雨上がる頃に星空を   作:ミスブルー

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怪談「猿夢」

「猿の電車の夢」を略して猿夢と呼ばれる。

夢の中で、猿が運転する電車に乗っていたところ、残虐な行為を示唆するアナウンスが流れ、乗客が次々に惨殺されていく。

猿夢の話を聞くと、同じ夢を見るという噂も。検索してはいけない言葉としても知られている。


2000年から始まった怪談にして今なお語り継がれる都市伝説なり。



怪談「猿夢」

学校内を探す…これだけでも苦労はあっただろう。

 

けどなのが黒百合と連絡先を交換していたおかげで助かった。

 

「「学校で話せる?」だって」

 

「いいぞ、場所は?」

 

「放課後にプールだって!」

 

「…プール?」

 

俺と丹恒は顔を見合せた。

 

この時期は梅雨でプールの温度は下がっている。

でも授業はやっていたようだった。

俺達はプールにやって来た。

 

土砂降りの大雨。

プールサイドは雨に打ち付けられ音が響いていた。

 

屋根のある場所に黒百合は制服姿で立っていた。

 

長い黒い髪が風に煽られながら、プールの波を見つめていた。

 

「黒百合」

 

「三人共来てくれたんだね」

 

「プールに呼び出されるとは俺も予想外だったが、ここには何があるんだ?」

丹恒の言葉に黒百合が頷く。

 

「ここは放課後の夕方になると赤ん坊を抱いた女性が現れるの」

 

「え、こわ!」

 

「その赤ん坊をあの手この手で渡そうとするんだけど絶対に渡されないようにしないといけないんだ」

 

俺は聞いた。

 

「渡されたらどうなるんだ?」

 

「女性に食べられて死んじゃう」

 

「ひえ……」

 

「この世界は今そういう力のあるものがとても増えたんだって。ここはまだ軽い方だけどね…」

 

「穹に起きたことは重いという話をしたかったのか?」

 

「うん、…悪夢を見たんだよね。そして友達は殺されてる」

 

「…ホムラのメッセージは既読が付かないままだ。あの夢は何なのか。俺はどうすればいいのか。もし行けるならあの悪夢を終わらせたい。黒百合…頼む。 力を貸してほしい」

 

「最初に話した時、詳しいと話していたことを思い出したんだ。頼れる人物はお前だけだ」

 

「お願い黒百合!」

 

少しの沈黙の後、一本の筆とインクをどこからか取り出した。

彼女はそれを右手の人差し指と中指に何かを書いていく。

文言のような字に見えた。

書き終わり右手の指を口へ当てる様にして黒百合は口を開いた。

 

 

 

「猿夢。

昔はただ夢物語の現代の怪談話しって言う怖い話しでしかなかった。

それがいつしか受肉を持って自分の世界を持って力を得ることになった。

人から人に口から伝えた自分の怪談を伝うことが出来るみたいでね。

それを使って、夜になると自分の怪談を聞いた眠った人間の魂だけを自分の世界に引っ張る。

そして快楽的に殺す事を好む。

怪談を聞いた数だけ猿夢も強くなる。

 

それが怪談猿夢」

 

 

 

話し終えたというように指に書かれた文言が剥がれるように消えていく。

 

「今のこれは聞いたことにならない術なの。安心してね」

 

俺達はホッとした。

 

 

「今日、穹が行くんだよね?あの夢に」

 

俺は頷く。

 

「でも丹恒やなのも聞いてしまってる」

 

「じゃあ二人もいくんだね」

 

丹恒もなのも頷いた。

 

「分かった。うーん…」

 

黒百合は自分の身体を眺める。

 

懐に手を入れると黒い刃物が出てきた。

すっと自分の左手の甲を浅く切った。

さすがにその行動に俺達は驚いた。

しかし右手を上げて黒百合は待ったをした。

紙を9枚取り出して流れた血を筆で擦り紙に何かを書いていく。

 

俺達は黒百合の作業が終わるのを雨音を聴きながら見守った。

 

「出来たよ三人共。

この一枚はお守りとして肌身離さず持っててね。

絶対にこれが守ってくれるから」

 

いつの間にか小さくかわいい巾着袋になっており俺達は受け取った。

 

「これ、黒百合の血で出来てるってことだよね?」

 

「そうだよ」

 

「この血…とてつもない霊力を感じる。

たしかにこれ程ならば大丈夫かもしれないな」

 

「ありがとう。

そしてこの六枚はあの夢には本体がいるはず。

それも二ヶ所。人に例えるなら頭と心臓かな?

