蒸しかえすような背中とベッドを反発させるようにして目が覚める。まだ6時前だというのに昇る太陽が、悠馬の住む鴨渡(かもわたり)町を照らしつける。汗で湿る顔を冷えた水で一掃し、さっそうと拭う。
悠馬「夏休み前日って何歳になってもワクワクするよなぁ。それに早く起きて早く登校するのもあるあるだったな。タイムリープというまたとない機会だし俺の失われた10年取り戻すぞぉーッ!」
南国の澄み渡った大海にも負けない青天から、焼けるような重いような陽光が学童の帽子を一層際立たせる。
いつもよりも足取りの軽い小学生たちの通り風で、青々と伸び切り赤、青、紫に彩られたアサガオの花弁が揺らめく。
いつもより下駄箱から教室に至るまでの声が一段と大きく多く聞こえる。
担任「明日から夏休みに入りますが、夜ふかしをせず早寝早起きを心がけて過ごすように。それと!!宿題はちゃんと計画的に進めて終わらせるように!」
生徒達「「「はーい!」」」
帰りの会が昼前に終わることと1ヶ月半近い長期休暇(ゴールデンタイム)が始まったことが相まって、校舎内の空気感がフワフワと浮き上がる。そんななか教室内で険しい顔に冷や汗をかく男が一人居た。
悠馬(朝にあれだけ意気込んでたけど…そういえば女子に話しかけるのは中学ぶりだからどう言葉をかければいいかわかんねーっっっ。それにその時はパシリで宿題をやらせられてたからマトモなコミュニケーションでもないし…でもここで自分を変えなきゃまたモノクロのような青春になってしまう…まずは一歩踏み出して!)
いくらか体を震わせながらも殿を務める武士のごとく歩を進め、なんとか瀬川のいる机の前に行った。幸いな事だろうかまだこの学校に来て日が浅いからか、親交の深い友人はおらず話しかけ易い状況は揃っていた。
悠馬「瀬川さんって夏休みなにかする予定とかってあるの?」
由沙「えっ?うーん…特にはまだ決まってないかな〜。そういう金谷くんは何かあるんですか〜(笑)?」
悠馬「実はもうある程度宿題やれてるんだけど唯一自由研究が思いつかなくてさー」
由沙「えぇっすご!いいな〜私まだほとんど手につけてないよ」
悠馬「じゃあ一緒に宿題やろうよ。お互いに見張り合えば効率よく進めれるんじゃない?」
瞬間、少しの間が空く。
悠馬(ヤバっ一気に距離詰めようとしすぎてキモがられてしまったたか…!?)
だがまもなく由沙が目を輝かせて身を乗り出した。
由沙「いいねぇ〜それ!あんまり勉強得意じゃない私にも一石二鳥だし。それじゃあ善は急げって言うしいっしょに帰って早速宿題進めちゃお〜!」
悠馬「お、お〜!」
そうして二人で並んで学校を後にした。