童 貞 ウ マ 娘 概 念   作:スズカさんに白熱電球を舐めてほしい

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童貞は相手が自分に好意を持っていると勘違いしやすいと聞いて。

しかし「誰を童貞にしようかな」、と考えながら公式サイトのキャラ一覧をスクロールしている自分を客観視してしまった時ほど、空しいものはないですね。

「文学モザイク」を発明した以外は、前話の方が出来がいいと思います。

前話と同じく、基本作中での引用は英語版を元に私が勝手に訳したものになります。
出版社から販売されている日本語版とは違うことをご了承ください。


勘 違 い 童 貞 タ ッ プ 概 念

日暮れの河川敷では、傾いた太陽が西の空に赤く滲んでいた。燃えるような夕焼けが空を染め上げ、河川の水面に金色の帯を描く。その光は穏やかに波打ち、川岸の草花を揺らす風と共に、静かに流れていった。遠くで鳥たちの鳴き声が響き、微かに聞こえる川のせせらぎと調和する。暖かな土の匂いが鼻をくすぐり、風が運んでくる草の香りが心を落ち着かせた。

 

周囲には人影もなく、静寂が広がっていた。夕暮れ時の穏やかなひとときが、土手全体に漂うばかり。舗装もなにもされていない土手にあぐらを組んで座るタップダンスシチーは、その体を左右へ揺らしながら手元のペンと紙を交互に見つめていた。随分前からそこにいたのだろう。地面は彼女の熱でじんわりと暖まってしまっていた。その姿は、夕日に照らされる土手の風景の一部として、静かに時を刻んでいた。

 

彼女の目は、まるで夕日の中に何かを見つけようとしているかのように、真剣そのものだった。肩にかかる髪が夕日の光を受けて金色に輝き、微風に揺れるたびにその影が彼女のノートに踊るように映し出された。

 

タップダンスシチーの周りには、自転車を押して歩く人や語り合う人々もいない。彼女は時折、ペンを止めて周囲の風景に目をやり、自然の美しさに息をのむこともあった。そして、再び視線を紙に戻すと、彼女の中で何かが形を成していくように、ペンは再び動き出した。

 

そして一旦書き終わるとすぐにまた試行錯誤を繰り返す。

出来たと思えば二重線で消したりして、新しい紙を取り出してそこに書く。

時々独り言を漏らしながら、彼女はただ楽しそうにそれを書いていた。

 

それからしばらくの間はペンが紙の上を滑る音だけが響いていたが、不意にその手が止まった。

夕日の眩しさに目を細めた彼女は、無言のまま立ち上がると大きく伸びをする。

 

「……Perfect! 最高の出来だ!」

 

紙を片手に持ち替えて、くるりと体を一回転。すると彼女の長い尻尾が勢い余って横っ腹を打ちつけてきた。

 

「Ouch! ……って~~」

 

その衝撃に思わず声を上げてしまった。しかし、彼女は気にした風もなく、そのままステップを踏むようにして川縁まで向かった。そうしてから、ゆっくりとした動作で紙を折り始めた。

 

それはまるで、何かの儀式のように。あるいは神への捧げ物のようにも見えた。

 

やがて紙は小さな船形へと姿を変える。それをそっと水面へ浮かべると彼女は満足そうに微笑んだ。

 

「Bon voyage!」

 

そう言って彼女は紙船を送り出した。

 

ゆらゆらと流れるそれはまるで揺り籠のよう、もしくは母に抱かれる赤子のようだとすら思えてしまうほどに。

そして彼女は静かに歌い始めた。風に乗って歌声が広がっていく。彼女の歌声はどこまでも優しい響きに満ちていた。

 

「It's time to say goodbye〜♪」

 

囁くような歌声と川の流れる音しか聞こえない黄昏の世界の中で、彼女は静かに祈り続ける。

 

「It's better to fall asleep after a long day……」

 

やがて小さな舟は静かに遠くへと消えていった。その行先は分からないが、きっと何処かの浜辺か何処かに漂着するだろう。

 

彼女の脳裏には、かつてミシシッピ川で幾度となく見、情熱と感謝を込めて見送った幾艘もの舟たちが浮かんでいた。彼女たちウマ娘と同じように夢を乗せ、希望を乗せ、そして川の流れと共に去っていった無数の出会い。『ハックルベリー・フィンの冒険』のように、今もどこかで同じように運命に導かれ、同じ船に乗る者がいるだろうか。

 

