童 貞 ウ マ 娘 概 念   作:スズカさんに白熱電球を舐めてほしい

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ウマ娘怪文書を書いているのを母親に知られたこの私に、もはや恐れる物などない!(無敵の人)


童 貞 フ ジ 寮 長 概 念

 朝の柔らかな陽光がトレセン学園の広大なキャンパスに差し込み、微風が芝生をそっと揺らす。壮麗な校舎は、その堂々たるレンガ造りの外壁に白亜の装飾を施し、まるで時の重みを伝えるかのように静かに佇んでいた。中央のアーチ型の入り口とそびえ立つ時計塔は、まるで全国最難関の競走バ養成校としての学び舎の威厳を象徴しているかのよう。しかし重苦しい雰囲気や呼吸のしにくさといったものはなく、高窓からは光が射し込み、内部の空間を輝かせている。

 

 中庭には手入れの行き届いた緑の芝生が広がる中、石畳が十字に切られ、道の中心には三女神の銅像が鎮座している。その足元で噴水が優雅な水のアーチを描き、その澄んだ音色が周囲の心地よい喧噪に調和している。エアグルーヴたちの管理する色鮮やかな花壇がその美しさを一層引き立てて、点在するベンチやテーブルは、ウマ娘たちの憩いの場として配置されており、風が周囲の花壇から甘い香りを絶え間なく運んでいた。

 

 フジキセキファンクラブのお茶会が開かれる場所は、校舎の広場に面した優雅な一角にあった。白のテーブルクロスが敷かれたテーブルには、精巧な銀のティーセットが並べられ、手描きの陶器のプレートには、繊細な花柄が施されている。それらのティーセットは陽光によってまるで自ら光を放っているようにも見え、中央にある大きめのケーキスタンドの上には、色とりどりのお菓子たちが並んでいる。そして、それらを囲むようにして、フジキセキのファンたちが集まっていた。

 

 すでに部屋の中では楽しげな会話が飛び交っていた。時折窓の隙間から入り込む風に乗って紅茶の芳香が広がり、心地よい雰囲気を漂わせる。遠くからは鳥たちのさえずりが聞こえ、キャンパス全体が生き生きとした生命力に満ちていた。

 

「フジ先輩のレース、感動しました!本当に素晴らしかったです」

 

 あるウマ娘が目を輝かせながら話す。

 

「あはは、ありがとう」と、フジキセキが微笑みながら応える。

 

「舞台で輝けるのは、観客がいてこそだからね。みんなに感謝しないと!」

 

 そう言うと、フジキセキはウインクしてみせる。その仕草に、ファンたちは見惚れてしまっていた。

 憎らしいくらいのイケメンっぷりである。彼女が男に生まれていたら、いったいどれだけの女性が彼女の虜になっていただろうか? ファンクラブこそあれど愛憎劇が繰り広げられていない現状を鑑みるに、この学園の生徒たちにとっては、彼女が女性であることこそが幸運だったと言えるだろう。

 

 別のウマ娘がティーカップを手に取り、「この紅茶、すごくいい香りがします!どこのものですか?」と興味深そうに尋ねた。

 

 しかし返事は帰ってこない。

 

 おや?と思いフジキセキの方へ目線を向けると、彼女は顎に手をあてながら眉間にしわを寄せ、何かを考え込んでいる様子だった。エンターテイナーとしての矜持を持つ彼女が、人目に付く場所でそのような態度を取るのは珍しいことだった。

 

「フジ先輩、どうされたんですか?」

 

 周囲の注目が集まる中、フジキセキはハッと我に返った様子で顔を上げた。

 

「あぁ……ごめん。少し考え事をしていてね。何の話だったかな」

「この紅茶がどこのものですか?と聞いたところです。香りが良かったので」

「ああ、香りね。いい匂いだよね。」

 

 取り繕うように笑ってみせるが、その笑顔はどこかぎこちないものだった。しかしそれも一瞬のこと。彼女はすぐにいつもの明るい表情に戻った。切り替えの早さは流石舞台役者といったところか。ファンたちは、その一瞬の違和感を気のせいだろうと結論づけた。

 

 しかし我々は読者としての特権を使って彼女の内心を覗き見てみよう。繕ってこそいるが、ただならぬ様子の彼女である。本当は何を考えているか、きっと気になることだろう。

 

 さあ、耳を澄ませて――

 

(――る)

 

 もう少し。

 

 

(――いすぎて――する)

 

 

 もう少しだ。意識を集中させて――

 

 

 

 

 

 

 

(ヤバい。皆いいにおい過ぎてめっちゃムラムラする)

 

 

 

 

 

 

 おや?

