良い世界にしようと頑張った結果ラクス様を更に曇らせちゃう話 作:おるプラス
目覚めると複数人に囲まれていることに気づいた
驚いて声をあげようとするも口から出たのはアーという声にもならない叫び声
身体を動かそうとするがこれまた上手く動かない
目もよく見えずわたしを囲んでいる者たちは何か話しているようだがまるで理解が出来ない
訳が分からずにどうしようもない不安に襲われる
そんな不安に耐えられず、わたしはただただ声を上げて泣くことしか出来なくなった
どれくらい泣いていただろうか、唐突に訪れる浮遊感と共に我に返ると誰かに優しく抱き上げられていた
トントンと背中を優しく叩かれ、不安だった心が落ち着いていく
暫くの間そうされ続け、落ち着きを取り戻したわたしは今の現状をようやく理解した
どうやらわたしは赤ん坊に生まれ変わったらしい、と
そして今わたしを抱き抱えているのが今世の母親なのだろう、と
泣き疲れ意識が眠りにつきそうになりながら、今わたしに起こっている現状を理解したのだった
あれから時間が経ち、わたしはこの世界を今も生きている
転生して赤ん坊になっていた時は驚きでいっぱいだったが、7年も経てば今の世界にもすっかり慣れきっていた
転生したとは言ったものの、前世の記憶は朧気で覚えていたのは一般の大人並の知識くらいだったからだ
名前も顔も性別すら覚えていないので、新しい人生に違和感の持ちようがなかったのだ
そうして生まれ変わったわたしの名前は
<シノア・ホリー>
といった
母親譲りの紫がかった灰色の髪に、父親譲りの茶色の瞳を持つ女の子
まだ7歳ながら将来は美人になると周りからも評判の母親似の美少女である
加えて特別な能力も持っていることが分かった
それに気づいたのは6歳のころ
学校へと向かっている際に突然ここにいてはダメだという激しい感覚が私を襲った
その感覚に従うようその場所を走り抜けたところ数秒後に車が突っ込んできたのだ
他にも父の仕事場に見学へ言った際、作業用の機械を動かすところをひと目見た
それだけでこの機械をどう動かせば良いのかハッキリと分かった
もしやこれが噂の転生特典なのだろうか、地味だけど便利だし神様ありがとう!なんて自然と礼が口から出るくらいには日常生活でも使える良い能力だった
日頃の行いとこの能力のおかげで両親からは天才だ!なんて更に猫可愛がりされ、わたしは満更でも無い顔でふんすっと鼻を鳴らすのだった
それから1番重要であるわたしが転生したこの世界
なんでもコズミック・イラ-C.E-というわたしの知識にある西暦とは違う歴史を歩んでいる地球のようだった
宇宙にはプラントと呼ばれる砂時計型のコロニーが沢山あり、人は遺伝子調整を施されて生まれたコーディネイターと自然に生まれたナチュラルに人種が別れていた
わたしは自身の能力の高さから遺伝子調整されたコーディネイターなんだろうなと思っていたのだが、ある日学校から帰ると両親に話があるとリビングに呼び出され事実を聞かされた
コーディネイターだと思っていた父-アルフレート・ホリー-は本当はナチュラルであるということ
そしてわたしはコーディネイターの母-ノレア・ホリー-との間に生まれたハーフコーディネイターなのだという
父アルフレートはナチュラルでありながらその能力を買われプラントのエネルギー開発局に勤める事になり、同じく開発局で働いていた母ノレアと惹かれ合い、結婚したのだと
しかし順調に結婚できたという訳ではなく、当時流行っていたS2型インフルエンザによってナチュラルとコーディネイター間の関係は最悪であり、そんな中ナチュラルとコーディネイターの二人が結婚するという話は両家にとって歓迎されない物だったそうだ
そこで両親は駆け落ちという手段を使ってまで結婚することにしたのだと教えられた
そして今暮らしているプラントで父は自身の能力の高さを活かしてコーディネイターであると偽って生活しているのだと
「シノアがとても賢い子だからこそこの事を話さなければいけないと思ったんだ」
いつもの優しい顔とは違い眉間に皺を寄せ、真剣な表情で父は続けて言う
本当はもっと大きくなってから話す予定だったけれど、わたしが優秀で伝えても大丈夫だと思ったから今の内に話をすることに決めたのだ、と
そしてわたしがハーフコーディネイターという生まれによって様々な危険に巻き込まれ無いようにするために絶対にこの事を他人に話してはいけないよ、と
わたしはそんな父の言葉に分かったと頷きながら、生まれについてどこか楽観的に考えていた
まー今のわたしには神様から貰った便利な能力もあるし、誰かに言いふらしさえしなければ大丈夫でしょ!と
能力に頼りきった甘っちょろい考えでは想像もつかない、そんな地獄をこれから見ることになるのを知らずに……
C.E.63年
父からわたしの出生について話を聞き数ヶ月経ったある日のことだ
わたしは朝からこれまでにないほどのザワザワとした何かを感じていた
いつもは嫌な感覚のする場所から離れたり、何かしら行動し解決する事で自然と消えるのだが、今日は何をやっても消えない
何か良くないことが起こるのだろうか
朝から止まること無く大きくなっていく感覚に段々と怖くなっていく
今日は父も母も仕事が休みで私も学校は休みだった
せっかくだから家族で映画でも見に行こうなんて話をしていたにもかかわらず、わたしはこの感覚が消えないことに恐怖しベッドの中で布団を被って震えていた
心配した両親が私を抱きしめて大丈夫だとあやす様に背中をさする
しかし、その声も耳に入らないほどわたしはますます強くなるこの感覚に恐怖し続けた
怖い
怖い
怖い怖い
怖い怖い怖い怖い
怖い何かが来た
そして耳をつんざく巨大な音と共にわたしの意識は途絶えた
失っていた意識が戻る
家のベッドにいたはずのわたしは気づけば床に倒れていた
なにか重いものがわたしの上に乗っている
「お母さん…?」
わたしと同じ紫がかった灰色の髪から母だと分かった
「お母さん…?ねぇ…重たいよ…」
起きない母の下から這い出て、改めて母のことを呼ぼうとしたわたしの目の前には理解できない光景が広がっていた
「え……?」
部屋の壁は吹き飛び、母と買ったお気に入りの家具たちは原型がないほど破壊され一部は燃えていた
そんなありえない光景に思考が追いつかず、私に乗っていた母を見る
「おかぁさ………!」
母の身体は半分しか無かった
下半身を失った腹部からはダラダラと血と臓物が流れ出し、残った上半身の背中は焼け赤黒く爛れていた
「あぁぁぁ…おかあさん…!お父さん、お母さんが、お母さんが…!」
必死になって父を呼ぶ
母を助けてと
叫びながら辺りを見回し父を見つけた
穴が開き落ちてきた屋根に潰され左半身しか見えない状態の父を
右半分は潰れ残った左半分の顔からは眼球が飛び出し一目で死んでいると理解させられた
「ァ……」
声を出すことを忘れ、わたしは呆然と2人を見つめる
あれだけ感じていたザワザワとした感覚は消えていた
そしてようやく一日中感じていた感覚の正体がこの惨状のことを警告していたのだと気がついた
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
混乱と異常すぎる光景に脳が処理限界を迎えたのか、わたしの意識は闇へと落ちていく
《青き清浄なる世界のために》
壊れた壁の外から聞こえてくるそんな言葉を聞きながら