それを知る者はいない。

しかし少なくとも彼女自身は船から降りる気などなかった。ロマンを追い求め、風と旅路に身を任せ、自分だけの航路を進み、城を目指す。それが彼女の人生であり、その全てだった。

 

「I'm with you, baby. I will be by your side.」

 

歌い終わると彼女は静かに立ち上がり、川に背を向ける。

 

「See you later.」

 

そして小さく呟くと彼女はその場を後にした。その足取りは、ちょうど彼女の名前(タップダンス)を象徴するかのように、どこか軽く、そして力強かった。

 

さて、彼女はいったい何を書き留めていたのだろうか。それは誰にも分からない――と言ってしまえば文学チックではあるが、せっかくだから読者の特権を享受して少し覗き見てみよう。

 

いつだって人は他人の秘密を覗き見てみたいものだ。それこそ、明治期に私小説が世を席巻し、現代にいたってもプライベートの暴露という背徳感溢れる行為に惹かれる者が絶えない理由でもある。

 

 

かくして、我々はこの秘密を垣間見る。

彼女がしたためた紙の正体とは、果たして――

 

 

 

---

 

Oft do I dream of Ace in wild embrace,

しょっちゅう、エースを獣みたいに抱きしめるのを妄想しちまうんだよ。

Thy naked skin, a feast for hungry eyes,

アンタの素肌は、飢えたアタシの目のごちそうって感じ。

In lustful thoughts, I yearn to find thy place,

欲まみれになって、アンタの居場所を見つけたいってスゲー思う。

Where passion's heat doth evermore arise.

情熱の炎がずっと燃え続ける場所でさ。

 

Thy bosom's swell, a pillow for my head,

アンタの膨らんだおっぱいはアタシための枕、

Thy thighs, a gateway to a world of sin,

そして太ももは罪の世界への入り口だ!

In fantasies, my body's craving led,

幻想の中で、アタシの肢体の渇望が導かれて、

To pleasures deep, where shame shall not begin.

深い悦びの中、shameなんてかなぐり捨てちまう!

 

Oh, how I long to taste thy honeyed lips,

ああ、アタシが一体どれほどアンタの甘い唇を味わいたいか分かるか?

To delve into the depths of thy delight,

アンタの悦びの奥の奥まで入り込みたい。

With fervent touch, and grasp of willing hips,

情熱的に触れ合って、グイグイ来るケツを鷲掴みにして、

To quench the fire that burns throughout the night.

夜通し燃え上がる炎を鎮めるんだ!

 

Thus, in this sonnet, bare my wild desire,

この詩で、アタシのwildな欲望をむき出しにする。

For thee, my love, thou art my deepest fire.

My honney エース、アンタはアタシの一番深い炎だ!

 

---

 

 

 

 

…………???

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

童貞の妄想をこじらせたような(ソネット)じゃねえか!!!

欲まみれで下品極まりねえな!!!

 

 

 

 

***

 

 

 

なあ、レースと、航海と、おっぱい。これらに共通するものは何だと思う?

 

――「ロマン」だよ。

 

Listen up!

アタシはバカでかい目標を達成する!!

『あの女性』『この女性』、それに『アンタ』もだ!

 

But! そんな女性たちを手に入れるには魅力を集めなきゃなぁ?

誰もが憧れる――Heart stealer. 心を奪い去って。

 

“今までにないモノ”を誰よりも先に生み出すんだ、この魅力で!

1番目立って、アタシは魅力も人気もロマンも手にする!

 

And then! この世界の賞賛と名声はアタシのモノ!

ファンやフォロワー。全ての注目がアタシの元に集う!!

 

さあ、エース! What do you think?

世界一のウマ娘のもとには……――どれほどの愛が集まる?

 

Exactly! 宮殿を建てるほどの愛なんて、あっというまだ!!

――来いよ、アタシの宮殿に。

 

こどもとか、大人とか。現実とか、理想とかうだうだ抜かすな。

そんな無駄なことにためらった、サヨナラなんて許すもんか。

 

アタシは、アンタらとずっと笑ってられる宮殿を建てる。

期待するのはそれだけでいい。アンタが言うのは『また会おう』だ。

 

……さあ! Come on! エース!