 

 

 

 

 

***

 

 

 ファンの子たちのお茶会にお邪魔する。

 それは私にとって、いつもと変わらぬ日常だった。しかし、今日だけは少し違った。

 

(ヤバい。皆いいにおい過ぎてめっちゃムラムラする)

 

 原因は目の前にいる彼女たちだ。彼女たちから漂ってくる芳しい香りは、否応なしに鼻腔をくすぐってくる。

 

「この紅茶、すごくいい香りがします!どこのものですか?」

 

 無邪気な質問と共に漂う香り。それが先ほどから私の理性を揺さぶってくる。何?誘ってるの?

 

「フジ先輩、どうされたんですか?」

「あぁ……ごめん。少し考え事をしていてね。何の話だったかな」

 

 なんとか平静を保ちつつ、私は返事をする。しかし私の内心は穏やかではなかった。彼女たちの放つ香りはあまりにも魅力的すぎた。まるで麻薬のように、私の脳髄を溶かしにかかる。

 

「この紅茶がどこのものですか?と聞いたところです。香りが良かったので」

「ああ、香りね。いい匂いだよね」

 

 本当にみんないい匂い過ぎる。なにこれ?香水でも使ってるのかな?それとも、保湿クリームとかかな……。

 

 私はお風呂上りに彼女たちがその腕にクリームを塗り広げる光景を想像した。白色に薄い黄色をのせた、滑らかなクリーム。それを彼女たちは、自分の腕に、手に、首元に丁寧にすり込んでいく。私の脳内劇場にはその艶やかな光景がありありと再現されていた。まるで手に取るようにわかるのだ。彼女達の繊細な白い指が、優しく肌に触れる様子さえ思い浮かべられるほどに……。

 

 その瞬間、私の鼻から液体が流れ出るのを感じた。

 

「うわっ」

 

 とっさに手のひらで押さえるが、指の間から溢れてくる生暖かい感触に戦慄する。このままではまずいと思い、私は急いでハンカチを取り出し鼻に押し当てた。

 

「大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫……ちょっと鼻血が出ちゃっただけだから」

 

 心配してくれるファンの子たちに笑顔で応える。すると一人の子が何かに気づいた様子で口を開いた。

 

「……もしかして体調悪かったりします?」

「え!?そんなことないよ!」

 

 そうは言いつつも内心ドキドキしながら答える。図星です。ムラムラし過ぎて体調悪いなんて言えるわけがないので嘘をついているんです。

 

 私はある学説を頭に思い浮かべていた。

 曰く「いい香りがする人とは遺伝子から相性がいい」、と。

 この説が正しいならば――そう考えている中、私の思考はファンの子の声によって現実へと引き戻された。

 

「全然そう見えないですよ?熱か何かがあるんじゃ――」

 

 私の隣にいる、栗毛でショートヘアの(おっぱいがおおきくてめっちゃかわいい)子が心配そうな表情で私の顔を覗き込む。

体を傾けた時に、たわわに実った果実がぷるんと揺れた。

 

「エ゛ンっ」

「フジ先輩!?」

 

 ダメだ、この視覚情報は刺激が強すぎる!

 

 私はポケットティッシュを乱雑に引きちぎって丸めるとそれを鼻に突っ込み、逃げるようにして目線を上の方に上げた。血が乾いた時にくっついてしまうからあまり良くないと聞いてはいるが、みっともなく血を垂れ流し続ける姿をさらし続けるよりはマシだ。

 

 危なかった、しかし顔より上を見ていればアレは視界に入らないはず――そう思っていたのだが、今度は別の子と目が合った。ふとももがむっちむちでタイツを日常的に(くろかげのロングヘアの)虐待している子だ。おっぱいも隣の子の大きなそれと比べれば慎ましやかなものだが、手に収まるサイズ感もまた良きかな……てそうじゃない!

