良い世界にしようと頑張った結果ラクス様を更に曇らせちゃう話 作:おるプラス
目を開けるとわたしは真っ白な部屋で薬品の匂いに包まれたベッドの上で寝ていた
ここはどこだろう、前にもこんなことあったな
そんなことを考えながらぼーっと真っ白な天井を見つめる
わたしが起きたことに気がついたのかこれまたまっ白な服を着た看護師がやってきた
大丈夫?どこか痛いところはない?、と優しく声をかけられる
水分はなくカサカサの口で力無く
はい
と答えたその瞬間フラッシュバックするボロボロになった両親の姿
わたしはパニックになり頭を抱え叫んだ
遠くから医師を呼ぶ声
押さえつけられ、腕に何かを注射され
わたしの意識はまたも眠りにつくことになった
目覚めてから数日経ってようやくわたしは落ち着いて考えることができるようになった
母が自らを犠牲に守ってくれたのか特段大きな怪我はなかったものの、少なくない傷は負っていた為しばらくは安静にと病院のベッドで寝かされる日々が続く
ここにくるまでに何があったのか看護師のお姉さんに尋ねる
最近のわたしの落ち着いた様子から話しても大丈夫と判断したのか、事件の説明をできる人たちを呼んでくれた
あの日プラントのエネルギー生産部門へとブルーコスモスによる大規模破壊テロが起こったこと
わたしが暮らしていた家は両親が勤めていたエネルギー生産部門の近くにあったためそのテロに巻き込まれてしまったのだと
わかってはいたが当然両親は死亡
二人が駆け落ちだったということもあり、親戚からの返答もなく、わたしの引き取り手が見つかっていない状況だということ
住んでいた家もテロで壊されてしまったため、このまま後見人が見つからなければどこかの施設に入ることになるということ
他にも様々なことを子供でも分かるように、優しく気遣いながら教えてくれた
事件の説明を受けた日から数日が経ち、歩けるようになったわたしは病院から少し離れた場所にある公園に通うようになっていた
あの日から転生特典だーなんて便利に考えていた能力は事件がきっかけになったのかさらに強くなり、人の気配だけでなく、人の様々な感情なんかもわかるようになっていた
病室にいては怪我や病気に苦しむ人たちの暗い感情を特に強く感じてしまう
不安や苦しい、辛いと言う感情が波のように流れてくるのでとても息苦しい
そんな中この公園は人通りも少なく現状唯一落ち着ける場所になっていた
ただただぼーっと手入れされ綺麗に咲く花たちを見る
母もガーデニングが好きだったなと、ふと思い出し涙がこぼれる
「こんな思いをするのなら、わたしも一緒に死にたかったよお父さん、お母さん…」
わたしの心は限界だった
あの日のザワザワとした感覚をちゃんと両親に伝えればよかった
恐怖に震え続けるのではなくこのプラントから離れようと、泣き喚いてでも懇願するべきだったと
公園に咲く花たちを見ながらもう二度と変わることのない過去を後悔し続けた
ベンチに腰掛け後悔し続ける中、誰かが近づいてきたのを感じる
どうやら目的は私のようだ
「君がシノアくんかな?」
知らない声に名前を呼ばれた
わたしはゆっくりと呼ばれた方へ視線を向ける
そこには端正な顔立ちの若い男が立っていた
どこか静かに流れる川のような印象を受けるそんな男だ
特徴は肩まで伸ばした長い髪だろうか
加えて綺麗なオレンジ色の瞳をしていた
その瞳を見ているとどこか母を思い出す
若い男はベンチに座っていたわたしに目線を合わせるよう地面に膝をつくと、ゆっくりと話し出した
「初めまして、私はギルバート・デュランダル。君の母、ノレア・デュランダルの弟に当たるものだよ。」
男は自分を母ノレアの弟だと言った
さらには、後見人としてわたしを引き取りたいと続ける
彼から悪意は感じられなかった
少なくともわたしを引き取ると言うことに嘘偽りはなさそうだ
故にギルバートと名乗る男に対して
「母の弟だと言うのなら、父がナチュラルで、わたしがハーフコーディネイターだと言うこともご存知なのでしょう?それでもわたしを引き取ると言うのですか?」
ハーフコーディネイターはプラントではタブー視されナチュラル側からも半端者と揶揄される存在だ、そんなわたしを引き取って何になると
父との約束を破り、自暴自棄気味に自身の出生のことを交えて問いかけた
ギルバートはそんなわたしの問いにニコリと笑って答える
「姉から君のことで相談を受けていたんだ。君がハーフコーディネイターであることも、普通とは違う特異な能力を持っていると言うこともね。」
さらにギルバートは続けて言った
「私は遺伝子研究をしていてね、君の持つ特異な力に興味があるんだ。
君の能力が人類の進化の過程にあるのか研究したいと言うのが本音ではある。
私が君の後見人になる代わりに少しばかり研究に協力してくれないだろうか?」
どうやらわたしのこの能力に興味があったようだ
研究か、要はモルモットになれと言うことだろう
何をされるかわからないがどうせこの先は施設以外に行くところもない
ギルバートが目的を話した後からも特に嫌な感覚はないし
それなら血縁者である母の弟の元でモルモットになるのも別にいいかと投げやりな思考で頷き了承の返事をした
「それはよかった。手続きが終わり次第君は私の娘ということになる。
私のことは好きに呼んでくれて構わないよ。」
ギルバートは柔和な笑顔のまま、わたしにまるでエスコートするかのように仰々しく手を差し出した
どうやら書類上での関係は義父になるらしい
モルモットにする相手に殊勝なことだと、わたしはそんな皮肉を込めてギルバートをこう呼んだ
「今日からよろしくお願い致します、お父様。」
彼から差し出された手に答えるようにわたしはそっと自身の手を置いた
触れた手は温かく、冷たく凍りついていたわたしの心をほんの少し溶かすようだった
こうしてわたし、シノア・ホリーはシノア・デュランダルになった