ついでにアンタの夢もアタシがかなえてやる――

 

 

 

 

 

 

「……いや、何言ってっかわかんねえんだけど……」

 

 

アタシの一世一代の告白に、エースは困惑した表情を浮かべていた。

ふむ、おかしいな。情熱的な誘い文句のためのセルフトレーニングは、河川敷でこっそり積んできたはずなんだが。

 

壁際に立っているエースに対してアタシは右腕を大きく広げ、彼女に近づいていく。

少し竦んだ様子のエースが一歩後ろに下がると、エースのロマンがいっぱいに詰まったおっぱいがぷるんと揺れた。

 

コイツ、困ったような顔しといて誘ってやがる!

 

流石にレースのたびに一番先頭に立って、後ろのウマ娘たちにケツ見せ続けてるだけあるな!アタシ含め、逃げウマ娘は変態だって相場が決まってんだ。その証拠にスズカなんか変態筆頭だろ?こないだなんかアイツ、電球を舐めてたぜ!笑えるよな!

 

「な、なあ……ちょっと落ち着けって」

「アンタに惚れたって言ってるんだよ。だからエースも来いよ、アタシのハーレムに!」

 

アタシはエースの顔を至近距離で見つめながら言う。

 

「アタシがアンタのロマンをかなえてやる。だから、エースもアタシにそのでっかいおっぱいをよこせ!」

「やんねえよ!?っていうか何言ってんだよ!?」

「なんでだよ、アンタもアタシのことが好きなんだろ? だったら問題ないだろ?もったいぶるなよ~!ロマンは分け合うものだろ~?」

「問題あるわ! なんでアタシがお前を好きってことになってんだよ!?」

 

エースは顔を真っ赤にして叫ぶ。その表情はどう見ても照れ隠しにしか見えないんだけどな。

叫んだ時にエースの服がすこしずれて、ちらりと覗く白いお腹から胸まで続くラインがとてもbeautiful!

 

ああもう!そのお腹に顔を突っ込んで、思う存分スリスリしてえ~!

でもその前にエースの照れ隠しを剥ぎ取っておかないとな!イヤイヤ言いながらってのも悪くねえけど、その人を誘惑して止まない唇から発せられる言葉は、やっぱり情熱的な愛の言葉を期待したいからな! アタシはエースにさらに近づきながら言う。

 

「だってアンタ、アタシとことごとく趣味が一緒じゃねえか。合わせてんだろ?」

「は?」

 

そう。アタシとエースは、休日出かける先々でことごとく趣味がかぶる。

 

行きつけのスイーツ店が同じで、好きなメニューもアタシと同じ「キャロット羊羹」。

これだけなら偶然かもしれない。実際アタシも、このくらいで自分への愛だと確信するほど自惚れてはいない。

 

だが、日常的に使っているシャンプー、スポーツウエアまでも同じで、さらには行きつけのスポーツ店まで同じときた。

これで偶然だなんて、どうやって思えってんだ?そうだろ?なぁ、エース!

 

アタシの言葉に動揺する様子を見せるエース。よしよし、もう一押しだな! アタシは畳みかけるようにさらに近づく。

そして壁ドンの体勢になり、アタシの顔がエースの顔に近づいた。吐息が感じられるほど顔が近くなると、彼女の瞳にうっすらと涙が浮かぶのが見えた。ああもうかわいいなぁオイ!!今すぐkissしてやりたいっ!! しかしそんなことしたら絶対嫌われるからやらねえけど!我慢するけどな!!

 

アタシはエースの腰に手を回し、そして耳元で囁いた。彼女の体は小さく震えている。ああもうかわいいなチクショウ!!

 

「なぁエース……教えてくれよ、どうしてアタシとこんなに趣味が合うんだ?アンタもアタシのことが好きなんだろ?」

「……そ、それは……」

 

エースは顔を真っ赤に染めて俯いてしまう。しかしすぐに意を決したように顔を上げた彼女は言った。その表情はとても煽情的で……

 

「……マジで、ただの偶然なんだけど……」

「……What?」

 

エースの言葉に、アタシは思わず素で聞き返す。……今なんて言った?ただの偶然?嘘つけ絶対嘘だ! だってここまでの一致とかありえないだろ!?しかも全部アタシと同じ行動してて、さらに同じものが好きで。そんな偶然があってたまるかよ!!

 

「いやマジで偶然なんだよ。……っていうか、タップがあたしの走りを研究し過ぎて、逆にそっちの趣味がこっちに寄ってきているんじゃないのか?」

「おいおい、you should be kidding. アタシはreferenceとしてただアンタの走りを研究しているだけだ」

「あたしはタップが日本に来る前からずっと同じ行きつけの店に行ってるぞ。少なくともアタシは合わせにいってない」

「Ha?」

 

……おかしい、さっきからエースの言っている言葉が嘘じゃないように聞こえる。

Really? マジで?本当にただの偶然?……いや……マジかよ。アタシのロマンがたったの偶然で蹴散らされちまっただと。

そんな……。本当にダメなのなら、諦めるしか――

 

「だからいったん落ち着けって。ほら、離れろって――」

――This is fate, I'm sure of it.