 

 仕方がないので今度は思いっきり視線を下げた。目線すら合わせられないのは舞台役者として恥さらしもいいところだが、背に腹は代えられない。

 

 恥「さらし」……。

 

 そういえば、さらしもいいよね……。

 あの下では、たゆんたゆんのおっぱいが……。

 

 

「う゛っ」

 

 

 逃げ場がなさすぎる。

 何を考えようとしても、その思考を遮るようにして淫靡なイメージが頭を占拠してくる。紅茶を一口飲む暇さえない。

 まずい、このままでは……何か別の話題に……そうだ!

 

「そ、そういえばさ!みんなってどんな香水使ってるの?すごくいい匂いするからさ!」

 

 とにかく話題の中心を私から逸らさねば。私は必死に脳味噌を回転させ話題の方向性を定めた。ファンの子たちからしたら私の発言は唐突で奇妙に聞こえたかもしれないが、そこは許して欲しい。今は緊急事態なのだ。いや、というかこれも君たちのせいなんだから、私が謝ることでもなくない?君たちのせいじゃなかったら、きっとドルチェ&ガッバーナか何かの香水のせいだ。もうこの際、天の助のせいでも構わない。

 

「え?そうですかね……?」と、私の向かいに座る子がキョトンとした表情で答えた。かわいい。

 

 私は肯定の意を込めて何度も首を縦に振る。

 

「いやぁ、本当にいい匂いだよ!なんだろうなぁ……優しい香りっていうかなんというか、ね?」と私が答えると、彼女は少し考える仕草をした後、

 

「いや、特に何も使ってませんけど」

 

と答えた。

 

は?

 

「普段と別に変らないですよ。ねぇ?」

「はい、私も特には……」

「え?」

 

 

 

 はあ~~~!?じゃあ何!素でこの匂いなの!?なにそれ自慢!?ちょっと離れて!本当にたまんないから!

 スメハラでゲノハラでしょこんなの!もう!

 ファンの子たちの無自覚な猛攻に、私はただただ戦慄した。同時に鼻の下が伸びそうになるのを必死にこらえた。ファンの前なのに……っ!

 

 私は激怒した。

 必ず、かの邪知暴虐の悪い子たちを寮長権限で全員抱きしめて、においを上書き(マーキング)せねばならぬと決意した。

 私には政治がわからぬ。私は、女優である。芝居をし、舞台の上で物語を紡ぎ、観客を沸かせるのを生業として来た。ファンの子たちの良い香りを嗅いでムラムラすることしかわからぬ。でも、だからこそ!けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であったのだ!!この子たちにはそのにおいでもって周囲に苛政を敷くことをやめてもらわなければならぬ!純真な心を汚す悪徳は、この私が許さない。

 

 実際においは人を殺すんだ!ポニーちゃんたちはパトリック・ジュースキントの『香水 ある人殺しの物語』を知らないのか!!!!

 

 

匂いは言葉や外見、感情、意思よりも強い説得力を持つ。匂いの持つ説得力は防ぐことができず、息のように肺に入り込み、私たちを満たし、完全に染み込む。それに対する治療法はない ――

 

 

 彼も作中でこう言っている。においは暴力性を帯びている。においとはそういうものだ。

 これはいつの時代も変わらない真実だ。私はただ被害者として情動に流されるだけの愚かな獣に成り下がるしかない。

 

 ええ?理性ある人間なら少しは抗って見せろって?ならこの言葉を返そう。

 

 

 かの偉大な哲学者ヒューム曰く、「理性は情念の奴隷である」、と。

 

 

「何か変わった香りがするんですか?」

 

 今度は私の前に座る、おしりがとてもえっちな(あしげでポニーテールの)子が言った。彼女はいつもファンサービス旺盛で明るくてかわいい。そして何よりおっぱいも大きい。

 彼女はこの後すぐトレーニングに向かうらしく、すでにブルマに着替えている。お茶会の場でなんという格好を……!おしりの丸みがすごく、すごくえっちだ……。輝いて見えるよ。50000ルーメンくらいあるよ、間違いなく。

 ああ、そのブルマに包まれた魅惑のお肉で私を誘惑するのやめてもらえないかな?脚から腰にかけてのS字のカーブが私を惹きつけて離さないんだよ。

 

 ブルマか?このえっちなブルマが諸悪の根源か?