どこかにあるはず。それを見つけてこれをそれに貼って」

 

「貼ったらどうすればいい?」

 

「念じれば三人それぞれの力で起動するから」

 

「ありがとう黒百合。必ず敵討ちするよ」

 

「あたしは行けないけど…やれることはやれたはず」

 

「すまない。助かった。しかしやはりお前はもしかしてこの世界の――」

 

「あ、賢いね。でもそれは秘密で。どういたしましてってことで」

「…分かった。感謝する」

 

 

「黒百合、連絡すぐ見てくれてありがとう!」

 

「どういたしましてなのか」

 

「傷とか大丈夫?左手、ウチらの為に」

 

「ん!見て!もう治ったから!」

 

「え?!ええーほんとだ!?なんで…?」

 

「でも無くなった血まではね」

 

「じゃあレバー持ってくるよ!鉄分!」

 

「え…?レバー…?砂みたいな味のするあれ…?おいしくないよ…」

 

「家庭科室で待ってて。持ってくるから!」

 

「え?いや聞いてない?」

 

 

そんなやり取りを聞きながら俺は思う。

俺達も準備をしないとな。

 

 

 

~~~

 

 

 

メッセージ

 

丹恒:穹が猿夢という怪物に夜出くわすことになった。

どうやらこの話は口頭じゃなければ問題ないようだ。だが既に穹は俺と三月に話してくれている。俺達は今夜、悪夢へ赴き猿夢を倒すつもりだ。

 

姫子:それって大丈夫なの?みんなは無事?

 

ヴェルト:つまり口では話せないということか…厳しいな。俺も三人に協力したいんだが

 

なのか:ヨウおじちゃんも一緒に来るの?!

 

穹:ごめんヴェルト。姫子。でもみんな無事だ。口頭で伝えないと夢にいけないしこれ以上は

 

丹恒:ヴェルトさんには現実世界で俺達の身体を見ていてほしい。万が一無理やりでも構わない。俺達に命の危機があった際に起こしてほしいんです。

 

ヴェルト:分かった。そういうことなら任せてくれ。じゃあ今夜はみんなで丹恒の部屋に集合だな。

 

姫子:みんな気をつけてね。必ず元気な姿で帰ってくるのよ

 

パム:帰ったら美味しいものを一緒にみんなで食べるぞ

 

~~~

 

 

 

「しかしどうして毎回お前達俺の部屋に来る」

 

「今日はここで寝ると決めたじゃないか」

 

「ウチもだよ!」

 

「…。ソファーを使って寝てくれ」

 

「分かった」

 

「おっけー」

 

ヴェルトがコーヒーを飲んで口を開く。

 

「みんなのことは俺が見ておくから安心して寝るといい。いい朝を迎えれることを信じている」

 

そして俺達は目を閉じる。

すぐに睡魔が俺に覆い被さった。

 

ガタンゴトン、ガタンゴトンと音がする。

 

目を開けると電車の中にいた。

これは昨夜と同じだ。

ダメだ身体が動かない。

 

電車が止まりドアが開く。

 

なのと丹恒が乗ってきた。

二人は空いている座席に座りなのは俺の隣に座った。

 

身体と口が思うように動かないことに驚いているようだった。

 

『次は活け作り、活け作り』

 

電車のアナウンスが聞こえると猿の玩具のような連中が刃物を携えて歩いてきた。

 

動け…動いてくれ俺の身体。

 

刃先がこちらを向ける。

 

なのが俺の横で身体を震わせて指を微かに動かした。

 

(動け動け動け動け動け動け!!)

 

俺は心から叫んだ。

 

ポケットに入っていた黒百合から貰ったお守りが赤い光を放ち猿の玩具の動きを一瞬止めた。

 

俺の身体が自然に動きに勢いのままバットを握り猿の玩具の連中を一振りで一掃した。

 

「動いた!!。なの!丹恒!」

 

なのと丹恒はまだ動けないらしい。

 

『次は針山 針山』

 

角を生やした猿が車掌の服を着て弓を持っていた。

 

数は5体。

 

矢を放つ。

矢も五本

これは夢だ。

 

所詮夢だ。

俺は矢は一本だと想像しバットを一振りする。

 

一振りだけで矢が全て叩き折れる。

 

『お客さん明晰夢になりましたか いけませんねー。少し困りましたねー』

 

角を生やした猿が弓を捨ててアクロバットに動き俺を取り囲む。

 

しかし猿が襲ってくることは無かった。

凍っていたからだ。

 

「間に合った!ウチも動けたよ!」

 

「なの…!」

 

なのが弓を持ち、六相氷を踊らせる。

 

今度は凍っていた猿が鋭い斬撃で砕ける。

 

「二人とも無事で良かった」

 

丹恒が撃雲の槍を持ち俺達に歩みよる。

 

「ありがとう丹恒、なの。お守りのおかげだ」

 

「そうだね。ここからどうする?もうすでに敵陣だよね」

 

「よし、このまま前方車両に向かう」

 

「あぁ。反撃開始だ!!」

 




星穹列車いざ悪夢を砕け!
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