「へ?」

 

いや、そんなことあってたまるか!ここは突き詰めていくべきだな。その熱意こそがアタシをrevolutionistたらしめるわけだしな!! こういう時はコペルニクスの逸話を思い出せ。発想を転換させるんだ。

 

「お互い合わせにいっていないのに、こんなに一致するんなら、これはもう運命だ。これはもう運命なんだよ、エース」

「いやだから……」

「そうさ、アタシとアンタは運命の赤い糸で結ばれてるのさ!」

 

この出会いこそがまさに運命なんだ!!……てことで、アタシは遠慮なくエースを抱きしめる。

エースからは爽やかな香りがした。その香りはまるで草原を駆け抜ける風のようで、アタシの胸の中に新鮮な空気をもたらしてくれたような気がした。

 

「おっ、ちょっ、まっ」

 

うわっ、やっぱ細いな。それに柔らかい! エースの体を構成する曲線は、まるで生まれながらの芸術品みたいだ。さながら、彫刻家が魂と情熱を注いで造り上げた彫刻。それがこの肉体だ。

その芸術品はアタシに抱きしめられて初めて完成する。その美しさを、その魅力を余すところなく堪能し尽くす時こそ、芸術品は本当の意味で完成する!

 

突然抱き着かれたせいでバランスを崩したエースはそのまま尻もちをつく形になったが、それでも構わず抱きしめた。Lovely!

アタシは彼女を押し倒している体勢になった。 もう離さないからな、Let's connectだ!

 

 

が、しかし。

 

 

――バシン!と大きな音がして、次の瞬間には右頬に強い痛みが走る。

 

その痛みに思わず顔を離した瞬間、今度は左頬を平手打ちされる。そして間髪入れずに右頬も叩かれる! なんだ?What happened?

 

「シービー!」

 

エースがアタシの後方に向かってそう叫んだ。その瞬間、アタシの体は何か強い力で引っ張られて、そのまま後ろに引き倒される。

 

「Ouch!」

 

突然のことに受け身も取れず尻もちをつくと、目の前には一人のウマ娘が立っていた。長い鹿毛の髪をなびかせながら立つその姿を見て、アタシは思わず息を飲む。

 

「エースに何をしてるのかな」

 

そこに立っていたのは、トレセン学園が誇るクラシック三冠バの一人、ミスターシービーだった。

 

「助かったぜ、シービー。コイツいきなり襲ってきて……」

「……と言ってるけど、ほんと?」

 

シービーは尻もちをついたアタシを見下ろしながら、冷たい声でそう言い放った。その声からは怒りの感情が滲み出ているように感じる。

まるで蛇に睨まれたカエルのように動けなくなったアタシは、そのままコクリと首を縦に振るしかなかった。

彼女はそれを見ると小さくため息をついて言った。

 

「ダメじゃない、勝手にそんなことしたら」

 

シービーはアタシに目線を合わせるようにしゃがむと、微笑みながらそう言う。まるで子供を諭すかのような口調だった。

 

「そーだぜ。そういうのは良くな――」

「やるならアタシも誘ってくれないと」

「……へにゃ?」

 

シービーはそう言うと、自分の服に手をかけて、そしてそのまま勢いよく脱ぎ始めた。

はだけた服の隙間から、彼女の白い肌が露わになっていくのが見える。

うおお、なんて色っぽい脱ぎ方だ!豪快なのに、それでいて妙に官能的なその仕草に、思わず目が釘付けになる。

やがて上半身に身に着けているモノがブラだけになると、今度はスカートのホックに手をかけた。ジィイ……という音と共にホックが外れると、ストンと足元に落ちるスカート。

 

「おっ、おい!何してんだよ、シービー!」

「……分からない?エース?」

 

シービーはそのままエースを壁際に追い込こみ、壁ドンをする。エースは顔を真っ赤にしながらシービーを引き離そうとしたが、彼女の力は思ったよりも強く、離れることができないようだった。

 

「シービー!お前もか!?」

「……あのね、エース。まだわかっていないようだから言っておくけど――」

 