 

 仕方がないポニーちゃんだ――そうだ、寮長権限で()()()()()()を出してやる。文面はそうだな……

 

 

『以下の生徒は、学園の風紀を著しく乱すためブルマの着用を禁止する』

 

 

 こうだ。こう学園中の掲示板に張り出す。

 我ながら完璧だ。これこそが迷えるポニーちゃんたちを解放するただ一つの道筋……。私は己の知略に感服し、心の中で高笑いをした。

 そうと決まれば、善は急げだ。可及的速やかに実行に移さねば。

 

「ちょっと失礼!用事思い出したから!またね!」

「えっ?フジ先輩!?」

 

 戸惑うファンの子を尻目に、私は走り出した。尻目っていってもお尻を見たわけじゃないよ。

 目指すは理科準備室。ブルマ禁止令に先立って、この体の火照りを冷やす何かをタキオンにもらっておこう。彼女なら役に立ちそうな薬品を持っていそうだしね。

 

「あ、行っちゃった……」

「どうしたんだろうね?」

「さあ……?せっかくの紅茶、一口くらい飲んでいけばいいのに」

 

 

 

***

 

 

 

 怪しげな理科準備室にて。

 人気のない薄暗い部屋の中で、白衣姿のアグネスタキオンは薬品を煮込んでいた。時折フラスコの中の液体がボコッと音を立てて泡立ち、不気味な色を放つ。傍らでは彼女のトレーナーが、その実験に付き合わされていた。

 

「さあできたぞ!解毒薬だ!」

 

 タキオンはフラスコを高々と掲げた。中には蛍光色の液体が満たされていた。

 

「『毒』って……。やっぱりこれ、ヤバい薬だったんじゃ……」

「言葉の綾ってやつだよ、心配はいらない。見た人間を性的興奮の対象と認識するようになるだけさ。効果が強すぎて、異性、同性、その他もろもろ、相手の性別を問わず効果が出るほどだがね」

「なんてものを……」

 

 トレーナーが呆れ顔で言う。タキオンのトレーナーになって以来、彼は幾度となく彼女の実験に付き合わされてきた。しかし今回の薬品は、これまでの中でも際立って特異なものであるように思われた。

 

「本当にどうしてそんなもの作ったの?」

「作ろうとして作った訳じゃないよ。副次的な産物さ」

「いや、でも変じゃない?狙って作った訳じゃないなら、なんで『異性、同性のすべてを性的興奮の対象と認識するようになる』効果があるってわかったわけ?」

「カフェで試した。危ないから紅茶を無理やり飲ませたらおとなしくなったよ」

「ひっでえ!というか、さっきから部屋が揺れたり電気がたまに消えるのって絶対そのせいだよ!『お友達』が怒ってんだって!」

「もう心配はいらないよ。哀れなモルモット君。解毒薬は完成したのだから。しかし当初は興奮したカフェの気分を少し萎えさせるくらいの意図で紅茶を飲ませてみたが、思ったより効果があった。ならば紅茶の成分の中にヒントがあるのではないか?と仮説を組み立ててね、こうして完成したという訳だ」

「は、はあ……」

「体質によっては、紅茶だけで治療・予防をすることも可能であるというくらいだったよ――まあ、それはそれとして、だ」

 

 トレーナーの心配をよそに、タキオンは得意げに解毒剤を掲げ、ひとしきりトレーナーに見せつけるとフラスコをスタンドに戻した。

 

「さあ!君も興奮剤を飲みたまえ、モルモットくん!解毒薬ができたのだからもう心配することはない。グイっといきたまえ!」

「絶対飲まないよ!?担当に欲情するのはヤバいって」

「襲われても私の方が力が強いし、解毒薬があると言っているだろう」

「ダメだって!他の薬なら飲むから!」

「私はこれを飲んでほしいんだ!モルモットに拒否権などない!!」

 

 タキオンがトレーナーを強引に抑え込もうとする。トレーナーも必死に抵抗する。くんずほぐれつの攻防が繰り広げられ、薬品が入ったフラスコはカタカタと音を立てて揺れた。

 

「つべこべ言わずに飲みたまえよ!それともなんだ?君は自分の担当バの頼みが聞けないとでも!?」

「そういう問題じゃないんだって!」

 

 揺れはやがて大きくなり、解毒剤の入ったフラスコは重力に従うまま床へと向かっていき――がしゃん、と音を立て割れた。

 

「「あ」」

 

 2人の声が重なる。床に蛍光色のどろりとした液体が飛び散っていた。

 

