包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

42 / 190
第42話 イルミネーション

 ふわりふわりと少しだけ降り注ぐ雪の中、私は光流に連れられて、歩道を歩いていた。

 

「ルーシー、歩くの早かったら言ってね?」

「!?」

 

 そういう気遣いもできるの? しかも、いつの間にか車道側は光流が歩いてるし。

 

「ありがと……そういうのどこで覚えるの?」

 

 もしかして女の子とのデート経験が豊富なのだろうか……。それはそれでなんとなく嫌だけど。

 

「姉ちゃんにうるさく言われてたからね。歩くの早いとか、女の子はちゃんとエスコートしろだとか」

「素晴らしい教育だねっ。ふふ」

「どうなんだろう……はは」

 

 ーー姉のことだった。五年前にも光流の姉については聞いていたが、この五年間はよく知らない。その間にこのようなエスコートなども覚えたのだろうか。昨日リムジンに乗る時も先に上がって手を出してくれたし。

 

「ねぇ、どこに向かってるの?」

「それはね、着いてからのお楽しみ」

 

 サプライズなのだろうか。その言葉を聞いて少しドキドキしてしまう。

 

「え〜っ! 楽しみっ」

「俺もルーシーと一緒に行きたかったんだ。こういうところ」

「えっ、えっ。ほんとにどこなんだろ。私、日本のスポットほぼ知らないから、どこでも驚いちゃうと思う」

「俺も似たようなもんだよ。まだまだ知らないところ多いよ」

「じゃあ……これからは、一緒に色々なところに行けたらいいねっ」

「うん……そうだねっ!」

 

 会話してるだけなのに楽しすぎる。どうしよう、顔がニヤけすぎている気がする。誰か鏡持ってないだろうか。私……持ってるけど、今は出せないよ。地面が凍って鏡みたいになってくれないだろうか。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ルーシー達は少し先に行ってしまっていたので、宮本さんに連絡をとって、場所を教えてもらった。

 

 私と冬矢は早歩きで、ルーシー達の跡を追った。

 

「あっ……あれだ」

「ちょっと待てよ。ルーシーちゃん腕組んでるじゃねーか」

 

 車を降りたルーシーが光流と会って、すぐに腕を組んだ。積極的なルーシーはたまにしか見ないから驚いた。内心じゃドキドキだろうなとは思った。

 

「そうだね。今日はルーシー積極的に行くみたい」

「ははっ、あいつら付き合ってないんだよな?」

 

 冬矢の疑問もわかる。再会したばかりだというのに、あまりにも距離が近すぎる。

 ……となれば、昨日のドーム型遊具の中でも、とんでもないことが起きていたのではないだろうか。

 二人だけの秘密みたいなものだろうし、ルーシーには聞かなかったけど、すごく聞きたい。今度聞いてみようかな。

 

「そうなんだよねぇ……でも再会してまだ二日目だよ? さすがにそこまでの勢いはないんじゃない?」

「でもよ、距離感絶対おかしいって!」

「光流くんだってルーシーだって、この五年間の溜まりに溜まったものが爆発しちゃってるんでしょ」

 

 ルーシーには、できるだけ常識を教えてきたつもりだが、私も海外生活が長いので、日本の恋愛ごとにはまだまだ疎い。恋愛漫画で学んではいるけど、あれはどれも誇張されたものだと理解している。

 でもルーシーの話を聞いていると、普通では絶対にありえないような、特別な関係が光流くんとあるのだと知った。

 その想いが光流くんも一緒なら、距離感だって最初からバグっていてもおかしくはない。

 

「そうかもしれないけどよ。まぁ光流も色々あったからなぁ……」

「ちょっと、それ教えなさいよ」

「あぁ、真空ならいいか……」

 

 私はルーシー達は尾行しながら、冬矢から光流くんのことを聞くことにした。

 

「あっ! ちょっと待って! ルーシーの顔ヤバい可愛いっ! めっちゃニヤけてるっ!!」

「お前なぁ……って光流もじゃねーか!! なんだよ……あんな顔初めて見たぞ」

 

