包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜   作:pelca

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第68話 初めての手作り

 俺は差出人不明のラブレターをもらってしまった。

 

 差出人不明だから誰なのかもわからないし、返事もできない。

 気持ちだけ伝えたかったということだろうか。

 

「だ、誰なんだ……?」

 

 俺は冬矢の顔を見て確認する。

 

「名前書いてないなら、さすがに俺でもわからないよ」

 

 当たり前の答え。わかるわけがない。

 でも、この字、どこかで見たことあるようなないような……。

 

 

 これ、どうすればいいのだろう。

 受け取ってしまったものはしょうがないけど。

 これ、家に持ち帰るの? どこに置いておくの?

 

 相手のことを考えたら捨てることなんてできないし、でもルーシーのこと考えたらこれを持っておくのもなんか……。

 

 どうすればいいんだ。

 

「とにかく持って帰るしかないか……」

 

 俺はランドセルに手紙を仕舞った。

 

 そのまま今日は冬矢と帰宅だ。

 

「冬矢はラブレターもらったことある?」

「あるよ。お前みたいな下駄箱はないけどな」

 

 まぁ冬矢ならあるだろうな。イケメンでコミュニケーション能力も高い。

 

「直接渡されたり、チョコと一緒にもらったり?」

「チョコって?」

「あぁ、バレンタインな」

 

 バレンタインか。

 

 そういえば、俺はそういうの全然もらったことないな。

 小さな義理チョコならしずはや千彩都からもらったことはあるけど。

 

 いつかルーシーくれないかな……。

 ルーシーのチョコ。食べてみたいなぁ。

 

 

 …………

 

 

 俺はそのまま家に帰宅した。

 

 もらった手紙を封筒ごと机の引き出しに入れた。

 

「まじでこれ……どうすんだ……」

 

 俺はどうすれば良いかわからないまま、とりあえず時間が過ぎるのを待った。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 小学六年生の二月。歳が明けて俺も十二歳になっていた。

 

 そして、その時がやってきた。

 二月十四日。バレンタインの日だ。

 

 

「はいっ。光流、どうぞ」

「私からもこれ」

 

 

 朝、学校に行くと、教室で千彩都としずはがチョコを渡してくれた。

 手作りなのかどっちなのかわからない一欠片の小さなチョコだった。でもくれただけでも嬉しい。

 

「ありがと!」

 

 俺は笑顔で返事した。

 

「あれ……?」

 

 少し気になったことがあった。

 

「しずは、手大丈夫?」

 

 しずはの手だった。手というか指だ。

 何枚か絆創膏がしてあった。

 

「あ……これちょっとピアノで指使いすぎて」

「そうなんだ。指大切にね」

「……うんっ」

 

 そうか。ピアノの練習をたくさんしていればそういうこともあるか。

 今まではあまり見なかったけど。

 

 その後、義理チョコを配る他の女子達にもいくつかもらった。

 

 

 ただ……俺の心の中で何か引っかかりがあった。

 

 

 

 昼休み。

 

 俺達は、昼食を取った後に着替えて午後からの体育の為に体育館へ向かった。

 

 そして体育が終わり、教室に戻ってきた。

 着替えた後に次の授業の教科書を取り出そうと机の中を漁った時だった。

 

「あっ……」

 

 俺の指が何かに触れてカサっという音がした。

 

 俺はその何かを掴んで引き出した。

 

「ーーーーッ」

 

 中が見えない袋に包まれたものだった。

 それはプレゼント用のリボンのようなものが巻かれていてーー、

 

 俺はこの時点でこれが何なのか予想できた。

 

 もうすぐ授業が始まるので、一旦机の中に袋を戻した。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 放課後。

 

 俺は授業が終わると、他の教科書をしまうと同時に机の中にあった袋も一緒にランドセルに仕舞った。

 

 今日は俺は一人で帰る予定だったので、そのまま家に帰宅した。

 

 

 俺は二階の部屋に駆け込むと、ランドセルを開き、その袋を出した。

 

 テーブルの上に袋を置いて、いざリボンをとって開けてみた。

 

「クッキーだ……」

 

 中に入っていたのは透明な袋。そしてその中にクッキーが何枚か入っていた。

 それぞれ形や色が違うクッキーで、とても可愛いデザインだった。

 それは頑張って作ったであろう努力の形が見えた。

 

「あ……」

 

 袋の中にまた別のものがあった。

 

 

 

 ーー手紙だ。

 

 

 