「……君が抵抗するからだぞ。カフェにも飲ませないといけなかったのに」

「いや、元はといえばタキオンが変なことをするから……」

 

 不幸なことに――二人は気づいていなかった。彼女らが仲良く喧嘩している間に、新たな人物が理科準備室へと足を踏み入れていたことに。

 通常なら気が付けていただろう。しかし今の彼女らは、お互いを相手取ることに夢中で周囲への警戒が疎かになっていた。

 

 

――なるほどね

 

 

 二人はその声を聴いて驚き、声の主の方へと振り返る。やけに芝居がかった言い方、この持ち主は――

 

 

私のこれは、君が元凶だったって訳なんだね。タキオン

 

 

 トレーナーとタキオンの視線の先には、妖艶な笑みを浮かべるフジキセキの姿があった。いや、この言い方は正確ではない。目だけは笑っていない。

 その様はまるで獲物を追い詰めた狩人のようだった。

 

「私がムラムラしっぱなしで大変な目に遭ったのも、全部君が原因だった……と」

「話をしよう、フジ君!」

 

 タキオンは怯えた様子で後ずさりをしたが、すぐ背後に壁があることに気づき後退できなくなった。その視線は足元の割れたフラスコとフジキセキの顔の間を何度も往復していた。

 

「タキオン、どういうこと?」

「いや、その……」

 

 トレーナーが尋ねるもタキオンはしどろもどろになるばかりで要領を得ない。しかしもはや逃げられぬと悟ったのか、その重苦しい口を開いた。

 

「……実を言うと、カフェ以外にも『()()()』」

「え!」

「水道に混ぜたり、まあその、色々さ……。いや、君に試す前に効果を念入りに確かめておこうと思ってだね」

「……?普段は私で最初の治験をするでしょ。なんでまた今回はそんな大規模なことをしてまで、私で試す前に効果の確認をとろうと……?」

「……君は、倫理的な呵責から飲んでくれないだろうと思って……」

「さっきは無理矢理にでも飲ませようとしてたじゃん」

「いや……その……」

 

 タキオンは言いよどむ。

 

「たぶんトレーナー君をムラムラさせて自分を襲わせようとしたんだと思うよ」

 

 フジキセキがしれっと暴露した。タキオンは青ざめた顔で彼女に詰め寄った。

 

「君ねえ!なんでそんなことをべらべらと喋るんだ!」

「それより解毒剤は?」

「もうない!そこで割れてるやつがそうだ!」

「あっそう。じゃあ寮長権限でお仕置きね。体で払ってもらうよ」

「……え?」

 

 

 フジキセキが満面の笑みを浮かべる。

 

 

「うちの生徒に薬を盛った罰だ。カフェにやったみたいに、私にもやられる覚悟はあるよね?タキオン」

「待ってくれ!頼む!後生だ!」

「待たない。あとトレーナー君も連帯責任ね。脱いで」

「なんで私も!?というか『体で払う』って肉体労働的な意味じゃないの!?」

「肉体労働だよ。ある意味ね」

 

 

 フジキセキはトレーナーとタキオンをいっぺんに組み伏せると、その服に手をかけた。

 

 

「待ってくれ!トレーナーとウマ娘がそういう関係になるのはマズイって!」

「い~やだ。おかげさまで男とか女とか関係ない気分なんだ。まとめて相手してもらうよ。タキオンもトレーナーと一緒にできるならいいでしょ?」

「トレーナー君と二人きりがいい!二人きりがいい!」

「うるさい!そもそも君の勝負服はなんだ!下を穿いていないみたいな恰好をして!誘ってる自覚を持ってくれないと困る!」

「君にだけは言われたくない!勝負服が『ヤバい』のはフジ君の方だろう!あの意味の分からない胸の穴は――」

「誰がヤバい穴だ!!」

「ちがっ――」

 

 

 

***

 

 

 

 ――その後、しばらくの間、理科準備室はカタカタと揺れ続けたという。たまたま近くを通りかかった生徒によって、「あの部屋には幽霊がいる」という噂が広まり、理科準備室の新たな名物としてしばらく学園内で語り草となった。

 

 

 これがトレセン七不思議の1つ、理科準備室の怪である。




パトリック・ジュースキントの『香水 ある人殺しの物語』の引用に関しては、英語版を元に私が勝手に訳したものになります。ミスがあったらすみません。
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