 二人の空間なのに、二人きりの時にしか見せないような顔を見せ合っている。

 それを覗き見る私達。

 

 ちょっと良心は痛みーーはしない。元々私はそういう女だし。でもずっとルーシーの味方。

 私が恋愛できるようになるまでは、ルーシー達で栄養補給させてほしい。

 

「あ〜っ『事実は小説よりも奇なり』ってこういうことか」

「どうした急に?」

「恋愛漫画より、ずっと現実の恋愛は凄いってこと!!」

「あいつらの場合は特殊過ぎるだろうけどな」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 互いの親友が後ろから尾行してきているとは知らないルーシー達。徐々にとある場所に近づいてきた。

 

 もう辺りは暗い。冬は陽が落ちるのが早く、五時過ぎでも周囲の電灯が暗くなった街を照らしている。

 

「人が増えてきたね……」

「うん、ここら辺が案内したいところだったからね」

 

 駅前も多少なり人はいたが、今歩いている場所の方が人が多くなってきた。

 なんのスポットなんだろう。

 

「あれ……なんか青っぽいね」

 

 普通の黄色い電灯がたくさんあったはずが、少し先を見ると青っぽい明かりが見えてきていた。

 

「うん、もうちょっと……」

 

 そこから歩いて数分。光流が足を止めた。一緒に私も足が止まる。

 

「ここ……俺も初めてきた」

 

 目の前にあったのは、青い電球の数々。ずっと先まで青い光りが照らされていて、とても幻想的な空間になっていた。

 

「わぁぁぁぁ。なにこれ……すっごい綺麗……」

 

 私は目をキラキラさせながら、青く輝く景色を見渡した。

 

「ここ『青の洞窟』っていうんだ。クリスマスのイルミネーション。ちょうど二十五日の今日までなんだ」

「そうなんだ。凄い綺麗だよ、光流……」

「イルミネーションってありきたりかもしれないけど、こういうところにルーシーと来たかったんだ」

 

 こういう場所に誰かと来れるだなんて、今まででは考えられなかった。

 そして、その相手は光流。一番大切でーー特別な人。

 

「嬉しい……光流と一緒に来れて嬉しい。ほんとに凄いね……」

 

 青い明かりなので、角度によっては互いの顔も見えないくらいに暗い。今、近くで光流の顔を見ているけど、暗くてはっきりと表情が見えない。もっと見たいのに。ならーー、

 

「光流っ、写真とろっ!」

「あ、いいね。撮ろうっ」

 

 写真のライトで光流の顔を見る作戦。と言っても写真の中で、だけど。

 

「じゃあ今度は私のスマホで撮るね」

「わかった」

 

 私はスマホをかざし、後ろの景色が見えるようにセット。

 

「光流っ、もっとこっち」

「おおうっ」

 

 今日は私のほうが積極的だ。光流の腕を引き寄せると、光流が驚いたような声を出した。

 

『パシャっ』

 

 ライトで照らされたカメラで写真を撮った。

 

「どれどれ〜っ。あっ光流、かっこよく撮れてるよっ!」

「はぁ〜〜っ、ルーシー可愛すぎるだろ……」

 

 私も頑張って褒めたつもりだったが、それ以上で返されてしまい、ちょっと顔が火照った。でも暗いので、赤くなった顔は光流にはわからないだろう。

 

「なっ……すぎるってなによ〜」

「もうね、実物もカメラに映るルーシーも全部可愛い……」

「光流……毎回言い過ぎだよぉ……言葉の重みが軽くなっちゃうよ?」

「安心して! 俺、毎回本気だから!」

「もう……」

 

 光流には可愛いとか綺麗とか言われたい。でも毎回毎日言われると、その言葉の重みが軽くなってしまうと聞いたことがある。私にはそれが適用されないでほしいと切に思う。

 

「イルミネーションより凄いイルミネーション……」

「どういうこと?」

 

 光流が意味不明なことを言い出した。

 

「ルーシーのほうがイルミネーションみたいってこと。幻想的で綺麗で、キラキラしていて、特別。そんなルーシーは俺にとっては今見てるイルミネーションより素敵なイルミネーションだよ」

