「俺、酸っぱいフルーツ苦手なんだよね……」

「死ねえぇぇぇぇっ!!!!」

「いだぁぁぁぁっ!!!!」

 

 キウイは苦手だったらしい。

 思わぬ回答に真空が立ち上がり、冬矢くんの目の前まで移動して怒りの鉄拳をぶつけた。

 

「ぼう、りょく……おん、な……」

 

 真空のストレートパンチが冬矢くんの頬にめり込んだ結果、ソファの上にダウンした。

 私も軽いチョップを真空から食らったりしていたこともあったが、ここまでのパンチを見たのは初めてだった。暴力的なのは良くないし、冬矢くんにも申し訳ないけどーー、

 

「待って……ふふっ……面白すぎるっ……だめっ……まそら……っ」

「ははははっ、冬矢……自業自得だなっ」

 

 あまりにも二人のやりとりが面白すぎて、私も光流も腹を抱えて笑い転げた。

 真空と冬矢くん。こうやって喧嘩みたいにはなってるけど、逆に相性が良いのかなと思ってしまった。

 

「氷室さん……皆さん楽しそうですね」

「ああ、お嬢様にここまで笑い合えるほどのお友達ができるなんて……」

 

 ソファの端でケーキを頬張っていた須崎と氷室が、四人の様子を温かい目で見守っていた。

 

 

 

 

 




この度は本小説をお読みいただきありがとうございます!
もしよろしければ☆評価やブックマーク登録などの応援をしていただけると嬉しいです。
感想コメントもお待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。