 俺はその手紙を取り出し、ゆっくりと開く。

 

 

『私からあなたへのバレンタインチョコです。以前は急に下駄箱に手紙があって驚いたと思います。ごめんなさい。でも、私は今もあなたが大好きです。ずっと気持ちは変わっていません。いつか勇気が出た時に直接伝えたいです。自分勝手でズルいと思いますが、それでもよければクッキーを食べくれると嬉しいです』

 

 

 あの少し前にもらった手紙の人と同一人物だ。

 俺は袋を見た時にそうではないかと、ある程度予想していた。

 

 でも、誰なのかは検討もつかない。

 

 千彩都からもしずはからも他のクラスの女子からも義理チョコをもらったし……。

 

 あれ? まてよ。

 

 体育の時間は皆教室の外に出るから、クラス委員長が鍵を閉めることになっている。

 つまり、他のクラスでは俺の机の中には入れられないはず。

 

 俺が着替えて、少し早めに体育館に移動したその後の時間しかない。

 

 委員長に忘れ物したからと言って一度鍵を借りて戻ったとか。そういうことだろうか。

 

 クラスメイト……全然わからない。

 いや、他クラスの友人に頼まれて……とかも有り得るかもしれない。結局、候補が増えてしまっただけだった。

 

 相手のことを考えると、手紙を捨てられなかった。

 また、手紙が増えてしまった。

 俺は手紙を前もらった手紙に重ねて勉強机の引き出しに仕舞う。

 

「一応食べるか……」

 

 俺はクッキーを一枚手にとり、それを口の中へ入れた。

 

「おいしい……」

 

 チョコを使ったクッキー。粉っぽくなく、サクサク食べやすい大きさ。

 コーヒーに合いそうな味。後でコーヒー入れよう。

 

 こんなクッキーが作れる人なら、料理ができる人なのだろうか。

 

 

 それとも……、

 

 

 このためにクッキー作りを頑張った人だろうか。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「今頃は光流食べてるかなー? ねっ、しーちゃん?」

「そうだと……良いけど。名前も告げていない人のなんて食べてくれるかなぁ」

 

 放課後、私はちーちゃんと二人で教室に少し残って話していた。

 

 光流への初めてのちゃんとしたバレンタインチョコ。

 

 今までは義理の小さなチョコだけを渡していたけど、今回は頑張って手作りをしたチョコを作った。

 チョコというかクッキーだけど。

 

 十二月のあの日、私は手紙で光流に想いを伝えた。

 でも差出人は書いていない。

 

 伝えたい。でも怖い。

 だから、私の勝手な押し付けだけど、差出人不明の手紙という形で好きの気持ちを伝えた。

 

 手紙を下駄箱に置くだけなのに、こんなに緊張したのはいつぶりくらいだろう。

 コンクールでもここまで緊張しなかったかもしれない。

 

 そして二ヶ月後、バレンタインチョコを贈った。

 わざわざ義理チョコまで先に渡して、私じゃないということを印象付ける作戦だった。

 

 お昼のあと、委員長に鍵を借りて忘れ物をしたと言って教室に戻った。

 その時に、こっそり光流の机の中に仕込んだ。

 

 まだ私は想いを伝える決心がつかなかった。

 だから添えた手紙に名前は書けなかった。

 

 そして今回、初めて手作りチョコなんてものを作った。

 もちろんちーちゃんに教わって作った。私は料理とかそういうのは得意じゃないから、結構失敗しちゃったけど、光流に渡した分はうまくできたはず。

 

 でも、そのお陰で指が傷だらけになってしまって、光流にバレるかと思った。

 チョコ作りで指が傷つくなんて普通はありえないけど、なぜか傷がついた。

 

「光流は優しいからさ、多分食べてくれるよ」

「……そう、だね」

 

 わかってる。光流は誰のかわからなくても、多分食べてくれる。

 そういう人だ。

 

 だから多分手紙もとっておいてくれてるはず。

 

 でももし、その手紙が光流の負担になる時がくるのであれば、私は……。

 

「もうちょっとで中学生だね」

「うん。皆一緒だね」

 

 私達は、全員同じ中学に進学が決定していた。

 

 また皆と一緒にいられるのはとても嬉しかった。

 

 小学校は皆がいたお陰でとても楽しく学校生活が送れた。

 だから、中学校でも楽しく過ごしたいな。

 

 

 私はいつか想いを伝えるその日に向けて、今の自分には何ができるのかを考えながら、日々を過ごすことにした。

 

 

 

 

 




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