「なっ、なにそれ。変な褒め方っ」

 

 謎の言い回しだけど、とっても褒めてくれていることはわかる。でも光流から、ちゃんとした気持ちは伝わってきている。……嬉しいなぁ。

 光流はロマンチストなのだろうか。昨日からずっと恥ずかしいセリフをポンポンと出してくる。私も負けてられない。

 

「じゃあ、端っこまで歩いていこ」

「うん、そうだねっ!」

 

 そうして、まだまだ入口近くにいた私達は『青の洞窟』を進んでいく。

 

 こんな場所があったことは全然知らなかった。東京も凄いものだ。

 これだけ人が集まるものわかる気がする。

 

 そんな時だった。

 

「あっ……すみませんっ」

 

 人が多いせいか、反対側から歩いてきた誰かとぶつかってしまい、光流の腕に絡めていた手が外れる。

 すぐにぶつかった相手に謝ったが、人の流れによってなのか、もうぶつかった相手はわからなくなっていた。

 

「光流、ごめん……え?」

 

 すぐ横にいたはずの光流がいなくなっていた。

 

「光流……どこ?」

 

 通る人の顔が暗くて、誰がどの顔なのか中々認識できなくなっていた。

 ザワザワしていて、声も届いていないのか、私は一人になってしまった。

 

「ひかるっ!? ひかるっ!?」

 

 急に嫌な意味で胸がドキドキして、恐ろしくなる。

 少し光流と離れただけなのに、どこか遠い場所に一人取り残された気がした。

 

 一人でその場から動けずオロオロして固まってしまう。

 

(光流っ! どこ? どこにいるの? 見つけて……私を見つけてっ!)

 

 そんな時だった。

 

「ルーーーシーーーーっ!!!!!」

 

 人も多く、ザワザワしていて、声が通らないはずなのに、とても大きな声で私の名前を呼んだ誰かがいた。

 声変わりをした声。男らしくなった声。でも今では安心する声。さっきまで聞いていた優しい声。ーー私の好きな声。

 

「ひかるっ!!!」

 

 私は声の主を必死で探す。

 

「ルーーーシーーーーっ!!!!!」

 

 もう一度、大きく周囲に轟くような声が聞こえた。

 

 その結果、青の洞窟を歩いていた人達が、さらにザワザワすることとなった。

 こんなに大声で叫んでいる。当たり前だろう。

 

「ひかるっ!! どこっ!! ひかる〜〜っ!!!」

 

 私もできる限り大きな声を出した。恥ずかしかった。でも光流に会えないことのほうが辛い。

 だから頑張った。

 

「見つけた……」

 

 どこかで小さなつぶやきが聞こえた気がした。

 

「ルーシーっ!!!」

「わっ……!」

 

 目の前から光流がやってきて、私をぎゅっと抱き締めてくれた。

 温かい。私、光流依存症なのだろうか。でも、誰でもこんな状況になったら寂しくなるはず。

 

「ひかるぅ……」

「良かった……ルーシーを見つけられて良かった……」

 

 私はちょっと涙ぐんで、光流の胸に顔を埋めた。

 

「ごめんね、私が手を離したばっかりに……」

「ううん、人とぶつかったならしょうがないよ。ルーシーのせいじゃない」

「うん……ありがと……」

「だから、今度は離さない……」

 

 光流が、昨日あのドーム型遊具の中でしたように、私の手を握ってきた。

 

 そして、それは昨日と同じく普通の手の握り方ではなかった。私の指と指の間に光流の指が交互に差し込まれ、恋人繋ぎになった。

 

「これで離れようがないだろ?」

「うん……」

 

 これなら、もし誰かとぶつかっても光流が離さないでいてくれるだろう。

 色々すっ飛ばしている気もするけど、この手の繋ぎ方はとても嬉しい。

 

 

 

 ーーもう、私を離さないでね、光流。

 

 

 

 

 

 




この度は本小説をお読みいただきありがとうございます!
もしよろしければ☆評価やブックマーク登録などの応援をしていただけると嬉しいです。
感想コメントもお待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。