シービーはエースの耳元で囁く。まるで誘惑するかのように、甘美な声で、蠱惑的な口調で。

 

「アタシ、Ms.()じゃなくてMr.()だから」

 

そしてシービーはエースの耳を優しく噛みながら言う。

その声色はまるで小悪魔のようだったが、それとは裏腹に視線は真剣そのもので。

ああ、これが彼女の素顔なんだ。そう直感的に理解した。彼女はまるで獲物を狙う獣のように、じっとエースを見つめている。その瞳からは強い意志を感じたし、同時に何かを求めるような切なさも感じられた気がした。それはまるで、自分の存在を認めてくれと言っているかのようで……。

 

やがてシービーはゆっくりとこちらに向かって言った。

 

「タップも混ざりなよ。一緒ならアタシも文句ないから、ね?」

 

その誘いに、アタシは――

 

「最高だ!」

 

即答した! だってこんな機会滅多にないしな!!それにエースのあんな顔見たらもう我慢なんてできるわけねえだろ!?据え膳食わねば何とやらだ!!

 

今日、アタシたちの上でタップダンスを踊るのはアンタだ!エース!

 

 

 

 

*以下本筋と関係ない文学作品の引用が度々挿入されますが気にしないで下さい。

 

Vladimir Nabokov 『ロリータ』

私は押し込められた、爆発寸前の男だった。

 

――あぅ、まっ

――あはは、がっつきすぎじゃない?タップ?

 

E. E. Cummings 『選詩集』

私は、私の体があなたの体と一緒にいるときが好きだ。

 

――おお、正直だね。そういうの結構好きだよ。

――自分の信じるままに海路を突き進むのがアタシ流さ!

 

D.H. Lawrence 『チャタレイ夫人の恋人』

彼女はまるでまだ咲いていない花のように静かに横たわっていた。

 

――さあ、出航だ!錨をあげろ!

――待てって、ねぇ待って!まだ心の準備ができてな

 

D.H. Lawrence 『チャタレイ夫人の恋人』

彼女は彼の触れる手によって花が開き、彼は彼女の存在の隠された中心を見つけた。

Gabriel Garcia Marquez 『コレラの時代の愛』

彼女の裸の体は、無慈悲な楽園であった。

Gabriel Garcia Marquez  『百年の孤独』

世界は彼女の肌の表面にまで縮小された。

 

――これが隠されたお宝!これがロマン!

――いや、お風呂で見たことはあるんじゃない?

 

Isabel Allende 『Aphrodite』

女性にとって最高の媚薬は言葉である。Gスポットは耳にある。それを下で探す者は時間を無駄にしている

 

――良いこと教えてあげようか。エースね、耳が弱いの。

――耳?

――他人に耳かきされると、思わず赤ちゃんみたいに丸まっちゃうの。面白いよ。

 

William Shakespeare 『ヴィーナスとアドーニス』

私の唇に触れてください。もしその丘が乾いているなら、もっと低いところにある心地よい泉へとさまよってください。

 

――おお、遂に乗り気に!

――じゃあもう心置きなく楽しめるね。

 

D.H. Lawrence 『チャタレイ夫人の恋人』

彼はそっと彼女に触れ、茂みの中をそっと探り、花の中心に触れた。

 

――何か書いてあると思った?残念でした!さすがにこれ以上は無理!

 

 

 

***

 

 

 

その後、妙に女性らしくなったエースは学園中の噂の的となった。

 

休日になると、ワンピースを着て出かける姿を度々見かけるようになるなど、以前のエースからは考えられないファッションをするようになった。そのため休日エースと一緒の場所に居合わせることの多いタップダンスシチーは、生徒たちからエースの変わりようについて質問攻めにあうことが多々あった。

 

タップダンスシチーは、今日もいつもの河川敷で、何度目か分からない質問を受けた。

 

「エースは変わったんじゃなくて、本当の自分を見つけたのさ」

 

夕焼けが静かに消えゆく河川敷に響くその声は、誇らしげであり、少し寂しげでもあった。タップダンスシチーは微笑みながら続けた。

 

「ロマンってやつさ。みんなにも、自分だけのロマンを見つけて欲しい」

 

彼女の瞳には夕焼けの残り火が映り、風が優しく吹き抜けた。

その瞬間、彼女の言葉は夕暮れの景色と共に深く刻まれた。




主人公は航海とロマンを求めていて、「エース」という人物が登場する。
これ実質ワンピースじゃない?
だから最後のシーンでエースにはワンピースを着てもらいました。
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